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EP.11 旧友と再会しました

 と言うわけで、夕方時にフィックス城にやって来た。名前は聞いてなかったけど転移魔法っぽいのを使える二人の来客があった筈。

 意識してみると離れていても謁見の間から気配を感じるものだな。流石はダークの肉体と言うべきか、この体のスペック高いのが改めてわかる。

 さて、二人と顔合わすのは面倒だ。覚えていないし。


「どうしたのー? 立ち止まってー」


 つい城の通路で足を止めてしまった。エーコが訝しげに首を傾げる。


「先客が来てる。もう直ぐで帰るから待つ」

「わかったー」


 何故そんな事がわかるんだと言わんばかりに首を傾げるているが、それ以上何も追及されなかった。

 待つ事数分……気配が消えた。転移魔法を使ったようだな。


「帰ったようだ……行くか」

「わかったー」


 そうして謁見の間にやって来た。

 さて、またエーコに任せっきりも良くないな。それにタイムリープとか面倒な説明はしたくない。

 となるとエーコを介するとタイムリープの話もしそうだし、タメ口でも気にしない王だし俺が話すか。

 ちょっと……いや、かなり王ってだけで気が引けるし緊張するが、ここは気合を入れて挑もう。


「アーク……それにエーコか。エーコ、君は日々美しくなって行くな」


 王座に座ったエドワード国王がまた口説いてるぞ。この王は口説かずにいられないのか?


「俺のエーコを口説くな」


 って俺も何を口走ってるんだろ……。


「分かったから、そんなに睨まないでくれ」


 あれ? そんな強く睨んでないんだけどな。目力強いのか?


「アークの私じゃないよー」


 変な事を口走ったからエーコもそっぽ向いてしまった。

 でも顔赤くなってるぞ。可愛いな。


「それで今日は何か用か?」


 単刀直入に行くか。


「アルフォンス城が戦を仕掛けて来る。西側の守りを固めた方が良い」


 戦を仕掛けられるって分かってるなら、相手国の国境側を固めるのは定石……の筈。たぶん。


「何故分かる?」


 そう来るよな。


「そういう情報を掴んだから来たんだ」

「そうか……では西側を固めるか」

「それと俺のエーコを貸す。戦力にすると良い」

「だからアークのじゃないよー」


 うん。今のはわざと。可愛いからつい。

 また顔赤く染めてそっぽ向く。今度はリスみたいに頬を膨らまして、尚更可愛いな。


「エーコは良いのか?」


 エドワード国王が確認を取る。


「良いよー」

「助かる。それでアークは?」


 どうするんだ? と金目の双眸が雄弁に語り掛けている。


「ロクームに用事があって悪いが残れない。ちなみに何処にいるか知ってるか?」

「アークが爆発に巻き込まれた屋敷に地下があってな……ロクームはそこの調査に行かせた」

「そうか。なら行って来る」

「では、そこへの船を手配しよう。それと戦の準備をして来る」


 エドワード国王が謁見の間から離れた。


「さて、俺のエーコよ」

「もうしつこいよー」


 今度は怒り始めた。流石にしつこいか。


「そうだな。エーコの俺だな」

「何言ってるのー?」

「記憶がないから、ずっと面倒見て貰ってたからな。一週目と二週目」

「そんなの知らないよー」


 まあタイムリープしてるのは俺だけだしな。


「じゃあいろいろ片付いたらデートしようか」

「脈絡なさ過ぎるよー。それに言っておくけどー……」

「この体はエーコパパなんだろ?」


 遮るように先に言った。


「………」


 あ、何かフリーズしたぞ。


「えっと、本当に繰り返してるー? 記憶が無いフリしてないー?」


 また信用ないなー。


「じゃあ賭けをしよう。戦が起きたら俺の勝ちで、デートしよう」

「わたしが勝ったらー?」

「添い寝をしてあげよう」

「バカなのー?」


 うわ! また蔑みの目。これがまた痛い。


「あのベッドのサイズはどう考えても一緒に寝てる時があるだろ?」

「たまにだよたまにー」


 また顔真っ赤にしてそっぽ向いた。


「冗談はともかく、俺が賭けに負けたらエーコの言う事何でも聞いてあげる。パパと一緒にお風呂だって良いぞ」

「……中身はパパじゃないでしょー。それにそれって得なのアークでしょー」


 げんなりしたように言う。


「バレたか」

「は~……じゃあアークが一週間ご飯作ってねー」


 ほんとエーコって溜息多いな。


「そんなんで良いの?」

「アークの事、信用してるから、どうせ賭けはわたしが負けるよー。だからデートして上げるー」


 って言ってるわりにはそわそわしているぞ。本当はデートしたいんじゃないの?

