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EP.23 ルティナと再会しました

 それから俺は灰色の生活を送る。

 港町ニールで、暫く何もする気も起きず、ボーっと過ごす。

 そして、俺は町を転々とする事に決めた。その日食っていける分のお金を稼ぎ生きて行こう……。


 そう決めてから数日後、ニュータウンパラリアに到着した。其処で、子供を引き連れている女にエンカウントした。

 黄緑色の髪で赤いリボンでポニーテールにしてる。赤いリボンが黄緑の髪に栄えて良く似合う。

 何で? あの日と日付が違うのに……。デジャヴだ。

 思わず顔を伏せて通り過ぎた。


「……久しぶりね。ダーク」

「……人違いだ」


 やべぇ!

 思わずあの日と同じ事をトレースしてしまった。別にオン! はしないけどな。

 俺も暗殺者ロールプレイがクセになってようだ。


「ふふふ……昔、一緒に戦ったんだから直ぐわかるわよ」


 振り返りウインクして来た。あの日と同じじゃねぇか。


「ちっ!」


 本物のダークがいるから、余計にまずいだろ。だから思わず舌打ち。

 って、これ前の歴史でも同じ態度取ってるよな。


「そんな邪見にしないでよ。相変わらずなんだから」

「……お前もな」

「……」


 ああほんとあの時と一緒の会話。

 でも、おかしいな。動物はもう狂化されていない。なのに何で、そんな悩んだ顔をする?


「ねぇ? ママ。この人知り合いなの?」

「うん、そうなの。だから、少しお話したいから、貴方たちは少し公園で遊んで来てくれる?」

「はーい、ママ」

「これお昼のお金ね」


 子供にお金を渡すと俺に振り返る。


「ねぇ、お昼食べた?」


 えっと、また戦えない相談でございますか? でも、そこまで必要無いだろ?


「……いや」


 まあ暗殺者ロールプレイで答えておくか。


「じゃあ一緒に食べよう?」


 で、またルティナに案内されて来た店は同じ店だ。日本食があるから食べたい。

 でも暗殺者ロールプレイで、かたゆで卵を注文。その後なんのとりとめの話をしていた。

 あの時と同じだな。で、この後、お悩み相談が始まるんだよな

 そう思っていたらコトっとルティナが何かを置く。

 短剣だ。どういう事?


()()()に貰ったの」


 はっ!?


「……何を言ってる?」

「前の時と同じように戦えなくなったって言ったら、これをくれたの」

「だから何を言ってる?」

「ダークのフリが上手いよね。()()()


 なん……だと?


