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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編 7 乳スパンキング

作者: スモークされたサーモン


 これも天啓ですね。『乳スパーン』という言葉が天より舞い降りたのです。大丈夫かな、自分。





 ある日、世界は突然滅びに直面しました。


 空がいきなり割れたのです。


 青い空が真っ二つに割れて真っ黒な『なにか』がそこから出てきました。そしてじっと地上を見つめ始めたのです。


 割れ目にある『なにか』は真っ黒であることが分かります。ですがそれ以外は何も分からない不思議な『なにか』でありました。見ても認識が出来ず。写真に撮っても映らない。しかし視線は強く感じるのです。


 それはただただよく分からない『なにか』だったのです。


 その『なにか』は少しずつ地上へと落下を始めました。


 この時、空を見上げていた皆が直感致しました。


 あ、これ、あかんやつだ。と。


 世界は大混乱になりました。でも人類は強かでした。何人もの天才が寄り集まり何とかして『なにか』に対する対策を見つけたのです。


 そして世界を救うためにNGOの組織が作られる流れになりました。


 その組織の名は『乳スパンキングオーガニゼーション』


 略して『乳スパーン』です。乳は『ちち』と読みます。


 現役女子高生である私、高梨ペタ子はそこでアルバイトをしております。

 

 そうです。


 乳をスパーン! と致しますのがわたくしのバイトでございます。


 1スパーン! は五千円でございます。お金に貴賤はございません。勿論、職にも貴賤はございません。


 女子高生にはお金が必要なのでございます。わたくしも年頃の娘でありますので。


 念のために申しておきますが、スパーン! 致しますお乳はわたくしのお乳ではございまん。


 乳スパーン! では三十路以上の殿方をスパーン! するのが正統派でございます。わたくしのお乳は心に決めたお方にしか触れさせません。悪しからず。


 今も空に浮かぶ『なにか』は地上へと落下をし続けております。ですが《おっさんが乳をスパーン! されてる間は『なにか』が悶えるおっさんに見入ってるみたいで落下が止まる現象》が発見されましたお陰で世界はまだ滅んではおりません。


 どうやってこんな現象を見つけたのか。あまり踏み込むべきではないのでしょう。大人には大人の世界がありますゆえに。


 乳スパーンのお偉いさんは今も『なにか』に対する対抗策を探っております。今は現状維持だけですが望みは少なからずありそうです。


 それゆえに今日も世界中で殿方のお乳が乳スパーン! されているのです。全ては世界を救うためですわ。ですから……。


 朝の満員電車でスパーン!


 朝の通学路でもスパーン!


 勿論授業中もスパーン!


 休み時間もスパーン!


 次の授業中もスパーン!


「高梨ちゃん、やり過ぎだよぉ!」


 あら? 学友から乳スパーンストップが掛かってしまいましたわ。


 同級生の方々は三十路を越えた殿方ではありません。ですから乳スパーン! する必要は皆無でございます。皆様喜んで下さいますが。


 わたくしの父も右のお乳から出血してしまうほどに乳スパーン! されてしまいました。お母様は微笑んで居られましたわ。わたくしも娘として深くは追求致しません。家族とはそういうものでございます。


 三十路以上の殿方をスパーン! しないとバイト代も支払われません。ですか日本語にはこういう言い回しがございます。


『ものはついで』と。


 今日も学舎には男の子の悲鳴とスパーン! という甲高い炸裂音が木霊しております。人はそれぞれ異なる性癖を抱えていることをわたくしは知っております。必要なのは寛容の精神でございますわ。


 学友も羨ましそうに乳スパーン! を観覧しております。ですが、わたくしも年頃の乙女です。


 人に見られることにあまり慣れてはおりません。


 ですがこれも世界を救うためでございます。


 お昼になってもスパーン!


 お昼休みもスパーン!


 三巡目に突入してスパーン!


 少々手が腫れて参りました。今日のスパーン! はここまでのようです。


 沢山スパーン! 出来てわたくしも満足……いえ、これも世界の為です。わたくしの性癖は関係ございません。


 

