EP.09 肩身が狭い -side Rokum-
俺様の名はロクーム=コードでガンス。大陸一のトレジャーハンターを名乗っている。
相棒は嫁のエリス=コード。綺麗な紫の髪が艶やかでストレートに流し背中まである長さ。かなりの美人。
あ、別に美人で簡単に落ちたから嫁にしたんじゃないでガンスからな。そこは断じて違うでガンス!!
そのエリスと二人で組みトレジャーハンター ロクリスで名が通っている。
しかし、今はロクリス休業中。五ヶ月前に子供が生まれて子育ての真っ最中。それにエリスは子供を宿していたせいで体が鈍っているだろう。
あ、断じて子供が邪魔とか思ってないでガンスからな。
エリスに手を出せなかったのなんて、たった九ヶ月。その程度で邪魔と思う筈がないでガンス!!
ただちょーっと街中で女に誘われて、仕方なくベッドの相手をしたせいで肩身が狭くなってる。
だからって子供が悪いわけじゃないでガンスからな!! そこ大事。超大事でガンス。
子供の名はエメラルダ。エリスから一字取り、最近流行りのキラキラネームにしてみた。勿論女児だ。
「おぎゃーおぎゃー」
おっとエリスが抱えていたエメラルダ泣き始めた。
「ミルクかなー。ちょっと持っていなさいっ!!」
俺様に渡し、ミルクを作り始めるエリス。それにしても当たりがきつい。
六ヶ月前に善意で町の女の相手をしただけだって言うのにまだ怒ってる。そもそも女の相手してやるのが男の甲斐性でガンス。それで怒るのはおかしいでガンス。
「おぎゃーおぎゃーーーーーーーっ!!」
余計に泣き始めたぞ。
「子供にもわかるのだ。どうしようもないパパだってな!!」
そこまで言うか? マジで女を抱いてやって何で怒られるんだ?
「貸すのじゃ。ロクーム君では、どうしようもないのじゃ」
そしてもう一人の家族。エリスの祖父で、俺様の義祖父にあたる。名をライデン=シャールこのじーさんまで俺様への当たりがきつい。
俺様は大人しく渡した。
「よーしよーし……どうしようもないのパパじゃな」
「ニヤニヤ」
ライデンじーさんに渡した途端ご機嫌が良くなりやがって。
「は~……じゃあ出掛けて来るでガンス」
肩身が狭く溜息が出てしまう。さっさと家を出よう。
「何処へ行く?」
エリスが睨んで来た。
「何処って仕事だよでガンス」
ロクリスは休業中なので、町で荷運びの仕事をしている。
「そう言いながら、他の女と遊んで来るんだろ?」
「そうじゃな。ロクーム君の事だから、遊んで来るじゃろうな」
二人して俺様を何だと思っているんだ。いやそれ以前に男の甲斐性を見せて女の相手した俺様を何でこんな態度なんだ?
「かい……しょな、しー」
エメラルダまでもかよ。甲斐性がある行動だったろでガンス!!
コンコン……!
そこで玄関からノックが聞こえて来た。
「はーいでガンス」
近くにいた俺様が出る。
「フィックス城より参りました」
エドのとこの兵士か。何の用だ?
「エドになんかあったのでガンスか?」
「いえ、手紙を持って行くように言われただけであります」
そう言って手紙を渡して来た。
「では、私はこれで」
そう言って兵は帰って行った。
手紙か……何が書いてあるんだろう。封を開け読もうとした瞬間、エリスに取り上げられる。
もうミルクを作ったらしくライデンじーさんがエメラルダにミルクを上げていた。
「おい……取り上げる事ないでガンスだろ?」
「うるさい! 浮気魔は黙ってろ!!」
ちょっとなんか言うとこれだ。
「ふんふん……ロクーム、出掛けるぞ」
そう言って手紙を俺様に投げて、準備を始める。で、手紙の内容は……、
『とある者にある屋敷の調査を依頼したとこ、屋敷ごと爆破された。
屋敷の事を調べられなかったが、瓦礫の下に地下に行く道があり、迷宮になっていた。
そこの調査の依頼をロクリスにしたい。
尚、そこへの船は地図の場所にて』
読み終わるとエリスの準備が終わったようだ。って何で準備してるんだよ?
「おい、行くのでガンスか?」
「当たり前だろ? ロクリスに依頼だ」
「まだ体鈍ってるでガンスだろ?」
「ちょうど良いリハビリだ」
「ベッドでもあんな鈍重な腰の動きでガンスか?」
パッコっ!!
顔面を殴られた。俺様、変な事言ったかな? 実際あんな鈍重な動きでは達しなかったし。
「子供の前で変な事言うな! 馬鹿なのか!? いいやクズだったなっ!!」
理解出来ないだろ? って言うか何故そこまで罵倒する?
