EP.10 とことんクズなロクーム
そうして地下5Fに到着すると鍵のない扉まで到着した。
「ここは何だ?」
エリスが呟く。
≪問題 ここは地下何階でしょうか?≫
「はぁ!?」
ロクームは、素っ頓狂な声を漏らしてしまう。
何だ此処は? クイズに答えると扉が開くのか? でも、何故そんな意味不明な仕掛けが? とロクームは内心疑問が次々に浮かぶ。
「良いから答えれば良いのではないか?」
エリスがそう言うならとりあえず答えるかとロクームは、思い直し……、
「五階」
≪正解! 次の問題≫
「まだあるのでガンスか?」
バコ!
「黙って聞いてろ」
またエリスに殴られた。
「ラフラカを倒した十一人の英雄の名は?」
「えっと……俺様…ロクーム、エリス、エドワード、アルフォード、ルティナ、ガッシュ、ユキ、ラゴス、エーコ、ダーク、ムサシ……これで十一人だな」
≪ハズレ≫
ロクームは指で数えながら十一人を答えたがハズレと言われ、はーーー! 何でハズレなんだよ? と地団駄を踏んだ。
≪正解はエドワード=フィックス、アルフォード=フィックス、エーコ=アローラ、ラゴス=マゴス。ルティナ=プランフォート、ロクーム=コード、エリス=シャール、ガッシュ、ユキ、ムサシ=ガーランド、アークス=アローラ≫
「は~~~~~!! フルネームでガンスかよ」
まったくふざけてるな。とロクームは、イラ付く。
「しかもアークス=アローラって誰だ?」
エリスが呟きロクームもその言葉も同意する。アークス=アローラなんて聞いた事ないぞ、と。
「ダークの本名か」
暫し考えたロクームはそう声を上げた。
「そうだな……ダークの名前だけなかったな」
エリスもそう納得した。
≪次の問題 ダークは誰と誰のチーム名≫
「チーム?」
「またふざけた問題だ。私達が知るか。一人はアークス=アローラだろうな」
≪時間切れ! 正解はダームエルとアークス=アローラ≫
「アークス=アローラしかわからんでガンス」
「ああ」
ロクームの言葉にエリスも同意した。
≪次の問題 エーコの父親は?≫
「知らねぇよでガンス」
「何なんだ? さっきから意味のわからん問題ばかり」
≪時間切れ! 正解はアークス=アローラ≫
「マジか? ダークがエーコの父親だったのでガンスか」
「そう言えば影ながらエーコを助けてる事があったな」
マジかよ? それ俺様は知らなかったな、とロクームは内心思う。
≪次の問題 エリス=シャールのラフラカ決戦前のスリーサイズは?≫
ブチっ! と、何かが切れる音がしが気のせいだろとロクームは思い直す。
「ふざけるな!」
エリスが吐き捨てるように言う。
「上から80、58、83だな。意外にケツでかいんだよな」
「何で知ってるんだ?」
「へっ!? 嫁だからでガンス」
≪正解! ちなみに体重は〇〇kg≫
ブチブチブチ……っ!! と、さっきよりはっきり聞こえた。
「<中位火炎魔法>」
エリスが中位火炎魔法を唱え、多めに魔力を注ぎ炎の鳥を展開した。
「ロクーム、覚悟は出来ているだろうな?」
「げ! 旦那なんだから良いでガンスだろ?」
≪次の問題 エリス=シャールの初めての一人で慰めたした日は?≫
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチッッ……!!!
いやいや……何か物凄い勢いで切れる音がしてるぞ、とロクームは寒気を感じ冷や汗を流す。
「好い加減にしろーーーっ!!」
中位火炎魔法による炎の鳥をクイズを出す扉に放った。
ドッゴーンッッ!! とけたたましい音を響かせ扉がぶっ壊れる。
「さあ行くぞ」
エリスが前を歩き出す。
「あ、待てよ」
それにしても魔物はいるしエリスやダークの個人情報を知ってるし、此処は一体何だ? と一瞬考えるロクームだったが、それよりも気になる事があった。それは……、
「エリス、ところで初めて一人で慰めた日は何時なんだ?」
「あん!?」
「……いえ、何でもないです」
「結構!」
鬼の形相で睨まれロクームは、身を硬くする。が、ちぇ何だよ。たかがその程度教えろでガンスと、内心毒付く。
その後、現れた魔物は憂さ晴らしをするかのように全てエリスに駆除された。
そして地下7F
≪問題 エリス=シャ……≫
「<中位火炎魔法>」
ドッゴーンッッ!!
有無を言わさず中位火炎魔法で破壊。だが、冒頭で言ってたのはまたエリスの事だ。
エリスをわざと狙い打ちにしてるな、と考えるロクーム。
そして次は8F。
「何だこれ?」
エリスが呟いた。
下が溶岩になっている。向こう岸まで結構な距離がある。
ロクームは天井にワイヤーフックを引っ掛けた。そしてエリスを抱き寄せる。
「触るな! 変態」
バッコっ!
