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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第七章:一般人、立ち向かう。
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第七章:その8

「「なるほど」」


俺の隣には魔王ベルガーンなる輩が存在すること。

ほとんどの者にはその姿が見えないが、魔力が高い者の中には見える者が僅かに存在すること。

ロンズデイルからそれを聞いたダブルジョンは、同時にそう呟くと似たようなポーズで思考モードにはいった。


「「これまでに見えた者は誰だ?」」


双子の目が僅かに鋭くなった気がする。

もしかすると研究者スイッチ的なものが入ったのかもしれない。


俺は僅かに気圧されながらも、自分が把握してる限りの名前を挙げる。

少尉、アンナさん、メアリ、ウェンディ、ヘンリーくん。

俺と、入れて良いのか迷ったのでセラちゃんは除いた。

僅か五人、こうしてみると本当に少ない。

そしてその割に学生が多いなと思う。


「弟よ、これは本当に魔力由来か?」

「何とも言えないね、後で魔力測定の結果を取り寄せておくよ」


ああでもないこうでもないと推測を並べ、長くなりそうな会話を始めたダブルジョンを眺めていて一つ気付いたことがある。

二人の瞳の色が僅かに違うのだ。

青系の、同じようで違う色。

最初は光の加減かと思ったがどうやら違う。

本当に誤差の範囲なので気付く奴は稀だろう。

我ながらよく気付けたというか見えたなと思う。

どっちがどっちかは、正直言って判別できるか微妙だが。


「そろそろ任務の話をさせてくれ」


そう言ったロンズデイルの顔には苦笑が浮かんでいた。

何となく「またやってるよ」とかそんな感情が込められているように見えるのは気のせいだろうか。


「「どうぞ」」


ともあれそれでダブルジョンの会話は止まった。

いつまでも話してそうな雰囲気だったので意外だ。

長い付き合いだとか古い友人だとか言っていたが、あれは本当なんだろうなと感じられる。


そしてそれにもう一度苦笑を向けながらロンズデイルがテーブルの上に広げたのは、一枚の地図。

当然書かれているのは固有名詞ばかりなのだが、今の俺はなんとなくはそれらを読むことができる。

勉強頑張ったかいがあったというものだ。


とはいえなんとなくでは理解しきれないのが地名というもの。

”死の砂漠”と書かれた北部のデカい空白と、その近くの海沿いにオーレスコと書かれた都市が目に入ったことで辛うじて帝国の地図と理解できたが、南から見てたら何もわからなかっただろう。

それにしてもかなり広いな帝国。


「今度私が向かうのはこの”闇の森”だ」


ロンズデイルが示したのはそれなりの面積が緑色に塗られたエリア。

そこにはロンズデイルが口にした通り”闇の森”という文字が見えた。


”闇の森”は帝国南東部に広がる手つかずの森林地帯である。

手つかずといっても自然保護区とかそういう話ではなく、危険だから放置されているだけの場所だ。

深い霧と複雑に群生した植物、そして多くの魔獣たち。

過去に多くの住民や冒険者を飲み込んできた、恐ろしい場所。

それが”闇の森”と呼ばれるエリアだ。


位置づけは”死の砂漠”に近いが、あちらと違い魔獣たちが森の外に出る。

また、得体の知れない強い魔力反応が観測されたことがある。

これらの理由から帝国も幾度となく調査隊を送っているが、結果は振るわない。

未帰還者も数多く出た。

一度だけ送り込まれた大規模な調査隊が森の中に強い結界が張られているのを観測したのが、唯一にして最大の調査結果と言えるだろうか。

それから十年以上、”闇の森”の調査は行われていなかった。


何も知らない俺とベルガーンに向けてそう説明したロンズデイルは、「そこの調査に向かう」と言った。


「兄さん、ウィルはまさかこれに付き合えと言っているのかな?」

「弟よ、私も今まさにそれを確認しようと思っていたところだ」


それに協力を求められたダブルジョンは、たいへん嫌そうな顔をしていた。

そして俺には何故か、こいつらの気持ちが痛いほどわかった。



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