 まあそれ突っ込んだら藪蛇にないそうだから止めて置こう。


「ところで、俺が爆発に巻き込まれたとこって何処? エリスって人はそこにいる筈」

「えっとー、此処から北北東にエルドリアって町があってー……」


 一度説明を切り、エーコが衛兵に地図の用意を頼み、それを持って来て貰い地図を指差すと再び説明を始めた。


挿絵(By みてみん)


「今日はここで一泊した方が良いねー。で、明日は東の海を目指せば良いよー。エドおじちゃんが船手配してくれるって言ってたから、そこに停泊してる筈ー」

「分かった。じゃあ行って来る。帰って来たら一緒にお風呂ね」

「は~……そんな事ばっか言ってるとデートして上げないよー」


 また溜息付かれた。


「ごめんなさい。あーそれとお小遣いください」


 二十歳過ぎてる――俺として十五歳と言う感覚だが――おっさんが十一歳の子供にお金を強請るとか、どんだけ甲斐性無いんだよ。


「これだけあれば、十分かなー? 無駄遣いしないでよねー」

「はーい……やれやれどっちが子供なんだか」

「それはこっちの台詞だよー」


 うん、だよね。1000G貰った。


 そうして俺はエルドリアに向い、日が暮れた頃に到着した。エーコがいないから旅は少し大変だった。

 一週目だったら死んでたな。今回は気配を感じる感覚ってのも分かったし…… 一度分かると何故か呼吸をするかのように分かるのが不思議だ。

 剣もそれなりに扱えるようになったので、襲って来た動物を簡単に返り討ちに出来た。


「さて、宿屋はどこかな~……ぅううんっ!?」


 見覚えがある奴がいるぞ。


「武?」

「ん? 誰だあんた」

「やっぱ武か? 少し成長してるように見えるけど……」


 俺の記憶では十五歳。だが、目の前にいる武はもっと上に見える。それこそ今の俺と同じくらいだ。以前と同じようにツーブロックに耳にかからない程度の長さの髪だ。

 っていうかそれ以前に何でいるの? ここ異世界だぞ? 目の前にいるのは、クラスメートだった渡内 武だ。


「だから誰だよ? あんたは」

「俺? 治だよ」

「はっ!? どう見てもおっさんだろ?」

「って、そっちも老けてるじゃんかよ。俺もどうせ転生するなら若い体が良かったよ」

「……またちが…て…かいだな」


 武が何かボソっと言うが聞き取れない。


「何か言ったか?」

「いや何でもない。それによりお前が治ってなら聞くが、俺の好きな漫画は?」

「カケラの魔人」

「いつの時代だよ!? つうか懐いな」


 え? なんか呆れられた。


「うーん……実は俺の記憶は十五歳までしかないんだよな~」

「十五歳か……カケラの魔人って、そんな時代だったか。随分時が流れたんだな。よし! とりあえずメシ行くぞ。其処で詳しく聞く」


 しみじみ呟いた後、そう言って武はメシ屋らしきとこに案内してくれた……。

 それにしても武の奴、全く気配を感じないな。普通は微弱ながらに感じるのに……。

 ちょっと目を離したら何処にいるのか分からなくなりそう気配だな。

 まあ俺もまだ気配察知を感覚でやってるから、どういうものか分からないけど。


 それに韓国っぽい道着に白い上着を羽織ってる。上着にはマントなのか? 二枚の透明な布みたいなのが肩の下の肩甲骨からふくらはぎあたりまで垂れている。

 横幅20cmくらいだけどマントとして機能するのか?

