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EP.26 とある少女が死んだ

 +6――――月陸歴1521年6月9日



 この日、とある少女が死んだ――――。


 ジャアーク王国某所にいた彼女は、西を目指した。西にあるとある町には、ジャアーク王国を牛耳っている者達に対する反抗勢力がいたからだ。

 それを主導する者にどうしても会いたかった。正確にはその者は、じっと機を狙っていた。今のまま反抗しても、あっという間に制圧されるのは、目に見えているからだ。

 何よりも若い。もう少し己を鍛えないといけないとじっと機を狙っていたのだ。


 その者の噂を聞き会いたいと願った少女。何故ならその者の両親と少女の両親は、共に戦いクルワーゾ騎馬王国を散って行った。少女の母はなんとかその戦から、幼かった少女を連れ脱出して、ジャアーク王国に逃げ延びた。

 それを幼い頃より、ずっと聞かされていたのだ。反抗勢力の旗頭となれると目されるその者の下に、なんとしても馳せ参じ、力になりたいと考えていた。

 母に何度も聞かされ、何時か両親の無念を晴らしたいと考えるようになるのに、そう時間は掛からなかった。

 母は存命だが、もう歳だしそんな戦に再び参加させたいとは、思わなかったので、少女は一人でその者の所に何度も行けないか、情報を集めた。



 ただ問題はジャアーク王国は、荒れていた。

 そもそもこの国は特殊で二大王権の国だ。北の王国、南の王国と別れており管理が別々にされていた。昔はそれでも良かったのだが、北の王国側が野心を持つようになった。

 過去にクルワーゾ騎馬王国で起きた戦に南に王家が参戦し、北上し海を渡った際に汚い事に北の王家が、後ろから攻撃し、南の王国軍が全滅してしまった。

 どうしようもなかった。前はクルワーゾ騎馬王国での内乱。後ろは北の王家。逃げ場がなかったのだ。

 こうして北の王家が牛耳るようになってしまった。


 そこからがジャアーク王国全ての者に取って苦難に始まりだった。正確には北の王国の管理地域以外がだ。北の王家は、自分達の住まう周辺以外はどうでも良かったのだ。

 そのせいでそれ以外、特に南の王国は治安が酷く乱れた。一応南の王家にも生き残りはいたが、良い噂は聞かない。

 反抗勢力の旗頭のその者は、父親がクルワーゾ騎馬王国で起きた内乱の片方の勢力の指揮官だった事もあり、民達は息子であるその者に多大な期待を寄せた。いつか成長された時に反抗勢力が一気に巻き返すだろうと淡い希望を抱いていたのだ。


 話が反れたが少女は、情報を集め西にいるその者と接触の機会を狙っていた。

 ある日、今がその時だと思い家を飛び出し西に向かった。これが一つの悲劇の始まりだ。

 先程も述べた通り治安が悪く、運悪く暴漢達に捕まってしまった。西にあるその者が住まう町を目前にして……。


「嬢ちゃん上玉だな。俺が遊んでやるよ。飽きたら売るのも良いな」


 下卑た嗤いをし、舌なめずりをする暴漢の一人。

 少女は疾うに覚悟が出来ていた。人を殺す覚悟が。旗頭のその者と共に戦う為には当然それを持ち合わせていないといけない。


「<光槍魔法(ライト・ランス)>」


 舌なめずりをしていたその暴漢を魔法で貫く。

 死の間際、憎悪の籠った目で見られた。


「ヒィ!」


 覚悟していても現実は違う。その憎悪の目に気圧され足が竦んでしまう。それは大きな隙となってしまった。


「てめぇ、良くもやりやがったな! 商品になると思って下手に出ていれば……」


 他の暴漢達が動き出し、多勢無勢。敵う筈もない。仲間の一人が殺された事で、袋叩きにされてしまう。



 こうして少女は死んでしまった――――。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 -00:00:30――――月陸歴1521年6月3日



 そうして自分のベッドで目覚める。西に向けて旅立つ前に母と住んでいた慣れ親しんでいた家のベッドだ。


「……どういう事?」


 ――――私は死んだ筈。


 少女は混乱した。何故自分がこんなとこにいるのだろう?

 それと同時に死の瞬間の恐怖や絶望がぶり返し肌が粟立った。自分を抱きしめてベッドの上で震える。その時だ……、



《称号 時間逆行を獲得しました》



 そう頭の中で声が響いた瞬間、大地は揺れた。今まで感じた事の大震災だ。

 彼女は、状況に着いて行けずただただ全身を抱え震えていた。




















 この日、次元の歪みが加速した。




















 元々、次元の壁が緩んでいたのだ。例えるなら小さな穴がポツポツ空いたボールが、ザルへと変わった瞬間だろうか。

 次元の壁とは、他世界との隔たりである。それが穴だらけになったという事は、他世界からの稀人が増えるという事。


 何故こうなったかと言えば、元々緩んでいたのに時間を巻き戻す存在が緩みを加速させた。

 この少女の死が、月光世界(ルナ・ワールド)崩壊へとまた一歩近付けてしまう。

 時間の概念もまた次元なのだから。

 少女は、世界崩壊の原因が自分にあると気付かず繰り返した。




















 それと同時に世界各地で光の柱が観測された――――。

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