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15/15

←N♡←T?←R♡・・・13 雪人の陰謀?菜々子の変化

※お詫び


第13話をご覧頂きありがとうございます。

こちらは、一度投稿したものを削除し、再度加筆・修正したものを投稿させて頂いています。


投稿した内容に伝わり辛い描写、過去の投稿部分第9話の一部の内容を更に掘り下げて回想するシーンが入っていましたが、そちらの内容の方を大幅変更しております。

先にお読み頂いた皆さまには大変申し訳ありませんでした。




小鳥遊凛音

「嫌な・・・予感が・・・致します」


「うぉっ!?で、出たぁぁぁ~!!!」


「おっ、おぃっ!突然出て来るなっていつも言ってるだろ!?」


登校途中、歩いている横から足音すら立てずに俺の耳元でボソッと呟く野々花さん。


「これは、失礼致しました。今朝、少々胸騒ぎが致しましたので・・・」


「はい、胃薬」


「これは?・・・」


「いつもの仕返しだ!・・・いや、野々花の場合少々胃が弱いと見た!

これは俺からのちょっとした気持ちだ。受け取ってくれ」


俺は、野々花に顆粒の直ぐ胃に溶けて広がるタイプの薬を手渡した。


「これは、ありがとう・・・ございます。胃薬と称した媚薬で御座いますね?」


「おぃぃぃぃぃぃ~!!!周囲に人がいっぱいいるから!どうか妄想癖を晒しやがる事だけはご遠慮頂きたい!!!」


想像の斜め上を行く意見を述べる野々花嬢。


「それにしても、鷹矢も色々とストレスが溜まっているのね?たまには発散しなきゃ!」


「あ、あぁ・・・ありがとう。俺の気持ち分ってくれるのは莉子だけだ!」


一緒に登校していた莉子が気遣いの言葉を掛けてくれた。

本当にいい子だよな。莉子は・・・


「よっ、鷹矢!皆!おっはよっ!」


背後から鉄平の声が今日も張りの良過ぎる五月蠅いくらいのトーンで聞こえて来た。


「鉄平、本当に朝から元気だよな!」


「たりめぇだろ!今日はあの雑誌の発売日だぜ!?ほら、一之瀬さんと白川さんが出てるやつだ。お前も彼女のチェックくらいしておけよな?」


俺は知っている。この威勢の良さは雑誌の発売に見せ掛けたフェイクだと言う事に!

その実・・・


「それはそうと、上手く行っているのか?」


俺は鉄平の耳元で小声で尋ねてみた。


「いや、その・・・かなりの性欲みたいでだな。実は少々困っている」


どうやら、梨美夜生徒会長はこれまでの欲求不満を解消しようと懸命な様子である。


「お前も色々と大変なんだな・・・まぁ、時期に落ち着くと・・・いいな」


「俺の体力が持たん」


腰を軽く抑え気味の鉄平・・・


「あれ?何かあったの?」


莉子が俺達の様子を見て聞いて来た。


「い、いや、またこいつ下ネタを言って来てだな・・・」


「おぃっ!俺がいつ下ネタ言った?雑誌か?お前、自分の彼女の載っている雑誌を下ネタ扱いかよっ!?ひでぇよな?俺ならそんな酷い事到底言わねぇぞ!?」


鉄平が上手く切り返して来る。


「まぁ、冗談だ。さぁ、登校登校・・・」


俺は何事も無かったかの様に学校へ向かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

休憩時間に入り、いつもの様に俺と鉄平は駄弁っていた。


「って事なんだが・・・」


「ん?鷹矢。どうかしたのか?」


俺は、一之瀬美亜と雪人が仲睦まじい様子に妙な違和感を覚えた。

いつもは、俺達と一緒に話をしているはずなのにきょうは雪人がこちらへ入って来ない。


「あ、いや、何も。少し雲行きが怪しいなと思ってな?」


俺は、外を眺めている振りをして様子を伺う事にした。


「鷹矢?」


莉子も様子を伺って来た。


「あ、いや。傘持って来てなかったからな」


俺は、スマホで天気を見た。


「良かった。昼前には降ってても止むみたいだ」


どうやら、帰る頃には大丈夫そうだ。


それにしても、菜々子の様子も・・・


「これは・・・これは、雲行きが穏やかではありませんね」


「胃の動きの方は穏やかになったか?」


俺はジョーク混じりに隣に立った野々花に聞いた。


「はい。少々疼きが穏やかでは御座いませんでしたが、今は快方へと向かいました」


うむ。それなら良かった。疼きは余計なひと言だがな!


「それで・・・うん。いいよ♪じゃぁ、次の休みにね♪」


「宜しく頼むよ」


会話の最後辺り、弾み良く俺達の方まで聞こえて来た。


「ん?どうしたんだい鷹矢?不思議そうな顔でこっちを見ている様だけれど、何かあった?」


雪人が俺の顔を見ながら言う。


「あ、いや。何でも・・・無い」


いつもの雪人とは雰囲気が違う様に見えるのは俺だけだろうか?


「えぇっと・・・七条君?今日、莉子ちゃんと私雑誌の方発売だから・・・」


何だか余所余所しい雰囲気で俺に告げる一之瀬。


「あぁ、知ってるけど・・・」


俺も既に知っている訳で、何か後ろめたい事でもあったのか?


