N→T R→(R)・・・11 編入生の正体!?
今日もごく普通の日常だ。
「・・・・・・・・・」
何事も無い。非常に平和な日常。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
と、思いたい。
「あのな鉄平。そう言う所だぞ?ひとが平和な日常を送りたいと思っている所を水を差す。空気が読めない人間の一番ダメな部分だ!」
先程から宇治鉄平なるKYは、俺の真横から顔を覗き込む素振りを止めようとはしない。
「いや、あのな?この前のあの有名人の男子生徒に次いで今日また編入生がこの学校に入って来るんだってよ。お前、何かそう言う運みたいなもん持ってるのかなって思ってさ」
「人を「何か憑りついているんじゃないの?」みたいな顔して聞いて来るなっつうの!俺が発端なワケねぇだろうが!」
本当、そう言う所だぞ鉄平よ・・・
「まぁ、けど今回は1学年上みたいだってさあんま俺達には関係無いみたいだけどさ」
なら、尚更俺には無関係じゃねぇかよ!
「鷹矢?何か知ってる?」
隣にいた莉子も尋ねて来た。
「いや、今の会話の何処をどう拾ったら俺が今日来る編入生の情報を知っている結論に結びつく?」
「だよね♪私達も宇治君に聞いて初めて知ったから」
だよね~♪俺達も知らない情報をどうしていつもこいつは知り得ているのだろうか?
「何だか嫌な予感がする!」
おぉ~っと。今度は斜め前から一之瀬美亜(本名:七条菜々子)飛び入り参加だぁ~!
「いや、それは俺も薄々・・・」
「七条君、貴方何か良からぬ事を企んでいたりする?」
七条君・・・
これまた他人行儀な・・・ってそれもそうなんだけどな?
かく言う君もれっきとした「七条」なんだけどな?
「良からぬ事?ちょっと人聞き悪いな?それはどう言う意味で言っているのかな?
一之瀬さん?」
俺は眉間をピクピクさせながら無理矢理笑顔を浮かべて目の前の一之瀬さんに尋ねた。
「編入生って、女子みたいだから・・・鼻の下伸ばしているんじゃないかなって思って?」
何だよ。今聞いた情報からしか推測できんが、女子なのか?
だとして、学年上で俺達と接点無いだろう。それで何故俺が関係あるみたいな話になってんだよ?
「一之瀬・・・さん、君は編入生が誰かって知っているのかな?」
両手を机に置いて半分立ち上がって俺は言った。
「知ってるけど教えてあげない」
菜々子は言った。
「はぁ?・・・ま、まぁいい。別に興味無いし」
俺は静かに自分の席に再び座る。
それにしても、今日の菜々子のこの態度は何なんだ?
まるで編入生が自分と関わりがあって誰なのか明確に分かっている様な態度じゃないか!
「それにしても、外は大雨ね?天気予報晴れだって言っていたのにね」
莉子が外を仰ぐと大雨が降っていた。
「一先ず、登校途中に降らなくて本当に良かったよな。帰りが心配だが・・・」
予報が予報なだけに、傘を持って来る事無く普通に登校して来たから帰りに土砂降りだと何かと厄介だよな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「と言う事で、お手上げ状態の放課後になった訳ですが・・・」
「傘の予備もまさかの大雨状態と言う事で皆持って帰ったと言う結末だ」
「こんなおかしな降り方初めてだもんね。誰も予想しないよね」
グラウンドを見渡し雨宿り状態の俺達・・・
「昼間は一旦止んだのにまた降り始めるとか反則だよな」
鉄平もしょぼくれた様子で愚痴を零す。
「俺ん家から傘取って来るよ。走ればそれ程遠い距離じゃないから」
俺は意を決して傘を取りに帰る事を決意した。
メンバー分の本数なら家にあるし、下手に濡れてコンビニで買う・・・
いや、恐らくこの予期せぬ大雨ならコンビニに行っても売り切れているだろうし!
「ダメ!七条君が雨に濡れちゃう!」
菜々子の少し強張った声だ。
「いや、学校にも予備の傘が無い。このまま止む気配すらない。
だとすれば誰かが犠牲にならなきゃ帰れないだろ?」
「じゃぁ、私も連れて行って。私も一緒に持って来るから」
「それはダメだ!・・・と言うより犠牲になるのは1人で十分だろ?
