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EP.34 武はチート過ぎました

 武は少し怪しい。この周回で再会した時の問答で含みのある言い方をしてた。また俺がダークの体を使ってると言う事を知っているってのもおかしな話だ。

 だから武が右中足からゾウに侵入すると言うなら、着いて行くべきだと思った。このループの原因が武にあるかもしれないと言う事が浮上してきたからだ。

 だが、ルティナも着いて来ると言い出した。ルティナも何か気になってるようだ。さてルティナがいるのに、どう切り出すか……。

 前の世界での治として話すわけにはいかないからな。


 それにしてもゾウの足内部は広い。足自体デカかったからな。端から端まで200mはあるのではないだろうか?

 内部に入って直ぐ右に螺旋階段がある。なんだろう? 生物の中に人工物があるなんて。あからさまに怪しい。


「……階段があるけど、上るしかないのかしら?」

「まぁ普通に考えればゾウの胴体を目指すべきだろうから上るしかないんだろうな」


 ルティナが呟き、それに武が答えた。


「端から端まで結構距離があるし、全部調べるのに時間がかかりそうだわ。なら上ってしまいましょう」

「なら先頭は俺が行くよ。ルティナちゃんを危険な目に合わせるわけには行かないからな」

「え、ええ……ありがとう」


 出た。ゲス発言。女なら誰でも良いのかよ。ルティナが微妙に引いてるぞ。

 でも、理に叶ってるので俺からは何も言えない。むしろそれに乗った方が良いな。故に……、


「じゃあ俺は殿だな」

「ちょ、ちょっとー、アークまで私が足手まといみたいに思ってるの?」


 俺の発言にルティナが突っ掛かって来た。理に叶ってからなんだけどな~。


「いや、ルティナは魔導士タイプだろ? 間にいて両方のフォローできる方が定石だと思うけど? 武も言い方はああだったけど、そう思ってるから先頭を自ら申し出たんだろうし。だろ? 武」

「可愛い女の子が危険な目には合うのは望んでいないのは事実だけど、そういう理由もあるな」

「そ、そう……分かったわ」


 そうして武、ルティナ、俺の順番に並んで螺旋階段を上る事になった。

 と言うのも階段は狭い。人が二人並んで歩けるくらいしか広さがない。戦闘になった場合、二人並んでいたら、お互い邪魔になるだろう。なので一列に並んで上った。


「そういやー治、お前記憶ないのか?」


 ちょ! 武がいきなり治って呼んできたぞ。


「……オサム?」


 ほら、ルティナが反応してるじゃんかよ。


「アークだって言っただろ? ルティナ、治ってのは渾名みたいなものだから気にしないでくれ」

「あ! もしかしてダークの体を簒奪する前の名前?」


 パンパン!


 簒奪って……。いやまあそれは確かにそうなるけど。言葉が最悪だ。

 あれ? でも何故それを知ってるんだ?


「ルティナは、この体はダークのもので、俺が今は使ってるって事を知ってたのか?」


 パンパン!


「えぇ。私だけじゃなくナターシャさんとエーコも知ってるわよ」


 パンパン!


 なるほど。俺が過去改変をした事を知ってる奴はみんな異世界転移したって事を知っているのか。

 となると、なかった事になってる歴史で俺が話したのだな。


「なら話は早い。実は俺がこの世界に来る前の世界では、治って名前で、武はその時のダチ」


 パンパン!


「やっぱり。この世界でアークが友達を作るには期間が短いなって思ってたのよね。だから、他の世界での友達なのかなって薄々感じていたんだ」


 パンパン!


 気付いていたか。まあ俺がこっちの世界に来てまだ二年も経っていないらしいし、その間に友人を作るのは難しいと思ったわけか。

 でも、それって俺が友人を作れるような社交性が無いって言ってるようなものだぞ。事実だが酷いなぁ。


「……ところでさ、アーク」


 パンパン!


 戸惑いがちに俺の名前を呼ぶ。うん。何言おうとしているか、なんとなく分かるな。


「さっきからシャドウバットを落としているアレ……何?」


 パンパン!


「鉄砲、銃……うーん、分かりやすく言うと砲撃武器になるのかな?」


 パンパン!


 この世界にないと思われるものなので、なんて呼べば良いか迷う。ゲームとかで魔法の砲撃とかって言葉が出るので、銃とかよりもそっちのが分かり易いかな?

 て言うか、実は先程からコウモリ――シャドウバットと言う名前らしい――みたいな魔物が襲って来ていた。しかし、全て武の銃によって落とされていた。

 前も思ったがドラ〇もんの空気砲に似てるな。筒状のものをで手全体を覆い、先に2cmくらいの銃口がある。それを両手に装備していた。


「砲撃武器……凄いわね。魔力の流れを感じないから魔法ではないと思うけど……」


 パンパン!


「まあ科学力が異世界によっては、此処より技術が優れていたりするから」


 ……知らんけど。俺は元の世界と此処しか知らない。


 パンパン!


「……なるほど」


 パンパン!


 ルティナが呆然と呟く。


「と言うか武、何で何発か撃った後、空中に投げてるんだ?」


 さっきから撃った後、銃を上に投げて、落ちてきたとこをスポっと手にハメている。曲芸じみていた。


「リロード。ふー……魔物が来なくなったな」


 リロード?

 まさか仮面〇イダーみたいに風車を回転させると変身できるみたいな仕組みで上に投げる事で弾丸が補充されるのか?