あのクイズのせいで、ご機嫌斜めだな。嘆息するロクーム。
俺様との件は昨夜相手してやったから大丈夫な筈だ。女は抱いてやれば喜ぶものだし。うん、間違いない。
「じゃあエリスだけここ残るでガンスか?」
「くっ!」
苦虫を噛み潰したよう顔をまたした。
「俺様のワイヤーフックで行くしかないでガンスだろ?」
「触らずに運べ」
「無茶言うなでガンス」
「ちっ! 仕方無い」
舌打ちまでして、俺様に対し何をそんなに怒っているんだ? まぁとりあえず再び抱き寄せる。
「……おい! どこ触っている?」
「胸でガンスけど?」
抱き寄せたんだから触るのは当然だろ、と思うロクームは、ついでに揉でいた。
「くっ!」
お! 良い顔してるな、とニヤリと笑うロクーム。
「触るな! 揉むな! 汚らわしい」
「そこまで言うでガンスか!? それに良い顔が喜んでいたでガンス」
「煩い!! 気持ちの問題だ。何故お前はそれがわからないのか?」
気持ちって何だ? 気持ち良いんだろ? 何を言ってるんだ? と全く理解していないロクーム。
「胸に触れず、あっちまで運べ」
「はいはいでガンス」
言われた通り胸を避け、腰に手を回して向こう岸まで行った。が、その最中に横っ腹を揉んだ。
うん、子供を産んだだけあって、少し脂肪が増えているな。とことん失礼な事を考えている。
ドカドカボコボコ……!
向こう岸に着いた瞬間、ロクームは、ボコボコされた。まぁ当然の帰結と言えよう。なのに……、
(脂肪を確かめて、死亡しそうでガンス)
と、意味不明な事を考えていた。
「行くぞ」
「その前に回復を……」
あまりに強烈でロクームは地面に伏していた。
「自分でしろ」
「……分かったでガンスよ」
投げやりに言ったロクームは、懐から薬草を取り出しそれを口にした。効果は微々たるもので、もしエリスが傍にいない時や、エリスが魔力枯渇した時用に持っていた。
しかし、微々たるものなので大した回復力はない。それでも立てたので、急いでエリスを追い掛けた……。
地下9Fに到着した。
ロクームは、改めて考える。一体此処は何なんだろうか? と。
ラフラカを倒した事で魔物は出現しなくなったと言うのに魔物が現れた。
ちなみにラフラカとは二年前まで続いていた精霊大戦を起こしていた連中の親玉だ。
ラフラカは精霊を吸収し、精霊の力を実験する為に動物を狂化してた。それが魔物だ。
そのラフラカを二年前に倒したから魔物がいる筈がなんだがな。と、考えるロクーム。
それにこの迷宮は自然のものではなく、人の手で作られたものに思える。それは迷宮の上に屋敷があったから事から明白だ。
だが、何故ダークやエリスの個人情報を知っていたのだろうか? 仲間のロクーム達の中に二人の事をそこまで詳しく知ってる者は皆無。
例えばエーコがもし父親という事実を知っているならダークの事を詳しく知ってるかもしれないが、エリスの事は知らないだろう。
ロクームならエリスの事を詳しく知ってるが、ダークの事は知らない。
それはそれとして、エリスの初めて一人で慰めた日など知らなかったって事は、腹ただしいがダークより旦那の自分より詳しい。と、どうでも良い事をいつまでも気にするロクームだったが、甘い匂いで思考が中断された。。
「匂うでガンス」
「そうか? 私は別に何も匂わないがな」
エリスには匂わないのだろうか?
何だか頭がボーっとしてフワっとしてきた。
「何をする?」
俺様は、エリスに殴られたのかな? ロクームは首を傾げる。無意識にエリスに抱き着いたのだ。
「油断するな。次は何があるかわからんのだぞ」
ロクームは、エリスの言葉が右から左に流れていた。全く頭に入っていない。
「ロクーム! おいロクームっ!!」
何だか熱くなって来たな、とロクームは感じ上着を脱ぎ出す。
「何をこんなとこで脱いで……そういう事か。このダメ男が!」
エリスが吐き捨てるように言うが、ロクームはの頭には全く入っていない。
あ、目の前に奇麗な人がいる。と、ふわ~っと誘われるようにそっちに行ってしまう。
もうロクームの息子は臨戦態勢に入ってる。あの奇麗な人を是非貫きたい……。とか考えながら。
逸る気持ちを抑えようとするが、ベルトを外すのがもどかしい。さっさとズボンを脱ぎたい。
「ロクーム! ロクーム!」
ペッシーンっ!!
頬を殴られた。
「えっ!? え、エリス?」
いたのか。と言うかいなくても良いだろ。邪魔だ。とか考えるロクーム。
「お前、何してるか理解してるのか?」
「勿論でガンス」
あの奇麗な人を息子で貫くとこだ。だからお前は邪魔だな。
「魔物にまでもか……節操がなささ過ぎるぞ」
「最近誰かさんがカリカリしてるからこっちだって溜まってるんでガンス!!」
「何が溜まってるだ? 昨日襲ったの誰だ?」
「あーもう! 煩い! 邪魔だ」
遂には、エリスを突き飛ばすロクーム。
よし! これで心置きなくあの奇麗な人と楽しめる。エリスが魔物がどうとか言ってたな。まぁどうでも良いでガンス。と感じそのまま綺麗なな人……もとい魔物に引き寄せれていた。
「おい! ロクーム! ロクーム! いい加減にしろ! 貴様らも邪魔だ!」
まだいたのか。煩いな。これから楽しむとこなんだから静かにしろよな。
次々に最低な事ばかり考えるロクームである。
「く! 鬱陶しい! ぐはっ! このー」
「はっ! 俺様は何をでガンス!? エリス? どうしたんでガンス? 血だらけじゃないかでガンス」
「誰のせいだ? お前のその臨戦態勢あるのぶった斬るぞ」
「ひっ! 何だよでガンス? いきなり……最近のお前カリカリし過ぎだぞでガンス」
って、あれ? 何で俺様のアレが臨戦態勢に入ってるんだ? と首を傾げる。
「誰のせいだ? ぅうう~」
そしてエリスが倒れた。
「おい……嘘だろでガンス? エリス確りしろでガンス!」
何で? 今何が起きたんだ? 何でエリスが倒れているんだ? もうわけがわからねぇよ……。
自分のした事も理解できずロクームは狼狽えていた。