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EP.35 我が家に帰って来ました

「ねぇ、タケルに聞きたかったんだけど……」

「何だ?」


 ルティナが前に進むタケルに声を掛けた。


「私の気配が半分人間じゃないってどういう事?」


 何の話だ? もしかして片親が精霊だって事を武は見破ったのか?


「そのままの意味。ハーフと言えば良いのかな? ただもう半分の気配が亜人とかそういう類じゃないから、不思議に感じただけだ」

「亜人?」


 そりゃあルティナも首を傾げるよな。この世界には亜人なんていないんだから。って言う俺も他の世界に行った事ないから、実在してるか不明だけど。


「ああ。他の異世界にはいる人族でな。動物の特徴を持った人間だよ。他にも魔物を特徴を持った魔族ってのもいるな」

「そうなんだ」


 そうこう話してるうちにまた螺旋階段が見えて来て、それを上り始める。


「まぁルティナちゃんの半分の気配は、その亜人とか魔族とかと違う気配がしたから不思議に思っただけだ」


 パンパン!


 器用だな。話ながら例のごとく襲ってきたシャドウバットを処理してるぞ。


「そう……でも、良くそんな事が分かるわね」


 パンパン!


 まったくだ。ルティナが精霊とのハーフとか気配で分かるのか?


「気の応用」

「……便利な言葉ね」


 パンパン!


 まったくだ。何か不可思議な事をする度に気の応用って言っておけば良いんだから。


「もっと詳しく言うなら、俺の気を相手に当てて跳ね返ってきたものを感じとると相手の力量とか、変わった生まれによる気配とか分かるんだよ」

「……そうなんだ」


 パンパン!


 ルティナが目を丸くし驚く。

 つまり、この世界には、そういう事ができる人がいないのかな? と言うか、跳ね返ってきたもので感じ取るとか、それ何てコウモリ?

 あ、コウモリの魔物のシャドウバットはこの伏線だったのか? って、たまたまだろ。俺も何をアホみたいな事を考えているんだか。

 そんあアホな事を考えていたら、いつの間にかシャドウバットも襲って来なくなっていた。


「この世界にはいないのか? 例えば気を膜のように広げて、その範囲に入った者の動きを把握する芸当ができる奴」

「あ、いるわ……アルができるわね」

「それの上位互換みたいなものだよ」

「なるほどね」


 まったく理解できない。理解できないが、それよりも気になる事があった。それは……、


「なぁルティナ、アルってのは十一人の英雄の一人か?」

「え? ええ、そうよ。エドの弟でアルフォード=フィックス」


 エドに弟がいたのか。城で見かけた事ないぞ。


「十一人の英雄のうち一人は亡くなってるようだけど、アルってのも含めて残りの三人の所在地って分かるか?」

「アルは分からないわ。たぶんエドのために、動き周っているのだろうけど。他はユキと言う雪だるま一族の魔物がエルドリアの炭鉱にいるわ」


 エルドリアにいたのか。ちっ! 知っていれば武に会うついでに声かけたのにな。

 ていうか今……、


「魔物って言わなかったか?」

「そう魔物よ。でも意思疎通ができるわ。中でもユキは人の言葉を介せる。特殊な魔物なのよ」

「そうなのか。それに雪だるまって溶けないのか?」

「それも平気。雪だるまってのは見た目だけで実際は雪ではなく白い毛皮みたいな感じだから」


 へ~。変わった魔物だな。


「で、もう一人は?」

「ガッシュね。サバンナで暮らす野生人よ。ちなみに記憶失う前のアークと同じ歳ね」


 それター〇ンかよ。

 てか、なんかめっちゃ揶揄うように笑って来たな。この含みのある言い方は精神年齢を差してるのか? 記憶のない俺は20歳だった。つまりガッシュとやらは20歳なのか。英雄の中で一番若いんじゃないか?


「よくあんな危険地帯で生きていられるな」

「まぁガッシュは魔物と一緒に育ったようなものだから、あまり襲われないわ」


 そいつはすげー。それに一つ気になる事はある。それ……、


「サバンナを通ったが会えなかったな。少し残念だ」

「ガッシュはチキンを持ってないとほとんど会えないわよ?」

「はっ!?」

「チキンの匂いに誘われ、どこからともなく現れるのよ」

「……流石野生人」


 匂いに誘われるとかどんだけよ。って話いたら、また通路だな。


「で、次の門番は何かな~? まあどうせ武が処理するんだろうけど」

「……キラーマシン」


 ルティナが呟く。危険な感じなのかな? ルティナからそういう気配が伝わってくる。

 機械の魔物なのか? しかも二刀流か。


「やばいのか?」

「物理耐性がかなり高いわ。雷系魔法には弱いんだけど結界が張ってあるから……武はさっきから門番には素手で戦ってるから厳しいかも? ねぇ武……武器ないの? あの砲撃武器でも良いから使った方が良いんじゃない?」