一之瀬さんはグラビアアイドルだし下手に風邪でも引いたら仕事に差し支えるだろ?俺は体は丈夫だから気にするな」
笑顔で俺は走って帰った。
「七条・・・君」
菜々子がどう言う表情を浮かべて俺を見つめていたのか背を向けていたので分からなかった。
ただ、その弱々しくも何処か芯の強い響き渡った声を俺は聞き逃さなかった。
この大雨の中、何故か雨音に打ち消される事無く・・・
「それにしても走り辛いくらいに降ってるな・・・」
ようやく家に到着して急いで傘を人数分取って急いで学校へと戻る。
「お待たせ!これで全員大丈夫だな。会長も大丈夫か?」
「あぁ、すまない。姉さんは俺と一緒に帰るから1本で十分だ。それより鷹矢が凄いびしょ濡れだけれど、着替えは?」
「それ程寒くないし大丈夫だ。それより早く帰ろう」
俺は全員分の傘を渡すと帰る様促した。
「私、七条君の傘に入るよ」
一之瀬美亜は、そう言うと大人しく俺の側へ立った。
「いや、それはマズイだろ!?同じ所に住んでいるって知ってるの・・・」
「大丈夫。近くに住んでいるって言う事にすればいいから」
「いやいやいや、1本傘余るだろ!?」
「京極君。はい、これ。足りないんでしょ?」
「でも・・・」
菜々子はアイコンタクトで雪人に合図を送る。
それを察した雪人は菜々子の持つ傘を受け取る。
「ヒューヒュー♪一之瀬さんと雪人お熱いねぇ~♪
何だかお互い分かっているみたいな展開じゃん♪」
ここでまたKY君の登場です。
「ちょっ!別にそう言うんじゃないから!
私、七条君の家の近くなんだ。だから途中まで一緒にって思っただけ!
それに、編入生の子が必要なんじゃないかって思ったから・・・」
あくまで一之瀬美亜としての態度で鉄平に説明する。
「あぁ、そう言う事。分かった分かった・・・それで、進展聞かせろよな雪人♪」
全然分かってねぇ~・・・
こいつ、本当に何者なんだ?
「あんま、近寄るなよ?」
「莉子ちゃんがいるから?・・・それとも私だと嫌?」
反対側には莉子がいる。
確かにそれも一理ある。あるのだが・・・
「こんなビショビショの状態の俺にくっつくと濡れるだろう!」
「あ、そっち♪」
今日初めての笑顔だった。
何故だか俺は鼓動が早くなった。
「コホンッ!菜々・・・美亜ちゃん?私の所へ入ったらどうかな?
私、濡れていないから。それに女の子同士だから安心だし」
そう言うと菜々子を無理矢理自分の傘の方へ入れようとする莉子。
「やっ!・・・い、いいよ。どうせ同じ家に帰るんだし・・・」
珍しく菜々子は激しく抵抗して見せる。
「何よ!・・・まぁいいわ。じゃぁ、私こっちだしまた明日ね。鷹矢、襲わない様にね!」
ムスッとした表情で莉子は捨て台詞を吐いて帰って行った。
「あんまり騒ぎ立てるなよ?あくまでお前は一之瀬美亜で通っているんだろ?
周りに誰かいたらマズイだろ!」
「早くお風呂入りなよ!風邪引いちゃうよ?」
話をそらされてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ~・・・温かい。流石にあの大雨だと身体も冷えるよなぁ~」
強がりと言うのだろうか。
皆もいる手前、中々本音と言うものも出しにくいのも事実。
♪コンコンコン
ノックの音?・・・ってまさかこの展開!?
「流石にもう慣れたよね?菜々子ちゃんが背中流しに参りましたぁ~♡」
「出て行ってくれ!もう済んだ」
「えっ!?・・・もう済んだの?ソロ活動?」
「どうしても下ネタに結び付かせたい様子だな!体は先に洗い流してもう出るって言ってんだ!」
「まぁまぁまぁ、あれだけずぶ濡れ状態だったら中々体も温まらないだろうから私が一緒に入って抱きしめ合ってもっともっと温かくしてあげるね♡」
余計なお世話である。
「さぁて、出るとしようか・・・な・・・」
何だ?急に眩暈が・・・
バタンッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「何しているの?」
「お城を建てているんだ」
「私も一緒に作るぅ~」
「いいよ。一緒に作ろう」
えぇっと・・・これは確か・・・
俺と莉子が出逢った頃の記憶?・・・
「あ、ここに窓作ろうよ。きっと遠くまで見えて素敵だよ♪」
「いいね。じゃぁ、僕はここに・・・」
ポツ・・・ポツポツポツ・・・ザーーーーーーーー
「雨だ!早くあそこに入ろう」
そうだった。公園で一人で遊んでいたら莉子が現れて一緒に砂でお城を作っていると急に大雨が降って来て急いで近くのドーム式の滑り台の下に隠れたんだっけ。
「中々止まないね」
「大丈夫。止まない雨なんかないよ。きっといつかは止むから。
だから・・・安心してね」
莉子・・・あの時も俺を慰めようとしてくれていた・・・
でも、何か違和感がある。
「ン・・・はっ!俺、寝てた?」
「こ~ら!病人は大人しく膝の上で眠っていなさい」
「え?・・・なっ、菜々子!?俺、まさか!?」
