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EP.15 山より大きなゾウがいました

 翌朝、エドワード国王に呼び出された。エーコと二人で謁見の間に向かう。

 ロクーム、エリスは先に来ていた。

 エリスのお肌が昨日よりキッラキラで、ロクームが何故か(やつ)れているのは……きっと気のせいだろう。

 王座に腰掛けたエドワード国王が俺達が来たのを確認すると口を開いた。


「先程、エド城より使者が来た」


 エド城? 貴方の城? いや、此処はフィックス城だから違うか。


「ムサシがクロード城に行ったっきり帰って来ないそうだ」


挿絵(By みてみん)


 ムサシって誰だ?


「それでクロード城の者は何と?」


 エリスが聞く。


「来てないと」

「はぁ!?」


 ロクームが過剰に反応した。


「それでうちに来てないかと尋ねてきたわけだ」

「なぁエーコ、ムサシってのは十一人の英雄の一人?」


 小声で聞いた。


「そうだよー」


 マジかよ。

 このパターンはムサシが死んでいて、またタイムリープするのか? やっと色々上手く行ってたのに……。


「それでロクームとエリスには、帰るついでにクロード城に行って欲しい」

「本当にムサシが行っていないか確認するんだな? エド」

「すまないが宜しく頼む」

「分かった」

「分かったでガンス」


 おかしいな。どんどん話が進んでる。昔の仲間が死ぬとタイムリープするのではないのか? なのにあのベッドで目覚めない。

 仮説が間違っていた? いや、まだ生存しているのかも? ならやる事は一つだな。俺は決心する。


「俺も気なるし行ってみる」

「アーク!?」


 俺の言葉に驚いたのか、エーコが声を上げる。


「アークだけじゃ心配だしー、わたしも行くよー」


 エーコはそう言うがどうしようか? もしまたアルフォンスから攻めて来られたら大変だな。


「今回はロクームとエリスがいるから大丈夫」

「なんか良くわからんでガンスが、俺様達と一緒なら大丈夫でガンス」

「そうだな。私達がいるから問題ない。私達の実力は知っているだろ?」


 ロクームとエリスも一緒になって言う。だけどエーコが心配してるのは、そこじゃないと思うな。


「でもー」


 ほら引き下がらない。記憶の事を心配してるんだろうな。


「あ、俺も行くよ。俺もいれば少しは安心だろ? エーコちゃん」


 と武も名乗りを上げウインクした。キザい、ウザい、ゲスい。三拍子揃ってるよなコイツ。

 って言うかいつからいた?


「タケルさんがいれば平気かなー?」


 エーコが悩む。まあ武は俺が記憶ないのも知ってるし、前の世界のダチだしな。

 ってそこまで武は察した? だが、もう人押し。


「終戦後を狙ってまた仕掛けてくる馬鹿者がいるかもだろ? エーコにはフィックス城に暫くいて欲しいんだ」

「……分かったよー」


 渋々頷いてくれた。仮に昔の仲間が死ぬとタイムリープすると仮説するとエドワード国王には一人になってもらいたくない。


「話が纏まったな。正直エーコがいてくれるのは助かる」


 玉座に腰を掛けているエドワード国王が話し始めた。


「では、クロード城に向かうのはロクーム、エリス、アーク、アークの友であるタケルだな。宜しく頼む」


 こうして俺達は、クロード城を目指す事になった。

 しかし、イーストックスで船に乗ろうとした時、違和感を感じた。船に乗り込む者より降りる者が異常に多いのだ。

 だが、記憶のない俺はこれが普通と言う事を忘れているのだろうと納得させた。

 しかし、船でチェンルに到着した時、違和感が顕著になった。


「何かおかしいなでガンス」

「そうだな……人が少ない」


 ロクームが最初に口を開きエリスも同意していた。

 確かに人が少ない。近くにある道具屋なんて閉まっている。俺達は暫く町の中を歩く。


「なんだあれは!?」


 エリスが何かに気付き叫ぶように指を刺す。


「山だな」


 ただの山にしか見えないけどな。


「いや、あそこに山なんてないでガンス」


 ロクームがそう言う。何だって? じゃああれは何だってんだよ?

 そうして俺達はその山を目指しながらチェンルの町を出て、山の全貌を目視した。


「なっ!?」

「……足があるな」


 ロクームの開いた口が塞がらない。無理もない。俺も驚いてしまいポツリ呟いてしまう。


「ここから見えるのだけで四本……見えているのは側面だから八本はあるな」


 エリスが続けた。ん? 四本? 三本じゃない?


「いや、恐らく計六本」

「ああ。一本は足ではなく鼻だ」


 今まで黙っていた武が口を開き、その言葉に俺も続けた。


「鼻!?」

「何故鼻だって分かるでガンス? あんな長い鼻見た事なでガンス」


 とエリス、ロクームが返してくる。


「だってあれゾウじゃん」


挿絵(By みてみん)


 そう…足が六本で山のようにデカいと言うのは異常だが、ゾウにしか見えない。


「「ゾウ!?」」


 ロクームとエリスが首を傾げる。え? ゾウ知らないのか?


「創造上の動物だ。見ての通り鼻が長いのが特徴だな」


 武が誤魔化した。まあ異世界の動物とか言うとややこしくなるしな。


「てかさ、あっちって俺様達の家でガンスよな?」

「えっ!? お爺ちゃん、エスメルダ」


 少し震えるようにロクームが呟と、焦った声音でエリスも続く。


「悪いでガンス、アーク! 俺様達は帰るでガンス。ムサシの事は頼むでガンスよ」


 まあ自分の家があったとこに山くらいでかいゾウがいれば慌てるよな。


「分かった。だからほら急いで帰りな」


 そうしてゾウに向かってロクームとエリスは走り去った。


「もう手遅れなんだけどな」


 ボソっと武が何か呟いている。手遅れ? 何が?


「今、なんか言ったか?」

「いいや何でもない。さあ俺達はクロード城へ急ごうぜ」

「分かった」


 二人だけになった俺達はクロード城を目指した。

 俺が目覚めて十日立ちクロード城に向かう途中から魔物がチラホラと出現し始めてた。一週目と同じだ。

 夜中に行くのは失礼と言う事もあり、一泊野宿をし翌朝到着した。俺が目覚めて十一日目だ。

 それにしても武がいてくれて助かった。夜の見張りのほとんどをやってくれて、襲ってきた魔物も対処してくれた。


「さてクロード城に着いたけどおかしくない?」

「門兵どころか城はもぬけの殻だな」


 俺の言葉に武が続ける。そう門兵がいない。それどころか近くに人の気配がない。

 俺は気配はないと思っただけだが、武には断言できるのか。いまいちまだ気配と言うものが掴めない。

 記憶があった頃はここまで分かったのだろうか……。


「都合が良い。城を探索しようぜ。ムサシって奴がいないにしても手掛かりくらいあるだろう」


 武にそう言われ俺達はもぬけの殻の城に入った。俺は上を武は下を調べると言う事で俺は階段を昇って行き最上階と思われる三階に来た。

 部屋らしきものが沢山あるな。しかも一つ一つが広い。なのに使われていない。

 王族の部屋で、まだ王族が少ないのだろうか? なんせ最近城が完成し、ここらを統治しだしたしな。

 精霊大戦のせいここの領地の城は真っ先に滅ぼされラフラカ帝国が統治した。しかし、精霊大戦終結時にラフラカの城は崩壊し、一時期ここらの領は無法地帯となった。

 それを一年半くらい掛けて城を再建しクロード領が復活した……らしい。ロクリス情報だ。

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