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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第三章:一般人男性、皇帝に拝謁する。
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第三章:その17

紙袋の中には丸いパンに肉の塊を挟んだもの、細切りにして揚げた芋、あとなんかパイらしきものが入っていた。

袋から予想できるものそのまんま。

うん、まごうことなきファストフードだわこれ。

味自体も元の世界とは多少違うが、ジャンクな風味を感じるのは変わらない。

何なら期間限定で発売してそうな味だ。


「この手の料理を出す中では高い店で買った故、噛み締めて食べるのじゃぞ」


俺の世界にも「高いハンバーガーと言えばここ!」という店があるが、これもそんな感じの店の商品なのだろうか。

もしかしたらもっと高いのかも知れないが、どっちにしても噛み締めて食う類の食べ物じゃないだろうと思うし、他ならぬオレアンダーが酒を片手に貪り食っている。


ちなみに飲むペースは相変わらずとても速い。

俺が二本目に手を付けた段階で既に空き缶の山が出来上がりつつある程だ。


「なんじゃそんなに見つめて。見惚れておるのか?」


今見ていたのは見惚れていたのではなくドン引いていたからなんだよなあ。

とはいえ持ってるのが缶ビールとジャンクフードでも絵になるってすげえなこいつ、とは思う。

あとたまに指を舐める仕草がとんでもなくエロい。

まあどうしても酒の量に目が行ってしまうせいで興奮はしないけども。


「にしても、今日も魔王はおらんのじゃな」

「あいつも皇帝陛下を一目見たがってたから、そのうち戻ってくるんじゃないか」


ベルガーンも目の前の皇帝陛下に負けず劣らず自由というか勝手なところがあるので、正直いつ戻ってくるかはわからない。

そもそもいつどこに行ったのか、それすら俺は知らないような有様だ。

まあでも歩き回りたい気持ちはわかる。

俺も迷いさえしなければもっと色々見て回りたいと思うし。


「まるで古の軍師の逸話じゃな、妾はあと何度ここに通えば良いのやら」


この世界にもあるのか三顧の礼……と思ったのだが、オレアンダーによればどうやらその軍師をスカウトするためには十回の訪問を必要としたらしい。

通わせすぎだろこの世界の孔明みたいな人。

そして通いすぎだろこの世界の劉備みたいな人。


「妾なら三度目で屋敷を更地に変えておる」


とりあえず俺の世界の孔明はギリギリセーフらしい。


まあ物騒だが気持ちはわかる。

俺だってそんな何回も何回も通いたいとは思わないんだが、その逸話の劉備的な人はどんだけ呑気だったんだ。

それともその人が常軌を逸したしつこさだったとかそういう話なのか。

だとしたら公孔明的な人はよく首を縦に振る気になったな。


「まあ、会えぬものは仕方ない。それよりも本題じゃ」


ニヤリとオレアンダーが笑う。

意地の悪い笑みだ、背筋がゾクゾクする。


……なんで俺今ゾクゾクしたんだ?


深く考えてはいけない気がする。

よし、この話題はここまで!解散!


「今日ベンジャミンめからお主の魔力の話を聞いてな」

「あっはいそうですか」


やはりその話か。

サリバンさんは宮仕えなんだから彼の報告は当然オレアンダーにも上がるだろう。

むしろ聞いてない方がおかしい。


「あの水晶玉を割るほどの魔力を持っているのは妾くらいだと思っておったが、やるではないか」

「あっはいありがとうございます」


俺は今褒めてもらっている。

褒めてもらっているのだが、とてもではないが喜べない。

オレアンダーが次に何を言い出すか、まったく予想できないからだ。


オレアンダーは今、見るからに機嫌がいい。

間違いなくテンションが高い。

短い付き合いどころか出会ってまだ二日目だが、こいつはこういう精神状態の時に突拍子もないことを言い始める輩だという確信がある。

普段から周囲にいる人々はさぞ苦労していることだろう。


俺は身構える。

否、ずっと身構えている。


「どうじゃ、妾と子を為さぬか?」

「なんて?」


そして飛んできた言葉は、ものの見事に俺のガードを突破してきた。

予想だにしない、というか予想しようのない発言。

心から「お前は何を言っているんだ」と言いたい。


……周囲の人々はいつもこんなジャイアントスイングみたいな振り回され方をしているのだろうか。

だとすれば苦労どころの騒ぎではない。


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