「全く。こうなる事を予想したから心配してたのに、本当にそうなっちゃうなんてね。鷹矢ってば、私の手の平で踊らされているんじゃない?」
「やっぱ俺・・・熱が!?」
「もう、無理しないって約束でしょ!?忘れちゃったの?」
「え?・・・あ、あぁ・・・そんな約束してたっけか・・・すまない。頭が上手く働かないから・・・」
温かくて柔らかい部分に頭を乗せたまま俺はまた深い眠りに就いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふぁぁぁぁ~・・・よく寝た。ってそうだった、俺、菜々子の膝の上で・・・って菜々子?寝てる・・・のか」
俺の顔を見ながら寝ていたんだろうな。
綺麗で整った顔立ちで、俺の顔の上で静かに寝息を立てて眠った少女は
俺の心臓を鷲掴みにしている様に思えて俺は一気に息が苦しくなる。
「・・・だい・・・じょうぶ・・・止まない・・・雨は・・・ないよ・・・」
「菜々子!?そのセリフ!?・・・どうして?」
いや、偶然だろう。でも、菜々子がこのセリフを寝言でも言うなんて・・・
翌日になっても俺は熱が下がらず学校を休む事にした。
「莉子・・・すまない。熱が下がらなくて休むよ」
「もしかして、傘取りに帰っちゃったからそれで!?・・・分かった。先生には言っておくからゆっくり休んで!帰りにお見舞いに行くから!」
電話を掛けて莉子に説明した。
一之瀬美亜が俺が前日風邪を引いて熱が下がらないと言う事を知っている事にしてはならないからな。
「と言う事で、俺の事は気にするな!お前は授業に・・・一之瀬美亜として今日も頑張って出席して来い!」
「えぇ~!私も昨日の大雨で鷹矢と一緒にくっついて帰っちゃったから風邪を引いて熱が下がらないんですぅ~って言っちゃおうと思ったのにぃ~!」
「えぇ~!俺がグラビアアイドルと一つ傘の下で濡らして風邪を引かせちゃったんですぅ~って言われたらとんでもねぇ誤解が生じて俺惨敗になる図式が容易に浮かぶのだが?」
「鷹矢ってば~♪濡らしてとかすっごくエッチになったよね♡いいよ。本当に濡らしちゃう?私、鷹矢になら直ぐ濡れちゃうから♡」
「訂正!濡らしたと言う所を大訂正!俺が雨に掛かってそこに触れてしまって風邪を引かせたに大訂正だ!」
「それじゃ、嘘の証言になっちゃうじゃん!そこは、最初の濡れてでいいでしょ?実際濡れちゃってた訳だし」
変な所で拘る菜々子さん・・・
「それはそうと、遅刻するぞ?昨日の雨は異常だったな。きょうは嵐の後の様な快晴だから晴れ晴れしい気分で行って来い!」
「んもう~♪そんなに溜まっていたの?私を何処にイカせたいの?」
「もういいからさっさと学校に出発しろ!」
「分かったわよ・・・じゃぁ、大人しくソロ活動しながら待っててね?」
「五月蠅い!下ネタ美少女は嫌われるぞ!」
「いいよ。私、鷹矢にだけ好かれていたら後は誰に嫌われても・・・それが全世界の全員だったとしてもいい!」
「おまっ・・・」
「止まない雨は無いから。こうして綺麗に晴れる日は必ず来るから・・・」
(そうか・・・俺、ひょっとしてとんでもない誤解をしていたんじゃないのか?)
結局2日間学校を休む事になってしまった俺は・・・
「ヤバイ・・・流石に数学分かんねぇ・・・」
「七条君、どうかしたの?」
白々しく一之瀬美亜が尋ねて来る。
「えぇっと・・・何でも無い」
ニヘラ顔で絡んで来る一之瀬・・・
「残念だよね~。昨日から白川さん撮影で出ちゃったもんね?
大変な状況の最中だったのにね~?私が「七条君」の「彼女」・・・だったら仕事休んででも看病&お世話したのになぁ~」
こいつ、分かっててこんな事言うのか!?
「莉子は・・・白川は凄く心配してくれていた!電話も何度もくれたし、自宅にも来てくれた!仕事も本当は休むつもりだったんだ。でも俺が大切な仕事だから俺は大丈夫だからって言って無理矢理行ってもらったんだよ!」
「そっか。ごめんごめん。じゃぁ、白川さんの代わりに私が七条君が休んでいた時の分教えてあげるから、きょう君の家に寄せてよ」
嘘だろ!?皆が聞こえている所で何言ってんだ!
「おっ!?美亜ちゃん、まさかの雪人を振って今度は莉子ちゃんの彼氏に手を!?」
「ちょっと、KY!いい加減にしろよ!お前が入って来ると本当に話が厄介になるんだよ!」
しまった!俺、心の声が!?
「すんません・・・でした」
あれ!?効果アリ?いや、一之瀬の眼圧が効いたみたいだ!!
それにしてもスッゲー視線だな!これ、マゾとやらには有効な手段なのか?
「と言う事だから放課後・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「何が・・・「と言う事だから」だよ。クールぶりやがって!!」
「だって、そう言うキャラ付けで接しているんだから仕方ないでしょ?
それより、きょうはじ~っくり、ね~っとり♡教えてあ♡げ♡る」
いや、「じっくり教えてあげる」でいいだろ?
