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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第九章:一般人男性、祭を巡る。
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第九章:その11

旅への出発はそれから三日後、学生たちが帰省やら旅行やらに出発し貴族寮も閑散とし始めた頃。

正直すぐに貴族寮には誰もいなくなるものと思っていたが、予定の兼ね合いやらそもそも帰るつもりがないやらで夏休み中も寮にはそれなりの数の学生たちが残っていた。

ヘンリー君は別に変ではなかったんだなと安心した。


……いや変人がそれなりにいる、という可能性もあるのか。

よし、考えるのはよそう。


さておき、さておきだ、人が減ると喜ばしいことがある。

それは出発時、俺たちを見物しに来る野次馬が大幅に減る点だ。


俺たちが移動に使う車列は目立つ。

ただでさえ目立つ軍用車両っぽい見た目の上に、うち一台に描かれた「帝国七不思議部」のロゴ。

そんなのが複数、デカくて重いエンジン音を響かせながらやってくるのだから注目を集めるのは当たり前の話だろう。

軍が貴族寮に何しに来たんだ、って疑問も湧くだろうし。


「え、何あれ」


そして今回、来るものがわかっていたはずの俺たちを困惑させる出来事が発生した。

最初に言葉を発したメアリの顔が引きつっているのも無理はない。

おそらく俺の顔も似たようなことになっているだろうし。


今回貴族寮まで俺たちを迎えに来た車両は、五台。

前回はいなかったジープみたいな小さい車両に先導される形で例のキャンピングカーが四台。


そう、増えているのだ。

しかもキャンピングカーの後部には前回は存在しなかったバイクが搭載されているのが見える。

恐らくは、いや間違いなく人も増えていると断言できる。

一体何があったらこうなる。


「お前ロンズデイルになんて頼んだんだ?」

「各地のお祭を巡るので前回の車を貸して欲しいと……」


不安になってウェンディに尋ねてみたところ、返ってきた答えは至って普通。


詳しく聞けば、ウェンディは一台借りて少尉かアンナさんに運転してもらう予定というかつもりであったらしい。

実際二人には事前に話を通し、了解も取っているそうだ。


台数を指定してないせいか?とは思ったがそれは重箱の隅が過ぎるだろう。

普通はこの頼み方で増えるとは思わない。

少なくともウェンディは思わなかったし、俺も思わない。


「お待たせして申し訳ありません」


そうこうしているうちに車列は俺たちの前で止まり、中からロンズデイルが降りてくる。

挨拶も同じ、三台目から降りてきたというのも同じ。

なら四台目は一体、何だ。


「あの……まさか今回もご同行を?」

「もちろんそのつもりです」


即答。

問いかけたウェンディが固まっている。


「ご迷惑でしたか?」

「いえいえいえいえ!決してそんなことはございませんけれど!」


俺たちは何も迷惑ではない。

むしろこんな観光地巡りでしかない旅に軍を同行させて大丈夫なのか、迷惑ではないのかという不安がだいぶ強くある。


「その……何故今回はこのような規模に?」


聞くのは怖いが聞かざるを得ない。

何故こんなことに、というのは問いかけたウェンディだけでなく俺たち全員が抱いている疑問だろう。

少尉ですら困惑が顔に浮かんでいる有様だ。


「皆様にはお世話になっているので手厚くサポートするように、と上の方から言われまして」


そうか、上から言われたのか。

なら仕方ないな。


確かロンズデイルが所属しているのは帝国軍の情報部。

規模やら活動内容やらは聞いたことがないし、聞いて教えてもらえるものでもないと思うので知らない。

いずれにしてもそんな組織が「手厚くサポートしよう」と思う程度には俺たち七不思議部の行動とそれがもたらす結果には価値がある、とかそういうことだろう。


いかん、急に肩が重たくなってきた。

どう考えても学生の部活動に背負わせる重さの期待じゃないだろう。


───この国の連中の考え方は理解できない。


そんなことを考える俺の脳裏には、この国のトップであるオレアンダーとかいう超ド級の変人の笑顔がうかんでいた。


書き始めてからかれこれ2年、書き方もキャラも変わったので加筆修正しようと思い立ち冒頭から書き直しているのですが、予想以外に変わっていました。

加筆修正のせいで繋がりがおかしな部分等出てくるかもしれませんがしばらくはご容赦ください。

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