「ともかくダメでガンス。爆破されたとこでガンスだろ? 危険でガンス」
「あんたの意見なんて聞いてない! さっさと準備しな!!」
ほんと最近全然言う事聞かないし、カリカリしてる。
そう言うのが女には結婚前とか出産前はあるらしいが、エリスは出産後と言う遅い時期にそれが来たようだ。まったく仕方無いな。
俺様も準備し、エドが依頼して来た迷宮に向かった……。
エドが指定した地下迷宮に到着した俺様達。
地下2Fまでは、ただの迷路。問題はエリスが全然言う事を聞かない事だ。勝手にどんどん進む。
しかも急かしまくる。
「早くしろ! まだ開けられんのか?」
進む道中、鍵付きの扉や罠ばかりある。
時間を掛ければ簡単に解除できるのだが、エリスが煩くて集中出来ない。
そうして漸く3Fに到着したのだが……何故かオーガの群れがいる。
「何で魔物はいるんでガンス?」
「構うものか……倒すのみ!」
「おい」
俺様の言葉も聞かずまた先走ってるよ。エリスは剣の二刀流をしながら突っ込む。
ザンザザーンっ!! と、実際それで倒してるのは良いが奥にメイジオーガも控えているのだぞ。
「<下位火炎魔法>」
ほらメイジオーガ隊が下位火炎魔法を唱えて来た。
「エリスー!!」
エリスを無理矢理抱き寄せた。
「余計な事するな!」
助けたのに酷い言いようだ。
「<中位氷結魔法>」
ピキピキ……!
エリスは中位氷結魔法でメイジオーガ隊を凍らせた。
「あの程度これ済む……はっ!」
プシューンっ! と、そう言いながら、目の前のオーガを斬る。
くそ! 完全にエリスの独断場だな、まぁ数も多い事だし俺様も短剣の二刀流で倒すか。
プシュプシューン! と、斬り咲く。
それにしても何で魔物がいるんだ? 二年前に精霊大戦が終結したからいない筈なんだけどな……。
そんな事を考えながらオーガ達を倒して行った。大分時間食ってしまったな。外は恐らく夜だな。
「ロクーム、次行くぞ」
だというのにエリスは何か焦っている。
「休憩だでガンス。今日はもう休むでガンス」
「まだ平気だ! 行くぞ」
「お前、何そんな焦っているんでガンス?」
「焦ってなどいない!」
「じゃあ休むでガンス!!」
「なら、お前だけ休んでろ!」
何をカリカリしてんだ?
「良いから休め」
俺様は無理矢理エリスの服を掴んで引き寄せた。
バッコっ!!
いてっ! また殴られた。
「俺様達はチームでガンス。一人で先走るなでガンス」
「軟弱者めが」
「お前、何カリカリしてんでガンス? 仕事なんだぞでガンス。確りやるでガンス」
「うるさい浮気魔!」
「だったら、此処でお前を抱けば満足でガンスか?」
エリスの服を無理矢理脱がそうとした。
「触るな変態」
「もう良いでガンス。文句言うなら帰れでガンス! どっちにしろ鈍ってるお前じゃ途中から、いても邪魔でガンス」
「何だと!?」
エリスの胸倉を掴んで、無理矢理キスした。
「何する? 場所を弁えろ」
唇をこれでもかって程、手の甲で擦り始める。失礼な奴だな。
「これからは、お前だけ相手にすると言えば満足でガンスか?」
「そういう問題じゃない」
「じゃあどういう問題でガンス?」
「一度でもしたのが問題だ」
「それとチームプレイを乱すのとどう関係してるんでガンス?」
「くっ!」
エリスは、苦虫を噛み潰したような顔をし出した。
チャンス……そのまま美味しく頂きました。あくまでご機嫌取りだよ?
「結局してしまった」
エリスが項垂れている。
「良い声出してたでガンス」
バッコ!
いたっ! また殴られた。
「ほら人の事を殴っていないでメシ食えでガンス」
保存食を出しエリスに渡す。
「ふん!」
休んでくれてるが、ご機嫌斜めのままだな。
「もう一回するか?」
そうすればもう少し機嫌が良くなるかな。
「余計な事せず、食ったら寝ろ」
ちっ! まぁそう言われたら仕方ねぇ。魔物が入ってこないように扉を閉め施錠。
そうして俺様達は迷宮の中で夜を明かした。一夜明かしてもエリスの機嫌悪い。
それでも依頼は依頼だ。そのまま俺様達は進んだ。魔物はがちょろちょろ出現するが問題無く進める。最初のオーガより弱い。