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EP.16 ムサシは既に事切れていました

 クロード城三階の廊下の一番奥の部屋は一番広い。王の部屋かな? ここ普通は警備の人いると思うんだけどな。

 いや、それ以前にここまで来るのに人に全然会わなかった。武の言う通りもぬけの殻だ。


 ドッゴ~ンっ!!


 とその時、けたたましい音が下から響いた。何だ? 物凄い音と共に激しい振動も来てバランスを取るのに苦労する。

 バランスを取るのに必死になっている俺の真横の下から銀竜のようなものが地面を壊し立ち昇る。

 その銀竜は俺の真横まで来ると消えてしまう。そして俺は空いた地面から下を覗く。


「お~い! 治ー!」

「なっ!!」


 開いた口が塞がらない。こいつ何やってるんだ? いくらもぬけの殻でも城を破壊するなよ

 武の奴、銀竜みたいのを出して地下から俺のとこまで真っ直ぐ天井を壊しやがったのだな。


「そこから降りられるか?」


 武が叫んでる。いや、ショートカットはできるけどさ。ほんと何してるんだか。そう思いつつ俺は下に飛び降りた。


 そして後悔した。最上階は三階、地下は二階、合計五階分。城は高い位置に屋根がある。4mと考えて20mあるぞ。

 落ちながらそんな計算をしていた。ダメだなこれ。


「ぐぎゃ~」


 声にならない声を上げた。


「<下位回復魔法(リカバリー)>」


 下位回復魔法(リカバリー)じゃ大して治らない程、足が複雑骨折してやがる。


「ぎゃー!!」


 マジいて~。


「<中位回復魔法(ギガ・リカバリー)>」


 し~~ん。くそ!中級はやっぱ無理だ。


「何やってんだか~」


 武が呆れている。


「っ~~……誰のせいだ!」

「はいはい……<超回復魔法(アプライ)>」


 武が何かの魔法を唱えて見る見る回復した。たぶん中位クラスだ。すげ~な。


「お前さ、気を足に集中させて降りて来いよ」


 気? ドラゴン〇ールですか?

 『はっ! この気は!? 〇ジータだ』って奴をやれって?


「うん? 気……闘気を知らない? いや、忘れているのか?」


 闘気? 闘志と言う精神的なものを力にしろと言う精神論?


「じゃあそれ斬ってみて」


 武がどんどん話を進める。説明しろよ。

 そこで気付いたがここは武器庫か。そして武が指したのは飾られた鎧。こんなもん斬れるかよ! アホか。


「斬れるかこんなもん」

「かもね。でもやって見なければ分からんだろ?」


 ったく何なんだよ? 言われた通り俺は剣を構えた。


「はっ!」


 ギーンっ!


「っー!」


 手が痺れた。やっぱ斬れないし。


「じゃあ今度は体の中の気を……エネルギーを感じて手、そして剣に集中させてやって見て」

「はぁ!? 意味わかんねぇよ」

「良いから構えて、目を瞑り意識を体の中に向けて。エネルギーを感じようとしろ」


 はいはい。俺は言われた通りにした。

 うん? 確かに体の中にエネルギーの流れを感じるな。これを手に、剣に集中させるのか。

 あ、何か手に集まってる。


「はっ!」


 再び剣を振った。


 スッパーンっ! と、鎧が綺麗に斬れた。


「気とは言わば体内エネルギー。それを感じ操るにはセンスや長い修行が必要なんだ」


 気とか修行とかやっぱドラゴン〇ールやんけ。


「記憶を無くしたとは言え、一度気を操れるようになったんだ。直ぐに使えるようになると思ったぜ。まぁ記憶を失う以前と全く同じとはいかないだろうがな」


 そう言って武は肩を竦ませる。


「お前、俺が記憶を失う前、気を操ってたって知ってたのか?」

「知らんよ」

「は!?」


 じゃあ何で分かるんだよ。


「俺の気は、相手の気の質とか量とかを感じ取れるから」

「気って便利だな」


 つうか相手の質と量が分かるってやっぱドラゴン〇ールやんけ。


「便利だけど、俺の場合はそういう修行をしたから。普通は相手の質とか量とか分からない」

「そうなのか」

「でだ、あれくらいの高さくらい足に気を集中させれば無傷だよ。お前の気の量なら」

「先に教えろよ」


 無駄に怪我したじゃんかよ。つうか複雑骨折。マジ痛かった。


「いや、無理ならロープくらい勝手に垂らすと思ってたし」

「うっ!」


 返す言葉がない。

 まあ気……闘気の事を教えて貰ったし良しとするか。


「で、此処に何かあるのか?」


 誤魔化すように話題を変える。


「此処を見ろ」


 指差されたとこを見たが、ただの床だ。


「床?」

「隠し通路がある。仕掛けを探すのは面倒だから壊す」


 そう言って床を素手で殴り破壊。その先に通路があった。


「何で分かった?」

「これも気の応用だ。さぁ行くぞ」


 また気か。ドラゴン〇ールっぽいから気と言う言葉は使いたくないから闘気にしよう。闘気って便利だな。

 そして、その通路の先に人がいた。その者は椅子に縛られ血だらけだ。彼がムサシなのか?


「おい! 大丈夫か?」

「ヘンジガナイ、タダノシカバネノヨウダ」


 俺が声をかけると横で、武がドラ〇エちっくな事を言ってる。つうか屍?

 もっと近くに寄りマジマジと見た。


「うっ! おぇぇぇ~」


 そして目を逸らし胃の中のものを吐き出した。


「無残だな」


 武は平然と呟く。


「爪を全部剥がされ、歯を全部抜かれ、皮膚も剥がされ……」

「説明するな……おぇぇぇ~」


 しかも部屋中に拷問器具らしきものが散乱している。それが余計気持ち悪くて仕方ない。胃の中身がなくなる程、吐き出しそうだ。


「記憶を無くしてるなら早々に慣れておけ。異世界によってはグロいものを何度も見ないといけないのだぞ」

「分かってはいるんだがな……記憶を失う前の俺は平気だったのだろうか……」

「まぁお前の気の量を考えてかなり殺しまくってると思うけどな」

「うえ~」


 俺が殺しまくってるのか。想像したくないな。


「にしても目的は分からないが散々拷問した挙句、あのゾウにビビって、放置してさっさと逃げたって事かな? 腐った連中だ。皆殺しにしてやりたいな」


 武が淡々と少し怒りを滲ませて口にする。良く平気で、そんな事言えるよな。

 それだけ武は過酷な世界で生きて来たのかな?


「ん? 今回は俺じゃなかったな」


 と、今度は意味深な事言い出した。


 何の話か聞こうとしたら、視界が暗転。見慣れたベッドの上にいた。あ~またタイムリープしたか。

 日数は、一週目十四日、二週目八日、三週目十一日。条件は日数ではないな、たぶん

 なら昔の仲間が死んだ場合。でも、エリスの死体は確認していない。だが、これが一番可能性がありそうだ。

 となるとエーコは誰かと一緒にいれば仮にギガンテスが現れても物理特化の奴がどうにかしてくれるだろう。エリスは救援に向かえば問題無い。

 エドワード国王はどうなんだろ? 戦争に誰かが介入しないとダメかもしれない。

 そしてムサシ。彼も救援に行かないと。

 となると動けるのは俺とエーコ。エリス、エドワード国王、ムサシの三人の救援があるがどうする?

 エドは情報だけ流して西の守りを固くして貰う? それでダメならアウトじゃねぇか。

 ダメだ! 八方塞がりに近い……。

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