 ◇



 乳スパーン! には厳格なルールがございます。それは『素手』で『素肌』の『お乳』を『ひっぱたく』事です。


 これに加えて『三十路以上』で『男性』という条件でしか乳スパーン! は成立致しません。


 空の上に鎮座致します『なにか』も条件に合致致しませんと無反応だそうです。


 殿方が悲鳴を上げるか否かは問題になりません。そして叩き手の性別も問われません。


 世界には様々な性癖の方が居られます。


 空の上の『なにか』も中々に業の深い存在のようでございます。


 空が割れ、そこから『なにか』が現れてから一月が経過しようとしていました。


 世間は今日もスパーン! という音に溢れておりました。


 そんな折り、わたくし宛に『乳スパーン』から電話がございました。



 ◇



 あの空に浮かぶ『なにか』は乙女による乳スパーン! を求めているようだ。


 多くの研究者による観察と研究により、それが明らかになりました。


 乙女が殿方のお乳をスパーン! すると目に見えない謎のエネルギーがお乳の周辺で発生。その後、あの空の『なにか』へと吸い取られていくそうです。


 理屈も仕組みもさっぱり分かりませんが、とにかく乳スパーン! をすれば良い。それだけは確かなようです。


 そしてこの事実が判明してすぐ。わたくしに人類救済の大役、その白羽の矢が立つことになりました。


 人類はようやく本腰を入れて『なにか』と対峙する事になったのです。


 その方法が殿方千人切り。


 空の『なにか』が求めるもの。それを与えることによって元の世界に帰ってもらおう、という作戦が立てられました。


 元の世界に帰ってくれる保証はありません。


 現状ではそれしか手がないのです。傍観していても事態は悪化の一途を辿るだけ。


 既に三十路を越えた殿方の多くが雲隠れ致しました。皆様スパーン! されるのを嫌がるようになってしまったのです。わたくしの父は相変わらず母と仲良くやっておりますが、そんな殿方は少数でございます。


 世界はここに来て『殿方の逃亡』による破滅の危機に直面していたのです。


 NGOの組織である『乳スパーン』はこれを打開すべく大規模作戦を展開することにしました。


 それこそが殿方千人切り。


 殿方で円陣を組んでのエンドレス乳スパーン大作戦です。参加される殿方は全員縛って動けないようにしてあります。これも世界を救うため。仕方ありません。逃げる方が悪いのです。


 わたくしはこの作戦の叩き手になって欲しいと乳スパーン本部から要請を受けたのです。


 これは世界各地で同時に行われる大作戦になります。わたくしは日本代表として選ばれました。わたくしは普通の女子高生なのですが……これも世のため人のためでございます。


 乳スパーン! 千本叩き。


 不肖高梨ペタ子。全力でお役目に挑みたいと思います。これも全ては世界のため。ものすごく楽しみしております。歓喜のあまり手が震えてしまいますが、ただの武者震いです。



 ◇



 乳スパーン大作戦当日。待ちに待ったこの日がやって参りました。


 その日、空の『なにか』は、いつものように真っ黒でよく分からないものでした。


 青空を切り裂いて現れた不可思議なもの。


 殿方のお乳をスパーン! するとそれに見入ってしまう業の深い『なにか』です。わたくしも今では少し親近感が沸いています。


 彼のものが現れなければわたくしも『乳スパーン!』に目覚める事はなかったでしょう。


 普通に暮らして、普通に結婚をして、そして普通に死んでいく。


 そんな生き方に疑問すら抱かずに年を重ねる事になったのでしょう。


 ですが……。


 悶える殿方の泣き声を聞きながら更にスパーン!


 悲鳴を上げる殿方のお乳を笑いながらスパーン!


 わたくしはそれを嬉々としてやり遂げるような、そんな乙女になってしまったのです。


 わたくしは……もう以前のわたくしには戻れないのです。


 今日。この作戦であの空に浮かぶ『なにか』が元の世界に戻ってしまったら……。


 ですが、それは全てが終わってから考えるべき事なのでしょう。あの『なにか』が地上に落ちてきたら全てが終わる。何故かそんな確信があるのです。


 それが世界人類共通の意識なのです。


 だからわたくしは今日。


 全力で乳スパーン! を致す所存でございますわ。


 後悔しないように。後腐れのないように。全身全霊でお乳をスパーン!


 ただひたすらに感謝の乳スパーンを。



 そして……作戦決行の時間が遂にやって参りました。殿方千人切りの始まりでございます。この日世界はスパーン! という音と殿方の悲鳴で満ちるのです。


 腕がなります。いえ、鳴らします。


 

 ◇



 かつて世界に危機が訪れた。


 人類による核戦争ではない。それよりも危険なものが地球に現れた。


 それは『名状し難きなにか』であった。


 それは空を割って出てきた『なにか』であった。


 何故そんなものが空を割って現れたのか。


 誰にも分からなかった。


 だが空を割って現れた『なにか』は地上へと落下を始めた。人類はこれを『破滅をもたらすもの』であると直感した。


 地に着けば間違いなく滅ぶ。


 何がどうなって滅ぶのかは分からない。だが間違いなく滅ぶ。


 そんな確信が人類全てに共感された。


 人類はこの危機を打開するために頑張った。


 その具体的な内容なのだが、実は後世に全くと言っていいほど伝わっていない。


 滅びをもたらす『なにか』が現れた。そして人類は頑張った。


 これが現存する情報の全てになる。


 世界はこうして滅びを免れている事から人類は確かに頑張ったのだろう。


 どれだけの犠牲や人柱が立てられたのか。それを知る由はない。


 


 今回の感想。


 書いてて超楽しかったです。乳スパーンってなに!? と突っ込みながら書いてました。



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