そして、昼休みに入ると・・・


「あ、すまない。俺、今日は一之瀬さんと食べるから」


「えぇ~!?どう言う事だよ?お前は俺達の仲間だよな!?」


雪人が一之瀬、つまり菜々子と昼食を摂ると言って来た。

そして、鉄平が無理矢理引き戻そうとしている。


「宇治君、止めて。私達がどこで食べようと私達の勝手でしょう?

ねぇ、雪人君、行こう?」


そう言うと一之瀬美亜は、鉄平を押しのけようとして雪人と教室から出て行ってしまった。


「んだよ・・・何で今になって!?」


「・・・・・・・・・・」


鉄平は不機嫌そうに教室から出て行った2人を見ている。


「た、鷹矢?とりあえず一緒に食べよう?宇治君もいるし」


「え?あ、あぁ、そうだな」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後半も休憩時間になると2人は一緒に喋っていた。


「でね、そこで空一面に広がっててすっごく綺麗だったよ♪」


「そうなんだ。俺も一度見てみたいかも」


楽しそうに・・・何があったのだろうか?

帰宅後、菜々子から連絡が入った。


「ごめん。今日、友達の家に泊まる事になったから帰れない」


その一言だった。


「お前、一体誰の所に?」


俺は必要最低限でも聞いておきたかった。

相手が誰なのかを・・・


「うん・・・今一緒にいるけど・・・直接話・・・する?」


まさか!?・・・


「あ、鷹矢?すまないね、きょう、菜々子ちゃんと一夜を共にする事にしたから・・・

ちなみに、自宅には家族がいるから別の所にね」


「ちょっと待て!一体何があった?お前達きょう、様子がおかしかったぞ!」


俺は雪人が電話に出た瞬間、激しい不安感に襲われた。


「別におかしくはないよ。何て言うのかな?美亜・・・いいや、菜々子ちゃん俺とフィーリングが合うって言うのかな?凄く相性がいいんだよ。だからさ」


雪人は、菜々子が寝取られた時に莉子と同様、色々と俺を助けてくれたひとりだ。

だが、これは一体どう言う事なんだ?


俺が今まで信じて来た雪人はこんな奴じゃなかったはずだ・・・

それなのに、突然菜々子を?


「流石に頭のキレるキミでも理解不能な様だから言っておく事にするよ。

俺、以前から菜々子ちゃんに目をつけていたんだ。悪いけれど、キミが菜々子ちゃんの想いを受け入れてあげられないみたいな事を菜々子ちゃんの方からも時折聞いていたんだ。


キミの言い分も分かる。けれど、誰も邪魔しない自宅で迫られてもキミは・・・

キミが菜々子ちゃんの本当の気持ちを知っておきながら拒み続けている。果たしてそれは、本当に菜々子ちゃんにとっての適した対応と呼べるのだろうか?」


「雪人・・・お前は分かってくれていると信じてた。

でも、それは俺の勘違いだったみたいだな・・・」


耐えろ!今すぐにでも雪人の元へ出向いてぶん殴ってやりたい。

そう思えるほど俺は、怒りに呑み込まれてしまいそうだった。


けれど、俺には莉子がいる。

今の俺は当時の俺とは違う。

菜々子は、一体何がしたかったのだろう?

菜々子を少しでも信じてしまった俺がバカだったのか?


♪ピンポーン


チャイムが鳴った。

こんな時に誰だ?


「鷹矢、そう言う事だから今夜は菜々子ちゃんは帰らないから」


最後にその言葉を聞いて俺は電話を切った。

そして、来客で玄関へ向かった。


「ごめん下さいませ」


「野々花?・・・珍しいな一体何で?」


来客は野々花だった。

一体何故ここへ?


「嫌な予感が的中したと見えました・・・鷹矢様はどうぞごゆるりとお過ごし下さいませ。私めが家事全般をお引き受けいたしますので」


「い、いや・・・それはありがたいのだが・・・菜々子もいないって知ってて?」


「それは・・・予感が致しましたもので・・・」


エプロンを着けた野々花は背を向けて話を続けた。


「明朝、嫌な予感が致しました。何か鷹矢様に良からぬ事が起きてしまうだろうと・・・」


それで、朝登校の時に。


「日中も妙な違和感に苛まれておりました。恐らくこの流れで考えられる事は・・・」


「分かった。分かったよ。ありがとう。気持ちだけで嬉しい・・・のだが、包丁をこっちへ向けて不敵な笑みを浮かべるのは良くないぞ?うん」


意外にも野々花は怒りに震えていたみたいだ。


「お腹の奥底が震えて・・・おります」


「いや、それは怒りに打ち震えるって表現するんだぞ」


再び野々花は調理に入った。


「ありがとな。こんな情けない俺に気を遣わせてしまって」


「ドォォォォォリャァァァァァァァァ!!!」


「ひっ!?・・・」


突然、野々花は包丁を天井へ向けたかと思えば一気にまな板目掛けて振り下ろした。


「な、何だ!?・・・何が起きた!?の、野々花・・・さん?」


「ふぅ~・・・少しばかり暴れておりました伊勢海老を只今調理致しました」


伊勢海老裁くのにそんなに大層な勢いで包丁を動かした上、大声で気合い入れるのか!?


