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日律帝国最後の反抗  作者: mitotayo
追撃戦
11/17

日律帝國最後の反抗11

mitotayo(みとたよ

今回は投稿期間を短くするためにある程度物語をぶつ切りにして書いています。読みにくいかも知れませんがご了承ください……!

〈十五章 救援、到着セリ〉

 アウグレットが空戦に夢中になっていた7月18日午後4時08分。第二機動艦隊に1つの電報が届いた。

 「我ガ艦隊、既ニウォール島周辺海域ニ到着。ココカラノ戦闘ハ我ガ艦隊に任サレタシ」

 通信兵から電報を受け取った真田は、ニヤリと笑って言った。

 「了解した、第一機動艦隊の武運を祈る。と返信しておいてくれ」

 「はっ」

 通信兵が踵を返して走っていくのを見て、真田は後ろを振り返った。

 「君を信じて本当によかった。ありがとう、秋山中佐」

 秋山は首を横に振って答えた。

 「礼には及びません、真田司令。私は参謀の責務を果たしているだけです」

 「君は謙虚だな。マッツウェークの時も、君に意見を求めるべきだったな」

 「起きてしまった事はどうしようもありません。ですが、これから起こる事はどうとでもなるのです。今は今の事を考えるべきでしょう」

 秋山の言葉に真田は頷いた。

 「とにかく、第一機動艦隊……高田達の健闘を祈るとしようか……」

 

 「第二機動艦隊より返信!了解シタ、第一機動艦隊ノ武運を祈ル。とのことです!」

 通信兵からの報告に第一機動艦隊司令官、高田史明(たかだふみあき)は頷いて口を開いた。

 「では始めよう。これより我が艦隊はウォール島周辺に居座る敵艦隊を撃滅する。この作戦は第二機動艦隊、ひいてはこれから先の戦闘にも影響する重要な戦闘である。各員の努力に期待する!」

 高田は一呼吸置いて指令を出す。

 「真鶴、叡鶴、鳳英に伝達せよ。真鶴航空隊は艦爆、艦攻を含め全機発艦。叡鶴航空隊は第二次攻撃隊として待機。鳳英航空隊は艦隊直掩機として順次発艦せよ。一刻も早く敵艦隊に攻撃を仕掛けろ!」

 こうして、第一機動艦隊からも艦載機が飛び立っていった。大東海(だいとうかい)での機動艦隊同士の海戦は、これで3度目となる。


 「さぁお前ら!人生掛けた大舞台だ!ひと暴れして敵に一泡吹かせるぞ!」

 無線機から聞こえる真鶴航空隊第一中隊の隊長、山里雄二(やまざとゆうじ)の声に呼応して無線内が歓声に包まれる中、黒猫のノーズアートの機体を操る白石武(しらいしたける)は一つの予感が脳に浮かんでいた。

 ──ウォール島(ここ)の空にも、「イルカ」がいる気がする……。

 白石は一つ息をついて目の前の大空を見つめた。

 ──ん?今あそこ光ったよな。

 白石は空の一点に目を凝らした。

 「……やっぱり居る!」

 白石はそう叫ぶと無線機を取った。

 「こちら第一小隊白石。敵戦闘機隊を発見した。指示求む」

 「こちら中隊長山里。第一中隊はこれより攻撃機隊の直掩任務を終了。敵戦闘機隊への攻撃を行う!白石は先頭に立って案内を頼む!」

 ──つまり俺は案内役というわけだ。

 白石は速度を上げて第一中隊全機を追い抜いて先頭に立った。列機の水島隼人(みずしまはやと)草加部広宣(くさかべひろのぶ)も後ろに付いてきている。

 「よしっ。行くとしようか!」

 白石は呟いてさらに速度を上げて怜軍戦闘機隊が居るであろう空域に機首を向けた。


 「ようやく全機揃ったのか」

 アウグレットはそう呟いた。

 「全機の集合を確認。これより攻撃任務を再開する」

 無線から隊長の声が聞こえたのと同時に攻撃機隊が旋回をやめて進み始めた。

 ──陸軍機は本当に帰ったんだろうか……。

 アウグレットは一抹の不安を感じていた。

 ──さっきよりも索敵をしないと……。あれ?

 アウグレットは何かを見つけた。

 「機影を発見!2時の方角、突っ込んでくる!」

 無線機に怒鳴りつけた後、アウグレットは勢いよく加速して味方を先導する。

 「やっぱり帰っていなかったんだ!油断するのを待っていたのか!」

 アウグレットの額に汗が吹き出る。

 ──焦るな……。こんな事で心が揺らいでいたら黒猫なんかに勝てやしないぞ……アウグレット!

 機体はどんどん加速していく。お互いの機体が詳細に見えるようになった頃、アウグレットは目を見開いた。

 ──あれはっ……海軍機!まさか新手か!?

