EP.06 異世界転移する事になりました
フルダイブ型MMORPGファースト・ファンタジー・オンラインをプレイして二年過ぎた。ああ、この二年と言うのはリアル世界ね。
ゲーム世界での俺のキャラの体感では、20年経っていた。20年ってどのキャラよりも長い年月だ。
まあともかく二年経った時、最後のアップデートが行われた。最後と言うのは完結らしい。って言いながら、どうせ第二部とかあるんだろけど。だって二年で全ストーリー解禁とかあり得ないっしょ。
大体のオンラインゲームは何年も続く、と言うか続ければ課金とかでお金取れるしね。尤もFFOに課金はなく最初に馬鹿高いソフト代と毎月のサービス料だけ。
そのサービス料だけでも収入になるし、続ける方が得な筈だ。
なんせFFOの人気はとどまる事を知らず、プレイする人が増える一方らしい。
攻略サイトの記載もだいぶ進み暗殺者も、それなりの人気を獲得している。一章の終わりが残酷過ぎてグロ系大好物って人は、喜んでやり始めたとか。
それにレベルが全然上がらないのは子供だったからと言うのがファンの見解。誰にも教わる事のない小さな子供。
何故そういう見解になったかと言うと二章から普通にレベルが上がり始めたからだ。教え導く意味深な男、ダームエルの登場によって……。
まあそんな訳で俺も順調にレベルを上げ、現時点で俺の暗殺者と同じレベルの奴は果たしているのかな? って周りに言いたくなる程だ。
名前:ダーク
年齢:二十五歳
レベル:100
クラス:暗殺者
称号:修羅
HP:7000
MP:420
力:900
魔力:240
体力:650
俊敏:2400
スキル:隠密LvMAX、ナイフ使いLvMAX、剣使いLvMAX、短剣使いLvMAX、小太刀使いLvMAX、小刀使いLvMAX、投擲LvMAX、鍵開けLv6、ワナ解除Lv6、闘気Lv5
エクストラスキル:二刀流、毒耐性、痛覚鈍化、下位火炎魔法、下位稲妻魔法、下位氷結魔法、下位回復魔法
ユニークスキル:気配完知、愛犬使役
プレイヤー補助スキル:鑑定
装備:鬼丸則房(攻撃力4000、俊敏500)
三日月長光(攻撃力3500、俊敏600)
修羅の鉄仮面(防御力600)
修羅の帷子(防御力800)
修羅の手甲(防御力500)
修羅の靴((防御力200、俊敏100)
セット装備効果:修羅(攻撃力2000、防御力500、俊敏3000)
これが今の俺のキャラだ。
ただ残念なのがストーリーモードでは装備変更が出来ない事。今現在小太刀二刀流装備なのだが、自由プレイモードでは小刀二刀流にしている。出来ればそっちにしたいとこだ。
まあこんな感じで十分過ぎる程強く最終エピソードもクリアしエンディングに突入した。
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……崩れ行く城。
……崩れ行く心。
……朽ちるのをただ待つ身体。
男の足が止まる。その身を崩れ行く城に委ねている。
「ワンワン」
主人の身を案じる犬が吠えた。賢い犬だ。
「行けっ! ハンターっ!!」
男が叫ぶ。
「くぅぅ~」
ハンターは賢い。長年この主人に仕え片時も離れなかった。
故に主人の気持ちが理解できた。男が死にたいと思っているのが……。
だからハンターは死なせないと目で訴える。
つぶらな瞳。ただただ澄んだ眼差し。それが男にとってより一層痛い。
……崩れ行く城。
……崩れ行く心。
十人の仲間達は崩れ落ちる瓦礫に押し潰されまいと逃げる。
だが男は足を止める。もう男の戦いは終わっただと……。
「ワンワン」
と、犬がもう一度吠える。着いて来いと……そう言いたげに。
そして、振り返るが男は動かない。遂に犬は、男の視界から消えた。
「元気でな、ハンター。エーコを頼む」
後は一人朽ちる果てるだけ。もう男には何も残っていない。
相棒を見殺しにし、妻を看取らず、娘を捨てた。
罪悪に生きてきた男が唯一歩めたのは暗殺と言う修羅の道があったからこそ。
それも、もう終わった
そう、この城こそが男の死に場所なのだ……。
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おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!
これ第二部どうするんだ? 作る気ないのか? それとも生きてました設定か?
マジで死ぬの? 俺の育てたキャラが……。
半ば茫然とエンディングテロップを眺めていたら視界が暗転した。
「えっ!?」
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
気付くと身体が痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛いマジで痛い。これリアルの痛みじゃねぇ?
眼をゆっくり開ける。ここどこ?
知らない家の中だ。それに視界に女の人がいるけど……誰?
奇麗な白身かかった金色で腰まである長い髪だ。背中の辺りでリボンで結んでいる。
瞳は桃色。そんな瞳してる人間いたんだ。しかもかなり美人。
って言うか身体が動かない。マジで痛いんですけど。
「ここは? ……俺は一体……?」
痛みを堪え何とか言葉を絞りだす。あれ? 俺こんな声だったっけ?
「ここはあたいの家。あんたは近くの海岸に倒れていたのさぁ」
女の人の桃色の双眸が俺を覗き込み答える。声も可愛いな。
「……そうか」
見詰めるのが恥ずかしくて視線を彷徨わせつつ、そう返すが……ん? 近くの海岸? うちの近くに海なんてないよ?
え? どう言う事?
「半年も眠っていたのさぁ。もう起きないかと思った」
「そうなのか……」
えっ!? マジでどう言う事?
半年? もうわけがわからない。フルダイブ型MMORPGやってたよな?
「そうさぁ。ところであんた名前はなんて言うんだい? あたいはナターシャ。ナターシャ=プリズン」
どうしよう。高梨 治と答えるか?
まだここがFFOの世界なら俺のキャラ的にこう答えるべきかな。
「……俺には名などない」
でも、リアルっぽいし。これで良いのかな?
まあ俺は引き籠りのコミュ症だから、まともに話せないだろうし良いかな。
「はぁ?」
ナターシャって娘が間の抜けた声を上げる。可愛い。正直凄く可愛い。
ってまてよ? 名前から言って日本人じゃないよな?
まあそれ以前に髪も瞳も日本人っぽくない。
でも、日本語喋ってる。痛みはリアルだけどやっぱFFO?
もうわけがわからない。でもナターシャちゃんが困ってるからとりあえず……、
「名など捨てた」
と答えておくか。うん。自分で言っておいてなんか恰好良い
あれ? 俺こんな中二病だったっけ? まあ良いや。
「それだと何かと困るねぇ。じゃあ、あたいが名前付けて良いかい?」
「……ああ」
いやもう眠い。意識が薄らぐ。なんかアークとか名前付けてくれたよナターシャちゃん。
この後、俺は何を話したのか覚えていない。そのまま闇に落ちって行った。
その二日後に再び目を覚まし気付く、俺は異世界転移していた……。