EP.29 やっぱり転生者でした
朝、目覚めると魔獣の死体がごろごろ転がっていた。まあ俺が寝てる時、反射的に倒した魔獣だな。
それらを彩音に見られるのは、忍びないので収納魔法でしまう。俺の職業が忍系だけに……つまんねーって? 細っけ―事は良いんだよ!
「ファーレ、起きてるか?」
「はい、主上」
ファーレが岩の家から出て来た。
「月泳さんは?」
「まだ寝ております」
「ちょっと行って来る。護衛をお願い」
「承知しました」
その場をファーレに任して西に速足に向かう。ファーレが監視していた転移者のとこへだ。
暫く西に向かうと俺の岩の家より、大きさが数段上の岩の家があった。パクりやがって。
そして、その家の前にで剣を振る金髪の男が一人。朝の鍛錬と言ったところだろう。昨日奴隷商に捕まった転移者を助けた奴だ。
<龍気鑑定>
名前:ライオス
年齢:十五歳
レベル:98
種族:人族
職業:幻灯剣士
HP:9900
MP:2000
力:2300
魔力:1500
体力:1500
俊敏:2000
スキル:ナイフ術LvMAX、剣術LvMAX、短剣術LvMAX、格闘術LvMAX、闘気LvMAX、投擲LvMAX、痛覚無効、突風魔法Lv6、閃光魔法LvMAX、幻影魔法Lv8、空間魔法LvMAX、強化魔法LvMAX、気配察知Lv7、危険察知Lv7、鑑定無効LvMAX
称号:ゴブリンスレイヤー、オークスレイヤー、オーガスレイヤー、無幻、幻魔、転生者
契約精霊:風の精霊シルヴェストル
装備:飛竜の短剣 (攻撃力3000、俊敏200)×2
飛竜コート (防御力2000)
飛竜の装束 (防御力600、俊敏800)
飛竜の靴 (防御力300、俊敏1200)
セット装備効果:飛竜 (攻撃力100、防御力300、俊敏100)
やっぱり転生者だったか。しかもかなり強くなったな。
光魔法と隙魔法が中位のレベルMAXって事は、上位には到達出来なかったんだな。まあ幻魔法は上位に到達しているけど。それに称号に無幻とか幻魔とかあるし。
無幻
幻魔法なら無詠唱で負担が無く、魔法名破棄でも負担が少ない
幻魔
幻魔法のレベルが上がり易く、より強い幻魔法を扱える
いやこれもう『幻の申し子』だろ? 何故統合されていないのか疑問だ。
そして、一番ビックリなのが精霊契約してる事。精霊の集落にいなかった四大精霊の最後の一体の風だ。
それとツッコミたい。俺の装備と被ってるだろ!!!???
ちなみに今更だが、名前がライオスです。あの行方を眩ましたライオスだ。
まあファーレからの報告で知っていたけどね。
というか逃げているだけあって髪染めてる。金髪になっているし。
さて、いつまでも見てないで声を掛けるか。ちなみに俺は今、気配を消しているの気付いていない。
「よぉ、ライオス。久しぶり」
「っ!?」
「何だ? 死人にもあった顔だな?」
「……アーク」
バツが悪そうに視線を逸らす。
「よくも草を破壊してくれたな!」
「っ!!」
はい、殴りました。ライオスは吹き飛び尻餅を付く。
「……悪い。だけど、迷惑を……」
「馬鹿か!? 迷惑なら最初から、お前を孤児院から出していねぇよ!」
「おはおは……………………っ!?」
ライオスの岩の家から女が出て来た。そして、尻餅を付くライオスを見て空気が変わる。
「おまえっ!!」
憎悪の眼差しを向けたと思えば突風が吹き荒れる。俺はそれを手刀で斬り裂く。
「止めろ、シル!」
「でも……」
「良いんだ。俺の為に怒ってくれてありがとう」
シルと呼ばれた女は、風の精霊シルヴェストルか?
黄緑の足まで届くような長い髪に緑の瞳。見た目は……いや、その美しさはエルフ寄りじゃないか?。肌は透き通るように白くきめ細かい。しかも服はフリルがふんだんにあしらったワンピースを着ているし。
「ライオ……ゲンイが良いなら良いけど」
ゲンイ?
「彼がアークだ」
「あ、そうなんだ! 話は聞いてるしー。私は風の精霊シルヴェストル。アークなら特別にゲンイが付けた愛称のシルで良いよん♪」
さっきと打って変わってニコやかに振舞う。というか彩音より軽っ!!
