表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/561

EP.19 ダークとして戦いました

 気付くと俺は倒れていた。此処はどこだろうか?

 俺は立ち上がり、辺りを見回す。森の中か……。

 で、後ろのに屋敷がある。これが二年後には廃墟になってる貴族の屋敷だな。

 あれ? これどっかで見たな。あーそう言えばアークスのダークが始まった森だ。


挿絵(By みてみん)


 まだ使われている屋敷だから、鍵が掛かっておりダークは、此処で寝泊まりできず、森で怯えながら、寝てたんだよな。

 皮肉な話だ。此処から俺の(・・)ダークが始まるんだな。

 暗殺者ロールプレイなんかじゃない。代わりをしないといけないんだ。

 そう今から俺は、ダークだ。ダークをプレイするのではなく、ダークの仮面を被ろう。


 さて、まずはチェンルの町だ。確かラフラカとの決戦時、此処で最後の補給をしたんだよな。

 だから、此処でまず一年身を潜めるんだ。それが一番手っ取り早い。


 ゴゴゴゴゴゴゴ…… と、チェンルの町に着いた瞬間、物凄い地響きがしまくった。


「くっ! 何だ?」


 町の者達も慌てて騒ぎまくる。

 あーそうか。これラフラカが精霊王の力でユピテル大陸を破壊しまくった時だ。

 これで自然は死滅、大陸は引き裂かれ、様々な町や村が滅ぶんだよな。一年前って言えば、丁度その時期か。

 これと同時に魔導士の村が、襲撃されラゴスとエーコちゃんも反ラフラカ帝国組織に加われるんだよな。

 それはともかく大陸を破壊されても、チェンルの町は無事だから、此処にいれば安全だろ。


 さて、大陸破壊も終わったし、これからの事を考えないとな。

 飛空船に乗り込む。ラフラカが倒されるのを見届ける。そして、ダームエルがそれを吸収した時に捕まえる。だが、ダームエルと戦うかもしれない。

 それも精霊王の力を得たダームエルだ。俺一人で……。


「ダメだ! 不安になるな!」


 不安に思わないで戦えるように、もっと鍛えないと。特に未だに使えないスラッシュ・ファング。

 ダークの切り札である闘気剣。何故か俺は、まだあれが使えない。

 と言うか、そもそも闘気って何だ? 右手に集中ってわかんねぇよ!

 VRMMOの時は音声入力なので、叫べばできたけど今は違う。現実の俺の体なんだ。

 なので、一年鍛えまくった。引きニートだった俺が何で此処まで頑張ってるんだろうな。

 首に掛かったチェーンを服から取り出す。


「きっとこれなんだろうな」


 あの時はエーコちゃんに送り出して貰う為に約束とかしたけど。本当は目的が欲しかったのかもな。


「果たすべく約束。だが、叶う事のない約束」


 はっ! 詩人の詩のようだぜ。でも、確かに引きニートだった俺を突き動かしている。

 俺は鍛えるついでに歴史をあまり改変するなと言われたが、ダークが手にする事になる武器を先回りして手に入れる。

 まあどうせダークは、投擲用武器にするから大きくは改変されないだろう。

 チェンルの町を拠点に色々回った。そして手にする。妖刀蒲露桜(ホロザクラ)と名刀陸奥吉(ムツノヨシ)。両方小太刀だ。

 俺の好みじゃないが、ダーク(・・・)として、戦うんだから小太刀が丁度良いだろう。


 一年後。来たるべき日が来た。

 チェンルの町に飛行船で寄り、最後の補給を行う十一人の英雄。

 うわー、ダークがいるよ。自分が二人いるって不思議な感覚だな。

 そして、飛空船が飛び立つ。それに、こっそり乗り込む。


 十一人の英雄がラフラカを倒すのを待つ。俺の戦いはこの後なのだから。俺は陰でこっそり見続けていた。

 やがてラフラカが倒れた。


「私の精霊の力はもう直ぐ消える。でもギリギリまで、私の魔力でこの城を()たせるから、皆逃げて」


 ルティナが呼び掛けて半精霊化し、先導する為に飛び立ったな。さて、本当にダームエルが来るのかな?