「こちら、伊勢海老の踊り食いでございます」


「いやいやいや、普通にエビフライと刺身とか豪華なメニューになっているんですけど・・・」


「宜しければ、私もお召し上がりになられますか?鷹矢様のご回答によっては私・・・」


「さぁて、頂くとしようかな。こんな豪華な手料理本当に野々花はいいお嫁さんになれると思うよ!いや、絶対に!」


そして何故だろうか?野々花は、肩を露出させながらゆっくりと身に纏っている私服を脱ぎ始めてしまった。


「それは、大変光栄に・・・思います。鷹矢様は私の身体もご所望とお見受け致しました。どうぞ、心行くまでこの牝の肢体を・・・」


「いや、本気で待ってくれないか?この下りまさかR-18へ続いて行く流れじゃないだろうな?」


「はて?・・・R-18とはどの様な行為・・・なので御座いますか?」


「いえ、何でもありません。こんな豪華な料理を食べたら絶対にお腹いっぱい過ぎてもう、野々花まで食べられないよ!」


「そ、そうでしたか・・・では、ご就寝の頃合いを見計らって準備を・・・進めさせて頂きたいと・・・」


ダメか・・・この子もスイッチ入っちゃうと歯止めが利かなくなるのか。もう、いっその事各人の癖みたいなのをノートに残しておく事にしようか?


「と言う事で、ここは七条家長男、鷹矢の住んでいる部屋です」


「はい♡こちらが、鷹矢様の幼少の頃よりお過ごしになられたお部屋で御座います」


「そして、隣の部屋が義妹が過ごして来たとされる女子の部屋です」


「お隣が・・・菜々子さんがお過ごしになられて来たお部屋で御座います」


「今、来客としてではありますが、野々花さんがいらっしゃっていますね」


「はい。客人として私めがお邪魔させて頂いております」


就寝間際、俺は自室へ入ろうとしたのだが、後ろから野々花が一緒に入って来てしまった。

そして、今説明しながら隣の菜々子の部屋へ入って寝てもらう様説得をしている。


「我々は、健全な高校生です」


「はい。私共は健全な高校生で御座います」


「と言う事で、これから俺は就寝させて頂きたく、どうぞ野々花さんには隣の菜々子の部屋をお貸し致しますのでそちらでごゆっくり!ごゆっくりとお休み下さい」


「はて?幼少の頃は、時折こうして鷹矢様の床にお呼ばれしておりましたが?」


野々花さんの概念は、幼少期の頃から進んでいないと言う事だろうか?


「いや、そんな不思議そうな顔をされましても・・・俺達もうあれから10年以上経っているんだぞ?当時と同じとは思わないで欲しい」


「そうですね。あの頃が懐かしいと感じてしまうくらいに時は過ぎてしまいました。

私も、この通りあの頃よりは・・・菜々子さんの様な蠱惑的な肢体では無いですが、成長・・・致しました」


窓から射す月夜の明かりに照らされた野々花は、本人が思っている以上に蠱惑的で俺は何故か目が離せなかった。


「如何・・・致しましたか。鷹矢様?」


「いっ、いや・・・何でも、無い。それより早く部屋へ戻ってくれないか?これ以上は・・・」


そう言うと野々花は出て行くかの様に見せ掛けて・・・


「これ以上は?・・・どうなられますか?私は・・・いつでも構いません。鷹矢様がお望みならばいくらでも・・・」


「いやっ!お、俺はそう言うつもりはないからな!」


「はい。存じております。ですが・・・明日以降、登校された時が・・・気掛かりです」


「大丈夫だ。抑えるから・・・」


自信はない。だが、今雪人を殴り飛ばしたり何か問題が起きてしまえばきっと・・・


「予感・・・」


野々花が告げる。


「今は、お辛い状況ですがしばしのご辛抱かと・・・」


「野々花・・・それは?」


いつもの「予感」なのだろうが、こう言う場面で告げてくれる野々花の予感と言うのは・・・


「しばしの期間、私が鷹矢様のお側に・・・」


「い、いや。それは流石に迷惑だろう。それに俺には莉子もいるからもう・・・

本当に色々とありがとな。野々花もこういう時に助けてくれる一人だったもんな」


俺は心の底から気を引き締めようとこの時更に強く思った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

休日前の登校日


「うん♪じゃぁ、明日ね」


「楽しみにしているよ。美亜ちゃん」


白々しい・・・

俺に当て付けている様にも感じ取れる。


だが、あの日から今日まで菜々子はちゃんと自宅には帰って来ている。


この間までの俺に対する態度とは180度変わった所が一番気に掛かっている所だ。

本当に菜々子は雪人に対して心が傾いてしまったのだろうか?

それに、この数日の間とは言え菜々子が発情状態に陥ったと言う話も耳にしない。


「鷹矢、大丈夫?顔色が悪いよ?」


「え!?・・・あ、あぁだ、大丈夫だよ。ごめん、変に気を遣わせてしまって」


莉子が心配そうに顔を覗き込んで来る。

莉子は、この状況をどの様に思うのだろう?


「莉子、俺達も週末デートしないか?」


俺は、莉子を週末デートに誘った。


「うん、いいよ♡いっぱい楽しんじゃお♪」


「・・・・・・・・・・・・・・」


何やら菜々子がこっちを見た様な気がした。


「お前らなぁ~・・・そう言うのはメールとか誰にも気付かれない様にやれって・・・

俺に対する当て付けかよ・・・」


鉄平がもっともらしいツッコミを入れる。

お前こそ、デート以上の繋がりをあの生徒会長様ともっている癖に・・・


「それはそうと、例の雑誌見たんだよな?どうだったんだ?直接本人の目の前で言ってやればいいんだよ♪」


相変わらず余計な所でKY気味の鉄平君・・・


「あ、あぁ・・・勿論凄く良かったと思うぞ!やっぱ莉子はスタイル凄くいいからな。それに・・・胸も綺麗だと思うし」


「た、鷹矢!こんな所で・・・でも、ありがとう♡」


莉子は恥ずかしそうに両手で顔を伏せた。

こう言う細かい素振りも可愛い。


「ほほぅ・・・確かに綺麗で美しい!だが・・・だがな鷹矢?こんなダイナマイトナイスバディーでこの雑誌を買って見ている読者どれだけいると思う?