その後は何だよ!?とそこをツッコんでしまうとまた話がややこしくなるから心に留めておく事にしよう。
「さぁて、しっかりと覚えられたらご褒美も待ってるから頑張ろうね?」
何だか嫌な予感がするのだが!?
「鷹矢は若干数学が弱いからこの辺りを重点的にね。他は大丈夫そうだから♪」
手際良く準備を整える菜々子・・・
「ちょっと気になっている事があるんだが・・・何故、今日の菜々子は一之瀬スタイルなんだ?」
雰囲気そのものが既に一之瀬美亜だと分かる。
長年一緒に暮らして来た俺には分かる!
「ほら、無駄口叩かない。ここの問いからね。ほら、このXに代入して・・・」
いつもの菜々子は柔らかい雰囲気なのだが、一之瀬は大人の色っぽさが強く、学校で俺は常にその雰囲気に耐えていたのだ!
「聞いてる?」
髪の毛を耳に掛けて俺の横顔を覗き込む。
「あ、あぁ。Xだな」
「そうだよ。XとYを使うの。何だか男女みたいだよね?XとY・・・」
一々色っぽい言い方するなよ!
「それで、数学にはとっておきがあって・・・この数字を・・・そ♡う♡にゅ♡う・・・するの」
明かだろう!これエロ入れようと必死だろ!?
「いい?この数字をここに・・・そ♡う♡にゅ♡う・・・するの」
「え、あ・・・えぇっと・・・」
「どうしたの?まだ分からない?例えば・・・七条君のコレを・・・私のココに・・・挿入するの。分かるかな?七条君、顔が赤いよ?熱あるんじゃないの?風邪ぶり返しちゃった?」
「おまっ!・・・それ、別の話に変わってるだろ・・・」
「そう?同じ意味だと思うけどな?XとY・・・男女が挿入する事って・・・
ねぇ?どうして大きくさせてるの?さっきからビクビク脈打たせちゃって?何期待しているの?」
「な、何言って!俺はそんなんじゃ!」
ダメだ。今日の菜々子はいつもの菜々子とは違う!
一之瀬美亜、凄まじい破壊力だ!
「じゃぁ、やってみようか?挿♡入」
「お前!いっ、いい加減に!!」
「ほら、正解♪1を挿入すればいいんだよ!流石七条君頭もアソコも優等生ね♡」
「おぃ、今余計なひと言入れただろ!?」
「って事でぇ~♪ご褒美は本当の挿入♡」
「うるせぇぇぇぇ~!だから俺はお前とはしねぇんだよ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結局は下ネタなのな・・・
菜々子のヤツぅぅぅ!!!
「えぇっと、七条鷹矢君はここかな?」
「あ、貴女まさか!太秦 瑠香さんでは!?」
「え!?私の事知ってるの?嬉しい」
「はい、俺スゲーファンなんです。さ、サイン貰っても!?」
「え!?あ、うんいいわよ。それで・・・七条君は?」
「あ、あそこです!お~い七条~。お客様だぞ~!あ、ありがとうございます。家宝にします!」
呼ばれたのは俺なのだが・・・
「あ、太秦さん!?何でうちの学校に!?」
流石に驚きを隠せずにいた俺は屋上で話を聞く事に・・・
「え!?瑠香さんが会長と・・・」
「えぇ、隠していてごめんなさい。色々と私の方でも調べていたんだけれど残念ながら向こうの方ではこれ以上詳細が分からない状態だったからそれで・・・」
「会長に話をしてこっちへやって来たと言う事ですか」
「梨美夜様・・・梨美夜さんはあなた達の事を本気で心配しているわ」
今、梨美夜様って言わなかったか!?
え?会長って一体何者なんだ?
「それでわざわざ・・・その、お気持ち凄く感謝します。
俺も、どうして行けばいいのか正直分からない事が多過ぎて・・・
菜々子・・・絶対に本当の事を俺に言わないんです」
「それはね・・・恐らく口止めされているからだと思う。
菜々子ちゃんは捨てられたって言っていたわよね?」
瑠香さんは、以前会った時とは雰囲気が全く違う別人みたいだった。
淡々と話を進めて行く内に、一つの疑問が解決した。
「捨てられてはいないと言う事よ」
「え!?・・・じゃぁ、菜々子は今も?」
「きっと・・・鎖に繋がれた鳥の様な状態じゃないかしら」
「だとすれば、俺はどうすれば」
俺は両手の拳を握りしめ唇を噛み締めた。
「今は・・・今は流れに身を任せた方がいいと思うわ。
下手に動いて相手を刺激してしまえば菜々子ちゃんだけじゃなくて貴方にも何かしらの危害が加わる恐れがある」
「・・・・・・・何とか・・・何とかしたい」
「安心しなさい。今の状況に身を委ねていれば下手な事は起きないはずよ。
私達も懸命に動くから、あなた達は当事者同士。それに貴方が動かなければいけない時になればその時には相手が不利になる様な状況になっているはずよ。
その時に、これまで受け続けて来た苦しみを相手にぶつけてやるといいわ」
今は、悔しいけれど瑠香さんが言っている通りにこの流れを受け入れるしかない・・・
「と言う事だから、たった今から貴方は私の恋人よ!」
「は?・・・・・・」
「なんて、冗談よ冗談!」
いや、今目が真剣だった!
