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EP.17 国務大臣として -side Musashi-

 拙者の名はムサシ=ガーランド。

 エド城最後の生き残りと言う事で、国務大臣を拝任した。拙者には似合わぬが、拝任したからには、エド城発展に力を入れる所存でござる。

 二年前まで続いた精霊大戦で妻と子を失い、エド城も滅びた。しかし、人の活力と言うのは目を見張るものがある。生き残った者達で一年掛からず復興させたのだから。


 その時に腰を痛めると言う事があって、歳には敵わぬと嘆いたが。回復魔法で事なきを得た。

 復興を手伝いに参ってくれたルティナ殿が言うには精霊が復活しているらしい。魔法とは本来暮らしを豊かにするものなので有難い限りでござる。


 目下問題は資源。精霊大戦で大陸は荒れ様々な資源が失われた。だと言うのにクロード城の者はエド城が資源豊富で自分達だけで潤っているから、分け与えろと言って来てる。

 一体どこからそんな根も葉もない情報を得たのでござるやら。

 資源も分け与えないのなら戦争も辞さないと言って来た。そんな事になれば、今だってほとんど無い資源が枯渇してしまう。仕方無いので拙者は国務大臣として外交もやる事になったでござる。


 そして、拙者はクロード城に兵を二人連れて使者として参った。

 其処で応接間で通され待つ事暫くし、食事でもと言われたので断る理由もないので、それを受けた。下手に心象を悪くし戦争を起こされるわけには参らぬでござる。


「これはこれはエド城の国務大臣であるムサシ殿、ようこそ我が城に参られた。儂がこの城の王をしている」


 食堂らしきとこに連れられ、クロード王直々に挨拶をして来た。


「これは王自ら挨拶とは痛みいるでござる。拙者はご存じの通りムサシ=ガーランドでござる」


 テーブルを挟んで拙者も挨拶をし両隣の席で立っている我が国の兵も会釈を行った。

 その間に料理が次々に運ばれる。我が城では海辺と言う事もあり海鮮料理が多い。中でも刺身は拙者の好みである。

 此処では肉料理が多いだな。豚の丸焼きっぽいもの……ペキンダックと言うらし。

 それや白い皮に肉や野菜を包まれたもの……ギョーザと言うらしい。

 他にも色々並ぶが、どれも豪勢でござるな。まぁ拙者の好みではないのだが、せっかく振舞って頂いたので、有難く頂戴致すでござる。


 それにしても王はにこやかに挨拶をしているが、他の者の視線が痛い。

 それに王の左右に四人、我々の後ろにいる者が八人。何かすれば即座に殺すといったとこでござろうか?


