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EP.28 ルティナの想い -side Lutina-

「起きて、ルティナ。二時間経ったわよ」


 カタリーヌが起こしに来てくれた。


「ふぁぁ~……おはよう」


 頭が痛い。どうやら泥の様に寝ていたようだ。それこそ夢等は一切見ない程に。全然睡眠が足りていなかった事が分かる

 それにまだ少し体がダルいし、魔力も全快じゃない。まぁ仮眠じゃそんなものか。と、私は諦める事にした


「おはよう。スティアー達から聞いたわよ。動物が凄い襲い掛かって来たんでしょう?」


 カタリーヌが心配そうに私を覗き込で来た。


「えぇ。その事で話があるんだけど、とりあえずディールを入れてお茶にしない?」

「分かったわ。準備してくる。ルティナは軽く体拭いて着替えていらっしゃい」

「分かりました」


 確かに夜中から大立ち回り。私、少し臭いかも? 言われた通り、体を拭き着替えると居間に向かった。


「やあルティナ。おはよう」


 ディールが声を掛けて来た。少し私を気遣う視線を感じる。


「おはよう」


 私もそう言ってテーブルに腰掛けた。座ると直ぐにカタリーヌが私達三人のお茶テーブル置くと自分も椅子に腰を掛ける

 私はお茶を一気に飲んでしまう。寝起きで喉が渇いていたのもあるけど、疲れた体に染みた。


「あらあら……じゃあもう一杯注ぐわね」


 ニコやかに笑いカタリーヌが再び席を立ちお茶を注いてくれて、座り直した。


「ありがとう」

「ルティナ、今回は大変だっただろ?。スティアー達からある程度聞いたよ」


 私がカタリーヌにお礼を言うとディールがそう言って来た。


「えぇ。何か様子がおかしいわね」

「それでどうするんだ?」

「まずは様子見かな? でも、安全策で私達三人が交代で起きて玄関に動物除けのお香を設置するのが良いかと」


 あのお香の効果は三時間くらいしかない。交代で起きてお香だけセットして寝ればお互いに負担はない筈。


「なるほど」


 ディールが頷く。


「なのでディール達には、暫く私の家(うち)に居て欲しいの。もし、何かあった時に目の前にいた方が対処し易いわ」

「そうか。いつもすまないね」

「いえ、私が好きでやってる事だから」


 私は少し背中がむず痒くなるのを感じながらかぶりを振る。

 そう私が好きでやってる。子供達もだが、ディール夫婦も大切な家族だ。


「そんな感じで様子見を数日」

「分かったわ。でも、様子見と言う事は最悪の事態も想定してるのよね?」


 今度は、神妙な面持ちでカタリーヌが訊ねて来た。


「サバンナの動物にはお香の効果が薄くなっていたわ。だから最悪この家を放棄してパラリアに移り住むべきかと」

「貴女はそれで良いの?」


 心配そうにカタリーヌが問い掛けて来る。私がこう言うのが予想していたから神妙な面持ちで訊ねて来たのだろう。

 私はラフラカに利用され解放された後、生きている意味が分からず人形のように過ごしていた。感情の欠片は自分の力に対する恐怖だけ。それ以外は抜け落ちていた。

 そんな私は、此処で戦災孤児達の面倒を見てるうちに人らしくなれた。やりたい事も分かった。

 何よりも、此処で私と一緒にいる事を大切に思ってる子もいる。だから私は、その思い出が大事で離れてたくないって思ってる。それをカタリーヌが言ってくれているのだろう。

 でも、それよりも大事なものがある。それは……、


「優先すべきはみんなの命だから。それに私、弱くなっちゃったし」


 自嘲気味に言った。そう大事なのは私の家族達が生きている事だわ。


「それでも十分強いと思うけどな? 俺らなんて足元にも及ばないよ」


 ディールが優しく笑いながら言ってくれた。


「ありがとう。勿論此処は離れたくないけど、最悪の事態は決断しないと」


 私も笑って返す。それと一応確認しないといけない事がある。それは……、


「ディール達は、それで良いの?」

「俺達は此処に拘っていないからね」

「ルティナが居てくれたから、今まで住んでいたけど、居なかったらとっくに引っ越ししていたわ」


 思った通りの答えが返って来た。

 二人は元々此処に住んでいた者で、反帝国組織の拠点に丁度良いと、当時の反帝国組織メンバーが押し掛けて来たのだ。

 二人は平和になるなら拠点にしても構わないと快く了承した。

 ちなみに何故二人がこんな辺鄙(へんぴ)なとこで暮らしているかと言えば静かな場所でのんびり暮らしたかったとか。

 町で嫌な事があり、二人で逃げ出して此処で住むようになっただけで、別に此処に拘っていないと言う。


 それはそれとして歴史改変前は大陸の形が変異したり、島の浮き沈みと言う不可思議な現象があった。アークが言うには精霊が居なくなったせいで大陸が形を維持できなくなって徐々に衰退してたらしいけど。

 その改変前は大陸の変異でパラリアが近かった。それにサバンナは逆の方向なので通らずに済んだ。

 しかし、この歴史ではパラリアは遠くでサバンナを通らないといけない。正直色々大変だ。

 しかも何故か歴史改変前に跋扈(ばっこ)してた魔物より今回の方が面倒だった。確かに個体としては魔物の方が強いが今回は、何故か分からないけど大量に襲って来た。

 ちなみに歴史改変前で、たまに魔物避けのお香が市場に出回っていた。お陰で戦う力を失った私でも、やって行けていた。もしかしたらあれもエーコが師事してる人が作ったのかな?

 思考が逸れてしまったけど、そんなわけで改変前と違って私は剣を握れないなんて事はないので、私が確り守らないと……。


挿絵(By みてみん)


「さて、それじゃあ食事の支度をしましょう。下準備はできてるわ」


 そう言ってカタリーヌが立ち上がる。


「なら、私も……」

「ルティナは、休んでいなさい」


 私も名乗り出たのだが、カタリーヌに強く止められた。


「ルティナが持って帰った肉の解凍は済んでるから直ぐできるわ。子供達のとこに言ってあげて」

「うん、分かった」


 カタリーヌの気遣いに感謝しつつ、食事ができるまで子供達と遊ぶ事になった。


 その後、二日間は何事もなく平穏に過ぎて行った。ただの杞憂に終わったのかな?

 それともサバンナだけが異常で、此処ではそう問題がないとか? いずれにしろ気を緩めてしまった。

 二日後、家族みんなで昼食を摂っていたら、警戒音が家の中で鳴り響いた。動物が家に近寄ったら警報音が鳴る仕掛けを施しておいたからだ。


「みんなはそのまま家にいて。見てくるから」


 そう言って私は外に飛び出した。

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