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EP.23 三日早く魔物が発生

ブクマありがとうございます

 アークを訝しげに思ったムサシは汗の事を追求する事にした。


「アーク殿、凄い汗でござる。如何したでござるか?」

「……くっ! ちょっと頭が痛くなってな」


 無理に思い出そうとした(てい)にしよう。通じるかな? と、更に誤魔化しに走るアーク。それが通じたかはたして……、


「そうでござるか。すまぬでござる。記憶がないのに無理に思い出そうとすると頭が痛くなると聞くでござるからな。もう良いでござる」

「悪いな。俺も色々わからない事だらけで困ってるんだ」


 と、ムサシは納得した。そして、これ以上聞くのは良くない。話題を変えよう。と内心思い至る。


「ところでアーク殿はエーコ殿と共に暮らしておると申していたでござるな?」

「ああ。言ったな」

「何故またエーコ殿と暮らしているのでござるか? 勿論覚えておらないなら無理に思い出さなくて良きにてござる」


 また頭痛が始まったら申し訳ないでござるからな。と、内心付け足す。


「あー ……その辺の話はまだ詳しく聞いてなかったな。でも、エーコと俺が一緒に暮らしてるのってそんなにおかしいか?」

「昔のアーク殿……いや、ダーク殿では考えられぬでござる」

「そうなのか? エーコって俺の娘なんだろ? 親子なんだから普通じゃないのか?」

「なんとーっ!?」


 アークが目を丸くし、同じくムサシも目を丸くした。更にムサシはクロード城を出て一番の驚きだと感じた。


「ん? 何かおかしいか?」


 アークが首を傾げる。


「エーコ殿が娘だったとは……」

「知らないのか?」

「初耳でござる」

「じゃあ一般的に認知していないのかな?」

「少なくても二年前の精霊大戦の最終決戦の時点にてエーコ殿自身も知らぬ事であると思うにてござる」

「そうなのか……」


 アークが神妙に頷く。


「まあ良いや。今日はもう寝ようぜ」

「そうでござるな」


 そうしてアーク達はサウスパラリアの宿で一泊明かし、予定通りノースパライアに船で渡った後、一夜明かし朝早く出発した。


「すまぬでござるな。アーク殿なら一日あればサバンナを抜けられるでござるのに……」


 此処は危険な動物が集まっている。できることなら、一夜も明かさずに抜けたい。しかし、自分の傷ではそうもいかぬ。と、ムサシは思った。


「またその話か? 俺だって記憶が無いんだ。道に迷うかもしれないでござろう?」

「ござろう?」

「おっと悪い! 口癖が移ってしまった」


 アークがバツの悪そうな顔をした。

 ムサシはよく変わった口調だと言われるが、移ってしまう者は初めて見た。と、ついついムサシは笑ってしまう。


「まあともかく気にするな。そもそもお前がいなかったらチェンルから帰っているっての。俺の家は港町ニールの近くだしな」


 確かにムサシがいなければその方が良い。逃げる際にチェンルの港は封鎖されるだとうと予想しサバンナルートを選んだ。

 しかし……はて? とムサシは首を傾げる。


「アーク殿はエド領に住まいを構えていたのでござるか?」

「え? ああ、言ってなかったか。俺とエーコともう一人の同居人は港町ニールの南に住んでいる」

「なんと!? では、このルートでもエド城より近いのでござらんか?」

「そうなるのかな」

「其れにしても港町ニールの南という事は……変わり者の薬師が住んでると聞いた事があるでござる。そして最近は何人かと住んでいるとも聞いたでござるが……よもやアーク殿とは」


 ムサシは驚きに目を丸くしながら語る。そもそも何故ムサシがそんな事を知っているかと言えば、ムサシはエド城の国務大臣。エド領内の事は把握しておかないといけないからだ。


