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日律帝国最後の反抗  作者: mitotayo
愛する人達との思い出
3/16

日律帝國最後の反抗3

mitotayo(みとたよ

 短編ですみません。諸事情で投稿期間が空いてしまったため、取り敢えず一章分を出しときます(ただの時間稼ぎ)。これからも投稿期間が不定期になる事があると思いますがご了承ください。あと、今回は完全平和となっています。戦闘など起きませんので安心(?)して下さい。

〈七章 綾香と休暇〉

 皇暦2515年6月24日、白石武(しらいしたける)森下綾香(もりしたあやか)と2人で海へ行くことにした。

 「海って綺麗だねぇ」

 綾香は電車の窓から海を眺めて呟く。

 「そうだなぁ。海がこんなに綺麗って事を忘れてたよ」

 白石は感動して海を見つめる。

 「やっぱり海行くなら金沢浜(かねさわはま)だよねー」

 白石達が向かっているのは蒲島(かばしま)から電車で1時間ほど掛かる金沢浜で、綺麗な砂浜が人気の観光地である。

 「やっぱり人多いねー、どうする?武くんが海水浴したいなら行こうよ」

 「うーん……。人も多いし……いや、行こうか」

 白石は悩んだが、綾香の水着姿を拝みたいがために砂浜に降りることにした。金沢三景(かねさわさんけい)駅を出て海岸に向かって歩く。そして、視界が一気に開け、目に映るのは真っ青な海……ではなく大勢の観光客だった。

 ──人多過ぎやしないか?何でだ…………ん?

 白石の足元に一枚のビラが落ちていた。拾い上げて内容を見ると花火大会の案内だった。

 「なになに?見せて……ああ今日花火大会あるんだってね、だから人多かったんだね」

 「え?そうだったのかぁ……。って、今戦時中だよ?花火なんていいのかな……」

 「別にいいんじゃないの?攻められてるわけじゃないし」

 「そんなもんかなぁ……」

 白石は不安を残しながら呟いた。

 「さぁて遊ぶぞー!」

 そんな白石をよそに、綾香はブラウスとスカートを脱ぎ捨てて水着姿になって海に飛び込んだ。

 「おいおい服が汚れちゃうよ……」

 白石は綾香が脱ぎ捨てた衣服を拾って自分の鞄に入れ、綾香の居る辺りまで歩く。

 「武くんも入ろーよ」

 いきなり腕を掴まれた白石はそのまま海まで引きずられる。

 「分かった、分かったから一回離して!」

 白石が叫ぶと人混みの中から綾香が出てきた。

 「一緒に入ってくれる?」

 「分かったよ!とりあえず靴脱がして……」

 白石は靴を脱ぎ、服も脱いで水着姿になって綾香と一緒に海に入る。

 「なんだってそんなに海が好きなんだよ……」

 ぼやきながら綾香が波と戯れているのを見ていた白石は、冷たい海水を感じながら花火大会の事を考えていた。

 ──海岸で花火大会か、さぞいい景色なんだろうな……今まで知らなかったけど……。

 「ぼーっと立ってないで遊ぼーよ」

 いつ間にか綾香は白石の目の前にいて、白石に海水をかけた。

 「つめてぇ!」

 白石は顔にかかった海水を拭い、綾香に向かって思いっきり海水をかけた。

 「ひゃあ!何すんのよ!」

 綾香は悲鳴をあげた後、白石に海水をかけ返す。

 「うりゃうりゃ冷たいか!」

 「くそっ!お返しだ、ありがたく受け取れぇ!」

 「こらぁ!思いっきりかけるんじゃないよ!」

 「何だって?綾香が始めた物語だろ!」

 白石と綾香は海水をかけ合い、疲れるまで遊び尽くした。途中、お腹を空かせてうどん屋に寄って腹ごしらえをした後、白石達は海岸とは反対側、金沢三景駅の西側の山を登っていく。もう太陽は傾いて、赤く染まった空に飛行機が1機飛んでいる。

