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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第七章:一般人、立ち向かう。
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第七章:その17

その時の感触を例えるなら「卵に指が入った」だ。

本当に少し力を入れただけで指がめり込んだのだ。


「うわあ」


俺は情けない声とともに、慌てて両手を離した。

おわかりいただけるだろうか、傷つけてはいけないものに傷をつけてしまった時に発生する反射だ。

多分この結界は傷つけていいものだし、何なら破壊を企図して俺は魔力を注ぎ込まされていたんだろうとは思う。

思うが、さすがにびっくりしてしまったのだから仕方ないだろう。


周囲は俺を見るべきか結界を見るべきか一瞬悩んだ末に、結界の方を見る方向で概ねまとまったようだ。

そんな中一人、少尉だけは顔を背けてプルプル震えている。

やはり俺の挙動が面白かったらしい。

いつものことである。


さておき、視線を戻せば結界は崩壊の真っ最中といった感じになっていた。

俺の手があった場所から徐々に崩れ落ち、霞のように消えていく。

この調子だと少なくともセメント化した部分は消えて無くなりそうな勢いだ。

めっちゃヒビ入ってるし。


「兄さんあれは建物だね」

「それなりに大きな街があるように見えるな、弟よ」


遠慮なく俺の前に割り込み中を覗き込んでいるダブルジョンが邪魔でよく見えないが、結界の割れ目から見えるのは彼らの言う通り複数の建物。

やはりベルガーンの言う通りここには街があったようだ。


気になるのは結界の中がやけに暗いこと。

森の中も薄暗いが、そんなレベルではない。

この中は夜なんじゃないかというくらいの闇だ。

今いる場所と明るさが違いすぎるお陰で目のピントが合わず、遠くがよく見えない。

こういうのは魔法もうまいことやってはくれないらしい。


「よく見えないな、弟よ」

「入ってみようよ兄さん」

「待てや」


トントン拍子に話進めすぎだろこの兄弟。

慎重とかそういう言葉が辞書に載ってないタイプの人種か。

例えば……ウェンディみたいな。


「「ウィル、先に行くよ」」


俺の静止は完全に無視された。

ロンズデイルに対してもお伺いを立てる気がない。


「わかった」


そして当のロンズデイルも止める気がなさそうに返事する。

止めても無駄だと思ってるのだろうか、おそらくはそうなんだろうな。

仲良さそうには見えるが、どういう関係なんだこいつら。


「入って大丈夫か、これ」

『何から何まで大丈夫とは断言せぬ』

「またかよ!」


ベルガーンからは、先日狭間で聞いた微妙極まる返答。

こいつすっかりこの言い草が気に入りやがった。

何から何まで大丈夫と断言しろ。

お前に求められてるのはそういう説得力だ。


「入った方がいいですか?」


今度は背後のロンズデイルに問いかける。

俺としては「ここで引き返しましょう」という回答が望ましい。

何しろものすごく嫌な予感がするからだ。

まあこれは俺のシックスセンス以前の問題で、森の中に結界と暗闇に包まれた街とかあったら誰だって嫌な予感がするだろう。

むしろ進んで入っていく奴がおかしい、お前らのことだぞダブルジョン。


「そうですね、入りましょう」

「ですよね」


返事は予想通りだった。

行きたくないとも言いにくい……というか、言ってどうするって話なんだよな。

この場で一人待機して皆の帰りを待てるかと言われたら無理だし。


意を決して、人間が立ったまま余裕で通れるサイズとなった結界の穴から闇の中へと入る。

何も出ないでほしいと思うが、きっとその願いは叶わないだろう。

これは、確信だ。



今日のWIN5、やっぱり買ったのは未来人なんでしょうか。

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