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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第六章:一般人男性、探索する。
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第六章:その18

ともあれ召喚と同調は特に問題なく、つつがなく完遂。

パニックホラー等ではこういう場面、車のエンジンがうまくかからず駄目になるパターンが王道展開として存在するので心配だったが、そういうのはなかった。

ひとまずは安心である。


そして少し高くなった視点から周囲で皆が得体の知れない怪物どもと戦っているのを見れば、改めてな感想になるが皆とんでもなく強い。


少尉は相変わらずの暴れっぷり。

怪物たちの間を縫うように動き回りながら剣を振るい、銀光を煌めかせるさまはまるで稲妻。

何が居ようが何体いようが斬り裂き突き進む。

きっと彼女の進軍を止められる者などいないのではなかろうか。

俺が詩人化してしまうほど凄まじい。


ウェンディは正直だいぶやかましい。

高笑いしながら、大声で何かを叫びながらハルバードを振り回しているんだが……竜巻でも起こってんのかってくらいの勢いで怪物が叩き斬られ吹っ飛んでいる。

今も二体宙を舞って……あ、一体だ。

人一人分くらいのサイズの腕が生えた鬼のような怪物だったものが、腕と身体を分割され別々な方向に飛んでいった。

ベルガーンのことが見える時点で強いんだろうなあとは思っていたが、思ったよりだいぶ強かった。


アンナさんはそのフォロー。

ウェンディは無計画に暴れ回っているように見えて、実のところ戦えないメアリとセラちゃんを守るように立ち回っている。

しかし得物が得物なこともあって攻撃が大振りであり、どうしても細かい討ち漏らしが出る。

それを的確に弾き飛ばしているのがアンナさんだ。

素早い相手も何のそのといった様子で、腹に獅子の顔が生えた狼男が四本の腕で繰り出した矢継ぎ早の攻撃を全部両の腕で捌いている。

しかも合間合間に重そうな一撃を加えながらだ。

どんなスピードなんだよ。

最終的に狼男は蹴りがまともに入ってどっかに飛んでいった。

帝国のメイドは護衛も兼ねているらしいが、まさしくそんな感じ、安定感が半端ない。


そしてヘンリーくん、震えてやしないかと心配したが何故か元気いっぱいに剣を振るっている。

見た感じ顔色もいい。

ホラーが苦手ならこの気持ち悪い怪物の群れを相手取るのは難しかろうと思っていたのだが、完全に杞憂となった。

いやなんで杞憂で済んでんだよ。

今も剣士風のというか剣が身体と同化してる怪物が、剣ごと身体を両断された。

血が吹き出まくってるので苦手な人はとことん苦手な光景のはずだが、ヘンリーくんはケロッとした様子で次に行って次もぶった斬っている。

もしかしてジャパニーズホラー的な想像を掻き立てるタイプの怖い話は心底苦手だが、アメリカ的なグロいホラーは全然大丈夫とかだろうか。

基準は物理で殴れるか否か……あり得るな、あの暴れっぷり見てると。


「俺も適当に暴れりゃいいんだよな?」

『そうだ』


怪物どもが強いのか弱いのか、厄介なのかそうでもないのかは、戦っている四人が強すぎるせいもあって見ていてもよくわからないというのが正直なところだ。

今は全く危なげないと言い切れるが、どこで歯車が狂うかはわからない。

そうならないためにも戦力は多いほうがいいと思う。

そしてその点俺というか”オルフェーヴル”ならば問題なく行けるだろう。

皆のおかげで余裕を持って召喚できた、あとは俺も───


『どうやら怪異どもは貴様が目当てのようだからな』

「なんて?」


突然聞こえた衝撃的な言葉に、そんな話は聞いてねえぞと口にしようとした刹那───眼前で爆音とともに光が弾けた。

何が起こったかはわかる、何しろ似たようなことを何度も何度も体験しているのだから。


攻撃魔法の炸裂、それも俺の顔面でだ。

魔法障壁がなければ即死だったし、びっくりして心臓止まるかと思った。


「何なんだちくしょう!」


心臓がバクバクしてるせいで若干裏返った叫びを上げながら、それが飛んできた方向を見る。


「え、嘘だろ」


そしてそれを視認した瞬間、今度は間の抜けた声が出た。


まだ数多く残る怪物たちの群れの向こう。

そこにいたのは黒い、”魔法の杖(ワンド)”のような意匠とサイズの巨人が二体。

俺は、そいつらと似た見た目の存在を知っている。

正確に言えば、戦ったことがある。


───”デーモン”


”死の砂漠”にて俺が戦った、最初の敵。


しかし今回のは二体とも、見た目や武装があの時の奴とはまるで違う。

片方は剣士風、もう片方は魔法使い風という意匠でそれぞれ剣と杖を携えている。

ただ全体的な印象や漆黒ベースの色合い、あとは上手く説明できないが纏っている雰囲気はかなり近いような気はするのでこいつらが”デーモン”なのは間違いないだろう。


さて、俺は”デーモン”についての詳細をよく知らない。

知っていることがあるとしたら連中は意思を持った”魔法の杖(ワンド)”みたいなものとかそんな程度だ。


だがそんな浅い知識でも一つだけ、確信をもって言えることがある。


それは視線の先にいる二体は、間違いなく敵だということだ。


そしてそれを裏付けるように、連中は再び俺に向け魔法を解き放った。


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