「俺が誰かわかるのか?」


 いやまさか……。

 歴史改変したのだぞ。


「ダークのフリは上手いけど、本物は口数がもっと少ないわよ」


 そう言って微笑む。


「覚えているのか?」

「ええ。貴方が過去に飛んだ事もね」

「どうして、それを先に言わないんだっ!?」


 思わず怒鳴ってしまった。


「え? え?」


 ルティナが目をパチクリさせながら驚いている。


「店主さん、今食べてるこれお持ち帰りで包んで、それとマグカナの刺身とナスイモの天ぷらを追加注文」

「あいよ」


 日本料理っぽいナニカを注文する。


「本当は、こっちが食べたかったんだ。前回も今回も」

「ダークのフリをしていたから、頼まなかったと?」


 ルティナが目を丸くしながら問う。


「ああ」

「それ私悪くないわよね?」

「そうだな。すまん」

「もう一体何かと思ったわよ」


 そう言ってクスクス笑う。


「それで本物に会ったのか?」

「ええ、戦えなくなったと言って前回みたいな会話をしたわ」

「何の為に?」

「ダークなのかアークなのか確信が持てなかったから」

「そうか……で、ルティナは何で覚えているのだ?」

「あらぁ私は、ちゃん付けで呼んでくれないのかしら?」


 悪戯な笑みを浮かべている。


「呼んで欲しいのか?」

「いや、不思議に思っただけ」

「俺は傍観者だった。ダークの半生見てるだけの。だから、ルティナや他の皆は身近に感じていた。それだけだ」


 ルティナが目を丸くする。


「どうした?」

「いや、答えてくれるとは思わなくて、過去に飛ぶ時に言いたくないみたいな事言ってたから」

「話すのが面倒だろ? 傍観者とか意味不明だし」

「そっか……それで身近に感じてナターシャさんはともかく、何でエーコちゃんだけちゃん付け?」

「可愛いだろ?」

「それって私が可愛くないと?」


 ルティナの眉がピクっと動く。


「子供扱いされたいのか?」

「うっ!」


 ルティナが渋面で言葉に詰まる。


「それとも可愛い女の子扱いがご所望か? なら、ルティナの瞳は、宝石のブルームーンストーンのよに輝いていて、精霊とのハーフだという事を思わせる神秘的で良いよな」

「止めて! ダークの顔でエドみたい事言わないで」


 心底嫌な顔された。


「でも、ずっとそう思ってたぞ。まあ最初は、何だこの抑揚の無い喋り方をする奴はとは思ったけどな」

「なんか恥ずかしいな……褒めらているのもそうだけど、昔の私を知られているのも」

「で、何で覚えている? ルティナちゃん」


 俺は話を戻した。


「私が悪かったからほんと止めて」

「今はデート中なんだから良いだろ?」


 あわよくばアバンチュールも。


「げっ! 今度はロクームみたいな目になってるわよ」


 あの二股クソ野郎と同じ扱いされた。それはショックだ。


「俺がタチ悪いのは認めるが、あんな二股クソ野郎と一緒にしないでくれ」

「二股クソ野郎って……随分的を得ているわね」

「お! 口説かれた人が言うと説得力あるな」

「あーそれも知ってるのか……ほんと恥ずかしいな」

「ダークの知ってる事は全部知ってる」

「そうだよね。半生を見て来たんだから。それで、私を口説いてて良いの?」


 ん? 何の話だ? 問題無いだろ? 俺は首を傾げる。


「ナターシャさんは良いのかなって」

「あーナターシャちゃんには会いに行ったよ。そしたらダークがいた。前の歴史通りならダークを追い掛けるだろうな」

「それで諦めて、私に乗り換えようと? ロクームと変わらないじゃない!」


 ルティナが怒鳴る。

 ほんとあれと一緒にするのは止めて。


「それ以前に俺はナターシャちゃんに其処までの感情を抱いていない。ただ約束したから様子を見に行っただけだ」

「そうだったんだ」

「ところで何で俺が、ルティナに乗り換えるという話になってるの?」

「だって口説いて来たじゃない」

「それを望んでるのかと思ってだよ。そもそも前の歴史では奇跡みたいなもので、俺なんかに着いて来る女なんていないよ」


 コミュ症だもん。

 どうせ口説いて落とせたとしても、いずれ嫌われる。

 わかりきってるのに無駄な努力なんてしたくないな。


「そうだったわね。私が余計な事言ったからだよね?」

「というか、話が脱線しまくってるけど、結局何で覚えてるの? ルティナちゃん」

「だからそれ止めて言ってるでしょう。脱線させてるのはアークじゃない!」


 眉を吊り上げ出した。それはそれで可愛いな。


「あ、またロクームみたいな顔してる」


 何なの? 可愛いと思っただけで二股クソ野郎と同じなのかよ。


「あれと一緒にするのは止めて」

「はいはい。で、何で覚えてるかだけど……わからないわ」


 はっ!? 何なの? 引っ張りまくっておいてそれ?