「まぁ、それ程シビヤに考え続ける必要は無いわ。貴方は貴方が思っている以上に周りには味方がいるのだかから!安心して真実を見出して行けばいいの」
何故だか凄く安心出来た。
こう言う言われ方をすると本当に・・・
「ありがとうございます。どうか、ご協力を宜しくお願いします。
俺だけじゃ絶対に真実には辿り着けないと思うんです。
こうして、誰かが協力してくれるから俺も頑張れる気がするんです」
「貴方・・・好き♡」
「へ?・・・」
「いいえ、貴方のその1つをしっかりと見据えようとする瞳。凄く綺麗よ。
梨美夜様が執心されるのも伺えるわ・・・」
「え?何か言いましたか?」
「いいえ。それより、貴方は童貞かしら?」
「・・・・・はひ?」
意味不明な質問が飛んで来た様な・・・
「女性経験は?」
「あ、ある訳ないでしょ!」
「匂うわね。貴方・・・本当は経験済みね!」
「いや、何を言っているんですか!?俺はれっきとした・・・」
「言い切れる?」
「は?・・・言い切れるも何も実際に経験した経緯が無いですから」
「例えば・・・寝込みを襲われたとか、そう言う事も無いの?」
「いや、絶対無いとは言い切れないかもしれませんが・・・それでも、
流石にそんな流れになると俺も目が覚めるでしょうし・・・」
この人は一体何が言いたいんだ?頭がおかしい?
でも、梨美夜さんと関わりがある人なんだよな?だったら・・・
「その状態だと上手くやったみたいね」
「はぁ?本当にさっきから貴女は何を言っているんですか!?」
「残念・・・いいえ、残念では無いとも捉えられるかしら?
貴方、寝ている間に脱童貞しているのよ!」
「俺が・・・寝ている間に脱・・・えっ!?・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~っ!!!!!!!!?」
嘘だろ!?寝ている間って言ってたよな?だとすれば、俺の初めての相手は・・・
「菜々子ちゃん、上手くやったわね!」
「嘘でしょぉぉぉ~っ!?・・・な、ななななな、ななっ、なな」
「そんなに衝撃的だったの?舌が完全にフリーズしているじゃない」
「だ、だだだだって!そんな事実信じられるはずないでしょ!?
どうして、俺、菜々子に寝込み襲われて目が覚めないんですか!?俺、莉子と言う彼女がいるんですよ!?それなのに何故!?・・・」
「オンナノコは処女膜あるから初めてじゃない場合、嘘を吐いている事がバレるけれど、オトコノコの場合初めてであっても初めてじゃなかったにしてもバレる事は無いから安心しなさい!」
「いやいやいや!言っている事がおかしいですから!初めてとか初めてじゃないとかそう言う事はどうだっていいんですよ!問題は、俺には彼女がいるのにどうして元カノに童貞捧げちゃってるのかと言う所なんですよ!」
意味が分からん・・・
菜々子が本当に俺の初めてを?
「貴方は、強烈な睡眠薬を盛られて眠っている所でNちゃんがインサート・・・
もうそれはそれは最愛のオトコノコのアレを体内にごあんな~い♡
初めてなのに痛いはずなのに腰が止まらなくて激しい腰使いでヴァージン喪失♡
初めてが最愛の彼で本当に良かった~。私のロストヴァージンが最愛のオトコノコで本当に良かったぁ~♡初めてを大好きな人(鷹矢)に捧げられて心の底から幸せぇぇぇ~♡・・・と七条菜々子氏は申しておりました」
「いや、人伝じゃねぇかよ!」
「まぁ、一つだけイって・・・言っておくべき事は」
「今、言い直しましたよね?貴女も下ネタですか?貴女も下ネタ女王狙っているのですか?この作品の女性登場人物は全員下ネタ女王の座を狙っているのですか?」
「まぁ、菜々子ちゃんは処女だった訳で、初めてを鷹矢君、貴方に捧げた事!
これは、貴方としては安心していい事だと思うわ。
もしも、菜々子ちゃんを寝取ったクズ野郎のヘタレチ〇ポが大切な元彼女の処女膜を突き破ってしまったとなれば貴方はもっと耐えられなくなっていたんじゃないの?」
確かに、そうではないと言う事実があったとすれば、それが俺だったと言う事だとすれば・・・
ただ、俺には莉子と言う彼女がいる。
それを同意無しのまま俺は初めてを終えてしまったのだから・・・
「貴方は本当に優しいのね。けれど、これで一つの真実が解決したわね。
菜々子ちゃんは、女の子としての一番大切な部分は穢されていないと受け取れる。
それはつまり、純潔を捧げたのは貴方である事実に変わったと言う事・・・」
「はい。それは・・・確かに嬉しいと言うか安心はしましたが・・・
それにしても、菜々子はどうしてそこまで瑠香さんを?」
「いいえ、この話は梨美夜様に伺ったのよ!」
自信満々に決めポーズを見せ付けながら言うセリフじゃないよ。瑠香さん・・・
それにやっぱりこの人、梨美夜さんに何か特別な感情を抱いている?
