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31顛末*

 暗くなってきた頃に、行政書庫での作業を終え、殿下とともにウンジュを部屋まで送る。夜道に後宮に出入りするには、本来であれば手続きが必要らしいが、顔パスな奴が1人いるからどこからでも入れる。


「ソンイとウンジュ、来週も作業を手伝って貰っていいか?ここまでわかったから、お前だって続きを調べたいよなぁ?当然、手伝ってくれるだろう?ウンジュは週末だけでいいから。」

「来週は実家に戻ってみてこないと。その後は試験前だし、しばらくは無理ですね。」

「……試験より重要なことを調べているのに。」

「学生には試験が一番です。その件は急ぎませんし。きっちりと状況証拠を積んでいって、現場を押さえるしかありません。焦って手を出すと逃げられます。」

「……ウンジュだけでも。」

「送り迎えに信頼できる人をつけられるか?」

「それは任せてくれ。」

「ウンジュ、手伝ってくれるか?」

「……兄上が仰るのであれば。」

「護衛の技術を習得している女官がいるから、それを迎えに行かせよう。お前、セリをク女官の部屋まで寄越しておいてくれ。」

 殿下が護衛にそう言うと、側にいた男の人が1人走っていった。灯りのともる、美しい王宮の建物を通り抜けながら、夜道をウンジュの部屋へと向かっていく。今日は月もなくてあたりはほの暗い。

 部屋につくと、外にカン女官が出てきて、護衛の女官だという人が都合よくその場に現れた。

「ウンジュ、これがセリだ。普段は俺の警護をしている。」

「……よろしくお願いします。」

「セリです。よろしくお願いいたします。」


 部屋の明かりに照らされて、女官服のセリという護衛官と顔合わせをすると、ウンジュはそのままカン女官に引き渡された。

「じゃ、お休み。」

「はい、兄上。おやすみなさい。」

「ウンジュ、来週よろしくね。」

「……はい、お願いいたします。」


 そのまま、殿下の部屋へ来るようにと誘われて訪ねていった。部屋で夕食も出してくれ、一緒に食べた。

「お前と妹、最強コンビだな。」

「僕も驚きました。ウンジュが科挙を受けられないことは、大きな損失だ。」

「そうだな。」


 今日の調べた内容について、2人で話し合っていた。結構なお金が、不正によって発生しているだろうと結論づけた。誰が関わっているのか、何年くらい続いているのか、ウンジュに記録簿の洗い直しをさせるといいだろう。


「そう言えば、王太子妃は無事に外に出せたようだね。ウンジュが、愚かなことだって言ってたよ。何となく察したみたいだよ。」

「そうか。」


 不正の話から、王太子妃の話に話題が移る。ヨム先輩のその後について、教えてもらった。数日前に王太子妃が王宮を出て行ったが、側室も一緒に出て行かせたらしい。2人とも罪を公表していないので、身分を変えることは出来ないが、王宮からは出してあげられたと言う感じだ。

 体力大会以降に、殿下を交えて、両家で話し合いがもたれたらしい。王太子妃を罪に問わず王宮から出すかわりに、ヨム先輩には科挙の受験が禁止された。また、罪を問われていないので、王太子妃は廃されても身分は変わらず、婚姻禁止の状態であり、子は庶子となる。当然、身分をつげない。貴族の養子になることも禁じ、子々孫々、科挙を禁じると言うことで両家は合意した。これに同意できないのであれば、2人を不貞ということで公に裁いて貰うことにすると若干の脅しもかけたらしい。


「両家の親は蒼白になって、僕に謝ってくれたよ。……僕としてはあの2人の子孫に、政治や僕の子孫に関わって貰いたくないだけだ。」

「それ言ったの?」

「言ったよ。」

「2人はどう感じたんだろうね。」

「さてね。とりあえずは2人で暮らせれば幸せを感じるんじゃないの。その後の苦しみなんか、そのときが来ないと感じないんだろう。ご両親は未来を理解されていて青ざめていたが、あいつらはあっけらかんとしていた。」