 「二式戦(にしきせん)か」

 白石が呟く。二式戦は大きく旋回しながらしばらくとどまっていたが、やがて夕焼けを目指すかのように飛び去っていった。

 「こうみれば飛行機ってかっこいいのに……。もっと平和な空を飛んでほしいな……」

 綾香は二式戦が消えていった空を見つめて呟く。

 「ほんとだね……。でもいつか戦争は終わるから……さ」

 「そうだね……武くんが戦争を終わらせたりして」

 綾香が微笑みながら白石を見る。

 「俺には出来ないよそんな事……。綾香のお父さんなら出来るかもしれないけど」

 「酒飲みおじさんにはむりだよー」

 白石の言葉に軽口で返し、綾香は山の展望台に向かって歩く。

 「ほらーいい景色だよー」

 展望台に着いた2人は金沢浜の方角を向き、近くのベンチに座る。

 「ここから花火が見えるの?」

 「そう、小さい時からお父さんと毎年来てたの」

 「へぇ……というか人少ないね」

 白石が周りを見渡して言う。

 「そうだねぇ……下に売店があるからなんじゃない?」

 「あっ違う!ここ金沢浜じゃない!」

 白石は気づく。この山は金沢浜より西側、金沢浜が見えるなら夕焼けは反対にあるはず……が横を向けば夕焼けが見えたのだ。

 ──つまりここじゃ花火は見えない!

 白石は綾香の腕を掴んで走り出す。

 「ちょっと……!いきなりどう……」

 綾香が喋り切る前に、夜空が白い光に包まれた。そして、赤く、青く、黄色く、次々に空が色鮮やかに彩られる。

 「ちっ……始まっちゃったよ……」

 呟きながら白石は綾香を引っ張って走り続ける。舗装されていない道を駆け抜けて、金沢浜が見える場所を探す。と、いきなり視界が開け、打ち上がる花火と金沢浜が見えた。

 「展望台じゃないけど……景色がよかったら良いよね……?」

 白石は綾香を見て言う。

 「うん……ありがとう」

 綾香は少し頬を赤くして答える。そして、白石の顔をチラッと見る。

 「あのさ……武くん……」

 綾香は小さい声で話しかける。

 「ん、どうしたの?」

 白石が不思議そうに綾香の方を向く。2人の顔を花火が照らし、輪郭を浮き上がらせる。

 「私ね……ずっと言いたかった事があるの」

 「…………なぁに?」

 「武くんがアウグレットから守ってくれた時あったじゃん?」

 「……あったね」

 「私……あの時から武くんの事……」

 白石はごくりと息を呑む。綾香が言いたいことを察知したかのように。

 「ずっと……ずっと好きでした……。も……もし良かったらお付き合い……したいなぁって」

 綾香は語尾を濁す。白石は一瞬の沈黙の後、口を開く。

 「綾香……あのね、俺もね……ずっと好きだったよ……」

 「じゃあ……!」

 「……はい、俺でよければ喜んでって感じです……」

 白石も語尾を濁す。閉まらない雰囲気の中、一際大きな花火が打ち上がる。

 「…………」

 白石は綾香を抱きしめた。自分の感情のままに。綾香も力一杯白石の胸を締め付ける。

 「……せっかく付き合うんだから……こんな戦争で死なないでね」

 綾香は涙ぐんだ声ながらはっきりと言った。

 「うん……分かった。綾香のこと絶対悲しませない」

 白石は答える。これは、この第二次世界大戦終結までの2人の約束となるだろう。花火は次々に夜空に打ち上がる。様々な色が空を染め上げ、一瞬一瞬を輝かせる。まるで2人を祝福するかのように。

 ──絶対生き残るんだ……こんな戦争なんかで綾香を悲しませるものか……!

 白石は心の中で決意するのだった。


 皇暦2515年、東暦1981年6月24日午後7時。6月23日に舞原軍港(まいはらぐんこう)を出撃した第二機動艦隊は、マッツウェーク島を目指して東へ舵を切った。

 

 


 

なんか紹介するものが少ないんですけど……。

 〈日律帝國にちりつていこく

 二式戦にしきせん。皇暦2489年4月20日実践配備、日帝陸軍所属。12,5粍機関銃四門装備。エンジン馬力1080馬力。


 ついでに地名を現実世界と照らし合わせておきます。

 東奏……東京。やっぱり東京イメージだと首都ですよね。

 蒲島……蒲田。蒲島駅は京急蒲田駅をイメージ。

 金沢三景……金沢八景。金沢三景駅は金沢八景駅をイメージ。

 曽根軍港……横須賀基地の辺り。

 舞原軍港……海上自衛隊の舞鶴基地辺り。

 多度ヶ大島……北海道。名前が全然違いますけど北海道がイメージです。

 南スベラ……東南アジアのどこか。多分フィリピンとかじゃないかな。


 ハウローク……ニューヨーク。アメリカでは首都ではないですが、この時代では首都です。

 マッツウェーク……ミッドウェー。多分激戦になるんでしょうね。

 

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