 「敵は海軍機、三三式艦戦(ファクター)だ!」

 三三式艦戦のコードネームであるファクターを聞いて、無線内が一気に騒がしくなった。

 「ファクターだと?そんなバカな!」

 「新手がもうやって来たのか!?」

 「クソォ!機動戦じゃ勝ち目が無いじゃないかぁ!」

 各々が絶望の叫びを上げている中、アウグレットは三三式艦戦の機首を見ていた。

 ──ファクターってことは、もしかしたら……。

 アウグレットの目線は先頭の機体で止まった。

 「居た……!黒猫ぉ!!」

 アウグレットは機体を右に捻りながら15ミリ機関銃を撃ち始めた。三三式艦戦の群れは銃撃に気づいて回避を始める。しかし1機だけ、全く動じずに突っ込んでくる機体が居た。黒猫のノーズアートをつけた三三式艦戦だ。一瞬の内に黒猫とすれ違ったアウグレットは一気に操縦桿を引き付け、反転して黒猫を追い始めた。黒猫はそれを分かっているはずだが緩慢な動きをとっている。

 「挑発かぁ!!」

 アウグレットは怒りながら15ミリ機関銃の引き金を引く。黒猫の機体に一直線に向かっていた15ミリ徹甲弾を、黒猫は機体を右に滑らせるだけでいともも簡単に避けてみせる。

 「待ちやがれぇ!!」

 簡単に避けられた事に苛ついたアウグレットは、声を荒げながら黒猫に食らい付いていった。

 

 「そう簡単に当たるかよ」

 白石はそう呟いて放たれた15ミリ徹甲弾を右フットバーを蹴って避ける。さらに速度を上げて食らい付いてくるイルカを見て機体を右に捻りつつ急降下を始めた。

 「ついて来い。また叩き落としてやる」

 少し口角を上げながら白石は呟き、さらに降下して速度を稼ぐ。イルカは負けじと付いてくる。白石は操縦桿を左に倒して機体の向きを反転し、操縦桿を引き起こして上昇に転じる。イルカはその動きについて行けず少し大きく回って上昇を始める。

 「機動性の悪い機体だと格闘戦は厳しいだろう……。格闘戦(こっち)の土俵に上がった時点で勝敗は決まったようなものだ」

 白石はわざと速度が落ちる機動を続けた。縦旋回をしたり、フットバーを使って横に滑りながら上昇したり、エンジン出力を絞りながらの機動など……。気付けば白石の機体は285km/hまで下がっていた。

 「さぁ、機動力が一番高くなる速度帯になったからには全力で振り回してやる!」

 日律帝國の三三式艦戦は、速度が下がれば下がる程機動力が良くなる特性を持つ。つまりは速度が上がれば上がる程機動力が悪くなるという事だ。レイブン皇国のエンゼルタイガーは三三式艦戦の真逆の特性を持つ。つまりは速度が上がると機動力が良くなり、速度が落ちれば悪くなるのだ。

 「最近はエンゼルタイガー(堕天使)の一撃離脱が多くなってるらしいからな、速度に乗られると厄介だ」

 白石はそう呟き横旋回を始めた。

 「また燕返し(あの技)でケリをつけてやる」


 燕返しとは何か。敵に追われている状態での横旋回中に操縦桿を限界まで一気に押し込んで素早く逆回転し、敵の後ろに付くという技だ。敵からすれば一瞬の内に敵が消え、何が起きたか分からないまま撃墜される厄介な技である。しかし、燕返しは簡単には使えない。理由は2つ。1つは最大6.5Gにも及ぶ圧力。もう1つは繊細な操縦術が必要な点だ。跳ね返ろうとする操縦桿を押し返しながら、空中分解と錐揉みの狭間にある機体が安定する一点の力加減を維持しなければならないという至難の技、それが燕返しだ。


 「……読めた。お前の動き……お前が何をしようとしているのか……黒猫!!」

 アウグレットは横旋回について行く。速度が落ちている影響で旋回速度が目に見えて落ちている中、アウグレットはフラップを展開することによって揚力(ようりょく)を生み出し、旋回速度の低下を最小限に留めている。

 「さぁ……2周目だ。やれるものならやってみろ、燕返しを!」

 アウグレットは照準器に両翼がはみ出る程に近い黒猫の機体を凝視する。そして……、

 「……消えた!」

 アウグレットは叫ぶと同時に左フットバーを蹴り付けて一気に高度を落とす。一瞬の間を置いて二十四ミリ機関砲の銃弾がアウグレットが居た空間を切り裂いていった。

 「危なかったぁ」

 安堵した瞬間、アウグレットは背筋に氷のような冷たい何かを感じた。後ろを振り向くと、黒猫が機体を翻して離脱して行くのが見えた。

 「何だったんだ……今の……」

 アウグレットは何か得体の知れない何かに睨まれた気がしながら、味方の攻撃隊が居るはずの空域に向かっていった。


 「あいつ……避けたのか……?」

 白石は今起こった事に理解が追いつけなかった。空を切る二十四ミリ曳航弾、仕留めたはずのイルカが左下方に無傷で飛んでいる事。その事を理解した瞬間、白石の心の中から沸々と悔しさと怒りが湧いてきた。

 「逃すかぁ!!」

 白石はそう叫んで操縦桿を左に倒そうとした。

 「中隊長から中隊各機へ。敵の雷爆連合(らいばくれんごう)(雷撃機と爆撃機の合同部隊)の攻撃に成功。敵戦闘機にこれ以上時間を掛けるは必要無い。各機は直ちに味方攻撃隊と合流せよ!以上」

 無線機からの中里中隊長の声を聞き、白石は精神を落ち着かせた。

 「次は……次は必ず仕留めてやる……!!」

 白石はイルカを一度睨みつけた後、味方の攻撃隊が居る空域に向かって機体を翻した。

最近登場していない森下綾香もりしたあやかについて。

森下綾香は歌手の道を進むべく、適正審査(現在で言うところのオーディション)を受け、見事合格したそうです。父親である森下重信もりしたしげのぶのお陰で新入りとして事務所の中でも肩身の狭い思いをしなくて済んで父親に感謝しているようです。ちなみに森下綾香が所属している事務所は恋愛はある程度黙認しているので、白石武とのお付き合いについては何も言われていないそうです。

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