「ありがとうございます。おかげで少し元気出ました。
俺はどうなってもいいです。けれど、菜々子は・・・菜々子だけは助け出したい!
きっと、菜々子は一人で苦しんで・・・苦しみ続けていると思うんです!」
誰が信用出来るか出来ないか・・・
最初はそう言う事が頭の中を過っていた。
でも、梨美夜さんとその関係者である瑠香さんは信じていいような気がした。
こんなに・・・
「こんなにアホっぽい人に悪い奴はいませんから」
しまった!思わず本音が・・・
「誰がアホですって!?本当、そう言う所が・・・素敵♡
もっと罵って?蔑んで~?」
いや、前言撤回。ホンモノのアホだこの人!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
京極家地下室にて
「と言う事で、鷹矢君には私の方から一部始終ご説明致しました」
「うん、失格」
「えっ!?ど、ど、どう言う事でしょうか?梨美夜様!?」
「はぁ~・・・それだと君が悪者みたいじゃないか」
「はて?私が悪者と申しますと?」
「馬鹿を演じて鷹矢君を安心させるのは良いけれど、菜々子君から詳細について聞かされた。それを彼に告げる事は彼女は望んじゃいなかった。
それなのにキミはどうして彼に告げてしまったんだい?」
「そ、それは・・・」
「そう言うナイーブな事はどういう状況だったとしても本人の口から直接告げる方がいい。それを捻じ曲げてまでも彼に・・・鷹矢君に告げてしまった。
無論、鷹矢君は驚きを隠せずにいたはずだ。
その様な信じ難い事実を告げて彼は直ぐに信じてくれたかい?」
「それは、確かに最初は驚いていましたが・・・」
「キミが考えたキミなりの上手く行く手段ではあったのだろうけれど、
今の鷹矢君にとっては、誰かを信じようとする気持ち・・・これが一番大切な事なんじゃないのかな?今のキミのしている事はそこが少し衰えてしまうだろう」
「も、申し訳ございません・・・私の配慮が至らぬばかりに・・・」
「そこへ股を拡げて座りたまえ」
「い、今ここで・・・でしょうか?」
「夕日に照らされて見栄えは抜群だろう?」
「は、はい・・・かしこまり・・・ました・・・」
「これは褒美だよ。辛い役目を引き受けてくれたキミに対しての・・・」
「り、梨美夜・・・さま♡」
「すまないね。私が直接動くと少々犯人の目に留まってしまうかもしれないから
犯人は・・・恐らくこの学園内にいる」
「は・・・い・・・私も、きっとそうだと思います」
「鞭がいいかい?それとも・・・大人の玩具で・・・褒美だからキミに選ばせてあげるとするよ」
「じゃ、じゃぁ・・・直接梨美夜様を感じたいので・・・」
「今宵は眠らせないよ♡」
「梨美夜・・・さま♡」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ん~・・・何だか悪寒がしたぞ?」
「鷹矢、それ風邪だよ!私が温めてあげるから一緒に寝よ?」
「いや、悪寒がした様な気がしただけで大丈夫だった!すまん、菜々子。普通に自分の部屋で寝てくれ!」
「えぇ~!?嘘吐いてるでしょ?本当は寒気がして震えてるんじゃない?
ほら、アソコだっていつもよりしょんぼり気味だもん!」
「いや、お前いつも俺のアソコ見てんのかよ!?どんだけ変態なんだよ!」
本当に、菜々子は俺の童貞を奪ったのか?
実感が湧かない。
こんな事本人に聞ける訳も無い!
「どうかしたの?いつもの覇気がないけど?」
「あ?い、いや・・・その・・・お前、寝取られたとか言って実際に男に・・・
その・・・」
やっぱそう言う事をダイレクトに尋ねるのはいけないのかな?
「私・・・処女だったよ」
「え!?・・・だった?」
「うん・・・やっぱあの人言ったんだ」
「え?・・・あの人って」
「話・・・したんでしょ?瑠香さんと」
「え、あ・・・ま、まぁ・・・」
「聞いたんでしょ?私が鷹矢にした事」
ある程度察しがついていたのか?