「では、続きの話は食事をしながらゆるりと……さぁ席にお座りください」


 王にそう言われたので我らは席に着いた。


「まずは一献。残念ながら貴国の酒ではないが……」


 そう言ってワインらしきものが運び込まれた。


「申し訳ないでござるが、拙者は下戸故……」


 これは実質会談……酔い潰れるわけにはいかぬ。


「そうですか……では、お付きの兵の方には是非。我が国の酒を味わって欲しいですな」


 兵二人が拙者に視線を向けて来た。拙者は軽くコクリと頷く。拙者は酔い潰れるわけにはいかぬが、心象を悪くするわけにも参らん。

 兵二人はワインを注がれる。拙者に果実水が注がれた。


「では、両国の発展に」


 クロード王が音頭を取った。


「「「乾杯っ!!」」」


 果実水を一口飲み食事に手を出す。見た目は豪勢でも味は薄い。何処もスパイス等の調味料は不足気味。仕方無い。

 故に拙者は食材の味をそのまま楽しめる刺身を好む。尤も醤油などが限られているので完全の楽しめるわけではござらんが。


「さてムサシ殿……貴国と交易をしたいのだが?」


 早速本題か。


「国同士助け合って行く事には異論はござらん」


 一方的に我が国が与えるのは困るでござるが、と内心付け足す。


「では、貴国のミスリルをメインに我が国は鋼を出そう」

「其れでござると我が国からは三に対し貴国が七になるにてござるが?」


 鋼とミスリルではミスリルのが価値が高い。軽くで丈夫と言う金属だが、先の大戦で多くが失われ正直我が国でもそんな余裕はない。


「ムサシ殿は先程、国同士助け合いに異論はないと仰いましたね?」

「申したでござる」

「貴国が大量のミスリルを所持している事は知っています。それを三とは如何なものでしょうか?」


 話が段々不穏になって来た。


「其れは根も葉もない話でござる。拙者の国でも其れ程多くは確保しておりませぬ」


 とそこで両隣の我が国の兵が倒れたでござる。もしや盛られたでござるか?


「おやおや我が国の酒を強いですからな……お二人は客間に案内しましょう」


 そうクロード王が言い、クロード城の兵が二人を運び出そうとした。

 正直盛られた可能性も捨て切れにてござるが、此処で拙者が暴れたら国の為にならぬかもしれぬでござる。ここは成り行きに任すしかないな。


「では先程の話だが、本当に多くを所持しておられないのですか?」

「余裕はござらん。其れに七:三が不服なら我が国は交易は無しでも構わぬにでござる。我が国は余裕はござらんが、クロード城と交易をする程、困っているわけでもござらん」


 ここは毅然としていないと付け込まれてしまうでござる。


「貴様!」


 周りの兵達が怒りを露わにし、剣を抜く者まで……。


「やめい!」


 それを王が止める。


「では我が国は六、貴国は四と言うのはどうでしょうか? ムサシ殿」


 ふむ。

 正直それでも構わないで。助け合って行くのに異論がないと言う言葉に偽りはない。しかし我が国も威厳を示さなければ舐められる。仮にも戦争を起こすと脅して来た国であるからな。


「其れですと拙者にては判断できませぬでござる。ひとたび王同士にてかいだ……」


 何だ? 意識が朦朧とするでござる。


「ふん! やっと回ったか……侍と言うのは存外しぶとかったな」


 王が吐き捨てるように言った。回った? やはり盛られていたでござるか……。

 くっ! 意識が保てない。そのまま闇に呑まれた。


「うっ!」


 次第に意識が覚醒してきた。


「やっと起きたか。ハハ、侍ってのは随分お寝坊さんなんだな」


 蔑むような笑いが聞こえて来た。拙者はどうやら椅子に座らされ、縄で縛り付けられているようだ。

 此処は何処だ? 薄暗く窓も無い。


「まだ寝ぼけてるのか? クソ侍」


 パッシンっ!


「っ!」


 鞭で嬲られたようだ。人は二人。拙者は拷問でもされるのだろう。状況把握は出来たでござるが、どうする事もできぬ。はてどうしたものでござるか。


「なんとか言えよ! クソ侍」


 パッシンっ!


 また鞭か。


「拙者がクソ侍なら、お主らはクソ使いパッシリでござるな」

「んだとぉ! 貴様は状況判断もできないのだな。これだから脳筋の侍はタチが悪い」


 パッシンっ!


 鞭でも同じとこを嬲られ皮膚が剥がれ血が噴き出てしまった。拙者は魔法は使えぬ故、抜け出す事もできぬ。

 参った。どう致すか……。


「エド城が資源を独占してるのはわかってるのだ。さあ吐け! どこに隠している?」

「知らぬでござる」

「ほ~これでもか」


 ベリベリ……。


「ぬぅぅぅ!」


 爪を剥がされた。


「爪は全部で二十枚。全部剥がされたくなければ答えるのだな」

「先程、拙者を脳筋と申したでござるが、どっちがそうでござるか? 拙者の言葉が理解できぬのでござるか? 資源を独占などしておらぬでござる」

「黙れ! 貴様は立場をわかっていないようだな」


 パッシンっ! パッシンっ! パッシンっ!


 鞭で滅多打ちでござるな。だが、拷問で拙者は屈しぬでござるよ。

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