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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第七章:一般人、立ち向かう。
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第七章:高台の屋敷

轟音とともに暗い空に引かれた、一筋の赤い光の線。

音に反応し空を見上げた者たちは一様に恐れと、そして不安の感情を覚えた。


地上から高台の屋敷を目指していたメンバーがその音を聞き、その光を見たのはちょうど目的地に到達した頃。

道を遮る木の門を破壊していいかと話し合いを始めた時だった。


聞いたことのない音、見たことのない光。

それでもそれがドラゴンの放った攻撃であることだけは、容易に推察できた。


空にいたはずの仲間。

間違いなくその攻撃のターゲットとなったであろう二人。

自ら光を放つ黄金の”ワンド”。

光を反射し煌めく白銀の”ワンド”。


光の線が消え去った後にそれら二つの光を確認できた時、彼らは一様に安堵の表情を浮かべた。


「我々は一刻も早くこの儀式魔法を」


指揮官の言葉に全員が頷く。

上空での戦いに対して、彼らができることは何もない。

彼らにとって空はあまりにも遠すぎた。

彼らにとってドラゴンは、あまりにも強大すぎた。


かつて空の覇者として君臨していた種族、ドラゴン。

それに空で挑むなど、無茶や無謀などという言葉では片付けられない行為だ。

物語や歌で討伐される際もほとんどが巣穴での戦い。

空でドラゴンと戦ったとされるのは世界最強の存在と称された大英雄、ワードプラウズくらいのもの。

しかもそれすら誇張や創作が疑われる有り様だ。


それほどまでにドラゴンとの戦いは、空での戦いは現実離れした代物なのだ。


だがそれを現実に行っている者が、二人。


任務が無事終わったならば、物語との境目が曖昧な報告書を書かねばならないなと指揮官は苦笑する。

そして彼らに報いねばならぬと、間に合わせねばならぬと決意する。


「それじゃ、行きますわよ!」


武姫がハルバードを大きく振りかぶる。


門を破るか否か、話し合いで結論が出たわけではなくそれは武姫の勝手な判断。

それでもその行動に異論を唱えるものはいない。

皆、先へ進むことを望んでいる。


乾いた音が響いた。

僅か一撃、ハルバードの一振りが門を木っ端微塵に粉砕する。

砕け散った門の向こうに見えたのは手入れの行き届いた庭園と、立派な屋敷へと続く道。


そして鎧を着込み、武器を構えた骨の戦士たち。


「スケルトン……!」


人の成れの果てとも失われた魔法で創られた存在とも、魔獣の一種とも言われるモンスター、スケルトン。

大陸南部の諸国群に存在する得体の知れない墓所のような場所、あるいはそこに近いダンジョンでのみ存在が確認されており、帝国国内での出現報告はない。

そのため遭遇経験があるのはほとんどが国を跨いて活動する冒険者たちであり、帝国軍人や貴族がスケルトンを実際に目にするのはこれが初めてとなる。


「ホソダさんといると、本当に変わったものを目にしますわね」

「そッスね」


武姫も剣士も、学園に入学する前から獣や魔獣の類との戦闘経験はそれなりにあったし知識も持っている。

そんな彼女たちからしても、異世界人と出会ってからの体験は───濃密だ。


初めて遭遇する魔獣、遭遇することはないだろうと思っていたモンスター、見たことも聞いたこともなかった怪物たち。

場所に関しても”闇の森”ですら未知の領域であるのに、その上”狭間”やこの得体の知れない都市だ。


これらは全て、異世界人と出会わなければすることのなかった体験だろうと彼女らは断言できる。


指揮官や兵士たちも同様だ。

彼らは様々な戦場や遺跡を巡ってきたが調査に同行した”死の砂漠”からこのかた、異世界人が現れてからこのかた未経験の事象にばかり遭遇する。


「これはあの男にはどうあっても生き延びてもらわねばならないな、弟よ」

「そうだね兄さん、そのためにも急ごう」


スケルトンの群れに向け、真っ先に駆け出した双子。

彼らは感じていた、この先異世界人と共に歩めば愉快なことが続くだろうという予感を。


思考は多種多様、されどその意思は共通。

他の者たちも双子に続き武器を構え、前へと進む


かくして地上でも戦闘が始まった。


空にはいまだ金と銀の星が在る。


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