 これで来なかったら笑い話にもならねぇな。


「くくく……遂に倒れてくれたかクソったれが」


 あ、現れた。


「お前の研究で精霊を吸収する方法はわかってるんだ。これで復讐が終わる。貰うぜその力」


 ダームエルがラフラカの死体に触れるとラフラカがダームエルに吸い込まれて行った。


「くくく……これで俺の復讐が終わったぜ……ん? 何だ?」


 何かがダームエルの体を渦巻いてる。


「ぐぁぁぁ……暴れるなクソ! 俺の体だぞ」


 何だ? 精霊の力が暴走してるのか? ダームエルの周りで嵐が渦巻いてる。


「クッソー! 抑えきれない」


 ダームエルが浮く。まずい! 俺の直感がそう言ってる。このままだと、何処かに行ってしまう。


「ぐぁぁぁ……」


 咄嗟に俺はダームエルに飛び付いた。嵐が渦巻いてたせいで、体中が切り刻まれて、いてぇーよ。そして、ダームエルは飛んで行く。


「くぅぅ……」


 かなりの風圧が来る。何処に行くんだ。この手を離したら色々終わりだ。離すものかぁぁぁ!!!

 やがて、ダークが始まった森に飛ばされ、貴族の屋敷に突っ込む。

 クソいてぇよ!!

 外壁を突き破り中に入ると、ダームエルの暴走した力が留まる事を知らずで時空間の扉が開く。


 あーだから此処で開いたのか。

 ダームエルは制御できなくて暴走し、此処まで吹っ飛ばされ、そして時空間の扉まで開いてしまうと。精霊王の力というのは凄まじいな。

 そして、俺達はその中に入ってしまう。


「やっと収まった。で、お前さん誰だ? 俺にしがみ付いて来て」


 どうやら暴走した精霊王の力は収まったようだ。たぶん力の大半を使ったお陰だろう。時空間の扉なんて開く程だからな。


「<下位回復魔法(リカバリー)>」


 とりあえず回復しないと、体中痛い。


「よー久しぶりだな相棒」


 そして、俺は顔を上げ、陽気に挨拶した。


「お、お前さん、アークスか?」

「ああ」

「十年ぶりか? 老けたな」


 正確にはコイツの時間軸で八年ぶりだがうっせーよ!!

 気付いたら異世界転移していて十歳近く歳取ってましたって、そこだけは最悪だよ。


「お前もな」


 さて、此処からが本番だ。きっと俺はこいつ倒さないといけない。俺にできるだろうか……。まだ不安だ。

 時空間の中で対峙する。俺はダークの過去に決着を付ける為にいる。この青白い空間では時節何か映像が流れていた。おそらく過去に起きた出来事だろう。或いは未来かもしれない。


「ダームエル、今まで何をしていたんだ?」

「ラフラカのクソ野郎に、拾われ生体実験さんざんさせられたんだ」

「そうか……俺のせいだな。すまん」

「何で、お前さんが謝るんだ?」

「俺がお前を見殺ししたから……殺せなかったから……」

「そうか……あの時の事を言ってるのか」


 暫く逡巡している。


「まぁあれは、酷な事を頼んだ俺が悪かったんだ」

「後から行ったら死体がなくなってたから、てっきり、魔物にでも食われたのかと思ってた」

「くくく……そうか。まぁ俺はラフラカに拾われ魔導の生体実験をさせられたが、お陰であのクソったれの精霊の力を奪う研究を知る事ができたぜ」

「それで復讐か」

「ああ……これで復讐を果たせた。俺を半殺しにした挙句に生体実験をした復讐を、な」

「そうか」


 俺は名刀陸奥吉(ムツノヨシ)を抜いて構える。先程から話していて全然コイツの感情が感じられない。

 昔は、陽気な奴だったのに、それが一切感じられない。言葉ではアークスと再会を喜んでいるのに、感情が感じられない。

 丸で、そうドス黒い何かに塗り潰されているような気さえする。だから、迷う事なんてない。斬るっ!!