その健全な全男子がどんなに恋焦がれようが、オカズにしようが、手に入らない超絶美少女をお前が占有していると言う訳だ!」


パコンッ!


「痛っ!?何すんだよ!事実を言っただけだろ?」


俺は、鉄平の後頭部を殴った。


「オカズは余計だ!本当に無駄口が多いのも問題だよな?」


「そ、その・・・もう私の話題は・・・」


流石の莉子もこれ以上は耐え切れないみたいだ。


「はい、この話題は終わり!」


俺は閉めに入った。

だが、いつもならここで菜々子が「どうして私の方には触れないのよ~!?」


と一之瀬オーラを出しながら迫って来るはずなのに・・・


「・・・・・・・・・」


無言でこっちを一瞬見て来た。

一体何を考えているのか、菜々子は戻って来てから分からない。

確かに、一連の理由や事情がある事だけは分かっている。

けれど、こうして突然手のひらを返した様な態度で他の男子と・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私が梨美夜ちゃんに生徒会室に呼ばれたあの日・・・


「キミがどう言う状況に置かれ、苦しんでいるかは分からない。

けれど、今キミにとって悪い状況でない事だけは言いきってもいい。


きょうは、あえて私だけここにいる。


ちなみにこの部屋は防音設備に長けており、盗聴や盗撮も出来ない仕様だ。


キミが、もしも誰かに言ってはいけない事を言いたい場合、うってつけの条件になっているはずだ」




あの時、梨美夜ちゃんがその様に私に言った。

私は、きっとこの後犯人について尋ねられてしまう・・・

そう感じていた。


「・・・・・・・・」


「まぁ、菜々子ちゃんの言い分があるだろうから私は無理にとは言わないが」


そのまま何も言わずに梨美夜ちゃんは、私が何かを口に出すまでずっと待っていた。


「・・・・・・・その、何も聞かないんですか?」


私がようやく口を開いた。そして梨美夜ちゃんは言った。


「ここで、私が無理強いするのは私のプライドにも関わって来る・・・と言うのは建前だけれどね」


また回りくどい言い方・・・


「本音はね。これこそここだけ・・・キミと私だけの中に留めておいて欲しい。

あの時、私が振られてしまった時の事だよ」


梨美夜ちゃんは、少し言い辛そうに話を続けた。

それは、梨美夜ちゃんが振られた時の話・・・

私は当時、梨美夜ちゃんが疲れ果ててしまう程泣きじゃくった後にずっと慰め続けた事があった。


ただ、ひたすら私の胸の中で泣き続けていた。

その時に、本当に彼女は彼氏の事が大切で、大好きだったんだと感じた。


「どうやら、その彼なんだが・・・私を庇ってくれる為にその様な事を告げたみたいなんだ。

まだ、真実を解明する直前と言った所だけれどね。


私は、彼の事を今もきっと・・・信じて止まない。

だから・・・」


会長は切なそうな表情を浮かべる。


「すまない。また少し分かり辛い言い回しをしてしまったね。

彼は・・・私の命に関わる事で半ば脅迫されていたみたいだ」


そんな・・・じゃぁ、梨美夜ちゃんの元カレは今でも!?


「きっと、今でも犯人を捜す事に執着しているはずだよ」


きっと、今の梨美夜ちゃんは鷹矢と私の事を自分に重ねて見ている。

でも、ここで私が犯人を言ってしまえばきっと・・・


「梨美夜ちゃん・・・」


私は・・・


「お願いします。何処で聴かれていて、

何処で見られているか分からないんです。


だから・・・今までの状況のまま・・・

鷹矢、お義兄ちゃんにも・・・この事は黙っておいて欲しいんです。

そうじゃなきゃ・・・あの人は・・・きっと、今度こそ・・・


私達を・・・許してはくれないはずです・・・」


命に関わって来る事だと絶対に私は言う訳にはいかない。

多分、梨美夜ちゃんの時の犯人と私を拘束している人物は別だと思う。

時期やタイミング、それに脅迫しているのは男の子。


それに、執拗以上に鷹矢や私に執着心を抱いている・・・


そうだ!・・・ならばきっと大丈夫・・・のはず!


「ごめんなさい。今、少し考えていた事があって・・・」


「うん。私も少し自分の事を喋っていて、尚更犯人を聞く事は避けた方がいいのでは無いかと思ったよ。本当にすまない」


「ううん。そうじゃないの。そうじゃ・・・なくて・・・」


そして、私は今までの状況とは一変したお願いを梨美夜ちゃんに依頼した。


「犯人・・・意外とヌケていると思う。

それに・・・私にあんな酷い事をしておいて、私の事が大好きみたい。

勿論、鷹矢の事も・・・だから、きっと・・・大丈夫。


でも、誰なのかだけは・・・言えない。

それを言ってしまえば、きっと・・・」


これは・・・犯人が追い込まれた時に本当に逃げ場を失って精神崩壊してしまうであろう事が想像出来るからだ。


あくまでも犯人を擁護する様なつもりは一切ない。

それに、今すぐにでも本来ならば伝えたい・・・


「なるほど・・・理解出来たよ。キミは・・・本当に優しい子だ」


「そ、そう言う訳じゃ・・・無いよ」


「今から話をする事は、私の独り言だから気にしないで欲しい。

私は、固定概念を持っていたみたいだ。

犯人・・・つまりストーカーに近しい精神状態と言った方が良いだろうか?

