日律帝國最後の反抗16
mitotayo。
皆さんお久しぶりです。部活やらテストやらで忙しすぎて小説に手が回らなくなってきました。一ヶ月以上空いているのにこれくらいしか書けませんでした。一旦生存確認(2回目)しといて、また頑張って書いていきます。
〈二十章 墓参り〉
「そういえば、俺の家ってどうなったんだ?」
白石武はふと思って聞いた。
「あー、私がたまに掃除したりしてるから普通に残ってるよ。ほらそこ」
森下綾香が指差した方向を見ると木造の古びた平家がちょこんと建っていた。
「……そうか、俺がいない間にこんなに寂れたあばら屋になっちまったのか……」
そう呟きながら、白石はかつて自分が育った家の扉を開けた。中は綾香の言った通り予科練の寮に移り住む前と同じままだった。白石はそのまま奥に歩いて行き、台所にある勝手口から外に出た。しばらく路地裏を歩いて振り向くと綾香は少し驚いた表情で辺りを見回している。白石はまた路地裏を進んでいく。
「ねぇ、どこまで行くの?」
「あともうちょっと」
しばらくすると少し小さな川があった。白石は手慣れた様子で飛び越える。綾香は恐る恐る川を跨いで渡る。また家と家に挟まれた路地裏をしばらく進むと目の前には雑木林が広がった。
「武くん、ここが目的地?」
綾香が白石の背中に問うと、白石は無言で頷いた。白石は獣道の様な細い道を進んでいく。
「いったーい!」
綾香が白石に追突して額を押さえる。
「ちょっと!いきなり止まんないで!」
綾香が白石にそう怒るが、白石は何も言わずに歩き出す。
「ねぇ、聞いて……る?」
立ち止まって周りを見ると墓石が整然と並んでいた。白石は黙って先に進む。
「ちょっ、待って!」
綾香はそう言って白石を追いかける。少し先で白石はひとつの墓の前で足を止めた。
「いったーい!!」
今度は白石の腕に額をぶつけたらしい。綾香は額を押さえて白石を睨む。
「いきなり止まんないでっていったでしょ!」
「……ああ、すまん」
「……このお墓は?」
綾香が墓石を見る。
「母さんの墓だよ」
白石はそう言って手を合わせる。綾香は白石をじっと見つめ、お墓に手を合わせた。
「いつも本土に帰ってきたら手を合わせにくるんだ」
白石はそう言った。
「そうなんだ……」
「なんとかやりくりして墓は用意してやれたんだけど……。どうしてもあの時の自分がもっと仕事が出来ていたらって思っちゃうんだ……」
そう言って白石は自嘲気味に笑った。
「後悔しても遅いんだけどね……。今頃母さんは恨んでるんじゃないかな……」
「……きっと誇らしいと思うよ。武くんは恨まれてなんかないよ」
綾香は白石を励ました。
「俺はいつも大切な人の大事な時に側に居てやれないんだ……。父さんも、母さんも、空襲で死んだ親友も……、真田司令も……」
綾香は白石の言葉を聞いて目を見開いた。
「真田って、お父さんの友達の?」
「ああ、ウォール島で亡くなったらしい……」
「うそ……。あんなに元気だったのに!あんなに楽しそうにお酒飲んでたじゃない!」
「これが戦争なんだってよく分かったよ……。若くても、元気でも、戦場では関係なく死んでいくんだ」
「こんなの……こんなの……あんまりだよ……」
綾香は白石に抱きついて泣き出した。
「知り合いが死ぬだけでこんなにかなしい悲しいのに……苦しいのに……、武くんは平気なの!?」
「戦場はそう言うものだと割り切るしかないんだ。俺の目の前で戦友がどんどん死んでいっても、それは仕方の無い事だと考えろって教官に言われたよ」
「でも……でも!そんなの私たちには無理だよ!一度、二度しか会った事ない人でもこんなに辛いのに、割り切るなんて無理よ!」
「……そうだな、……けど俺は軍人だ。次に死ぬのは俺かもしれないって考えながら戦ってたら悲しみなんて感情は麻痺してしまうんだ」
「……嫌!武くんが死んじゃったら私はどうやって生きればいいの!?」
「…………」
「私……戦争なんか大っ嫌い!!」
綾香はそう言って走り出した。
「あっ、おい!」
白石は追いかけなかった。ただ綾香の後ろ姿を見つめていた。
「母さん……。俺は、もう人間じゃないのかもしれない……」
白石は墓石を見つめた。
「感情が薄れていくんだ。景色が色褪せて見える。……俺は、どうしたらいいんだ、母さん……」
母親が眠る墓からは返事はない。白石は空を見上げた。
──とにかく、今はまだ死ねない。
白石は綾香が走って行った道を歩き始めた。蝉の鳴き声がうるさいほど聞こえる筈の夏の日は異常なほど静かだった。
暑いですねぇ。最近蝉も鳴き始めて夏って感じですよね。ところで、物語を書くとしたら皆さんはどう展開を考えますか?伏線をあらかじめ作ったり、しっかりと考えたりすると思うんですよ。でも、私は頭の中で勝手に登場人物が行動すると言うか、想像の中で自分の思った通りに展開が進まないんですよね。一人一人が独立して自我を持っている感じですね。だから本当は真田さんは生きて帰そうと思っていたのに(自分は)、戦艦朝日と運命を共にして戦死したのは、多分真田三郎という自我を持った人物が自分で判断してそうなったと思うんです。だからちょっとモヤモヤしてるんですけど。
今考えると私の頭の中には、一体どれだけの自我を持った人物が居るのか、それによってシナリオがどれくらい変わっていくのか作者なのに楽しみです。ではまた日律帝國最後の反抗17でお会いしましょう!