「おいアークス、何のマネだ?」

「あの時果たせなかった事を果たそう。お前を殺すというな」

「何を言ってる? もうそれは良いよ。酷な事を頼んだ俺が悪かったんだ」

「ならお前は、その精霊王の力をどうするつもりだ?」

「せっかく、こんな強大な力を手に入れたんだ。俺の夢が叶える」


 子供を不幸にしないか。


「無理だ」

「何がだ?」

「お前はそれを制御できない」

「何故わかる?」

「俺は一年後から来た」

「何をバカな事を」

「お前には此処がどこか分からないのか?」

「……時空間」

「暴走させても自分のおかれた状況はわかってるのだな」

「ああ、俺の中の精霊が教えてくれる」

「ならわかるだろ? 制御できないって。ならお前はどうする?」

「………」

「動物で実験をする。お前がクソったれと言ったラフラカと同じようにな」

「……どうやら本当に一年後とやらから来たようだな。だが制御すれば子供達を救えるのだぞ」


 無理だ! 制御だけじゃない。今のお前に本当に子供を大切したいって感情はあるのか?


「お前はルティナを覚えているか?」

「精霊とのハーフだろ?」

「あいつは精霊の力を失った」

「それで?」

「それと同時に剣も握れなくなった。そのせいで、あいつのとこにガキが魔物の被害に合うとこだったのだぞ」

「その言い方だと無事だったんだろ?」

「ああ、だがそう言った被害があっちこっちで起きてる」

「それでも俺は止まれない。いつか夢を叶える為にこの力を制御する」

「……お前は生体実験とやらをされたせいで狂ってしまったのだな」

「かもな」

「だから今度こそ、あの時言われた事を果たす」


 もう問答は終わった。決着を付けよう。感情がドス黒く染まったお前のせめてもの手向けだ。俺がこの手で、終わらせてやる。あの時の願いを叶えてやる。


 俺はダームエルの後ろに周り名刀陸奥吉(ムツノヨシ)を振るった。


 ギーンっ!!


 何っ!? 見えない障壁で防がれた。


「いきなり後ろからよ。相変わらずだな……「<中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)>」」


 振り返り中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)を唱えられる。それも、半端な魔力を持つ者の特大の炎ではない。魔力が高い者が出す火の鳥だ。

 両腕をクロスしてガードする。クソ! あちぃじゃねぇか。

 妖刀蒲露桜(ホロザクラ)も抜き二刀流で斬りかかる。


 ギーンっ!!


 クソ! 何だ? あの障壁は?

 そう言えば、ラフラカにもあったな。皆でどうにかしたんだっけ? 強力な魔法や闘気技で破ったんだったな。


「無理だよ。今の俺は、暴走でほとんど力を使ったとは言え、精霊王の力があるんだからな」

「それでも、お前を止める」


 名刀陸奥吉(ムツノヨシ)と妖刀蒲露桜(ホロザクラ)を同じ場所を狙い同時に振るう。


 ピキっ!!


 障壁にヒビが入る。暴走で力を使った後だ。やはり、ラフラカより脆い。


「やるな……「<中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)>」」


 それをバックステップで躱す。

 名刀陸奥吉(ムツノヨシ)を逆手に構える。


「スラッシュ・ファングか」


 ダームエルが身構える。そりゃバレてるか。相棒だったのだし。


「スラッシュ・ファングっ!!」


 ………

 ……………

 ……………………シーン。


 だが、出ない。クソ! やはり俺では、出せない。


「何だ? 不発? どう言う事だ?」


 間合いを詰め、再び直接小太刀を振るう。


「おっと何度も攻撃されてたまるか」


 ダームエルが後ろに下がる。手詰まりか……。


「お前さん、本当にアークスか?」

「何故そんな事を聞く?」

「スラッシュファングが不発だったし、それがダメならって短絡的に突っ込んでくるし、昔のお前さんなら考えられない」


 ちっ! そうだな。今の俺は焦ってるな。一人じゃたぶん勝てないと思ってしまった。


「まあ良い。お前さんがやるってなら、俺もお前さんを殺す。<上位火炎魔法(エクスプロージョン)>」


 ドコドコドコドコドコドコドコドコ……ッッ!!!


