表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第七章:一般人、立ち向かう。
160/300

第七章:その11

結局俺はその日のうちに少尉を通じてロンズデイルに「同行させていただきますよろしくお願いします」という旨を伝えた。

こんなふうに数時間引き延ばすくらいなら、要請されたその場で即返事しといたほうが心象良かったのではなかろうかと思う。

まあそこの後悔は今しても遅い。


その後に知らされた予定日は一週間後。

手続きだの何だのはロンズデイルの方でやってくれるらしく、俺がするべきことは特になし。

なのでただいつも通り学園に通いながら当日を待つだけだったのだが、これがやたらとソワソワした。

気分は遠足前の小学生、行き先は命の危険がある場所なのに不思議なものである。


そしてその一週間もあっという間に過ぎ、ついにやってきた出発当日。


「お前まさかついてくる気か」


指定された貴族寮玄関前には、さも当たり前のように俺の隣に立つメアリの姿がある。

野外活動用と思しき動きやすそうな服を着てリュックも背負ってと準備万端だ。


「え、うん」

「ウッソだろお前」


まさかの事態である。

どこにこいつの同行を許可できる要素があるんだ。


ウェンディはまだわかる。

こいつが行くと言い出した時、戦闘力に関してはあまり不安は抱かなかったし。

同行を提案されたロンズデイルや申請された学園側も、その点については特に問題ないと思われた可能性すらある。

問題になるとしたら家格が高すぎることだったがそこは何とか説得……いや勢いで押し切ったんだろう。

どういう理論展開をしたのかは若干興味がある。


ヘンリーくんもわかる。

彼も強いし、立場的にもウェンディの申請が通ったなら彼もそりゃ通る。

というかヘンリーくんはあの時特に意思表示をしてなかったが、同行するんだな。

ウェンディに付き合わされたんだろうか、それとも自分の意志による参戦だろうか。

前者ならお疲れ様としか言いようがないが、俺としては後者の可能性の方が高いと思う。

この子はあまりにも付き合いが良すぎるのだ。


「さすがにお止めしたのですが……」


俺が抱いているような懸念は、どうやらウェンディも抱いているらしい。

なのでメアリの同行についてはやめたほうがいいと止めたそうだ。

そりゃそうだとしか言いようがない、危険すぎる。

若干「いやそもそもお前もやめとけよ」とは思ったが。


「「問題ない」」


そんな中でメアリを同行させるよう提案したのは、なんとダブルジョンと判明した。


なんでもウェンディがロンズデイルに任務への参加を打診したところ、正式な回答が返ってくるより先にこの双子がやってきたらしい。

要件は「魔王ベルガーンと自分たちを繋ぐ通訳ができるか否か」の確認。

それは俺は知識的に当てにならず、少尉は常に自分たちの傍らにいることはないとの判断に基づいてのもの。

要するに通訳の頭数を増やすのが目的だ。


まあ実際俺には専門的な知識が全くないからその通りなんだが、本当に俺はいらなくてベルガーンにだけついてきてほしかったんだなこいつら。


さておき、その確認に対してウェンディは「ベルガーンとは会話可能だが、魔法分野は正直言って知識不足である」と答えた。

ウェンディも座学の成績は良いのだが、いかんせん知識量に関しては不足感が否めかったそうだ。

そしてそれを受けて「ではベルガーンと会話ができて知識もある者は誰か」という話になり……その条件をほぼ完璧に満たす者として名前が上がったのがメアリ。

学業の成績が優秀なのは俺も知っていたが、どうやら知識量もダブルジョンのお眼鏡にかなうものだったらしい。


こうして、晴れてメアリの同行は確定したのだ。

いや少しも晴れてねえわ。


「危ないだろさすがに」


こればっかりはどうかと思う。

そう思って食い下がってはみたが───


「どうしても必要な人員だ」

「僕たちが安全は請け負うよ」


ダブルジョンは頑として譲らなかった。

この調子だとウェンディにも、ロンズデイルにも同じようなことを言って押し切ったのだろう。

そして二人が……特にロンズデイルが折れててしまったのなら、俺にはもう反論のしようがない。


「足手まといにはならないようにするから」


そもそもメアリ自身も当初「邪魔になるから」と任務に参加する気がなかったらしい。

だがダブルジョンに説得を受け「役に立てるなら」と承諾したというのが流れ。

その辺りの事情を聞き、申し訳なさそうにしているメアリの顔を見ていると何も言えなくなる。


結局七不思議部は、学園から離れられないセラちゃんを除いてまさかの全員参加となってしまった。


「危なくなったら逃げろよ」

「うん」


俺からメアリに言えるのはこれくらいのもの。

というか俺自身が逃げたい、できれば今すぐに。

何しろ足手まといっぷりではメアリと同等かそれ以下だ。

ここで俺が突然駄々をこねたら任務自体中止にならないだろうか。

その場合俺の社会的信用は死ぬけど、若干その方がいい気がしてきた。


「メアリ嬢には私も気を配っておきますので」

「すいません、よろしくお願いします……」


あとは俺の護衛ということでアンナさんも参加。

護衛が本業らしく、かつ強い彼女がついてきてくれるというなら少しは安心だろうか。

ちなみに服装はメイド服ではなく、動きやすそうなジャケットとパンツを身にまとっている。

なんというか逆に新鮮である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんだかほいほい主人公の所離れて好き勝手歩いてる気がする魔王様… こういう話聞くと一応離れられる距離の限界とかあるんかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