今の話で大方推測出来たよ。


だが・・・あくまでこれも私の推測に過ぎない。

ならば、少しそのストーカー染みた犯人を誘き出す作戦と言うものを考えてみようじゃないか・・・だが、これは私の勝手な判断だ。それを実行に移すには本人の許可が必要だ。そこで、ここからは私の頼みなんだが・・・」


そうして、梨美夜ちゃんは私のお願いを自ら背負ってくれた。


「梨美夜ちゃん・・・それからね?・・・もう一つ、もう一つだけ頼みと言うか・・・」


そして私は今、自分の体に起きている状態について伝えた。


「ふむ、そうだったのか。ならば、キミの身体はもうその様に調教され続けていると言う訳か・・・」


「うん。だから、私の身体も少しずつ・・・変えられてしまったの」


梨美夜ちゃんは苦手だ。

けれど、信頼は出来る相手である事は間違い無かった。


私は、誰にも言えない自分がされて来ている事を梨美夜ちゃんに告げた。

だけど・・・どうしてもその様に手を施した人物についてだけは言えなかった。


言ってしまえば、全てが解決するかもしれない。

でも・・・私がこの世で一番大切な人まで・・・命は別としても他にも何か致命的な事態に見舞われてしまうかもしれない。


「さぁ、ちゃんと言ってくれないか?私に・・・キミをどうして欲しいのかを?」


私はその言葉に支配された。


「はぁ・・・んっ♡・・・お、お願い・・・します。この・・・淫らな・・・

淫らな私を・・・可愛がって・・・くだ・・・さい」


気が付くと、私は会長京極梨美夜の目の前で跪き股を拡げて媚びを売ってしまっていた。


「イケナイ子だ。先ずは私のココを舐めてくれないか?」


そして、物語はそのプロローグに始まり・・・


「それでは、お待ちかねの解放の儀だ。とくと堪能しておくれ?私はこう見えてどちらもイケる口でね。1人調教済みなんだ。今じゃその子も私の手駒となって働いてくれているのだが・・・」


「あぁ・・・あぁ~♡凄い・・・れす・・・梨美夜・・・ちゃん・・・」


「あら?梨美夜ちゃん?・・・違うだろう?梨美夜様・・・って教えなかったかな?」


「ご、ごめんにゃひゃい・・・りみや・・・りみやひゃまぁぁぁ~♡」


こうして、梨美夜様は念入りに私の身体の状態を聞いてくれて、私を発情状態から解放してくれた。


「すまない。辛い思いをしている最中この様な状況にしてしまって」


「終わってから言われても・・・それに、梨美夜ちゃんは悪く無いから」


「例の計画の事だけれど・・・弟に・・・雪人にお願いしてみる事にするよ。

そうすれば、キミも少しは演じやすいのじゃないかと思うのだが・・・」


梨美夜ちゃんはその様に私に告げた。


「・・・・・・・・はい。お願い・・・します」


「最後に、私からと言うのは少しおかしな話になってしまうのだけれど、本当に実行に移しても良いんだね?この後、万が一にその命に関わっていたとすればとんでもない事態になってしまう・・・」


「大丈夫です。うちに盗聴器や盗撮する機材を導入しない事を受け入れるくらいの人物ですし、私のエッチな声で本当に感じている様な人ですから・・・」


「ふむ、そんなにも緩いのかい?キミを縛る犯人は・・・それならばキミは簡単に抜け出す事は出来る様にも思えるのだけれど?」


そう、梨美夜ちゃんが言う通りだ。

でも、意外な所で誰かを雇い入れたり下衆な事をする所もあるから分からない。

今回の計画は、少し痛い目に遭って欲しいと言う私の気持ちも籠っている。


「梨美夜・・・様?」


「おや?また体が火照りを帯び始めたのかな?」


「その・・・もし・・・もしもこの後、犯人を見付け出して解決する事が出来るまでの間・・・なのですが、私を・・・」


私は、潤んだ瞳で梨美夜様を見つめた。


「ダメだよ」


やっぱり・・・ダメだったか。そんな単純な事じゃないしましてや他人・・・

鷹矢にこんな事をずっとお願いするのは正直気が引ける。

鎮めてくれる心地良さや、嬉しさ、幸せだって感じてしまう程に鷹矢の手で私を鎮めて欲しい。けれど、ずっとそう言う事を続けるのは鷹矢にとっても酷な事だろうと思う・・・付き合っている女の子・・・莉子ちゃんもいるのだから・・・


