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EP.31 サウスパラリアに到着

「とりあえずルティナは休め。昨日から戦ってたんだろ?」

「アーク……どうしてそれを?」


 確かにルティナは昨日から戦い続けていた。でも、何故アークがそれを知ってる? それに随分人が変わったように思える。

 エーコが記憶をなくしたって言ってたけど記憶をなくすと人格まで大きく変わるのかな?

 それに小刀や小太刀ではなく普通の剣を使っている。記憶をなくした影響? 分からない。

 この魔物の襲撃も含め分からない事だらけだ。と、ルティナは次々に疑問を抱いた。


「後で説明する。そうだな……そこの奴」


 そう言うとアークはディールを指出す。


「え? 俺?」

「ああ……ルティナを背負ってくれ。移動しながらいろいろ説明する」

「大丈夫よ。自分で歩ける」


 そう言ってルティナは、体を支えてくれていたエーコから離れる。


「ダメだ。後々ルティナを戦力として計算する。だから今は休んでいてくれ」


 戦力? と小首を傾げるが、まあこんな状況だし、また精霊大戦が起きるかもしれないと、自分なりに納得する。

 ただそれでも違和感がある。アークが、こんなはっきりハキハキ喋るなんて。と、ルティナが一番戸惑っている点はこれだった。


「そうだぞルティナ! 昨日から戦い詰めだったんだ。こういう時くらい頼ってくれ」


 そう言ってディールがルティナの前で背中を向ける。


「……うん。ありがとう」


 渋々ルティナは従う。


「じゃあ移動しようかー。魔物除けのお香があるから楽に移動できると思うよー。道すがらわたしが説明するからー、アークはたまに寄って来る魔物の相手お願いねー」


 と、エーコが言うと魔物除けのお香を炊いた。

 これもエーコが師事してる人が作ったものかな? 準備良いわね。と、ルティナは感心する。


 そうしてアーク達は移動を開始する。が、子供達も疲弊してるので思うように移動できず直ぐに野営をする事になった。


「それで説明してくれるかな?」


 ディール夫妻や子供達を寝付くと、ルティナはエーコに話しを振る。現在アーク達三人は焚火を囲い地べたに座り込んでいた。


「うーん。わたしもはっきり状況はわかんないんだけどー」


 エーコが考えるように語り始める。


「アークがエド叔父ちゃんの依頼でとある屋敷を調べたのー。そこで爆発に巻き込まれ記憶をなくしたんだー」

「……爆発」


 ルティナは大丈夫だったのかと息を呑み目を丸くするが、アークは記憶をなくしとは言え無事のようだと思い直し平静を装った。


「それでー、意識を失う直前にルティナお姉ちゃんのとこに魔物の大群を集めるとかー、他にも色々言ってたのー。ただ、詳しく聞こうにも次に目覚めたら記憶をなくしててー、よく分からないのー」

「じゃあ昨日襲われる事も事前に分かってたんだ?」

「ああ」


 と、アークは頷く。

 実際は、そう言う設定にしし、エーコとそこは口裏を合わせていた。タイムリープとかの話をしても混乱させるからである。


「他にも色々とは?」


 他にもって事は自分以外にも危険な人が? と、悪い想像を膨らますルティナ。


「例えばロクリスを罠にハメるとかー、アルフォンス城とフィックス城を戦争させるとか、ムサシ叔父ちゃんをクロード城で監禁するとかー」

「なっ!?」


 何なの? 頭が追い付かない。一度にそんな事が起きるなんて……。

 悪い想像を膨らましたが、想像以上だったので開いた口が塞がらなくなる。

 やや合って、だからアークとエーコしか来れなかったのか。と、先程の会話の得心が行く。


「他は大丈夫なの?」

「一応手は打ったけどー、上手く行ったかは今は確認できなーい。みんなでフィックス城に集まるようにはしてるんだけどー」

「そう」


 手は打ったのね。と、とりあえず胸を撫で下ろすルティナ。


「それとごめんねー。本当は昨日到着する予定だったんだけどー。動物除けのお香が効果なくてー狂暴の動物がどんどん寄って来ちゃったんだよー。それで思わぬ足止め食らっちゃったー」


 確かに魔物が現れる直前に沸いた動物にはあのお香が効かなかった。と、同じ事態になった事をルティナは思い出す。


「私もエーコから貰ったお香効かなくて苦労したよ」

「狂化される直前だったからかなー?」


 そうかもしれない。今思えばあれは魔物に変異する前兆だったんではないかと、三人は同じ事を考える。


「それよりルティナは寝た方が良い。疲れているだろ?」


 話が一区切りついたとこでアークが気遣うように声を掛けた。

 正直やりづらい。こんな気が効く人じゃなかったのに。いや、正確には気を回す事は出来てたが、それをストレートに表に出すのが下手だった。と、内心苦笑いを浮かべる。


「……どうした?」


 そんなルティナを不審に思いアークが首を傾げる。


「……いや、私も見張りをと思って」


 ルティナは、咄嗟に誤魔化す。本当はさっさと倒れたいと思っていたが。


「エーコと交代でするから平気だ。明日また詳しく話すが、ルティナの力を当てにしてるんだ。ゆっくり休んで、少しでも早く回復してくれ」


 長文!? あのアークが、スラスラ長文を言ったよ。前は要領得ないというか途切れ途切れだったりしてたのに……。と、物凄く驚くルティナ。


「分かったわ。じゃあアーク、エーコ、宜しくね。正直なとこもう限界だったんだ」

「ああ」

「分かったよー」


 そうしてルティナは泥のように寝た。夢なんて一切見なかった。しかも朝になっても目覚めなくディールに背負わせて先に進む事にした。

 いつの間にか移動していた事にルティナは驚く。


「あ、ルティナ起きたかい? おはよう。昨日はお疲れ様。助かったよ」


 ディールがそう言いながらルティナに向かって振り返って来た。

 顔近い。貴方カタリーナがいるでしょう? そんな顔近付けないでよ。と、ルティナは頬染めながら焦る。『ママ』なんて呼ばれ慕われているが、異性とあまり接触して来なかったからだ。


