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EP.25 三人でフィックス城に向かいました

「それでアーク、詳しく聞かせれくれるかい?」


 次の日の朝、ナターシャさんが昨日言ってた事について聞いて来た。この周回は、ナターシャさんが戦力に数えられるのは大きいかもしれない。

 ナターシャさんもエーコもテーブルに着き俺の言葉を待つ。


「はい、わかりました。ナターシャさん」

「……ねぇアーク?」

「はい」

「その『さん』も敬語も止めてくれないかい?」

「……いえ、俺の記憶では15歳で止まっておりまして、ナターシャさんはかなりねんぱ……」


 年配と言いそうになった。

 ナターシャさんの眉がピクリ動く。

 一週目で叔母さんって言ってひっぱ叩かれたんだよな。

 危ない危ない。


「……失礼。年上の綺麗(・・)なお姉さんなので」


 ここは殴られないように持ち上げて修正しておこう。


「………」

「えっと……何か?」


 何故かナターシャさんが奇妙なものを見るような目をし出した。エーコは困惑した感じで俺とナターシャさんの顔を交互に何度も見てる。


「……あんた本当にアークかい?」

「えっ!?」

「エーコ、あんたはどう思うかい?」

「うーん……表面(・・)はアークには思えないかもー」


 えーーーーーーーーー。話を開始する前に何この展開? どうやってアークって説明する?

 って言うかそもそも俺、元々アークじゃないしな。証明しようがないでしょう。


「いや、アークかって問われても意識は薄いの事実だけど? 俺は治としての意識のが強いし」

「そういう事じゃなのさぁ……じゃああんた本当にオサム?」


 わからん。どうしてこうなった?


「いや、治だけど? えっ!? 何で俺疑われているの?」

「アーク……いや、オサムってそんな雰囲気じゃなかったさぁ」


 何だそれ?


「でも内側(・・)はアークの魔力だよー」


 ん? エーコがよくわからん事言ってる。さっき表面はアークじゃないとか言っていたのに。


「そうなのかい? エーコがそういうのならそうなのかなぁ?」


 ナターシャさんは、まだ半信半疑って感じだな。

 それにしても何をそんなに……。あ! この二人が言ってるのはもしかして……、


「前のアークは、口数が少なくて、たまにキョドる感じだと?」


 エーコが言ってたな。記憶を亡くす前のアークの事。


「それにおべっかを言わなかったさぁ」


 とナターシャさんが言う。

 どんだけ酷いんだよ。前の俺。


「えーっと……後で話そうと思ってたんですが、この世界に治時代の友人が来ているんですよ」

「そうなのかい!? アーク以外にも転移してくる人がいるんだねぇ」

「そうなんだー!」


 ナターシャさんもエーコも驚いて目を丸くした。


「まああっちは俺みたいに人の体を乗っ取ったわけではなく、そのままの姿で転移してますけど」


 俺は肩を竦めてしまう。


「へえ~……それで、その友人とあんたがアークかどうかって話は、どう繋がるんだい? まぁエーコが奥底の魔力がアークと同じって言うから一応は信じるけど、聞かせてくれるかい?」


 奥底の魔力? つまりエーコが言っていたのは魂の事かな?

 まあそこは良いや。表面とやらが疑われているんだから納得してるくれるかはともかく説明してみるか。


「その友人が言うには、俺は17歳の時に引き篭もりになるようです。たぶんですが、それで他者と交流を持たなくなり、キョドるような人間になるようで」

「ふ~ん」


 納得してるのかな? してないのかな? このまま話を続けて良いのかな?


「なるほどねぇ~。四年でこうも変わるんだねぇ」


 正確には二年だね。

 現在15歳の記憶、17歳で引き篭もり。そして、19歳ではキョドる俺が誕生と。


「それはそうとアーク……やりづらいからさん付けと敬語は止めてくれないかい?」


 また話が戻るのかよ。


「えっと……分かった、ナターシャ」


 うわ~。やりづれぇのはこっちだっつーの。ナターシャさんとの距離感がほんとわからん。


「ところでナターシャさ……ナターシャと俺の関係って何? ただの同居人?」


 ナターシャがめっちゃ悲しそうな顔してるんだけど。

 エーコはハラハラした様子で俺とナターシャを見ている。


「……繰り返してるのに知らないのかい?」

「一週目……あー……やり直しが発生する前の一番最初と言った方が良いのかな? その時にエーコに色々聞こうとしたんだけど、記憶喪失の時にあれこれ言うと頭に負担が、掛かるからって言われてしまったから、その時その時に必要な事しか聞かなくなった」

「「アークが、長文!?」」


 何でそんな意味不明なとこで驚いてるの?


「って、あれ? え? わたし、そんな事言ったのー?」

「たぶんあたいがエーコにそう言って口止めしたんだろうねぇ」


 お前かよ! ナターシャのせいで初期は情報が少なかったんだぞ。って俺の為を考えてくれていたんだよな。


「それで話を戻すけどナターシャと俺の関係性は?」

「……それは言えないさぁ」


 ナターシャは目を伏せ何かもどかしそうにしながら言った。


「頭に負担が来るから?」

「そうじゃなくて言いたくないさぁ……言ってもアークは心からそれを認識してくれるとは思えないからねぇ」


 まぁそれは確かに……。


「……それはそうかも。この体がエーコの父親と知っても、エーコ可愛いな~って思ってしまうしな」


 この体がエーコパパだと知っても、エーコ可愛いな~とか、色々話したいな~とか、めっちゃくっつきたいな~って思ってしまうもんな。

 しかも、こっちの世界の人間は成長が早いせいか、くっついただけでビッグマグナムが覚醒してしまう。

 異世界転移したと聞いた19歳なら歳が離れ過ぎていて、欲情する事はなかったんだろうか?

