第九章:その8
その後は以前の情報収集と同様に、各地のイベントにやたら詳しい傭兵たちから「あれに行けこれに行け」とばかりに祭をいくつか教えてもらった。
納得がいかないのは、どれもこれも教えてくれたのは名前のみで内容は聞いても断固として教えてもらえなかったことである。
実際に体験したリアクション芸でも求めてんのか。
お祭り男か俺は。
まあ間違いなく助かったので礼は言ったけども。
「期待してる」
最後の一言は余計じゃないかなこの野郎。
その後の話題は概ね俺について。
なんでそんな行く先々で色々起こるんだとか、隠してるだけで他にも何かあるだろうとかそんな話だ。
前者に関しては俺が聞きたいし、後者に関しては言っちゃ駄目と念を押されてる事がいくつかあるので合っていると伝えた。
酔った勢いで守秘義務を忘れお漏らしするお馬鹿にだけはなりたくない、というのをわかってほしい。
というか俺のこの世界での体験談は本当に飲み会のトークとして強い。
食いつきがすごく良いのでいくらでも話せてしまう。
まあどういう内容を話したところで俺がイジられるのが難点だが。
どうしてこうなった。
「俺が今ここで話せないような出来事も、たぶん七不思議部に入れば体験できるぞ」
傭兵連中が予想しているように、俺自身も今後七不思議部にいる限り不可思議な出来事には遭遇し続けるだろうという確信めいた予感がある。
だがこれに関しては正直俺単体の問題とは思わない。
メアリにウェンディ、何ならヘンリーくんもそういう出来事が寄ってくる星の下に生まれたに違いないと、そんな連中の集合体だから七不思議部はこんなことになっていると、割と強く思っている。
というか俺一人のせいであってたまるか。
なのでまあ、そういった非日常を味わいたい方を七不思議部は歓迎する。
部員はいつでも募集中だ。
「「勘弁してくれ」」
引き気味に断られた。
というか前回は公爵とか辺境伯とかの子女とは絡みにくいとかそんな理由で拒絶されたのが、今回は割とストレートに七不思議部という集団が拒絶されている気がする。
「何でだよ、お前ら話聞いてて楽しそうなのに」
「聞くのと体験するのは違うだろ、常識的に考えて……」
うんまあ、わかる。
笑いの神が降りたみたいなハプニングで笑うことはあっても、自分のところに笑いの神が降りてほしいとは思わないもんな。
そういう職業なら別だろうが、生憎と俺たちはそういう人を笑わせることを生業にはしていない。
というか俺自身、面倒事を好んでいるわけでも何でもない。
七不思議部を辞めてないのは、あいつらといるのが楽しいから。
年が一回りとか違う青少年相手に何いってんだとは自分でも若干思うが、楽しいのだから仕方ない。
なのでもう少し起きる事件事故に手心を……加えてはくれないんだろうなあ。
「俺たちはホソダの体験談を聞くだけで十分楽しいから」
なんでそんな「自分にはもったいない」みたいな文脈なんだこの野郎。