「シルね。それは良いが、ちょっと待っててね。先にこっちを片付ける」
そう言ってまだ座り込んでいるライオスに目を向ける。
「お前さ、学園からバックれるのは良いが、勝手に草を破壊するな」
「迷惑が掛かると……」
「分かってるよ。お前が考えそうな事だ。でもな、さっき言った通り迷惑なら、最初から孤児院から、出していない」
「ごめん」
バツ悪そうにそっぽ向くライオスに手を差し出す。その手を掴んだライオスを起き上がらせる。
「良い目をするようになったな」
「え?」
ライオスが目を丸くする。草では、確り確認出来なかったライオスのその目を覗き込む。
「濁りがなくなった。復讐以外を考えられるようになったのか?」
「……良く分からない」
自分では気付かないのかもな。
「復讐は止めるのか?」
「それは絶対に無い!」
キっ! と目が鋭くなる。
「良いんじゃないか、それで。復讐がきっと一区切りなる」
「復讐は、何も生まないとか、言わないんだな」
「そんなのは、復讐したいと思った事がない奴の綺麗事だ」
「丸で実体験があるようだな」
「似たような所だ」
実際は、ダークが復讐をしていた。俺はそれを見ていただけだ。
「ともかく、俺はそれを見届けると言っただろ? その為に孤児院から出したんだ」
「……野次馬根性的な?」
「そうだ」
「それは嘘だ」
「は?」
何言ってるんだ?
「そんな考えの奴が、俺を見守る為にエーコと沙耶を学園に無理矢理入れない」
「じゃあどんな理由だ?」
「復讐以外の事も目を向けられるようにしたかったんだろ?」
バレてるし。
「かもな。だが、復讐したいならしろ。それを俺は止める事はしない。それは事実だ」
「ああ」
「ところでお前、精霊の集落にでも逃げたのか?」
俺と被った装備の出所を考えれば分かる事だ。
「ああ。あそこなら追手が掛からないと思ったから」
「良くあそこの連中が受け入れてくれたな」
「アークの名前を出したから」
あ~そういう手を使ったのか。
「それにシルもいたし」
「うん? じゃあシルは精霊の集落に行く途中で出会ったのか?」
「そそ。私は、あの森の中でゲンイを見付けたんだ。でねでね、なんか光るものを感じて契約しちゃったのよん♪」
『♪』がウザい。
何だそれは? 光るって何だよ? 閃光魔法が使えるからか? まあ良いけど。
「それで、アークの知り合いでシルがいたから、最初は沙耶と勘違いされた」
苦笑いを受けべるライオス。確かに沙耶の話をチラっとしたな。でも、女とは言わなかった気がする。それならライオスの事と勘違いしたのかも。同じ黒髪だし。
「で、あのパクリ家は何だ?」
「パクリ家とか酷いな。俺もエーコに作って貰って、それを参考に精霊の集落で、もっと良いのを作って貰っただけだよ」
「って事は、風呂あったりする?」
「あるよ」
羨ましいな。俺の方はないってのに。というか置き場がない。ベッドが三つにテーブルにトイレで精一杯だ。俺の空間魔法のレベル的に収納容量がギリギリだったから。今ならもう少し大きな家も可能だろうけど。
「朝風呂サイコーだしー♪」
「精霊が入るのかよ!?」
「シルは、風呂どころか食事も要求して来る」
「は? 人間臭い精霊だな」
「そう思うよな」
フッと笑うライオス。
「ブーブー。良いじゃん。人間の娯楽は楽しいしー!」
「食事と風呂は娯楽じゃないぞ」
ブー垂れ頬を膨らますシルに一応突っ込んでおく。
「で、ゲンイって?」
「俺の正体がスイースレン公国にバレないようにする偽名」
「ふ~ん。じゃあ俺もそう呼ぶか」
「頼む」
「それから、お前転移者を保護しただろ?」
「何故それを?」
「ファーレに監視させていた」
「あの神獣、ファーレだったのか?」
「気付いていたのか?」
それは驚きだ。ファーレは目が良いから遠くからでも監視出来る。それなのにファーレの存在に気付くとは……。気配察知を覚えているようだけど、遠くにいたのなら気付かない筈。
「シルがね」
「うん、そだしー。神獣がやたら見てるなぁ~って」
流石は精霊。
「風に乗った匂いでね」
って匂いかよ!? そう言えば風の精霊だった。
「やっぱり、お前が転生者だから日本人を気にして助けた?」
「……アークには転生者だってバレてたか」
「いや、当時は俺の鑑定は弾かれた。だからさっき強力になった今の鑑定をした。まあ当時から疑ってたのは確かだけど」
「そうなのか……じゃあバレてるようだし言うけど、絶対に俺が保護してる転移者に言わないでくれないか?」
ん? やけに真剣だな。
「転生者だって事をか?」
「それは言った。保護した者の名は瑠二。光坂 瑠二……前世の俺の弟だ」