「そんな噂があるのか……ちなみにその変わり者の薬師というのが、たぶんもう一人の同居人」

「なるほど」


 エド城管轄の領内にアークやエーコがいたとは……世間は狭いとは、まさにこの事でござるな。と、内心感慨に耽る。

 税金の関係もあるので人数は把握してる事はあっても、一人一人の名前まで流石に把握していなかったのだ。


「待て! おかしな気配が近寄って来てる」


 アークの制止の言葉が入る。

 流石アーク。記憶がなくても気配察知能力は抜群だ。お蔭で道中助かった。と感心するムサシ。

 それで迫って来てるのは……、


「なぬっ!?」

「どうした?」


 アークが油断なく構えたまま聞き返してきた。

 あれはハイウルフ。しかも五匹の群れ。


「あれは魔物でござる」


 だが何故と、ムサシは首を傾げる。


「何?」


 と言った瞬間、アークが残像を残して消える。


 ザン! ザン! ザン! ザン! ザン! と、音がだけが聞こえ、次の瞬間魔物が消え去った。

 アークが一瞬で始末した。だが、何でまた魔物と聞いた瞬間全力を出したのか? 道中、速く動くのは、思った場所に止まれそうになくて怖いと言っておったのに……。と、ムサシは内心疑問に感じる。


「あ、ほんとだ」


 アークが消滅していく魔物を眺めながら呟く。

 なるほど。魔物かどうか確かめる為にさっさと始末したか。記憶がないせいで見た目だけじゃわからないのだろう。今度は内心得心行く。


「でも、おかしいな……まだ七日。あと三日あるのに……」


 何か聞き捨てならぬ事を呟いてと感じたムサシは……、


「あとは三日とは、どういう事でござるか?」


 魔物が出るのは異常事態。知っている事は話して欲しいと思ったのだ。


「ん? ああー、えっとこれも記憶がなくて定かじゃないんだが……二日目に話したエドワード国王の依頼あるだろ?」

「とある屋敷を調べたって話でござるな? 其処で拙者が捕らえられるのも知ったと」

「そう……そこで魔物の事も知ったんだよ。あと三日後に解き放たれると」


 これもそういう事にしておこうと、内心呟くアーク。


「なんと!? それは大問題でござるな」

「だけど、その前にムサシの安全を確保しないといけなかったんだ。二年前まで続いた大戦を終わらせた英雄の一人なんだろ?」

「確かに二年前にラフラカを倒した一人でござるが、拙者一人いなくてもなんとかなるのではござらんか?」


 それこそ拙者を見捨てる選択もあったのではないかと思うムサシ。


「エーコの爺さんは既に死んでる。例の屋敷でロクリスも危険だと分かった。そしてムサシ。この時点で四人だぞ? 一人くらい良いって話じゃないだろ? それに俺も記憶がないせいで本来の能力を出せない。となると実質五人が戦力外。英雄のうち半分は問題あるんじゃないか?」

「確かに……」


 アークが言う通りだと納得する。


「それより問題は三日後の筈だった魔物が何故もう出現したかだ……」


 アークが神妙に考え込む。


「それはサバンナでござるからな」

「ん? サバンナだと何かあるのか?」


 アークが目をパチクリし首を傾げる。

 ムサシは記憶がないから当然か。と、内心呟き……、


「大陸の魔物は、サバンナから発生し強力な魔物は此処に残る。二年前まで、此処は危険地域にされていたでござる。その名残にて狂暴な動物が跋扈(ばっこ)しているでござる。故にサバンナでは町がないのでござるよ」

「なるほど……ラスダン前みたいなとこか」


 らすだん? 何の事だ? 時々アークは、おかしな言葉を使うな。と、ムサシは首を傾げる。


「なあ? 基本的な事だと思うが魔物って何だ?」

「分かり易く申すなら魔導の力にて動物を狂化したのが魔物にてござる」

「なるほどな……だから此処は狂暴な魔物が多いってわけなのか」


 アークが神妙に頷く。

 それにしても今のアークは、常に考え込んでいる。記憶がないせいで分からぬ事だらけなのであろう。と、一人納得するムサシであった。

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