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魔王と行く、一般人男性の異世界列伝  作者: ヒコーキグモ
第六章:一般人男性、探索する。
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第六章:その4

部屋の中に入った俺たちが目にしたのは、優雅にお茶を飲む一人の女子生徒。

手足はすらりと長く背も高い、整った顔立ちも相まってモデルのような佇まい。

美しい赤のロングヘアも目を引くし、制服も大変よく似合っている。

間違いなく美少女、そう言い切れる人物だろう。


「ようこそ、学園七不思議部へ」


彼女はティーカップをテーブルに置き、こちらに柔和な笑顔を向ける。


「部長を務めております、ウェンディ・ヨークシャーです」


立ち上がり、これまた優雅な所作でのお辞儀。

洗練された一連の動作は、彼女が一流の名家に生まれ育った令嬢であると雄弁に物語っていた。


───どうやら先程は、これをやろうとしてしくじったらしい。


「帰るか」

「なんでですの!?」


踵を返して立ち去ろうとしたら止められた。


「TAKE3まで付き合ってやったんだから満足しろ!」


この一連の動作を完遂するまでに俺たちは二度、部室に入るところからやり直させられている。

現状はまさに三度目の正直というやつだ。


TAKE1はお茶が気管に入ったせいで失敗。

TAKE2は立ち上がる際に椅子が倒れて失敗。

だいぶいい音がしていた。


正直俺たちはかなり付き合いがいいと思う。

普通なら耐えられるとしてもTAKE2までだろう。


……むしろ何故俺たちは付き合ってしまったのか。


「わたくしは第一印象を大切にしているだけですわ!」

「第一印象ってのは文字通り一発目の印象のことだからな!?」


───変人。


果たしてこれ以外にどんな第一印象を抱けというのだろう。

さすがに出会いの場面でリテイクを要求してくるやつに出会ったのは人生で初めてだ。

しかも二回、二回もだ。


「くっ、このままではわたくしのイメージに消えない傷がついてしまう……!」


もうついてるよ、でっかいのが。

「何とかしなくては」とか言ってるけど、正直もうどうにもならないと思う。

というか何もしないほうがいい。

こいつは行動すればするほどドツボにハマる人種だと断言できる。


「えーと、ヨークシャーということはヨークシャー辺境伯家の……?」


ヘンリーくんによるフォロー、あるいは話題の転換。

やはりというかなんというか彼、ものすごく優しいんだろうなあ。

そこをロン毛に利用されてしまったわけだが、美徳なのは間違いないのでそのままでいてほしい。


いかん本件とは全く関係ない上に解決済みなのに、またロン毛の好感度が下がってしまった。


「その通り!名高き武門の家柄であるヨークシャー辺境伯家の長女、それがわたくしウェンディ・ヨークシャーでしてよ!」


なんかすげえ嬉しそうに高笑いし始めたぞこいつ。

これが素だな、間違いない。

何をどう考えても先程の優雅な令嬢ムーヴは向いてない。

属性がだいぶ違うタイプのお嬢様だわこれ。


「改めましてようこそ学園七不思議部へ、貴方がたの入部を歓迎いたします」


完全に立ち直ったのか開き直ったのか、あるいはもうやらかしは記憶の彼方なのか。

いずれにしてもウェンディは快活な、いい笑顔をこちらに向けてきた。

うんまあ、最初からこの挨拶してたほうが絶対印象良かったと思う。

何故あんな向いてないことにチャレンジしたんだ。


「ところで他の部員は?」

「わたくし一人でしてよ!」

「いねえのかよ」


どおりで物が少ないと思ったわ。

部室内にあるのはロッカーに本棚、あとは高そうなテーブルとソファのみで、かなりがらんとしている。

そして高そうなソファとテーブルがめちゃくちゃ浮いている。


「大丈夫、これからは皆さんのお陰で寂しくありません!」


寂しかったのか。

まあ一人だとそうなるよな。

気持ちはわかるというか、よく続けられたもんだと思う。


「ところでこちらもお尋ねしたいことがあるのですが」

「何だ?」

「そちらのエルフさんと筋骨隆々なオーガさんも入部希望者ですか?」


お前ベルガーンのこと見えてんのかよ。


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