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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第四章:一般人男性、入学する。
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第四章:その18

そして翌日、俺たちは朝飯を済ませたあとすぐに学園見学ツアーへと出発した。

メンバーは俺、少尉、ベルガーン、そしてガイドとしてアンナさんの四名。


もしかしたらメアリもついてくると言い出すんじゃないかと思ったが、今日はまだ遭遇していないし昨日の夜も部屋には来なかった。

もしかするとあいつなりに気を使っているのかもしれない。

一切気を使わないどっかの皇帝陛下とは大違いだ。


「ではまず貴族部の方に……」

「アンナ、一応言っておくけど彼が通うの平民部の方だよ」

「えっ」


そして出だしからよもやよもやの事態が発生した。

少尉に指摘されるまで、アンナさんは俺が貴族部……貴族が通う方の校舎に通うと思っていたのである。

そこんところ説明してなかったのかオレアンダー。

ちなみに平民部は平民が通う校舎を指すそうだ。


「貴族寮から平民部に通うんですか……?」


アンナさんの表情は変わらない。

だが声のトーンが完全に「そんなことありえるの?」と言っている。


「すんません、そうらしいです」

「それは大変な失礼を……」

「いや、俺も信じられないんで大丈夫です」


何しろそんな通い方をする奴は学園史上でも初めてらしいので無理はない。

なんでそんな扱いになっているのかと、他ならぬ俺が疑問に思っているほどだ。

いや本当に何でだよ。


「困りましたね、私は平民部の方はほとんど……」

「図書館とか訓練場でいいんじゃない、あそこならたぶん使うでしょ」

「なるほど、確かに」


どうやら予定は完全に狂ったようで、アンナさんと少尉の間で作戦会議が始まった。


そういえば二人が会話してるところは初めて見るが、随分と仲が良さそうに見える。

少尉が他人をファーストネームで……いや、俺そもそもこの人が他人と話してるの自体ほぼ見たことないな。

もしかして人付き合いが苦手なんだろうか。

正直その可能性が高いような気がする。


そうなると俺に対する塩対応もやむなし……少しもやむなくはないな。

少尉は他の人に対しても基本塩対応だが、俺に対してのそれは明らかに塩分濃度高いし。

一応塩対応の原因を考察してみたところ、まず浮かぶのは出会ってからこの方ずっとご迷惑をおかけし続けていること。

何なら俺の護衛兼家庭教師とかいう閑職に飛ばされてるし、これじゃないかと思う。


今度改めて謝罪とお礼を伝えておこう。

悲しいかな、それで状況が改善される気はあまりしないが。


『貴様は本当に独特な挙動をするな』


声のした方を見れば、ベルガーンが珍獣でも見るような目で俺を見つめていた。

たぶんまた俺が無意識に変な動きをしていたせいだろう。

もしそうだとしてもそんな目で見ないでほしい、悲しくなる。


「お待たせしました。ここで立ち話も何ですし、参りましょうか」

「アッハイ」


そうこうしているうちに少尉とアンナさんによる作戦会議は終わったようだ。

改めてアンナさんに先導される形で、俺の学園探索は始まった。


そうして俺たちが向かった学園施設は四箇所。


まず、大図書館。


寮からも見えていたやたらと高い塔。

俺はそれをずっとそれを見張り台かデートスポットの類だと思っていたのだが、実はそれが大図書館であった。

ちょっとした体育館くらいの広さに、高層ビルじみた高さ。

内部は一階から最上階までが吹き抜けになっており、全階層に本を満載した数多くの本棚が並んでいるのが見える。

俺からすると異様というか、地震が来た時大丈夫だろうかと妙な心配をしてしまう構造の建物。

だが、俺がこの場所最大の特徴と感じたのはこの構造そのものではなく、魔法を使っていると思しき学生たちが吹き抜けを飛び回っていることだ。

何ならこの世界で見た中で最もファンタジーな光景だとすら思った。

一応階段やエレベーターは備え付けられているので魔法が使えない者もちゃんと利用できるようにはなっているらしいが、飛行魔法は優先して覚えようと心に決めた。


次にやってきたのは購買……と名乗るデカいスーパー。

どう考えても購買の規模ではない。

俺の知ってる購買はもっとショボいぞ。


店内には食料品、雑貨、本、衣類などが豊富な品揃えで並んでおり、やはり俺の中の購買のイメージを破壊しに来る。

ただ俺の知るスーパーとは明確な違いが一点。

それは店の奥に陳列された、数多くの武器防具だ。

剣に盾に鎧、さらには銃まで。

いずれも小さなものから大きなものまで豊富に取り揃えられている。

学生向けと言い放つには物騒すぎないだろうか。

あとやっぱりこの世界は俺の世界に近いのかファンタジーなのかはっきりしない。


「らっしゃい、オーダーメイドも受け付けるよ」


そう声をかけてきたのは黄色いエプロンを付けたドワーフのおっちゃん。

エプロンの胸にデザインされたよくわからないキャラクターがこのスーパー……購買のマスコットなのだろうか。

ピーマンから手が生えたような笑顔の、たぶん可愛らしくは描かれているであろうキャラクター。


……なんか微妙に既視感があるな。何だっけ。


「そういえば文房具とかって買わなくて大丈夫なんですか?」

「そういったものはこちらで既に用意しております」


ふと気にになって問いかけてみたところ、アンナさんの即答が返ってきた。

どうやら教科書などもしっかり準備してくれているらしい。

至れり尽くせりにも程がある。


「何と言うか、ありがとうございます」

「いえいえ、それが私の役目ですので」


それがメイドの、アンナさんの仕事だというのはわかっている。

それでも、日々何から何までやってもらって俺は何もしていないというのはかなり心苦しい。

元がしがない一般市民なので誰かに任せっきりという環境に慣れないというか、どうも肌に合わない。

何かしら自分でやれることはやるようにしたいところだ。

まあ、何をやればいいのかはさっぱりわからないんだが。

何しろ気付いたら全てが終わってる程度にはアンナさんの仕事、早いし。


オルフェーヴル解禁に喜ぶ一方「これウインバリアシオンまず出なくね?」となって悲しんでる作者です。

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