「うん、おはよう……あ! アーク! 昨日の事だけど私の力を当てにしてるってどういう事?」


 誤魔化すように近くにいたアークに声を掛ける。

 そこで気付く、体中が痛い事に。昨日は戦い続けていたが、戦いの最中は夢中で疲れを忘れていたが、張り詰めてた糸が切れたかのようにドっと疲れが押し寄せて来た。

 ディールには悪いけど、このまま背負って貰うしかない。と、感じるルティナ。ただやはり恥ずかしいのか、頬が少し赤くなっていた。


「ん? ああ……説明するより見た方が早いだろ」

「どういう事?」

「まあサウスパラリアに到着して、実物を見て貰ってから説明するよ」

「分かったわ」


 まぁサウスパラリアに到着したら説明してくれるなら良いか。と、納得する。


「にしてもあれだな……」


 アークがポツリ言い出す。


「これって第二次精霊大戦って言うのかな?」

「第三次よ」


 ルティナは、咄嗟に返してしまう。

 やば! 今のアークは記憶がないんだった。と、思うルティナだったが後の祭りだ。


「えっ!?」


 事実驚き目を丸くする。


「確かに第三次と言えるのかなー?」


 エーコが可愛らしく人差し指を口元に当てながら呟く。


「どういう事だ?」

「記憶をなくす前のアークが過去改変をしてー、第二次精霊大戦事態が起こらなくなったんだよー」

「はぁ!?」


 アークが素っ頓狂の声をあげる。


「ふふふ……」


 それは驚くよね。と、笑ってしまうルティナ。


「……エーコ、大丈夫か?」


 アークが可哀想な子を見るような眼差しをエーコに向けた。


「いや、事実だからー!!」


 そんな目を向けられ、頬を膨らませながら返す。


「どうやって俺は過去を変えたんだ?」

「時の精霊の力を借りてかなー?」


 エーコがそう説明する。

 実際には違う。多少助力を得ているから完全に嘘ではないのだが。

 時空の穴が空いていたから、アークがそこに飛び込んだ、それこそ何言ってるんだ? って話になるのでエーコは、詳しく言わなかった。


「なるほど……そういう事もあるのか。異世界では……」


 アークが何かボソボソ呟くがエーコとルティナに聞こえていなかった。


「でも、それだと俺が過去に言って歴史を変えたって事だよな?」

「そうなるねー」

「何でそれを二人が知ってるんだ? 俺が話したのか? 信じられない事だから俺は言わなそうだけどな」

「うーん……厳密には、わたしはほとんど知らなーい。時の精霊の力で、そういう事実だけは知ってるってだけかなー」


 正確にはアークと関わった事だけ(・・)を全てを覚えているエーコ。


「じゃあみんな知ってるのか?」

「時の精霊の力で知ってるのはー。わたしとナターシャお姉ちゃんだけだよー」

「これはまたドンピシャで、一緒に住んでるな」

「正確には、それを知ってるからー、一緒に住むよになったんだよー」

「なるほど。エーコが俺の娘だからって理由じゃなかったのか」


 普通はそう思うのであろう。だけど事実は違った。


「それも理由かなー」

「それで二人はそれを知ってると言ったがルティナは?」


 ルティナは、エーコやナターシャと違って全部覚えている。


時の精霊の力(・・・・・・)でー、それを知ってるのはわたしとナターシャお姉ちゃんだけかなー。ルティナお姉ちゃんは自らの力(・・・・)で知ってるのー。それもわたし達みたいに曖昧にじゃなく全部ねー」

「なぁ……何の話をしてるんだ?」


 ずっとルティナを背負ってるディールが振り返り聞いて来た。

 だから顔近いってば。と、再びあたふたしてしまうルティナ。しかし、それを隠し……、


「私が特殊な生まれのせいで、普通じゃ知りえない事を知ってるって話よ」

「そういう事か」


 ディールには、これで大体伝わるので、それ以上何も言わなかった。


「何だそれは? ルティナ、本当か?」

「えっ!? 何の話?」


 途中から話を聞いていなかったルティナが聞き返す。


「ルティナの片親は精霊なのか?」

「ああ、その話ね。そうよ」


 ルティナの父親は精霊で、そのお蔭なのか第二次精霊大戦の事は全て覚えている。ただ全ての精霊が消えた事で、ルティナの中の精霊の力も消えてしまった。


「それはまたレアだな」


 と、目を剥くアーク。

 こういうアークも新鮮かも。って言ったら失礼か。好きで記憶をなくしたわけじゃないし。とか思いつつルティナは、笑うのを必死に堪えていた。


挿絵(By みてみん)


 そうしてルティナ達を助けてから二日後、サウスパラリアに到着した。ルティナもその二日で漸くまともに動けるようになった。よっぽど酷使していたのが伺える。


 で、サウスパラリアで待っていたのは巨大な山。あんなとこに山なんてなかったよね? 何なのあれ? と首を傾げるルティナであった……。

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