「ちゃんと、最後まで言ってくれなきゃ?・・・分からないじゃないか」


「へ?・・・そ、それって・・・」


「キミが私に求める事・・・その湿った瞳と梨美夜様・・・分からない訳が無いよ。

でも・・・これは鷹矢君に伝えている訳じゃない。私はあくまでキミが歯止めが掛けられなくなってしまった体の火照りをさっき鎮めたに過ぎない。


そして、キミ自身がどの様に調教を施されてしまったのかを確認したいと言うのもあった。

さぁ、この先はキミ自身の口からはっきりと教えて欲しいな」


私は、梨美夜様の目の前で土下座をして床に額を擦り付ける様にしながらこう言った。


「はい。この淫らではしたない菜々子を・・・梨美夜様の奴隷として飼って下さいませ。私の身体は、犯人の手によって穢され続けています。

ちょっとした性的な事でも発情状態になってしまうまで開発されてしまいました。


こんな姿・・・鷹矢に見せ続ける訳にはいかないんです。

ご主人様には・・・もう、染められてしまいそうになっています。

助けて・・・下さい。お願い致します。


発情状態になってしまうと、もう、歯止めが掛けられないくらいにまで膨らんでしまうんです。ご主人様を・・・忘れさせて欲しい・・・です」


椅子へ深く座り片足を組む梨美夜様は神々しくも美しい・・・

そう、思ってしまう程だった。


「鷹矢君に負担を掛けたくないと?・・・だが、一番の想い人に慰めてもらう方がキミにとっては良いのでは?」


蔑んだ様に見えるその瞳の奥には、何処か優しさがにじみ出ている様にも感じられて・・・


「さっき・・・一度慰めてくれた時に実感しました・・・

犯人とは違った・・・優しさと愛情が見えたんです」


「ほほぅ・・・優しさと愛情?・・・この様な事をさせているのにかい?」


「はい・・・それを見せまいと梨美夜ちゃ・・・梨美夜様は振る舞って下さっていました。そういうのは凄く・・・分かるんです」


「奴隷になる。調教師を崇め称え調教され続ける・・・

そこに愛情などあるのかい?」


手に鞭を持ち私の頬を軽くなぞる。


「SMには・・・愛情が不可欠です。一方通行では成り立ちません。

他人から見れば痛めつけている人と痛めつけられている人にしか見えません。


ですが・・・本当のSMは互いに愛情が必要なんです。

痛めつけている様に見えて相手が心地良い痛みである事を見透かさなければなりません。


受け手はただ気持ちいいだけではいけないんです。

気持ち良くして下さったご主人様に精一杯の愛情を込めてご奉仕しなければなりません。


SMとは違っても、調教でもそうだと思います。

私は、ずっとご主人様に調教されながら鷹矢を困らせ続けています。

最初は、鷹矢を苦しみのどん底へ突き落す事を命令されました。


そして、それを遂行すればご褒美と称し私の身体を調教し続けたのです。

ご主人様のご命令に従えば甘い快楽のご褒美を与えるパブロフの犬の様に・・・


その延長上です。でも・・・そこに愛情なんてありません。

私を上手く利用して鷹矢を苦しめている・・・そこに愛情はありません。

愛情・・・あればそれはきっと歪み切った愛情としか言えません。


梨美夜様の先程の施しを受け、愛情を深く感じました。

きっと・・・この人・・・このお方なら私の穢れを・・・上書きしてくれるだろうって・・・だから、お願いします。梨美夜様のご慈愛で私の穢れた身体の火照りを上書きして下さいませんでしょうか?


お願い致します。どうか、この惨めで穢れた私を・・・」


「もういい。もういいよ。それ程にまでキミは変えられてしまったんだね。

いいよ、おいで?きょうは私の奴隷になった記念だ。キミを目いっぱい愛そうじゃないか」


この日、私は京極梨美夜様に抱いて頂いた・・・


(あの様な懇願をされてしまっては、

鷹矢君が調査に協力しようと申し出てくれた事も伝えられない。

きっと、感情が溢れ出てしまい鷹矢君へ本当の事を告げてしまうはずだ。

そうなってしまえば二の舞だろう。


だが・・・ある程度の推測を立ててはいたものの、

彼女を追い込んでいたのがまさかあの人物だったとは!?

大方察しは付いてはいたのだが、少々厄介になって来たな。

対象だけならまだしも、大掛かりで仲間がどれ程いるか検討も付かない)


私は、菜々子ちゃんが帰宅した後、生徒会室を閉める直前色々と考えていた。

菜々子ちゃんはあの様には言っていたがやはり危険ではあるに違いない。

これが単独犯であればまだしも集団、または雇い入れたりと言った面倒な可能性もある。


私は、少し事態が大きなものである事を見越した上で連絡を入れた。


「もしもし、夜分すまないね。

事情や状況が急遽変わってしまってね・・・


犯人は見付かった。

だが、身辺が油断出来ない所があって・・・




あぁ、犯人以外の仲間や場合に依っては

組織ぐるみとも捉えられそうなんだ。


これ以上キミを巻き込む危険性も考慮して・・・」


犯人については大方の情報は拾えた。

だが、その周辺の人間関係や構成がほとんど見えて来ない。

瑠香君にはこの様に伝えた。

念には念を・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

デート当日


「雪人君。お待たせ、待った?」


そう言って私はお洒落をして待ち合わせ場所に立った。

作戦としては、クラスで私達がデートする事を出来る限り広く知ってもらうと言うもの。


そして、ストーカーに近い精神状態を持っている犯人ならばきっと近づいて来るだろうと・・・


「おはよ、一之瀬さん。今来た所だから気にしないで?って凄く綺麗だね・・・

黒基調なんて新鮮だよ。雑誌にも無かったよね?それに魅惑的なスタイルもきちんとアピール出来ていてとっても素敵だよ」


雪人君は私の小さな変化にも気付いてくれる。

それに、リードも上手だった。


「ここは・・・はい。座って?」


「ありがとう。こんなお洒落なお店この近隣にあったんだね」


お店も色々とお洒落な所ばかりで流石京極家ご子息と言った印象だった。


「ここはね。小さい頃よく姉さんと連れて来てくれたお店なんだ。

味も良くて俺も結構気に入ってるんだ」


梨美夜ちゃんと一緒に連れられて・・・

でも、大切な思い出のお店だろうに私なんかを連れて来ても良かったのかな?