「たぶん、私が半分精霊だからじゃないかな?」


 首を傾げながらルティナが続ける。

 いや、以前の精霊は全部滅んでるだろ。だから、今のルティナの中の精霊も滅んでる筈。


「でも、今は半精霊化できないだろ?」

「そこが不思議なんだよね。半精霊化できないのに覚えているから」

「精霊部分の全てを失ったわけじゃないのかもな」

「あーそれでかな? また魔法が使えるんだよね。動物は狂化されていないから、問題は無いと思うけど」

「それ精霊が復活と言うか、新しく生まれているからだぞ」

「えっ!? やっぱり? 何か精霊の気配を感じるって思ってたんだよね」


 流石ハーフ。気付いていたか。


「これってどういう事? アークはダームエルを阻止したんだよね? じゃなかったら、歴史は改変されない筈」

「あーそれな。ダームエルを阻止したお礼とかで、時の精霊が色々教えてくれたよ」


 俺は時の精霊が言ってた事を説明した。


「通りで……前の歴史では草木一本生えなかったのに、たまに雑草を見掛けるわけね。精霊が世界を形作るってそういう事だったのか」

「ん? ルティナは半分精霊だったのに精霊の役目を知らなかったのか?」

「うん。漠然としかわかってなかったわ」


 これはまたあっけらかんと。


「でも、まあ何も問題なくて良かったわ。エドに相談しに行った方が良いのか悩んでたのよね」


 ルティナが納得したようにそう言う。


「まっ! ルティナだけだろうな。前の歴史を覚えているのは」

「そうなのかな? 自分では良くわからない。あーそれと、アークにもしまた会えたら言おうと思ってた事があるんだ」

「貴方が好きでしたってかー」

「……やっぱりロクームみたい」

「ただのボケなのに、あれと一緒にしないでくれ」


 ほんとアレと一緒は勘弁。


「じゃあ茶化さないで」

「はい……それはすいませんねー」

「ありがとう」

「ん? 何が?」

「だからダームエルを阻止してくれて」

「それが俺が存在した理由だからな」

「どういう事?」

「星々がダームエルを阻止させる為に、俺にダークの体を簒奪させたんだってよ」

「それも時の精霊から聞いたの?」

「そうだね」

「でも不思議よね。この歴史ではダークが二人いるんだもん」


 それなー。俺も最初見た時は目を疑ったよ。


「そう言えばルティナは全部覚えてるのか? 例えばサラと出会った事とか」

「覚えてるわよ」

「じゃあやっぱりルティナだけだな」

「何で?」

「サラに魔晶石を渡された時に何て言われていたか覚えているか?」

「えっと……ガッシュに引き合わせて欲しいとか……あーそういう事か」


 考えるように言い、途中で得心行ったかのように微笑む。


「約束通り合わせたよ」

「律儀ね」

「いやだってさ、船も出ていない南の島にダームエルとの戦いで、満身創痍の状態で放り出されたんだよ? あれが無かった死んでたよ」

「うわ! そうね」


 想像したのか苦い顔をした。


「ルティナみたいに上位回復魔法(ヒーリング)、せめて中位回復魔法(ギガ・リカバリー)が使えれば問題なかったんだけどね」

「ないものねだりね。ところでこれからアークはどうするの?」


 どうしようかな?

 その日食っていける分だけ稼いで転々としようとしか考えていないんだよな。


「ルティナが養ってくれるなら。ルティナのとこに転がり込むんだけどね」

「来たいなら良いわよ」

「本気で言ってる?」

「ええ」

「夜な夜な襲われても知らんぞ」

「……やっぱロクーム見たい」

「だから、あの二股クソ野郎と同じにせんでくれ。男を軽々しく連れ込むなと言ってるんだよ」

「子供達もいるし、そう簡単には襲えないと思うけど?」


 そこなんだよなー。


「俺は引き籠りのコミュ症なんだよ。人と上手くやって行く自信がない。子供達と上手くやれないと思う」

「こみゅ症?」


 ルティナが小首を傾げる。


「極端に人付き合いが下手で、相手を不快にさせるような奴って事かな? まあそんなわけで俺は転々とするよ」

「そっかー。アークが決めた事だから、とやかく言わないけど、たまには遊びに来てよ。そのこみゅ症? ってのは、数日一緒にいたくらいで険悪には、ならないでしょう? 近くに寄ったら泊まって行っても良いから」

「ああ……その時は宜しく」


 そんな日は来ないと思うけどな。そうして俺はルティナと別れた。

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