 ともかくそんな感じで心から親だなんて認識できない。


「それは記憶を失う前からエーコには言ってるさぁ。あたいには言ってくれないのにさぁ」


 なんかナターシャがいじけてるぞ?


「そうだよー。アークはそればっかだよー」


 エーコにも言われてしまった。

 でも、実際はニュアンスが違うんだよな。前の俺は可愛い子供を見る目で、今の俺は異性の女を見る目。

 でも、それをここで言うのはナターシャを見てると何故かはばかれた。

 てか、俺がアークかどうかって話で、かなり時間を使ってしまったな。早く家を出ないとまずい。


「続きの話しは道すがら……今日中に港町ニールから船に乗りたいので」

「そうかい」

「分かったよー」


 ナターシャとエーコの返事を返って来た。


「じゃあ準備しよう。ナターシャも戦力と考えて良いんだよね?」

「アークが頼ってくれるなら力になるさぁ」


 何その男冥利につきるような台詞。

 エーコに言われたら有頂天突破、天元突破してしまうぜ。グレン〇ガンになっちゃうよ?

 そんなわけで俺は投擲用武器をいくつか服の中に仕込み準備を終わらせた。


「それでアーク、港町ニールから何処へ行くんだい?」

「まずは武器屋で剣を買ってそれからフィックス城へ」

「剣? 何でまた?」


 またこの説明か? エーコにも毎回聞かれているからな。勿論そのエーコも現在俺達の会話に耳を傾けている。


「昨日も言ったけど前の記憶がなくて小刀を扱えないのでオーソドックスに剣を……正直何で前の俺が好んで小刀を使っていたのか分からないんだよね」


 いや実際には前回の周回でわかった。スピード重視の戦いをするのだろう。だけど、現時点で全力で動くのは怖い。

 例えば倒す相手に接敵するのに十歩必要だとしたら、勢い余って十二歩進んでしまいそうだから。

 それなのに小刀なんか使ったら余計に自分のスピードをコントロールできない。


「ふ~ん」


 一応ナターシャは納得してくれたのかな?


「ってわけでエーコ様、買ってください」

「何でわたしー!?」


 突然振られエーコが目を剥いた。


「いや、毎回買ってくれてるのエーコだからさ」

「それはナターシャお姉ちゃんがいなかったからでしょー? 今はいるんだから。家長的立場にいるのはナターシャお姉ちゃんだよー」

「家長とか大袈裟だよ、エーコ。そうねぇ……そのくらいなら買うさぁ」

「あじゃっす」

「何だい? その言葉は?」


 く~。やはりナターシャにこの言葉はまずかったか? マジでやりづらい。俺とナターシャはどんな関係なんだ?


「……気安い感じで礼を言っただけ」

「そうかい。それでフィックス城に行って何をするんだい? いや、そもそもあたい達は何をすれば良いんだい?」

「結論から言うとエドワード国王、エリス、ムサシ、ルティナが危険な状況。だから手分けして助けたい」

「えっ!? エド叔父ちゃんにエリスお姉ちゃん、ルティナお姉ちゃん、ムサシ叔父ちゃんがー?」


 これにはエーコも目を丸くしビックリしてるな。無理もない。十一人の英雄達でエーコの仲間だったんだから。


「あたいらが手分けしても人手足りなくないかい?」


 ナターシャが冷静に分析をしていた。これは年の功ってやつ。


「……アーク? 何か失礼な事考えていない?」


 おっと顔に出ていたかな?


「いや、そんな事は……まあ手分けしても人手が足らないどころか一人で救援に行くには危険な場所もある。だから二人で行かないといけなくなるからナターシャが、手伝ってくれるって言ってくれて助かったよ」

「二人で行くって……それ全員助けられるのかい?」


 ごもっとも。まあそうなるよね。だから……、


「一ヵ所は賭けになるけど、考えがある。それと俺の治時代のダチを味方にできれば人手が増える」

「そうかい? アークがそう言うなら任せるさぁ」

「そもそもさー。他の話ばかりして流れてるけど、アークは本当に繰り返してるのー?」


 あ、そうだこれもあるんだ。エーコには毎回疑われるんだ。


「何も起こらなければそれはそれで良い事じゃん。起きたら困るから対処するって考えでさ。それにエーコ、俺と賭けるか?」

「何をー?」

「俺の言った通りになったら俺と一緒にとお風呂入ろうか」


 デート程度で良いんだけど、ここは場を和ます為にふざけてみるか。


「わたしそんな年じゃないよー」


 お! ほっぺ膨らましてそっぽ向いてる。可愛い。


「アーク」


 ナターシャにふいに呼ばれた。


「何?」

「矯正!」


 ペッシーン!


 あ、良い音。って今、俺ビンタされたのか……。何でこうなる?


挿絵(By みてみん)

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