 そういう言えばシャドウバットを殲滅すると銃が消えていたな。どこにしまっているのやら。


「必要無い」


 そう言うとまたどこかへ散歩しに行くようなノリでキラーマシンに向かって行く。


「「はぁ!?」」


 俺とルティナの言葉がハマる。

 それもその筈。何だよあのマント。武の二股に分かれたマントっぽい透明の布が動きキラーマシンの持つ両手の剣それぞれに巻き付いたからだ。

 それで攻撃を封じた。だが、そこからどうする? たぶん機械だから、ワンパンで頭落とせても倒せないだろうな。首無しで動く筈だ。


 バキっ!!


「いやいやいやいやいや……」

「………」


 俺はひたすら『いやいや』って言ってしまう。ルティナは現実逃避したかのように言葉を失う。

 武の奴、キラーマシンの内部に手を差し込んで、何かを取り出すとそれをバキっと潰した。

 たぶん核だな。それでキラーマシンは灰となって消えてしまう。

 つうかゴッ〇フィンガーかよ。でたらめにもほどがあるぞ。無双し過ぎだ。


「この存在チートが!」

「それ酷くね!?」


 俺が吐き捨てると武が反射的に返して来た。


「どうやったら機械の中に指が入るんだよ?」

「気の応用」

「便利な言葉だな」


 また応用とやらかよ。


「まあ良いや。武の事を突っ込んでいても疲れるだけだ。先に進もう」

「えぇ、そうね」

「二人とも酷くね?」


 それから暫く通路を進むとまた螺旋階段があった。


「どうやらここから先は魔物はいないようだな」


 武がそう言いながら階段を上り始める。


「また魔法の言葉の気の応用で分かるのか?」

「いやさっき言っただろ? 闘気を膜のように張り、相手の動きを把握するって」

「でも、それができるのは、私が知る限りアルだけなのよね。それに今までと同じ長さの階段だとすると、アルですら、そんな長距離は把握できなわ」


 俺が聞くと武が答え、ルティナがアルについて話した。

 マジかよ。この螺旋階段は100mくらい毎回上ってる。つまりその範囲を武は把握してるって事か。

 しかも膜のように? それ俺に取っては完全に例の便利な魔法の言葉なんですが……。


「タケル、さっきの話なんだけど」


 ルティナが階段を上りながらタケルの話し掛けた。


「ん? どの話だ?」


 確かに色々話してたな。


「私の気配の事」

「ああ。ルティナちゃんが言いたくないなら別に良いよ。ただ不思議に思っただけだから」

「ううん。私も気になる事があるから言いたんだけど、私は精霊とのハーフなの」

「精霊? マジか。人間とヤれるんだな」

「おい!」


 卑猥な事を言ったので俺が威圧しながら突っ込んだ。威圧って闘気なんだよな。殺気に闘気を乗せると威圧になる。これも十分例の魔法の言葉のような気がするが。自分の事は棚上げにしておこう。

 ともかく最近扱い方を掴んできたけど、相手に強く闘気を向けると殺気が威圧になる。


「おっと悪い。可愛い女の子に言う言葉じゃなかったな」

「……ずっと思ってけど、歳は、あまり変わらいわよね?」


 あれ? ルティナも威圧していない? いや、ただの殺気か。それでもかなり睨んでいる。

 武は25歳とか言ってたな。ならルティナは? 少し下に見えるけど、女に年齢を聞くのはどうかと思うし黙っておこう。


「あ、綺麗なお姉さんって言うべきだった?」

「そうじゃなくて『ちゃん』とか子供扱いしてるのが釈然としない」

「俺の性分だからスルーしてくれると有難いかな」

「は~~……もう良いわ。それで私は精霊とのハーフなんだけど精霊の力は失ったの」


 凄い大きな溜息だったな。諦めたのかな?


