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EP.06 レディは口説くのが礼儀 -side Edward-

 私の名はエドワード=フィックス

 フィックス領で王をしている。


 本日はユグドラシル大陸にあるイクタベーレという国の王妃であらせるプリセン=ディーネ=イクタベーレと、その護衛のサラ=マンデーラが来られる事になっている。

 我がユピテル大陸はユグドラシル大陸と国交を結んでいる。

 二年半前まで続いた精霊大戦で資源は失われ精霊が消えてしまった。たった二年では資源が増えるわけでもないし、精霊が完全復活するわけでもない。

 こんな現状なので渡りに船というわけだ。


 直接国交を結んだのはユグドラシル大陸を統べるロッカ女王なのだが、転移魔法が唯一使えるディーネ王妃が来られる。

 ロッカ女王も、たまに来られるが、大陸を統べるだけあり、忙しいのか毎回とはいかない。

 ディーネ王妃は水色の髪をしており背中まである。サラは緋色でお尻のあたりまである長い髪だ。二人とも見目麗しい。


「あ、来られたようだ」


 五芒星の魔法陣が現れる。時空魔法に分類される転移魔法で、我が大陸にはない珍しい魔法だ。

 その魔法陣からディーネ王妃、サラ、そして今回我が大陸に渡される大量の物資が現れた。


「これはようこそおいでくださいました。相変わらずお美しいですね。ディーネ王妃よ」


 レディを口説くのは、礼儀だし開口一番そう言った。


「ふふふ……いつもながらお上手ですね」


 ディーネ王妃が微笑む。

 ディーネ王妃はこうやって微笑んでくだされるのだが、何故かロッカ女王は蔑みの目で見られる。


「良ければお茶でも如何ですか? 貴女のような誰もが羨む見目麗しい方とお茶を楽しみたいですね」

「申し訳ございません。残念ですが、本日は予定が詰まっておりまして……」

「いえいえ……忙しいのは良い事です」

「そう言って頂けると嬉しいですわ。では本日の目録です。ご確認を」


 そう言って目録の用紙を渡される。


「サラはどうかね? 君のような美しい方となら毎日お茶をしたいくらいだね」


 サラは元々平民の出らしく、畏まった言い方を嫌っているので、気安く声を掛けた。


「エドよ、お主は女を口説かずにはいられない呪いでもあるのか?」


 サラも大分砕けて来た。

 私にも気安く話して良いと言ってあったのだが、最初の頃は王ってだけで畏まっていた。


「レディを口説くのが礼儀さ」

「そうか……。残念だが私はディーネの護衛故に出来ぬな」

「それは残念。ではディーネ王妃、これがこちらの目録です」


 そう言って我が大陸が提供する物が書かれた目録の用紙を渡す。


「拝見します」

「それと実物そちらに置いております」


 実物を示す。大半が我が国で作られた機械だ。

 我が大陸では二年半前までの大戦で精霊が一時的に消え、機械技術が進んだ。いや、それ以前から魔法は失われた技術と言うものであったので、機械技術が発展したのだ。我が国は、機械技術の最先端を行く。

 尚、精霊が自然を増やし、資源を増やしている。が、ルティナに聞いた所、現在では精霊が少しずつ復活しているが、直ぐでも自然が回復し資源が増えるわけでもない。


 私も目録を確認する。頼んでおいた資源が確りあるようだ。

 鉱石とか二年半前まで続いた大戦で失われたので助かる。それと魔道具という珍しい物が大半だ。

 そんな確認をしているとお客が、この謁見の間に来られた。


「エド叔父ちゃん、こんにちわー」


 エーコだ。


「エーコか……。君は日々美しくなって行くな」


 エーコは、二年半前に終結した精霊大戦でともに戦った仲間である。


「ありがとー」


 そしてもう一人、ともに戦ったダーク……今はアークと名乗っている者もエーコの後ろから現れた……。


「久しいなアーク」


 サラがアークに気安く声を掛けた。そう言えばこの二人は面識があったのだったな。

 しかし、アークはちょっと困った顔をし、何かを言おうと口を開けたり閉めたり繰り返して何も言わない。

 ん? どうかしたのか?

