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日律帝国最後の反抗  作者: mitotayo
遠い海の戦い
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日律帝國最後の反抗5

mitotayo(みとたよ

またまた投稿期間が大幅空いてしまい申し訳ありません。しばらくはなんとか出来るとは思いますが、また投稿期間が空く場合があると思いますのでご了承下さい。

 〈九章〉マッツウェーク海戦 前編

 マッツウェーク。それは、日律帝國(にちりつていこく)から約4000キロ離れたレイブン皇国の辺境の島。この島が辺境では無くなったのは、つい一昨年のことだ。

 当時、レイブン皇国の海軍は仮想敵を第一次世界大戦で敗北したドミル帝国に置いた。対して、陸軍と空軍は日律帝國に置いた。この対立がマッツウェークを変える事となる。2ヶ月後、海軍が艦隊を日律帝國と繋がる大東海(だいとうかい)からドミル帝国が接する「大西海(たいせいかい)」へと移動させた。レイブン皇国海軍の戦力が減れば、日律帝國が大東海を支配する事になる……、それを危惧した陸軍が、空軍と協力して基地を作った。その結果、基地化されたのがマッツウェーク島なのである。そして今、そのマッツウェーク島へ攻撃を掛けようとする艦隊がいた……。


 皇暦2515年6月26日午後3時、第二機動艦隊司令官真田三郎(さなださぶろう)の指令が下る。

 「マッツウェーク島への爆撃を行う」

 この指令を受け取った機動艦隊の空母、「江戸(えど)」、「和倉(わくら)」、「松龍(しょうりゅう)」、「煌龍(こうりゅう)」の4隻から爆装した一ニ式艦爆(いちにしきかんばく)一ニ式艦攻(いちにしきかんこう)が次々と発艦していく。上空3500メートルまで上昇した爆撃機達は、それぞれ編隊を組み、マッツウェーク目掛けて全速力で飛んでいく。

 「全力攻撃は一度成功すれば大戦果を上げれるのが利点だ。だが、もし敵に別の戦力がいたら……その戦力を叩くだけの攻撃機を捻出できなくなるのが欠点だな」

 真田は第二機動艦隊旗艦、「朝日(あさひ)」の艦橋で呟く。

 「今のところ敵機動艦隊の情報が入っておりません。ご心配には及ばないかと」

 後ろから1人の参謀が自身ありげに答えると、真田は振り返る。

 「南スベラ沖海戦で敗走した敵はどこへ行ったのか?追撃に失敗した時点でそれは分からない。つまり、どこかで戦力を補充して我々を叩きに来ることくらい可能な筈だ。だから私は半分の戦力でマッツウェーク島を攻撃する様に言ったはずだが?」

 「しかしながら、航空機で攻撃するなら質よりも量が大事です。戦力を有るだけ使って戦うのが現代戦なのです」

 真田の言葉に参謀は言い返す。

 「……まあいい、飛ばしてしまった物はしょうがない。敵機動艦隊が現れないのを祈るしかないな」

 真田は諦めて攻撃隊が消えて行った方角を睨む。

 ──森下、お前は正しかった。こんな簡単に命令違反などと……。もしかしたら今回は負けるかもしれんな……。

 真田は心の中で不安を抱えながら窓の外を睨み続けていた。


 「マッツウェーク島を発見!これより急降下爆撃の準備を始める!」

 第二機動艦隊から出撃した攻撃隊は、主目標が地上・上空の航空機、副目標が滑走路、航空施設である。各編隊が目標地点を絞り急降下爆撃の準備を整える一方、怜軍(れいぐん)(レイブン皇国軍)も、日帝(にってい)軍(日律帝國軍)襲来の報告を受け、迎撃機を離陸させていた。「S30、スターボルト」、制空専用の局地戦闘機が20機と「エンゼルタイガー」艦上戦闘機が10機の計30機である。日帝の攻撃隊を護衛する戦闘機は、三三式艦戦(さんさんしきかんせん)25機。数に差はなく、技量では日帝が圧倒している。怜軍の迎撃機と戦闘に入った日帝機は、悠々と怜軍機の後ろについて二十四(みり)機関砲で撃ち落とす。怜軍機が30分もしない内に空から消え、マッツウェーク島上空は日帝の色に染まっていた。

 「急降下開始!!」

 最後の怜軍機が火を噴いて堕ちていくのと同時に、日帝の攻撃隊は次々と機体を(ひるがえ)して急降下を始める。3500メートルから爆弾投下高度の800メートルまでの急降下の時間が過ぎ、一ニ式艦爆からは500キロ爆弾が、ニ一式艦攻からは800キロ爆弾が投下された。ドンドンと鈍い破裂音が聞こえ、マッツウェーク島の航空基地に大きな火柱が立った。800キロ爆弾の直撃を受けたであろう機体格納庫は激しい炎に包まれ、爆発を起こしている。

