第八章:その2
その後は他の七不思議部メンバーについて説明したり、常日頃の苦労話をしたり。
学園が閉鎖されるまでに至った狭間での一件についても語りたかったが、口止めされていることを思い出したのでやめた。
絶対盛り上がると思うんだが、残念だ。
喋っていたのはほとんど俺だが、酒が入って饒舌になっていたことと傭兵連中がやたらと聞き上手だったお陰でさほど苦には感じずむしろ楽しかった。
こういう風に歳の近い奴らと飲みながら喋るというのが久しぶりなせいもあるかもしれない。
「にしてもすげえよな、七不思議部」
しみじみとそう言った傭兵に「俺もそう思う」と同調しながら考える。
まず、凄くキャラが濃い。
ウェンディとメアリは言うに及ばず、ヘンリーくんもだいぶ見ていて面白い子だ。
唯一セラちゃんが真っ当な優等生キャラだが、あの子は幽霊であるというオンリーワンの属性持ち。
よって全員濃い、それもすごく。
他にも家柄やら強さやら、俺から見て凄いところは色々ある。
もしかしたら皆、この先何らかの形で歴史に名を残していくんじゃなかろうかと思ったりするほどに。
そしてたぶん、はたから見れば俺も他の面々とそう変わらない。
強さ、頭の良さに関しては間違いなく並かそれ以下だろう。
家柄に関しては何もない。
しかし俺にはオルフェーヴルがあるし、魔力に関しては規格外だと色んな人に太鼓判を押してもらっている。
何より異世界人というすげえ特殊な属性持ちだ。
これで普通を自称できるほど俺の面の皮は厚くない。
「そんな凄い七不思議部では絶賛部員募集中だ、入ってくれ」
このようにいろんな意味で凄いメンバーが揃う七不思議部の目下最大の悩み、それは部員の増えなさである。
ウェンディやメアリが勧誘しても入部どころか興味すら示してもらえず、俺やヘンリーくんだともはややるだけ無駄なレベルで反応が悪い。
「「それは無理だわ」」
そして今回も、即答である。
だが正直「なんでだよ」とはならない。
「俺たちに有力貴族のご令嬢とうまく付き合えってのは、無茶振りが過ぎるぞ」
苦笑とともに向けられた言葉に俺も「だよなー」と相槌を打つ。
そう、平民が入るにはウェンディとメアリの家格が高すぎるのだ。
ヘンリーくんも伯爵家でだいぶ高いのにその上、辺境伯家と公爵家。
帝国でもトップクラスのお家からいらした令嬢たちなのである。
二人とも気安い性格だし部内では身分差など気にしないだろうが、そういう問題ではない。
下の側が気を使う。
気にするなというのは無理難題にも程がある。
「その点ホソダはスゲーよな」
「正直自分でもそう思う」
俺の場合はメアリの方から突撃してきたのが始まりで、それに振り回される形でウェンディとも知り合った。
そして元の世界で家柄による上下関係に触れる機会がなかったこともあり、そういう感覚が薄い。
この辺りの経緯があって気安く接しているが、それでも「これ大丈夫なんだろうか」とふと我に返ることがある。
まあ皇帝陛下に対しての態度の方がヤバいので、恐らく気にしないようにするのが俺の精神衛生上いいだろうと思うのだが。
「まあこればっかりは仕方ない」
どうも上位貴族との繋がり、コネを欲しがりそうな貴族部の学生たちですら尻込みしているらしい。
まあこちらはウェンディとメアリの変人っぷりが貴族たちの間で有名らしいので、そっちが原因で避けられている可能性も捨てきれないが。
いずれにしてもそんな中で、仲がいいからといって傭兵連中に無理強いすることではない。
七不思議部に関して、こいつらに聞くべきことは他にある。
「ところでお前ら、なんか帝国の不思議な話知らない?」
学園七不思議部から帝国七不思議部へ。
変更申請が通り、活動範囲がやたらと広くなった俺たちは今───情報収集を命じられている。