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プロローグ

主人公は最強系です。とはいっても、ダブルヒーローみたいなものですが。

「(どうして……?)」

桜花園おうかえん深雪みゆきは後悔していた。

どうしてこんな危険な森に足を踏み入れてしまったんだろうか、と。

自分の力を過信するんじゃなかった、と。

目の前の妖気を纏った、熊のような化け物は彼女を嘲笑いながら見下していた。

その瞳に映るのは、彼女の恐怖にまみれた顔。

深雪はすでに魔力をあらかた使い果たし、立つ気力も残っていない。

つまり、逃げることも叶わない。

彼女はただ、死を待つだけの存在となり果ててしまっていた。

「(このままじゃ食べられちゃう……でももう……)」

今までに感じたことが無い恐怖……正確には二度目であるが、それにより、彼女は泣き出しそうになっていた。

所詮彼女は15歳。高校に入学したての高校1年生。

ここまで泣かずに耐えていることを褒めるべきであるかもしれない。

「(パパ、ママ……最後までわがままな娘でごめんなさい……)」

彼女は死を覚悟し、心の中で彼女の最も大切な両親に謝った。

「(ああ……結局、あの人に会えなかったし、追いつけなかった……夢……叶わなかった)」

そして彼女は、もう一人の人間を心の中で思い描いた。

その人間は、両親よりぼやけていたが、彼女が目標としていた人物であった。

「でも……」

しかし、死を覚悟してでも、彼女の目には強い意志が宿っていた。

「ただでは死なない! せめて……道連れよ!」

魔力が尽きた彼女は、死力を振り絞って立ち上がり、杖を打撃武器として持ち、化け物へと駆け出して行った。

そして、化け物に向かって思いっきり杖を頭にぶつける。

しかし、彼女の攻撃は、化け物に致命的なダメージを与えられなかった。

それもそのはず、そもそも杖は打撃武器ではないし、彼女自身、戦いに至っては素人なのだ。

「そん……な……」

彼女は、化け物の硬い皮膚によって折れた杖を見て呟く。

そして自分の無力さを思い知る。

「私……もう……」

「よく頑張ったよ、お前は」

「!?」

そんなとき、彼女の耳に男の声が聞こえた。

「だ、誰!?」

彼女は急いで周囲を見渡す。

しかし、彼は彼女のすぐ近くの木の上にいた。

「よ」

「あ、あなたは!?」

彼女は、混乱した。




★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★




……時は数週間前に遡る。



チェコ・プラハ郊外



「魔法なんて危険なんだよ!」

「そうだそうだ! 魔法使う奴なんて、恐ろしくてしょうがねぇ!!」

プラハ郊外で、黒ずくめのテロリスト集団がそんなことを言いながら、とある建物に立てこもっていた。

もちろん、人質を確保しているので、軍隊も迂闊に手を出せない。

「ぐぅ……どうするべきか……」

その軍を指揮している男が唸りながら考えていた。

彼自身、人質の救助が最終戦であると考えているからだ。

「あなたがこの軍隊の指揮官ですか?」

「ん? 何だね君は?」

そんなとき、そんな指揮官に話しかけた男が現れた。

「これは失礼しました。私は特活傭兵部隊、SAMOのエイルマットといいます」

「SAMO……? まさか……!」

「はい。貴方達の指令に雇われましてね、ただいま人質救出の活動をしています」

指揮官の驚きぶりから察するに、SAMOというのは有名な組織であるらしい。

いい意味か悪い意味かは分からないが。

「活動って……本当かね? 悪いが私にはそんなことをしているとは思えないのだが……」

「大丈夫ですよ。“彼”は優秀です。もう人質のところまでたどり着けたんじゃないですか?」

「そんな馬鹿な……だってあの建物には死角なんてほとんど……」

ドーン!

「!?」

指揮官の言葉は、建物の爆発音によって止められた。

同時に、指揮官の顔に驚愕の表情が浮かぶ。

「ほら、言ったでしょう?」

「そんなことを言っている場合か! 本当に人質は無事なのか!?」

「ご自分の目で確かめてみては? 突っ込む時としてはベストだと思いますが?」

「ぐっ……全軍! 一気になだれ込め!」

指揮官の合図に、兵隊は建物の中へと流れ込んでいった。

浮足立っているテロリストは、正規軍の相手ではなく、次々と捕縛されていく。

指揮官はそれを見ていた時、気が気でなかった。

「少佐!!」

「ん?」

指揮官は突然やって来た兵士に顔を向ける。

「人質は無事です!」

「それは本当かね!?」

兵士が指をさした方向から、一人の男が歩いていた。

人質の少女を抱えて。

「いや、よくやってくれたよ」

エイルマットがその男を褒める。

「人質は救出した。後は貰うものを貰うだけだ」

男はチラリと指揮官を見る。

「紹介いたしましょう指揮官殿。彼はSAMOの中でもかなり優秀なホープです」

「ホープ?」

「彼は依頼達成率が何と100%なのです」

「何と!?」

指揮官はその言葉を信じる。

何せ、たった一人でテロリストの集団に突っ込み、無傷で帰って来たのだから。

「……そんなことより、報酬はどこで受け取ればいい?」

男がエイルマットに質問をする。

「もう君の口座に振り込んでおいたから」

「じゃあ俺は帰り……」

「待ちたまえ!!」

指揮官は男を呼びとめる。

男は何故か、いい気分がしなかった。

「君、うちの軍に入らないか!?」

「……それは」

「すいません指揮官殿。彼にはすでに次の任務が入っていますので」

「そ、そうなのか……その任務が終わったら……考えてくれないか?」

指揮官は少しガッカリしたものの、エイルマットの言葉に少し安堵した。

可能性が消えてないと思ったからである。

「では私たちはこれで失礼します」

エイルマットと男は、指揮官にお辞儀をしてその場から立ち去った。

「……何で俺の発言を止めたんだ?」

男は、先ほどの自分の発言がエイルマットに遮られたのがあまり気に入らないらしい。

「断ろうとしたからだよ」

「断っちゃいけないのかよ」

「ああいう風に期待を持たせた方が、また仕事の依頼をしてくれるかもしれないじゃないか♪」

エイルマットの発言に男は彼にジト目を向ける。

少し指揮官に同情をしたようだ。

「嘘ついてまですることか?」

「嘘じゃないよ」

「は?」

「君の次の任務、もう決まってるんだ」

「はぁ!?」

男はエイルマットに食ってかかる。

「少しは休ませるとか、少しくらい粋な計らいくらいしてもいいだろ!?」

男は不平不満を上司にぶつけてみる……無駄だと理解しているが。

「大丈夫さ、そんなきつい任務じゃない。むしろ休暇みたいなものだよ」

「は?」

「母国へ帰りなさい。任務はそこで行う。詳しいことは電話する」

「母国って……」

男の頭に浮かんだのはただ一つ。

ここから遠く東にある島国、日本。大和とか倭とか呼ばれていたその日本。英語ではジャパン。ジャポンやらハポンやらとも呼ばれる日本。

「ま、そういうことだよ。とりあえず、2時間後に出発だから」

「……計画性を練ってくれ」

男は溜息を吐きつつも空港へと向かった。

物語はここから始まる。







とりあえず、ご期待して下さい。

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