 「やったぞ!命中だ!」

 「みろ、飛行場の格納庫が全部燃えてる!作戦成功だ!」

 それぞれの編隊の無線が歓喜の声で満ちている中、攻撃隊の編隊長は無線に大声を投げた。

 「全機に告ぐ。母艦が同じ機体同士で編隊を組んで帰還せよ。着艦を効率化させる」

 編隊長がそう言い終わると同時に、攻撃隊は飛行しながら編隊を組み直し、味方艦隊へと帰って行った。


 ──やはり全力攻撃などするべきでは無かったな……。

 真田は冷静にそう考える。第二機動艦隊旗艦「朝日」の艦橋では、参謀や通信士が休む暇もなく走り回っている。

 「現在、敵機動艦隊より艦載機が発艦し、我が艦隊に向かっている模様です。具体的な数は偵察機の報告を待つしかありませんが……」

 「敵機動艦隊を発見したのはいつだ?」

 「はっ、午後4時12分に周囲を索敵していた潜水艦、「(こう)11」が南下中の敵機動艦隊を発見したようです」

 ──今の時刻は……午後4時57分。予定ではマッツウェーク島に向かった攻撃隊が折り返している時間だ……。いやそんな事はどうでもいい、45分前に艦載機が発艦……つまり接敵は……

 真田の思考は参謀の言葉で打ち切られた。

 「緊急電!敵艦載機は爆撃機30機、雷撃機40機、護衛機が25機の模様!我が艦隊の直掩機隊と戦闘を開始しました!」

 「直掩機による迎撃の失敗に備え、対空戦闘用意を行え!1機たりとも逃してはならんと全艦に伝えろ!」

 真田は通信士に伝え、窓を見た。窓の外、大空では日帝機が怜軍機を迎撃していた。


 「くそ!数が多い!落としきれない!」

 「弱音を吐くな!1機でも多く叩き落とせ!」

 日帝機のパイロット達は無線で弱音と叱責を繰り返しながら怜軍機を追いかけていた。

 ──数が多いのは目に見えて分かる。1人で3人以上を叩かないといけないとは……。

 直掩機隊の隊長はそう考えながら、機銃弾が飛び交う中で爆撃機を追いかける。日帝の直掩機隊は三三式艦戦が35機。怜軍の護衛機はエンゼルタイガーが25機、爆撃機は「LSG、ロス・ストロンガー」30機、雷撃機は「ELG、エス・リベンジャー」40機。数の上では日帝が圧倒的に不利である。

 「やったぞ!また落とした!」

 「だいたい半分は削った!あと一息だ!」

 日帝の直掩機隊は、たったの15分で半数の怜軍機を撃墜するという奮闘ぶりを見せた。しかし、戦果が上がると同時に被害も発生する。この15分で日帝機もわずか12機まで数を減らしていた。直掩機隊の穴を縫って突破した怜軍機は、雷撃機は低空へ降下し、爆撃機は第二機動艦隊の直上へと近づきつつあった。


 「全艦、対空戦闘開始!」

 ──誰が叫んだのか分からないが直掩機隊の迎撃失敗した今、なりふり構っている場合ではないな……。

 各艦から対空砲が放たれ、朝日の艦橋にも衝撃と爆音が鳴り響く中で真田はそう考えた。海面と上空が爆炎に包まれ、艦橋内はさっきのドタバタした状態から打って変わって神に祈るような空気に変わった。

 「敵雷撃機が魚雷を発射した模様!」

 「全艦に告ぐ!敵が魚雷を発射各々で回避行動しろ!」

 真田が命令するのと同時に第二機動艦隊は陣形を乱しながら回避行動に徹する。エス・リベンジャーは超低空で飛行し、魚雷を発射する。怜軍が使用している魚雷は二酸化炭素魚雷のため、軌跡が見えやすい。魚雷は次々と到達するが、幸いにも命中弾は無かったようだ。

 ──これでひとあんし……

 「敵機直上!急降下してきます!」

 「くそっ!回避行動を続けろ!」

 真田は一安心と考えた自分の心に怒りながら命令した。ロス・ストロンガーは急降下して次々と500キロ爆弾を投下する。回避行動を続けているためか、命中弾はまだ無い。しかし数秒後、艦橋内の痛いほど張り詰めた空気をひとつの爆発音が打ち破った。

 「!?」

 真田が音がした方向を見ると、空母の中央部から火柱が立っていた。続け様に連続でふたつの爆発音。

 「なんだと……」

 「空母江戸、和倉が被弾!消化困難のため、総員退艦するとのこと!」

 通信士が悲痛な声で報告する。

 「……了解した。駆逐艦は退艦した乗組員の救助にあたれ。艦隊はマッツウェーク島攻撃隊の帰還を待ってから陣形を立て直す……」

 真田は悔しさで顔を歪めながら命令した。

登場兵器


〈日律帝國〉

和倉わくら。皇暦2489年11月1日竣工。江戸型航空母艦二番艦、元戦艦。搭載機数63機。

松龍しょうりゅう。皇暦2492年2月15日竣工。松龍型航空母艦一番艦。搭載機数45機。

煌龍こうりゅう。皇暦2493年1月23日竣工。松龍型航空母艦二番艦。搭載機数45機。

甲11(こうじゅういち)。皇暦2491年12月1日竣工。甲型潜水艦11号艦。


〈レイブン皇国〉

S30 スターボルト。東暦1949年5月4日実戦配備。エンジン馬力1300馬力。12.5ミリ機関銃4門装備。

LSG ロス・ストロンガー。東暦1953年6月18日実戦配備。エンジン馬力1450馬力。

ELG エス・リベンジャー。東暦1953年7月2日実戦配備。エンジン馬力1450馬力。

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