瞬く間に時間が過ぎて行って私も楽しいと思ってしまった。


「もう夜だね。今日はありがとう。凄く楽しかったよ♪」


「あぁ・・・俺も凄く楽しかった♪と言いたい所だけど・・・もし美亜ちゃんが良ければなんだけど・・・もう一カ所行ってみたい所があって・・・」


もう一カ所?一体何処だろう?


「う、うん。いいよ」


私は雪人君の行きたいと言っていた所に一緒に向かう事にした。


「ここだよ」


「・・・・・・ってここら、ラブホテル?」


「ね?いいでしょ。折角だからもう少し・・・ね?」


優しく肩を抱き寄せ私は雪人君にラブホテルの中へ連れられた・・・


「ま、待て!本当にラブホテルに入って行ったぞ!」


「はぁはぁ・・・た、鷹矢。心配だから尾行するのは分かるけど・・・ちょっと待って・・・私、ヒールだからあまり走れない・・・」


「ごめん、莉子!とりあえず俺達も中に・・・」


「えっ!?・・・そ、そんな所までついて行くのっ!?」


俺達は、菜々子と雪人が入った部屋の隣の部屋を受付に頼み込んで入れてもらう事に成功した。


「ちょっ、そんな所から危ないよ!落ちちゃうよ!?」


辛うじて隣の部屋にはベランダがある。

俺達の部屋には無いが、小窓があり、そこから無理矢理潜入する事が出来た。


「流石にカーテン閉まってて見えな・・・あ、隙間があるぞ!?」


莉子が心配そうに小窓から俺の様子を伺っている。


(大丈夫、OKだ)


それを合図で莉子へ送る。


「鷹矢・・・あまり心配させないでよ!」


小声で俺に何かを告げる莉子・・・


「よし・・・どれどれ?何をしているんだろう?・・・」


雪人は早速部屋へ入ると服を脱ぎ始めた。


「雪人・・・本気で菜々子に!?」


そして、菜々子もゆっくりと服を脱ぎ始めた。


(止めろ!・・・本気で・・・お前ら・・・)


そして、上半身裸の雪人と、上半身ブラだけになった菜々子が抱きしめ合った。


「クソォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!」


その後の記憶は無い。


♪バリィィィィィィン!!!


「雪人ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~!!!」


「た、鷹矢!?・・・ちょっ、こんな所に・・・」


部屋の外はベランダだったみたいで突然ガラスが割れる大きな音がした瞬間、カーテンの向こうからお義兄ちゃんが飛び込んで来た。


「雪人・・・お前がそんなクズだったとは思わなかったぞ・・・」


目が座っている。

お義兄ちゃんがこうなってしまうと歯止めがきかなくなってしまう。


「お前だけはそんな事絶対にしない、親友だと思っていた。だが・・・

これで分かった。俺はテメェを絶対に許さない!」


そう言うと一気に雪人君へ殴り掛かろうとした。

危ないっ!そう思って私は・・・


「くっ・・・や、止めてお義兄ちゃん!!!」


2人の間に割って入った!


「・・・・・・・・っ!?・・・・・・」


鷹矢の腕が止まった。何とか間に合った?・・・


バタンッ!!!


「お、お義兄ちゃん!?お義兄ちゃぁぁぁ~ん!!」


雪人君への攻撃は何とか止める事が出来た。

でも、お義兄ちゃんは気を失ってしまった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「多分、鷹矢達は今日デートって言っていたから隣の部屋に白川さんがいるはずだ!」


「やっぱり、あの時話を聞いて・・・」


「うん。そうだろうね。すまないが、俺は隣の部屋へ行って白川さんに事情を説明するよ。鷹矢が起きたらいけないだろうから菜々子ちゃんはここにいてくれないかい?一応、この作戦は他言無用だから俺は莉子ちゃんを送って行く事にするよ。何かあったら電話をくれるかな?」


「う、うん・・・色々と・・・ごめんなさい」


「いいや。少し荒療治的な作戦だったからね。姉さんには少し強めに言っておく事にするよ。ただ、もし今回犯人がこの状況を見ていたとすれば・・・少し気掛かりにはなって来るが」