「りろおど? それって何?」


 いちいちこっちを見ないでくれルティナよ。俺は解説者しゃないぞ。

 しかも投げるだけでリロードとか、もうそれ何てリロード? って感じだしさ。


「えっと……魔物に飛ばしていた弾を補充する事。魔法と同じで無制限には使えないんだよ」


 ……たぶん。


「そういう事。まぁこれは特殊な武器だから空中に投げれば無限に使えるけどね」


 武が補足した。つうか、そんな手軽に無限にって……チートじゃね?

 まあ上に投げて、落ちてきたところをスポっと手にハメるには、かなりの練習が必要だろうけどさ。


「それはそうと治、記憶がないんだってな」


 武が話を戻した。


「だからアーク」

「もう良いだろ? どう言うわけかルティナちゃんも知ってるわけだしさ」

「は~……そうだよ。十五歳以降の記憶がない」


 溜息を付き答える。


「十五歳? アークってそんな若かったんだ」


 ルティナよ、いちいち反応するなよ。


「まぁ十九歳の時にこっちに来て数ヵ月過ごしてるから精神年齢は二十は過ぎてると思う……記憶を失う前だったらの話だけどな」

「それでも若いわね。私より下だったんだ。へ~」


 ルティナが微笑ましそうにこちら見る。なんかめっちゃ子供扱いされている。うざいな~。


「で、治。それどうにかならないのか? この世界は魔法があるから記憶喪失を治す魔法もあるんじゃないか?」

「あるらしい。ナターシャが行こうとしていたとある迷宮に。だが、そんなとこに行っている余裕ないっしょ? 武もロクリスを助けるの協力したから、分かるようにあっちこっちで面倒な事になってるんだよ」

「なるほどな。残念……その記憶の中にこのゾウの事があったかもしれないのに」


 なんだよその言い方。ちょっとイラっと来た。


「悪かったな……記憶をなくして」

「あ、いや悪い。そんなつもりはなかったんだけどな」


 でも、確かにそうだな。もし記憶あればこのゾウの事も分かったかも。生体実験をしてると言う情報があったとこに俺は忍び込んだのだから。

 こんな山みたいにデカく六本足のゾウなんて生体実験をしなきゃできるわけがないだろうし。


 螺旋階段を上へ100m程上りきると狭い通路があった。とは言え、螺旋階段なのでグルグル回るように上ったので、体感では3倍は長い距離を上った気がする。

 上り切った先にある通路は階段と同じで、人が二人しか通れない広さ。当然戦闘ではお互いが邪魔になるので並んでは歩かない。なので、階段の時と同じように武、ルティナ、俺と言う順番で歩く。


「なんか門番みたいのがいるな」


 武が前を向きながら言ってきた。


「あれはスケルトンデッドだわ」


 ルティナが前にいる魔物を見て名前を言う。俺も前を見ると門番みたいに立ちふさがる魔物が視界に入った。

 骨だな。ただ手が六本あり、それぞれに剣を持ってる。六刀流かよ。


「能力とかあるのか?」

「ないわ。ただ手が六本で厄介なだけよ」


 俺が聞くとルティナが直ぐ答えてくれた。ふむ……ただのゴリ押し魔物か。


「……って、ここ結界が張ってるじゃない」


 慌てたようにルティナが叫ぶ。


「結界って?」

「魔法を封じる結界よ。これじゃあ援護できないわ」


 うわー。ゴリ押し魔物な上にこれと一対一(サシ)でやれって事か。


「ふ~ん。なら俺一人で潰せば良いわけか」


 武がどこかに散歩するようなノリでスケルトンデッドに向かって行く。まあ武には銃があるからな。スケルトンデッドの間合いに入らず倒せるかな。


 ドカっ!


「「えっ!?」」


 頭が落ちたぞ。と言うかワンパンだった……。

 一瞬でスケルトンデッドと肉薄し、顔面にワンパン食らわして終わった。当然スケルトンデッドは灰となって消えて行く。

 何だ? あの散歩するようなノリで歩き、あっさり倒すなんて……。


「……タケルって強いのね」


 呆然とルティナが呟く。


「惚れた?」


 ウザっ! 何言ってるの、お前は?


「はいはい。そういう事にしておくから、さっさと先に進むわよ」


 ルティナが流した。違うベクトルとは言えエドと言う女好きがいるから、扱いに慣れているのかな?


「て言うか、また階段だな」


 武が言った通り、再び螺旋階段が見えて来た。なので先程と同じように上り始める。

 シャドウバットが、また襲ってきたが全て武が処理した。そして螺旋階段を上に100mくらい上ると……、


「で、また狭い通路と……さっきと同じようにまた門番みたいのがいるのかな?」

「そのようだぞ」


 俺がボヤくと先頭にいる武が肯定するように答える。


「今度はトロールだわ。手数はスケルトンデッド程じゃないけど一撃が重くて、タフなのよね。で、また結界があると」


 ルティナが魔物と状況を説明をしてくれた。

 なんかメタボな魔物だな。確かにタフそう。武器はこん棒一本か。


「じゃあ、また俺が仕留めるか」


 再び武が何処かに散歩するようなノリでトロールに向かって行った。

 そして武の姿がブレる。一瞬で懐に入ったのだ。はいはいまたワンパンね。また頭が落ちたし。


「ねぇ、アーク? ……私達っていらないんじゃない?」

「言わないでくれ」


 分かってるよ。全部武が処理してるんだよな。


「じゃあ進むか」


 武はどこ吹く風のように俺達の言葉をスルーし先を進み出した。

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