 上位火炎魔法(エクスプロージョン)により、特大の炎の連打が飛んで来た。


「ぐぁぁぁっ!」


 俺は伏してしまう。全身がいてぇ。ダークになったばっかしの頃を思い出すな。

 俺は結局ダークの身体能力に頼ってばかりで、こんなギリギリの戦いをしてこなかった。だから、こんな体中痛いと戦えない……。

 もう無理だ。体中痛くて動けない。何故俺には闘気剣が使えない?

 ダークの設定は小太刀(・・・)を好んで使う。だから小太刀の妖刀と名刀を手に入れて使ったのに、何でダメなんだ?

 異世界転移までして、俺は此処で死ぬのか?


「やっぱりお前さん、アークスに思えないな。あの時、ウエストックスで瀕死なりながらも俺を庇いながら戦っただろ? なのに上位とは言え、火炎魔法を受けただけで、その体たらく」


 確かにそうだな。情けない。


「まあ良いさ。殺すとか言ったが相棒だった(・・・)お前さんを殺したくない。また組まないか?」


 だった(・・・)


「だった、だと? 俺はお前が今でも相棒だと思ったから止めに来たのに……そうか。とことん俺の知ってるダームエルじゃないのだな」

「それはお互い様だろ。それに、そんな事言うなら立ち上がれよ。今のお前を見てると情けなくて仕方ねぇ。俺の相棒はこんな情けない男だったのか?」


 ああ。その通りだな。俺はもっとタチが悪い。簒奪者なんだから。本当に情けない

 そう思ってた時、青白い空間で流れていた映像が俺の知ってる場面になっている。俺がナターシャちゃんに拾われ、治療されているとこか。

 今も、この映像の俺のように無様なんだろうな。いや、今の俺のが無様か……。


「これはアークスの半生か。今流れているのは、どうやらお前さんが歩んで来た道だ……だが、妙だな」


 映像は流れるように次々に場面が変わる。それを見てダームエルと訝しがる。


 エドに初めて会った時だ。

 報酬2/3よこせとか言ってたな。


 ムサシと初めて会う。

 国務大臣とかほんと似合わないな。


 ガッシュと出会う。

 匂いでダークだってバレたんだよな。


 次はルティナか。

 すれ違っただけでダークだってバレたんだよな。


 ロクーム、エリス、ユキ、ラゴス、エーコちゃん、アル、サラ、そしてナターシャちゃんと再会した。

 そう言えば一ヶ月もしてないのに楽しかったな。


 ごめんな皆。

 もう無理かも。


 あ、約束を交わしてる画面だ。

 何が約束だよ。バカらしい。


「アークス? これは本当にアークスか? これは半生が流れている。なのにお前さんは、何故その姿のままなのだ? 幼少時代は?」

「ハァハァ……俺はダークの体を奪った簒奪者だ。何故俺だったのか、何故ダークの体を奪う事になったか知らないけどな」


 伏したまま答える。


「なんだと? クソったれ! 貴様は、貴様はアークスのフリをしてたのかっ!? ふざけやがってっ!!」


 あーキレちゃった。 

 だけど初めてコイツの感情が見えた気がする。


「<中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)>」


 中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)の火の鳥がこっちに向かって来てる。あー俺はあの炎に焼かれ死ぬか……。

 終わったな。


 シュィィ~ンっ!!


「なん……だとっ!?」


 え? 何だ? この鉄板みたいのは何だ? これが防いでくれたのか?

 胸元が熱い。

 あーこれエーコちゃんの形見の指輪か。

 ピンチの条件付き発動する大地系上位の防御魔法(シールド)が付与されていたのか。

 エーコちゃんの魔力凄いな。中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)を防ぐなんて。

 その時丁度エーコちゃんと約束したあの瞬間の映像が流れた。


挿絵(By みてみん)


 このまま負けたら、恰好付かないな。もう少し頑張ってみるか。


「<下位回復魔法(リカバリー)>」


 回復魔法を掛ける。俺の回復程度じゃなんとか動ける程度にしか回復しないけどな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