雪人君は、そう言うと隣の部屋の莉子ちゃんへ事情を説明しに行った。


「たか・・・や?ごめんなさい・・・私、本当に・・・ごめんなさい・・・」


私は、泣いた。鷹矢を一度裏切ってしまったのにまたしても裏切る様な真似をしてしまった。

もう、いっその事鷹矢の事は諦めて莉子ちゃんに鷹矢を愛してもらう方が鷹矢にとってもいいのかもしれない。


「やだ・・・そんなの絶対に・・・嫌っ!!!」


「・・・・・ん?・・・あれ?俺・・・なっ、菜々子!何で!?俺また・・・おかしくなって?」


「かや・・・鷹矢、ごめんなさい。本当にごめんなさい」


膝枕をしてくれていた菜々子は俺が目を覚ますとただひたすら泣きながら謝り倒して来た。


「お、おぃ、何で泣きながら謝ってんだよ?訳が分からんぞ?」


しばらくして、少し落ち着いた頃に菜々子は俺に洗いざらい話をしてくれた。


「そっか・・・じゃぁ、菜々子と会長の作戦で犯人をおびき寄せる為に雪人に協力させたと・・・」


「うん・・・私があの時お願いしますって言ったから・・・それで・・・」


「ま、まぁ・・・状況から言って俺は雪人を殴らずに済んだんだよな?だったら・・・良かった」


俺が本気でブチ切れて雪人を殴り飛ばしてしまっていたら恐らくこんなに落ち着いたムードではいられないはずだ。


「ご、ごめんね?」


「もういいよ。致し方ないって事くらい今の話で分かったから」


「ううん・・・そうじゃないの・・・」


「そうじゃ・・・ない?・・・はぁ?どう言う事だ?」


と言った瞬間、膝枕で上を向いた状態の俺の後頭部が随分と湿り気を帯び始めていた・・・


「ま、まさか?・・・アレ・・・なのか?」


「う・・・ん。ここの所ずっと鷹矢と触れ合っていなかったから・・・私・・・もう・・・」


また・・・鷹矢を頼ってしまった。

梨美夜ちゃんに・・・梨美夜様と奴隷契約を結んだはずなのに・・・


「お願い♡」


ここがラブホで良かったのか悪かったのか、この後、菜々子の発情状態を鎮めるのに俺はてんてこ舞いだった・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「鷹矢。本当にすまなかった」


「いいや、菜々子から事情は聞いたよ。お前自身もある意味被害者だったんじゃないのか?梨美夜さんと菜々子のおかげで・・・」


「あぁ・・・流石に俺も姉さんを叱ったよ。もう少し考えた作戦を遂行して欲しいって」


「本当に何かその・・・悪かったな。俺のせいで・・・」


「そんな事ないよ。鷹矢はいつだって菜々子ちゃんを大切に想っている。

それで少しでも助けてあげられないか四苦八苦しているじゃないか。

今回はこんな形だったけれど、俺も姉さんと知恵を絞りながら犯人を特定させる様に努力するよ」


本当にありがたい。でも、今回だけは辛いと言うか心臓に悪い作戦だとは感じた。

梨美夜さんも悪気は無かったんだろうが少し趣味が悪いな・・・


菜々子、本当に大丈夫なのか?

犯人が下手に動いて来たらどうするつもりだったんだ!?


「はい。申し訳ございませんでした。ですが、ご主人様のお優しさに私、今回は感銘を受けています。はい、お任せ下さい。鷹矢の心は私が鷲掴みにして・・・


はい、既に湿り気を帯びています。ご主人様のご寛大なご対応で菜々子の心と体は火照り始めています。

どうか・・・菜々子のこの様な淫らな行いで気持ち良くなって・・・下さい」


どうやら、今回の件は大目に見ると言う話になった。

私は、心の底から安堵した。


事を終えて、私はまた鷹矢の部屋へと侵入する。


「これはこれは・・・随分と逞しくなられて・・・」


「いっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!!日本人形が寝床にぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~っ!!!」


そうだった・・・きょうは野々花ちゃんもいるんだった。

それにしても先を越された感!


「野々花ちゃん!ダメだよね?男子の部屋に夜這いに行っちゃ!ほら戻るよ?野々花ちゃんは私の部屋で一緒に寝るの!」


「あら?私・・・お花を摘みに向かったはずでしたが戻る部屋を間違えてしまったみたいです。鷹矢様、大変粗相を・・・」


「いや、あんた完全に目を開けてたよね?言葉もしっかりと喋ってたし!」


「野々花ちゃぁぁぁぁぁぁ~ん!?」


「あ、あれ?・・・あ、わ、わたくし、菜々子さんのお部屋へもどっ、もどっ、戻らせて頂き・・・ますね?そ、それではご機嫌よぅ~」


いつもの野々花の雰囲気じゃなかったぞ!?

菜々子があんなにキレるなんて初めて見たかもしれない・・・


「菜々子さんは、鷹矢様の事を随分と執心なご様子で」


「当たり前でしょう!?それより、野々花ちゃんはお義兄ちゃんの事今でも!?」


「さぁ・・・どうでしょうか?私は、もうこの生活が馴染んでおります故、自分自身の気持ちが見えなくなってしまっているのです」


「野々花ちゃん・・・実は策士だよね?そうやってとぼけちゃって鷹矢の部屋で夜這いとか・・・」


「鷹矢様のハーレム世界・・・それもまた面白い展開かと・・・」


「いいや、絶対に策士だ!野々花ちゃん、次あんな所見たら絶対に許さないんだからっ!」


「そうは言ってもお優しい菜々子さんはまた私をお許し下さるのです」


「許しません!絶対に!!」


「うふふ♪本当に菜々子さんは優しさがにじみ出ているおかた・・・私も、殿方であれば菜々子さんに・・・」


「いっ、嫌!迫らないで!本当に早く寝なきゃ明日学校だからっ!」


「うふふふふ・・・うふふふふふふふふ♪」


「そっ、その笑みと上品さは出てるんだけど微妙に怖い笑い声止めてぇぇぇ~っ!!!」






END

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