 殿下は話しながら、若干いらついていた。正式に妻としたし、妻として遇しても来たのだろう。体調が悪いと言えば心配もし、親切にもしてきた。なのに、王太子妃は不貞を働いていた。そして、今に至っても大した反省は見られない。そこに真心は無かったようだ。


「しばらくは、新しい妻は遠慮させてもらうよ。普通だったら王太子妃の親族の女性を継室としてもらうものだろうけど、あの家からは絶対にいやだよ。」


 話がとぎれ、そろそろ退出しようと思った。

「では、殿下もお疲れなご様子でございますれば、私はそろそろお暇を……。」

「どんな爺の挨拶だよ。」

「ははは。ということで、僕は帰る。調べ物はそれぞれでやるってことで。」

「了解。」


 外は寒い。綿入れが欲しいが、持っていない。走ってかえれば温かくなる、そう思って王宮を出て走って大学まで戻った。


「一日中何してたんだよ。」

「あぁ、ジョンミン。寒かった。」

「早く中に入れ。」

「グァンシク、優しい。」

「お前、汗くさいぞ。」

「安定のテスクだ。」


 部屋に入ると、火鉢があり、暖房もついているので温かい。


「ウンジュはなんだか偉い女官になっていた。」

「そりゃそうだろう。王族の姫だ。」

「そうなのか。」

「うちの妹が入宮して適当に扱われたら、俺は許せない。」

「あぁ、確かに。」

「側室様よりも上の身分の女官ってやつね。」


 皆の方がずっと現実を把握しているようだった。


「あれ、勉強してたのか?」

「ソンイ君は優秀だから気がつかないのかも知れないけど、試験は3週間後だからね。」

「あぁ、そうだった。ノートを売りに行く準備をそろそろしないといけないな。」

「僕としては、君との学習会を開きたかったのだけど。」

「それいいね、僕もやりたい。」

「……今日、一日中、出歩いていたのは君だろう。」

「確かに。来週も実家に帰るから、勉強会は平日の夜にこの部屋でってことでどうだろう?」

「「「賛成!」」」


 夜も遅くなっていたので、風呂場で軽くお湯をかぶってくると、すぐに布団に入り丸くなった。仲間と一緒に勉強したり、調べ物をしたりというのは、自分だけでは出てこないような知識との出会いがあって楽しい。


 試験までの夜の学習会は、部屋ではじめたが、結局、来訪者が余りに多く部屋に入りきらないので、図書室で行うことになった。

 まずは基本単語の確認をしあい、単純暗記を数日すすめると、その後、内容についてグループに分かれて、互いに話し合ったりする事で理解を深め、記憶に定着させていくことをした。翌日の夜までの宿題を互いに出し合うことで、昼間の時間の学習ペースを作り上げていく。

 僕に直接、何か聞きたいという人との議論やそれを聞きたいという人が周りにいたりで、図書室は結構な大賑わいとなっていた。誰もが、自分一人で学習に孤独に取り組んできたが、こう言うのも面白いと一つの試みとして参加してくる人が多かった。他の人が何考えているのかは参考になるし、その上での自分の意見がどう皆と違うのかをくっきりとさせた小論文がかける。

 毎日参加してくる人もいれば、暗記時間を確保する意味で数日に一度参加してくる人もいると言う感じで、数十人の学生が図書室で学習会に参加していた。


 今回は要望が多かったので、試験2週間前にノートを販売することになっていて、来週にはまとまったお金が入る。これで寮費は完済となるはずだ。夜は学習会がくまれているから、他の細々とした作業は昼間のうちに終わらせないといけない。ノートや小遣い稼ぎの写本もサクサクと仕上げていく。レポートを試験と代える教科のレポートも作成していく。


 そして、週末が近づいてくる。ウンジュから、家族宛の状況報告書のような手紙が、カン女官に託されて受付に届いていた。金曜の講義が終わったら、ノートを売りに行って、その後、学校を出て実家に帰ろうと思っている。

 

 あれ、結構、僕、忙しいかも。

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