だとすれば・・・
「あ、あぁ。でも俺、実感が無くてだな。瑠香さんが言っていた事が真実なのかどうかが気になって・・・」
「だからだよ」
「え?何だ?」
「瑠香さん、この事は言わない方がいいんじゃないかって言ってくれた。
けれど、私は伝えてくれていいって言ったの。
私の口からじゃ多分・・・最後まで言えないと思うからって・・・」
「じゃぁ、お前がした事は本当に・・・」
「ごめんなさい。私、耐えられなかったから・・・
鷹矢に莉子ちゃんがいる事は知っていた。
鷹矢を・・・莉子ちゃんを裏切る行為だと言う事は分かってた。
でも・・・どうしても・・・どうしても抑えられなかったの」
菜々子は涙ながらに訴え掛けて来た。
「俺も・・・謝らなければいけない事があるんだ」
「え?・・・鷹矢が私に?」
「あの日、公園で砂遊びをしていた俺の所へあるひとりの少女が寄って来た」
「あ・・・・」
「俺は何故かその少女は莉子なんだって思っていた。でも・・・」
「・・・・・・・・・・!?」
「止まない雨は無い・・・今度は俺がキミにこの言葉を贈るよ」
「たか・・・や・・・鷹矢ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~」
泣きじゃくる菜々子。溢れて来る大粒の涙。
この涙もきっと止むんだと俺は信じる事にした。
「ごめんな。俺の中での大きな違和感・・・ひょっとすると俺が最初に出逢ったのは菜々子じゃなくて莉子なんじゃないかって思っていたんだ。
けれど、それは莉子じゃなくて菜々子だったんだって・・・
でもな、勘違いして欲しく無いんだ。出逢った順番が先であるとか後であるとかが肝心なんじゃない。その出逢った内容が重要なんだって。
あの時、雨が止まず泣き出しそうになってしまった俺に笑顔でこう言ってくれたんだ・・・止まない雨は無いんだよ。だから安心してね。大丈夫だから・・・
俺は、この時初めて恋と言うものをしたんだって後になって分かったんだ。
しばらく、この事は俺の心の奥の引き出しにしまわれていた。
お前がうちにやって来てからまた新たな思い出が作られて行ったんだ。
でも、ずっとこの気持ちは無くなった訳じゃなくて俺の心の奥にしまった状態だった。
結局、俺はお前と付き合う事になった。
でも、この少女との出逢いは無駄だった訳じゃない。
俺が苦しんだり、困った事があった時にもいつもその引き出しから出て来てくれた。
菜々子・・・本当にありがとな」
「うわぁぁぁぁぁぁ~ん・・・鷹矢ぁぁぁぁぁ~」
「もう一つ、謝りたい事がある。それは・・・
いくら俺に打ち明けられない真実が隠されていたとしても、
俺の今の現状を考えると、菜々子が俺の初めてを奪った事については
許していい事にはならない・・・
何度も言って来たけど俺には莉子と言う彼女がいる。
それだけは・・・許してやれない・・・」
「うん・・・ごめんなさい・・・本当に・・・本当にごめんなさい・・・」
「俺が叱るべき事はここまでだ。
ただ、お前が初めてを奪われていなかった事に対してだけは・・・
最低な奴だな俺・・・正直心の底から安堵した」
「う・・・ん・・・最低だよ・・・鷹矢も・・・私も・・・本当に・・・本当に最低だよ」
ようやく、少し泣き止みつつある菜々子と抱きしめ合いながら俺は優しく何度も・・・何度も頭を撫でた。
次第に泣き疲れてしまったのだろうか、菜々子は俺の腕の中で静かに寝息を立て始めた。
「菜々子・・・苦しいかもしれないけれど、もう少し頑張ってくれ。今はまだ俺は何も出来ない・・・でも、いつか必ずお前を・・・犯人を突き止める。だから・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おぃおぃおぃ!何でだよ!?あの大物の太秦瑠香さんが何故お前と知り合いになってんだよ!?俺を差し置いて!!」
「いやいやいや、待ってくれ。俺も何故瑠香さんが編入して来たのか分からん!」
上手く話を合わせる為、ある程度の嘘は必須だろう。
無論雪人は状況をしっかりと把握出来ているから安心だ。
「サイン頼めるか!?・・・せめて・・・せめて冥土の土産に瑠香様のサインを・・・」
「いやお前、どんだけグラドル知ってんだよ?それに、冥土ってこの間秋葉のメイドさんに思いっきりナンパしてたよな?メイドさん困っていただろ?」
「それはそれ、これはこれなんだよ!」
開き直りも早いなこいつ・・・
「私がどうかした?」
「えっ!?・・・あっ!?太秦瑠香さん!?えっ!?マジっすか?
