日律帝國最後の反抗7
mitotayo
今回はなんとかすぐ書き終わりました。ここから頑張って投稿頻度を上げれたら良いなと思います。
〈十一章 マッツウェーク海戦 後編〉
マッツウェーク島沖約45km。日帝の爆撃機は直掩機の合間を縫って怜軍機動艦隊への接近に成功した。
「全機、急降下!空母を一隻も生かして帰すなぁ!!」
一ニ式艦爆で編成された爆撃機隊が機体を翻して急降下を始める。海上からは駆逐艦から航空母艦に至るまで全ての艦が対空砲の雨を降らせている。いや、嵐と言った方が良いだろうか。あらゆる方向に、あらゆる角度でがむしゃらに撃たれた対空砲はバラバラのタイミングで爆発する。が、そのほとんどは日帝機のはるか後方で爆発する。近接信管の時間設定を手動で行う為に、ズレが生じているのだ。機銃弾も、対空砲も全てを日帝機は避けていく。
「投下!!」
それぞれの機体のパイロットが一斉に叫んで五百キロ爆弾を投下する。海上では艦隊陣形は跡形もなく、怜軍艦艇は各々で回避行動をしている。投下された爆弾は艦艇が残した航跡や、回避中の艦艇の真横に落下する。まだ命中弾は無い。
「まだまだぁ!!」
怜軍機動艦隊が爆弾の回避に夢中になっている中、ニ一式艦攻が海面ギリギリで艦隊に接近する。対空砲火は艦隊直上から海上へと移って爆炎の壁を作り出す。しかし、対空砲や対空機銃ではすぐに対応できても、操艦ではそうはいかない。ニ一式艦攻から投下された魚雷は一直線に艦隊目掛けて進む。そして、一隻の空母から水柱が上がった。続けて同じ空母の甲板から火柱も上がる。どうやら爆弾も命中した様だ。
「とうだぁ!参ったかぁ!!」
「空母江戸の敵討ちじゃあ!!」
攻撃隊のパイロットはそれぞれ歓声を上げる。パイロットが喜んでいる間にも一隻の駆逐艦に魚雷が命中し、主砲が爆発した。
「打ち上げ主砲だぁ!」
「やってやったぞぉ!!」
また攻撃隊から歓声が上がる。しかし喜んでいるのも束の間、ニ一式艦攻の電信に一つの通信が入った。
「潜水艦、甲11より報告!敵機を発見!敵機動艦隊からの二次攻撃隊の模様!」
「よぉし、艦隊直掩機を迎撃に向かわせろ!全艦、対空戦闘用意。また各個に回避行動を取れるように準備せよ!」
第二機動艦隊司令長官の真田三郎は通信兵にそう伝えた後で一つため息をついて窓から空を見上げた。空では、日帝機隊が怜軍機隊を迎撃していた。
「次は通すな!一機でも多く撃ち落とせ!!」
日帝直掩機隊はさっきよりも必死に、懸命に怜軍機を追尾した。残りの二隻の空母を失わない為に。
「戦闘機に構うな!攻撃機だけ狙え!」
「帰る家が無くなるぞ!死ぬ気で追いかけろ!」
「松龍の三小(第三小隊)!そっちに三機行ったぞ!」
「任せろぉ!何年操縦してると思ってんだぁ!!」
死に物狂いで戦ったお陰か、先の攻撃での迎撃よりも怜軍機の数は減った。しかし、またもや直掩機の隙間を縫って突破された。
「来たぞぉ!対空戦闘開始ぃ!!」
防空駆逐艦や軽巡洋艦から大量の対空弾幕が展開された。続けて重巡洋艦、戦艦、航空母艦からも弾幕が届く。怜軍機の爆撃機、「LSG、ロス・ストロンガー」は対空弾幕に晒され、被害を出しながら急降下を始める。が、対空砲火に耐えられなかったのか、大部分のLSGが高い高度から五百キロ爆弾を投下する。無論、簡単に避けられるのでそういった爆弾は難なく回避できる。その中で、最後まで粘って爆弾を投下したLSGが四機いた。どちらも空母が狙いだ。投下された爆弾は一直線に落下して、松龍の甲板を貫通した。貫通した爆弾は格納庫内で爆発、格納庫は爆弾や魚雷が散乱していた為に誘爆し、一瞬で火の海となった。次に三発の爆弾が煌龍に命中、二発は甲板で爆発、残りの一発は松龍と同じ様に格納庫を火の海に変えた。二隻の空母は黒煙を吹きながら止まった。
「しょ……松龍、煌龍のどちらにも爆弾命中。航行不能、自沈処理願う……とのことです……」
通信兵のか細い声が艦橋内に響いた。
「わかった……。全艦に伝達せよ。空母乗組員を救助した後、駆逐艦橘に魚雷で松龍と煌龍の自沈処理を任せる、と」
「はっ」
真田は瞑目した。
──航空戦力全てを失い、艦隊主力も壊滅……。完全な敗北だ……。かくなる上は……、本国で腹を切るか……。
「たっ……隊長、朝日から電信です。空母松龍、煌龍を喪失。直ちに帰還し、水上着陸にて航空隊員を回収する。……とのことです」
二一式艦攻の雷撃隊隊長機の通信員が電信を読み上げた。
「そうか……母艦を失ったか……。ならやることは一つだな」
隊長は冷静な声で言った。
「はっ?ですが、帰還する様に言っていますが」
「松龍がやられたんだろう?つまり今目の前にいる敵空母は松龍の仇じゃねぇか。なら体当たりしてでも沈めるしか無いだろう?」
「し……しかし」
通信員の声を隊長が遮った。
「良いんだ、それで。んで、お前は降りろ。まだ若いんだから」
隊長は笑った。
「……隊長、知ってますか?この海域はサメがうようよしてるんです。脱出してもサメの餌になるだけです。そうなるくらいなら……お供しますよ」
通信員も笑った。
「そうですよ!私たち三人で、空母にとどめを差しましょうよ」
一番後ろの機銃手も笑った。
「……そうか。じゃあ、突っ込むぞぉぉ!!!」
「「了解!」」
五秒後、魚雷と爆弾を一発づつ喰らった怜軍の空母にもう一度大きな火柱が上がった。
皇暦2515年6月26日午後7時、爆撃隊と雷撃隊隊長機を除く全機が第二機動艦隊に帰還、海上に胴体着陸して隊員達は救助された。これで、マッツウェーク海戦は終結したのであった。
本編には書けませんでしたが、日帝側は空母四隻の他に重巡洋艦一隻を喪失しました。名前は赤磐、皇暦2500年1月30日竣工、会津型重巡洋艦二番艦です。あと、旗艦の朝日は空母乗組員救出中に漂流していた五百キロ爆弾に接触し、大破しました。これで日帝は空母四隻と重巡洋艦一隻、戦闘機100機、爆撃機80機、雷撃機85機を喪失、戦艦一隻大破の大損害になりました。ちなみに、大本営はマッツウェーク海戦を大勝利と報道した様です