 恐らく武は強い。道着もそうだが、気配を感じさせないんだ。かなり強い筈……たぶん。


「それで記憶がないってのはどういう事だ?」


 シーフードパスタを注文した武は、くるくるっと巻き一口食べた後に聞いて来た。

 ここは鉱山都市らしい。それ故、パスタは保存が効くとか。近くに海があるので魚介類も豊富らしい


「その前に聞きたいんだけど、俺は十五歳の時、交通事故にあったか?」

「あーあったな。しばらく入院してたぞ」

「じゃあやっぱり一緒に住んでる人の言う事は本当だったのかな? 十五歳以降の記憶はないんだけど、どうやら十九歳の時に、このダークもしくはアークスの肉体に転移して来たらしい」

「なるほどそれで転生とか言ってたのか……あれ? ダーク? じゃあゲームと同じ世界? 異世界も色々あるから、そういう可能性もあるのかな?」


 武がボソボソ何か言ってる。何言ってるのか全部聞き取れなかった。ただ何かわかった口ぶりだ。


「何かわかったのか?」

「うん? 此処がF(ファースト)F(・ファンタジー)O(・オンライン)のゲームと同じ世界って事だな」

「FFO?」

「フルダイブ型MMORPGのゲーム」

「フルダイブ型? 高過ぎだろ」


 確か40万はする筈。


「二年後には安くなるよ。それに高校生になってるだろ?」

「あーバイトか」

「そうバイトでいくらでも稼げる」

「異世界にゲームの世界ってあるのか? 俺、夢の中なんでは?」

「異世界は色々あるからな。そういう世界があってもおかしくはない」


 詳しいな。となると……、


「武は色んな異世界行ったのか?」

「行かされたんだよ。元の世界に帰りたければ言う事聞けってさ」


 武が天を仰ぐ。


「そうなのか」

「話を戻すと十九歳の時に治がいなくなったって事件になってたぞ」

「ますます同居してる人の言葉が真実味を帯びて来たな」

「まあ俺もその後、直ぐに異世界に転移したから、見つかったか不明だけどな」

「じゃあ武も異世界転移者なのか?」


 シーフードパスタの最後の一口を食べて聞く。武も食べ終わっており、茶を注文してまったりしている。


「最初は……な。今は異世界漂流者だよ。あっちこっちの異世界に行けってコキ使われているんだよ」


 憤慨を表すように言う。誰にそんな事言われているんだ?

 俺も茶を頼みまったりする。まだ聞きたい事あるしな。


「じゃあ何でこの世界に?」

「まだヒミツ」


 ちっ! 教えろよ。


「じゃあ何で此処にいたんだ?」

「情報収集。この世界に来た時に近く放り出されたから、この町を拠点に情報を集めてる」

「そうなのか。それとさっきから気になってたんだけど、武は今何歳?」

「二十五くらいかな?」

「じゃあ六年も色んな世界を渡り歩いてるのか」

「俺の時間に取ってはな。治に取っては、もっと長い時間この世界にいるかもしれないし、逆に大した年数いないかもしれない」

「どういう意味だ?」

「異世界によって時間の流れが違うんだよ」


 なるほど……そういう事か……。

 そうだ! 今思いついたけど力になってくれるかも?


「武って強い?」

「何だよやぶからぼうに」


 武が目を丸くした。


「いや、道着っぽいのとか着てるし」


 気配の話は出来なかった。俺自身まだよく分かっていないからだ。


「まあそれなりには? 色んな異世界を渡り歩くんだ。弱いと生きていけない」

「じゃあ手伝ってくれない?」

「何を?」


 タイムリープの話をすると長くなりそうだし面倒だな。避けるように上手く話さないと。


「俺の記憶を失う前の仲間がとある遺跡の調査に向かったんだ」

「それで?」

「後から其処は危険だって情報を掴んでな。助けに……と言うか手伝いにって言った方が良いかな? 手伝いに行きたいんだ」

「それに俺も来いと?」


 お! 話が速い。


「そう……お願いできないか? 俺、記憶ないせいで戦い方もあまり分かってないんだ」

「それ俺にメリットある?」


 そう来たか。


「情報収集してるって言ったな?」

「ああ」

「その遺跡に行った人なんだが、トレジャーハンター チーム名ロクリスの二人なんだ。トレジャーハンターなら色々知ってるのでは?」

「なるほど……乗った」


 よし! 武ゲットだぜ。って武もポ〇モンにしちまったぜ。

 ともかく話が纏まったとこで武が休んでる銀月という宿に向かう。俺も其処で宿を取る事にした……。

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