丁度今瑠香さんにサインが欲しいんだってこいつに頼んでいた所でして・・・その・・・
サイン頂けますか?」
「いや、お前既にサイン色紙渡そうとしてんだろ?」
用意周到?・・・本当に図々しい奴だな・・・
「貴方、この間いなかったわね?いいわよ。私のサインで良ければ」
「はい!あ、あ、ありがとうございます。いつも雑誌見てます!鷹矢の知り合いだとか?・・・」
「えぇ、熱い仲よ?・・・って言っちゃまずかったかしら?」
「ちょっ!瑠香さん止めて下さい!こいつ本気にするし話拡散するし・・・本当に困りますからっ!」
若干KY気味2名本当に困ります・・・
「あ、ごめんね・・・今の嘘だからキミも信じないでね?」
「え?そうなんですか。面白い話が聞けそうだったのに・・・残念です。
じゃぁ、俺とそう言う関係に・・・」
「あ、鷹矢君?ちょっと案内して欲しい所があって・・・放課後頼めるかしら?」
「え?スルーっすか?それはそれで・・・いいかも♪」
やはり、俺のダチがマゾ過ぎる・・・と言うタイトルのラノベを書いてみてもいいかもな。
「まさか、編入生が太秦先輩だったなんてね・・・」
「あ、あぁ・・・また一段と凄い学校になりそうだよな?はは・・・」
「七条君、鼻の下が伸びてるわよ?七条君の好みのタイプは太秦先輩の様な人なの?莉子ちゃんがいるのに随分と浮気心満載なんだね?最低」
「だ、誰がそんな事!ひと言も言ってねぇだろ!それに、一之瀬には関係無いだろ!」
建前上では・・・
まぁ、最近の菜々子の様子を見ていてこれは俺に対する嫉妬だろうな。
正直、俺は太秦先輩は面白くて好きではあるのだが、特に恋心を抱く様な相手では無い。
色々と助けてくれる良い人と言った感じなのだ。
それにしても、彼女が梨美夜さんを呼ぶ時のあの様付け。
そしてうっとりとした表情は一体!?
むしろそっちの方が気になっているくらいだ。
「なるほど、ここが貴方達の愛の巣ってワケか」
「両親も本当なら一緒に暮らしていますから!妙な言い回ししないでくれますか?」
瑠香さんが自宅が知りたいと頼まれ案内する。
勿論、菜々子も知っているが一緒には行動出来ない為、瑠香さんと俺がが先に帰って案内した。
「ほほぅ、豪邸らしくししおどしもあるわね・・・これは素敵なお住まいで」
「結構なお手前でみたいな言い方しなくてもいいですよ」
「ふむふむ、盗聴器やらそう言う類は無さそうで安心したわ。ありがと。
一応、このまま安心していいみたい。少し私が思うに犯人は割とヌケている所が多いのか、思っていた程悪党でも無さそうね」
「どう言う事ですか?」
「裏で菜々子ちゃんを操っているとすれば、そう言う事は仕向けて命令したりするでしょう?自分が寝取った相手を元カレの所で動かすくらいだから・・・」
確かにそうだ。
自分から離れて色々と仕組む訳だからある程度の情報収取する為の手段を与えるだろう。
菜々子はそう言う事は勿論教えてはくれない。
だが、色々と命令されていたとしてそれを菜々子が拒み続けているとも考えられそうだ。
「いやぁ~、一度お邪魔したけれどやっぱり凄く広いご自宅ね。京極家も相当な広さだけれど・・・まぁ、前回お邪魔した時に調べたかったけれど、皆と一緒だったから出来なかったからね。本当に助かったわ。まぁ、年頃の男女二人で今は暮らしているみたいだし、間違いだけは起こさないでね?」
ウィンクで舌なめずりされてもな・・・
「既に起こされていますけどね!」
「やっと自覚が持てたのね!・・・って丁度ご本人がご帰宅みたいよ?」
後ろを向くと菜々子が帰って来た。
「お邪魔しているわね。ライバル会社の大人気グラドル様♪」
「はい。本当に邪魔になっています。私と鷹矢の愛の巣に泥棒猫でも入って来た気分です」
「あぁ~・・・だから私は鷹矢君を奪ったりはしないって言ってるでしょう?
確かに私の初恋の男の子に似ていると言う事実は事実だけれど、私は今身も心も梨美夜様の物だから!」
「いや、まぁ、俺も瑠香さんは面白い人だとは思うんだけど、この人と恋人になるかと聞かれれば・・・」
「なぁに?私じゃ不満って訳?こんなナイスバディーの優しくて美少女のお姉さんを邪剣に扱うつもり?」
「いや、結局貴女はどっちの味方なんですか!?」
「ははは、本当に面白いわね。まぁ、安心したわ。特におかしな装置とかそう言うものも付けられていないし」
「当たり前です!私はそんな事許しません!」
「けれど・・・盗聴器取り付けなければ鷹矢君に危害を及ぼすぞ・・・なんて言われたらどうするつもり?」
「それは・・・お願いしてそれだけは止めてもらう様に言います」
「と言う事は、実際にそう言う事実があったと言う訳ね」
「瑠香さん、ズルい・・・」
「鷹矢君。あまり大きな声では言えないから1度だけ言っておくわね。
犯人は・・・割とキミの近くに存在しているわ。
今の事実を聞いてどう思ったか分からないけれど、目に見えていない何かが菜々子ちゃんを束縛している事だけは頭に入れておいてね。じゃぁ、私は帰るから後は熱々のねっとりとした何かをお楽しみ下さい♡」
「いいからさっさと帰れっ!!!」
ほんの少しだけれど、真実が見えて来た様な気がする。
一先ず、この大きな家の中に怪しい装置などが一切無いと全てを案内していないはずなのに彼女はどうして探ったのか・・・
そして、梨美夜さんとの熱い関係とは一体!?
「次回、太秦瑠香の真相!乞うご期待!」
「えっ!?鷹矢?急にどうしたの!?」
END