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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第九章:一般人男性、祭を巡る。
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第九章:その22

「面白そうな推論なのですぐにでも調べたいが、手元に資料が少ない」

「だから申し訳ないけど学園に戻るまで待ってほしいな」


さすがのダブルジョンも、何でもかんでも頭に入ってたり資料を持ってきてたりするわけではないらしい。

特に大英雄ワードプラウズなどという、話題に上ることを全く想定していなかった人物についてならなおさらだろう。

というか誰もこんにゃくからこんなところまで話が飛ぶとは思ってもみなかっただろうと思う、少なくとも俺はそうだ。


ダブルジョンは夏休み中ずっと俺たちの旅行についてくるつもりらしいので、学園に戻るのは俺たちと同じ夏休み明け。

それまで大英雄ワードプラウズについてはお預けになる。

少し残念だ。


「ホソダさんに同行すると、毎度報告しがいのある出来事が起きますね」


ロンズデイルの顔に浮かんでいるのは苦笑。

まあそんな反応にもなるよな。


俺はこの世界に来てからずっと、このできる男の世話になりっぱなしだ。

しかも今やってもらっているのは学生の部活動への同伴。

受けた瞬間怒ってもおかしくない無茶苦茶な任務だと思うのだが、ロンズデイルは特に嫌がる素振りもなくこなしてくれている。

心の内や、裏で何を言っているのかまではわからない。


「なんかご迷惑ばっかりかけて……」

「いえいえ、おかげさまで上の覚えも良くなりましたしむしろこちらからお礼を言わせてください」


謝ろうとしたら遮られた。


まあロンズデイルの手柄になってるというのなら少しは気が楽になる。

俺たちは行く先々でかなりろくでもない事態に巻き込まれるので非常に助かっているが、頼りっぱなしで大丈夫なんだろうか。

正直感謝より申し訳なさが先に来る。


「七不思議部を立ち上げた時は、まさかこんなに多くの不可思議に遭遇することになるとは思ってもみませんでしたわ」


ふとそんなしみじみとした呟きを漏らしたウェンディの方を見れば、左手にビール右手に串焼きという令嬢にあるまじきスタイル。

縁者が見たら卒倒しかねない……いやこういう場ではあんな感じでも問題ないのかもしれないな、どっちなんだろう。


この世界は酒が飲めるようになる年齢が早い。

俺の世界でいうところの十五歳ごろ、ちょうど学園に入学できる年齢で解禁なのでこの場にいるメンバーは全員飲めるし、学生たちのパーティーでも普通に酒が出る。

とはいえ好き嫌いはあるようで、メアリとヘンリーくんはあまり飲もうとしないのだが。

ウェンディはけっこう飲む方だとは聞いていたが、さすがにビールを飲むほどとは思わなかった。

俺も若い頃はあれ苦くて苦手だったんだがなあ。


話を戻そう、七不思議についてだ。


この部の活動中に起きるイベントは、本当に濃い。

セラちゃんという幽霊に出会った。

”狭間”や”闇の森”といった場所にも行った。

ウェンディからすれば俺とベルガーンも間違いなく不思議な存在だろう、何しろ異世界人と魔王だし。


そして今回は謎に包まれた大英雄の出自、その手がかりときた。

学園七不思議部改め帝国七不思議部の名に恥じない活動をしていると言って差し支えないだろう。

どれだけ見つかるかわからないからと頭につく数をサイコロで決め、俺たちが入るまでウェンディ一人で特に何するでもなく過ごしていた部活動とは思えない。


今となっては俺たちは、そのへんの貴族や軍など比較にならないくらい帝国に大きな影響を与えているのではなかろうか。

勲章にキャンピングカーの群れにお付きの軍隊、帝国が俺たちに凄まじい額を投資してくれているのがそれを裏付ける。

そしてオレアンダーに言わせればこれでも安いらしい。

俺たちの活動にはそれだけの価値があると見なしてくれているのはありがたい話だが、学生の部活動には重たすぎる評価だろうと言いたい。


「それで次はどんな祭りなんだ?」


しみじみとそんなことを考えつつ、串に刺さった小さな小鳥の丸焼きとかいうグロテスクなものを口に運んでいるウェンディに問いかける。

いやマジで見た目グロいな、なんだあれ。

少なくとも令嬢の食い物ではないような気がする。


「次の予定ですか」


料理と酒をテーブルに置いて咳払いをするウェンディよりも、半分かじられた小鳥の方に目が行くのは人間のサガ的なやつではなかろうか。

実際メアリとヘンリーくんの視線もまずそっちを向いたし。


「次はバーゴイン男爵領に行く予定ですわ」


その言葉に俺の背後で『えっ』という反応が起こる。

そしてその反応の主───セラちゃんに向けて、ウェンディが悪戯っぽい笑みを浮かべていた。


「旧モントゴメリー男爵領、セラさんのご実家があった場所ですわね」


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