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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第七章:一般人、立ち向かう。
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第七章:その29

背筋が凍った。

というか寿命が縮んだ。


ドラゴンの口から放たれたのは、ビームだった。

この世界では別な呼び名があるのかも知れないが、俺からするとあれはビーム以外の何物でもない。

それともあれは熱線とかいうやつだろうか。

有名な巨大怪獣が吐くやつ。


どっちにしても嫌……というかもはや最悪なのは変わらんなこれ。


先程までのブレスは範囲は広いが遅く、見てから回避することもできなくはなかった。

だが今回のビームは範囲こそ狭いが、速い。

撃つ前に動いたから回避できただけであり、発射を見てから回避はまず無理だろうなと思う。

ただ特徴的かつ若干長い発射モーションがあるので本体の挙動を見てさえいれば、という感じか。


威力に関しては知らん。

見た目的には明らかにビームの方が高そうだが、比較したいとかは全く思わないのでわからない。

とりあえず喰らったら消し炭になりそうな気がする。


「こいつやばくねえか!?」

「今更?」


独り言のつもりだったが少尉が聞いていたらしい。

隣を通り過ぎていく際にいつも通り呆れ果てた声をかけられた。

ご無事で何よりです。


残念なことにこれで少し距離をとって一息つくのは不可能になった。

接近してノンストップで殴り合うしかないというのは勘弁して欲しい。


こっちは人間なので頭も体も疲れるんだぞ。

今のところはまだ大丈夫だが、いつ限界が来るかわかったもんじゃない。

早くこの状況から解放されたい───そう考えたとき、メアリたちの顔が浮かんだ。

あいつらは無事屋敷にたどり着けただろうか。

全員無事でいて欲しい、あと速やかにこの儀式魔法とやらを解除して欲しい。

この微妙にわがままな要求が二つ、心のなかでせめぎ合っている俺はたぶん性格が悪いんだろう。


「すいませんねえ!」


誰にともなく叫び、再びの突撃。

突撃しては魔法障壁に阻まれ、また突撃しては阻まれの繰り返し。

俺の攻撃は見やすいのか読みやすいのか、相も変わらず全て防がれる。


一度くらいは直接殴りたい、そのためにはどうすれば良いか。

そんなことを考えられるようになった程度には、精神的にも余裕が出てきた。

油断だけはしないように、考えに没頭しないように、あとは攻撃の手は休めないように気をつけながら俺は考える。


少尉のように軽やかに動くのは不可能。

憧れはするしできるようになりたいとは思う。

思うがあれは間違いなくこれまで培ってきた経験と才能の賜物で、俺はどちらも持ち合わせていない。

付け焼き刃で真似するとか論外だろう。


隠れてこっそり近づいて、というのも不可能。

ここは空で遮蔽物はなく、暗い空に紛れようにもオルフェーヴルは目立ちすぎる。

今はブースターから放出してる魔力のせいでキラキラしてるので、何割増しどころの騒ぎではない。


あとは魔法障壁をぶち抜けるほど高い威力の攻撃、とかだろうか。

これが一番あり得る選択肢のような気はするが、何をどうやってというのは浮かばない。

普段アドバイスをくれる奴は今は留守だし。


「あの時みたいにできねえかな……」


その時唐突に思い出したのは、この街を包んでいた結界のこと。

俺はあれに魔力を注ぎ込んで破壊できた。

その時と同じように魔力を注ぎ込んで破壊できないものだろうか。


ただ結界と魔法障壁は違うかもしれないし、そもそも原理を教わってないのでできるかどうかの判断すらつかない。

あとはあの時のようにのんびり魔力を注ぎ込める時間があるとは思えない。


「試しに一回、一回だけやってみよう」


たが、無性に試してみたくなった。


勝算は欠片もない。

一度きりの成功体験に引きずられているだけと言われたらそれまでだ。


そもそも俺が一発殴ったからといって、それでドラゴンが倒せるなどという甘い話は絶対にない。

それでも一発くらい殴らせろ、と思う。


なので、試してみることにした。


「少尉!進路に入んないでくださいね!!」


叫び、飛ぶ。


全力で、愚直に、ひたすら真っ直ぐに。


正直俺は今少尉がどこにいるのかを全く把握できていない。

なので聞こえているかはわからないが、一応の声掛けだ。

あんまり思い出したくないが、”死の砂漠”で衝突しかけたし。


視線の先、ドラゴンの手前、俺の進路を塞ぐように分厚い魔法障壁が展開されたのが見えた。

展開が先程までより早い。

野郎、俺がフェイントとか急な進路変更とかできないと思ってやがるな。


大正解だ、腹立つ。

この怒りは魔法障壁に叩きつけてやる。


両腕を前に突き出す。

すぐに、不可思議な感触が返ってきた。

全身に衝撃が来るわけでもない。

先程までは跳ね返されたと思っていたが、やはりこれは押し止められる感覚───あの結界と同じ感触だ。


「ファイトォオオオオ!」


手から魔力を流し込む。

生身の時より大量に、スムーズにできた気がするのはやはり”魔法の杖(ワンド)”と同調しているせいだろうか。


「一発!!」


その時魔法障壁に波紋が生じた───そんな気がした。


ノリさんおめでとうございます!

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砕け!ひいっさぁつ!!!
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