 そうこうしてるうちにエーコがサラの前に出て口を開く。


「申し訳ございません。何処の何方か知りませんが、今のアークは記憶喪失なので貴女の事を覚えていないと思われます」


 と、そう言った。何だって? 記憶がないのか。


「そうか……。ならば早くを記憶が戻ると良いな」


 やや沈鬱な表情で返す。


「ありがとうございます」

「目録確認しました。本日もありがとうございました」


 二人の会話が終わるのを見計らってディーネ王妃が私に声を掛けて来た。


「こちらこそありがとうございます」

「それでは失礼します……<転移魔法(ソウテン)>」


 ディーネ王妃がサラを伴い、今回ユグドラシル大陸に用意した物資を持って転移魔法(ソウテン)でお帰りになられた。


「さて、記憶喪失というのは本当か?」


 私は王座に座りエーコの言葉を待つ。


「うん」

「そうか……」


 なんて言って良いものか……。

 次の言葉を悩んでるとアークが何やらエーコに耳打ちした。


「アークは例の爆発のショックで記憶がなくなったんだけどー」


 ああ、あれか。私が依頼して、とある屋敷に忍び込んだんだよな。報告は受けている。

 まさかアークでもミスをするとは、想定外だった。私はあの屋敷を甘く見ていたようだ。


「それで一緒にその屋敷に行ったのは良いけど、依頼内容は詳しく聞いてないんだよねー」


 エーコが続ける。


「それで?」

「詳しく依頼内容聞きたいんだってー」

「そうか……。ところで何でアークが直接言わないのだ?」


 さっきから耳打ちしてるのが気になる。


「エド叔父ちゃんが王様だから気が引けてるみたいー」

「気安く接してくれても良いんだけどな」

「記憶がないから、しょがないよー」


 それもそうか。少し寂しく思うが。


「それで依頼の件だったな……詳しく話したいが、今回ユグドラシル大陸からもたらされた物資を確認したいから明日でも良いか? 少し長くなるかもしれないからじっくり話したい」


 またアークがエーコに耳打ちしてる。


「良いってー」

「では客間を用意しよう。部屋は別々のが良いか?」

「今のアークはちょっと心配だから同じ部屋でー」

「分かった。では二人を客間に案内してくれ」

「はっ!」


 私は衛兵に案内を頼んだ。

 二人は衛兵に着いて行く。

 さて、では物資の確認をするとしよう。


「これは機械開発部に」

「はっ!」

「これは市に流して」

「はっ!」

「これは……」


 ユグドラシル大陸からもたらされた物資を執務室に移動して確認しつつ、それぞれの場所に流す。

 こういうのは我が国を安定させる為に私自らしないとな。 そうして全ての確認と流す場所を決めると夜遅くなっていた。

 さて、私も休むとしようか。


 アークは大丈夫だろうか? 私が依頼した事でああなってしまったので、責任を感じてしまう。

 おかしな研究をしてた、あの屋敷は結局何を研究していたのか、わからなかったのも痛手だ。

 地下は無事だったのでトレジャーハンター ロクリスに頼んで調べて貰っている。

 アークの二の舞にならなければ良いが……。

 そんな事を考えていたら、私の部屋に到着した。では、寝るとしよう。


 次の日の早朝、衛兵が部屋に飛び込んで来た。


「おやすみのところ失礼致します」

「ふは~~どうした?」


 欠伸をしながら聞いた。こんな朝早くから何だ? 部屋に飛び込むという事はよっぽどの事のだろう。


「アルフォンス城の兵達がフィックス城を囲んでおります」

「何だってっ!?」


 一発で意識が覚醒した。

 アルフォンス城とは、最近西に出来た城で、何かと突っかかって来るめんどくさい領だ。

 ウエストックスの領地をくれてやったのに強欲なのか、何かと要求して来る。

 今まで戦争一歩手前まで来ていたが、今日ついに開戦したか。しかも朝早くに既に囲むとか姑息過ぎるぞ。宣戦布告を事前するのが礼儀だろ。


挿絵(By みてみん)


「直ぐ行く」


 私は身支度を済ませ我が国の兵を指揮する為に部屋を出た。

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