「失った? まぁ確かに力は感じないな」

「そこが気になるのよ。私の中の精霊の力を失ったのに半分人間じゃないって気付けたのが。容姿で普通の人間じゃないかもしれないとは思われるけどね」


 透き通るようなブルーの瞳してるからな。


「力は失っても、その体に流れるの血は紛れもなく精霊のものが半分あるよな?」

「……確かにそうかもしれなけど……」

「俺が感じたのそれだよ。普通の人間の血じゃないって」

「血まで分かるのね。貴方の気の応用とやらで」


 ルティナまで魔法の便利な言葉を使い出したぞ。


「まぁね。ちなみにもしかしたら、その血を活性化させれば精霊の力が復活するかもよ?」

「えっ!? そんな事ができるの?」

「ああ……おっと終着のようだ」


 階段を上りきると、かなり広い空洞が広がっている。


 ドクンドクン……。


 その中心に天井と地面に繋がれた脈打つ物体があった。


「まるで心臓だな」

「そうね」

「たぶん足の心臓ってとこか? 全ての足にこの心臓があるとしたら全部周らないといけないな」


 俺が思った事を言うとルティナがそれを肯定し武が予想を立てた。


「さて、さっきの話だけど……」

「血を活性化させるって話?」


 武がそう言い、ルティナが聞き返す。


「<収納魔法(ストレージ)>」


 武が何か魔法を唱えると空間に亀裂が走り、そこに手を入れ出した。


「何それ?」

「収納魔法……空間に穴を空けて物を出し入れできる魔法さ」


 ルティナが聞くと武がそう答えた。

 確か武と再会した三週目でも使っていたな。武はそこから瓶を取り出す。中には青い液体が入っていた。


「それは?」

「血を活性化させる秘薬。無理矢理先祖返りさせたい時に使う秘薬なんだけど、大抵の奴は、その力に振り回されて、挙句暴走する」


 ルティナが聞くと武が答えるが、なんてもの出すんだよ。


「……でも、ルティナちゃんは失ったとは言え、一度行使していた力だ。振り回される事はないと思う。どうする? 飲んでみるか?」

「………」


 ルティナが黙考し出す。そりゃあそんな怖い薬だされたら戸惑うよな。


「……くれるなら飲んでみる」


 逡巡して恐る恐る手を伸ばす。


「はいよ」


 武が渡すとルティナが一気にそれをあおる。


「どう? 効果ありそう?」

「試してみる」


 ルティナがそう言うやいなやピカーンと光り出す。それと同時にルティナは宙に浮く。何だ? 何だ? 


「はぁぁ……!」


 ビリビリ……。


 ルティナの体の周りに電気みたいのが走る。そして体全体は黄緑色になり半透明になって行く。

 髪が足元までの長さまで伸び、ウェーブが掛かる。爪が10cm程伸びる。服は一新され羽衣のようなものを纏いだす。もう人間の姿ではない。


「……ルティナなのか?」


 俺は呆然としながら、話し掛けた。


「えぇ……半精霊化した」


 半分精霊の血が流れているから半分精霊になったって事か?


「おお……凄いな」


 武は平然と言い放ってるし。俺は少し腰が抜けそうだよ。


「それで、あの心臓らしきものを潰せば良いのかしら?」

「まぁ予測が正しければ……だけどね」

「分かったわ。私がやるわ」


 は~。なんつーか、俺のいる意味なくね? 此処に来るまでは全部武が処理して、最後はルティナがやるみたいだしな。


「<我の中に眠りし血に命じる……>」


 よりルティナの輝きが増す。


「これはまた凄い魔法が飛び出しそうだな」


 武は平然としてるし。俺はもう茫然と眺める事しかできない。


「<……我が祈りを聞き届け、究極の光撃にて、我が手を阻むモノを滅し賜え! 我が力、最後の光とならんっ!>」


 長い詠唱らしきものが終わった。今まで魔法を見て来たが、詠唱してるとこは初めて見る。それだけ今から使う魔法がヤバいって事か?


「<究極魔法(ファティマ)ッッ!!>


 ルティナが宙に浮いたまま両掌を前に突き出しながら魔法を唱えた。すると青いドーム状のものが心臓を包み込み……、


 キュィィィ~ンっ!


 ドームの中で光の柱がいくつも迸る。うわ! すげー魔法だな。

 エーコの最強魔法の隕石魔法(ミーティア)より強力なんじゃないか?

 そして、心臓らしき物体が消し飛んだ。そこでルティナが地面に降りて来て半精霊化とやらが解けて普通の人間に戻った。


「ハァハァ……久しぶりだから結構きつかった」


 そうルティナが呟いた瞬間、視界が暗転。


 さあさあ、またまた帰って来ました。我が家……クイーンベッドに。

 …………って、いい加減にしろーーっ!! やっと色々上手く行ったと思ったのにまたこれかよっ!!

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