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EP.20 色々と振り返りました

「また娘が助けられたね。ありがとう」


 そう言って女王様が頭を下げる。またこの展開かと、げんなりしつつも俺は止めに入る。


「や、止めてください。女王でしょう?」

「ふふふ……今は、一人の母としているわ」

「でしょうけど、心臓に悪いです」

「あら、そう」


 悪戯な笑みを浮かべサフィーネの隣に腰掛ける。絶対この人、態とやっただろ。


「全く困った人ね、アレは」


 ソファーにダラーンと座り頬杖を付きながら言う。女王がこんなんで良いのか? サフィーネは確り背筋を伸ばして座ってるというのに。


「計画が杜撰でしたね。仮にサフィに媚薬が効いても護衛や侍女がいるのですから、二人っきりにはなれないと思いますが?」

「全くよ、は~~」


 女王の威厳もへったくれも何も無い。大きな溜息まで吐いてるし。ちなみに女王様が、素で接してるので丁寧語に留めている。


「お疲れですね」

「……誰のせいよ?」

「え?」


 何故、俺が睨まれてるの?


「ブリテント騎士王国からの書簡の問題もあるのよ?」

「あ……すみません」

「冗談よ。貴方は、ただ依頼を受けただけでしょう? 書簡を出す決定をしたのはあの国」

「えぇ」

「ただ、サフィの婚約者が決まらないのはメハラハクラ王国のせい。度々小競り合いを仕掛けて来るのは、メハラハクラ王国。今回の書簡の意に沿えないのはメハラハクラ王国せい。あの国は、本当に迷惑だわ」


 どれもあの国だな。


「全く! 何なのよ、あの国は!?」

「お母様、気が緩み過ぎです」


 今更じゃね? ソファーにダラーンと座って頬杖付いてる時点で緩み過ぎだよ。


挿絵(By みてみん)


「もうあそこ攻めてしまいましょうか」


 しかも、恐ろしい事を言ってるし。こっちから本格的な戦争をしようってのか?


「あ、実はですね。メハラハクラ王国で今回の書簡の件での謁見の後、賊に見せかけた一万の兵に襲われました」

「「えっ!?」」


 二人揃って目を丸くする。同じ水色の瞳だし、似てるような~。


「謁見まで十五日も待たされました。恐らくですが内容を予測していたのでしょう。なので、その時間を使い人を集めたのではないかと思います」

「やりそうね」

「アーク、それで大丈夫でしたの? 一万もいたのでしょう?」

「え? 数秒で終わったけど?」

「「はっ!?」」


 そんな驚く事かな?


「辰の道場の免許皆伝なので」

「そう言えば、先程言っておりましたね」

「辰の道場の門下生になったのは知ってるわ。免許皆伝したのね。流石ね」

「恐れ入ります」


 そう言えば、この国ではバリストン様にしか言ってなかったな。


「恐らくですが、あの国は他の国と足並みなんて揃えたくないのでしょう」

「でしょうね」

「なので、短絡的にこの国をさっさと取りに来るかもしれません」

「ふふふ……やっぱり貴方は聡明ね」


 女王様が柔らかく微笑む。聡明って言うかテンプレなんだけど。


「ありがとうございます。でもって一番最悪の状況を想定するとしたら……あの国は、魔族と通じてるのではないでしょうか?」

「それはないでしょう!? アーク」

「人類の敵よ!?」


 二人揃って目を剝く。まあこの世界の人間は、それが常識なのだろう。でもな、俺からすればそれこそテンプレであり得るんだよな。


「まだ話した事なかったのですが、あの国にいた時に魔族に襲われました」

「それは何時?」


 女王様が驚きつつも首を傾げる。


「サフィに出会う直前。まだこの世界に転移して間もない頃ですね」

「あれより前ですか?」


 自分に会う前という事だからか、今度はサフィーネが反応した。


「それで?」


 しかし、女王様が先を促す。


「メンサボの町での事ですが、まず魔族にエーコと沙耶が強制転移させられました。場所は、メンサボの町の地下。いざとなったら地面を破壊して助ければ良いやと思ってたので放置していました」

「放置って……貴方、仲間でしょう?」

「え? 俺が忍なのは知ってますよね? (ファミリア)があります」

「あ、そうね。気が動転していたようね。ごめんなさい」


 女王が気軽に謝って良いのかよ? マジで気が緩んでるな。ちなみにだが、王家や貴族は冒険者ギルドで、職を確認したりしてるらしい。なので、俺の職とかバレててもおかしくないと思った。


「勿論、(ファミリア)で様子を見ながらですよ? エーコはともかく沙耶は、当時弱かったですから」

「確かに夫が鑑定した際もサヤが一番弱かったわね。それでも当時十分強かったと思うけど?」


 やっぱり鑑定されていたか。


「それは初対面の時にですか?」

「えぇ。最初に謁見した時ね」

「その強いって判断は、精霊契約してるからってのが大きいのでは?」

「そうね」

「サフィに聞いてると思いますが、此処に来る直前に契約したものです」

「えぇ、聞いたわ」

「まあそんな感じで、当時の一番の成長株は沙耶なんですよね。元々が俺達と比べ遥かに弱かったので」

「なるほどね。あの謁見の時すら他の面々より、差が大きくあるように見えたわ」


 納得したかのように首肯する。


「話を戻しますと、エーコと沙耶が強制転移させられ、放置していたら脅迫文が届いたのです。内容は覚えていませんが、『二人を返して欲しければ従え』とかそんな感じだったと思います。俺は気配完知で、誰が脅迫文を届けたか分かったので、捕まえました」

「それが魔族だったのね?」

「そうです。それで、エーコ達はメンサボの町の地下を歩き続け、領主の館にある出口に到着しました。もうこれって確実に領主と魔族が繋がっていますよね?」

「……認めたくないけど、そうなるわね。人類の裏切り者だわ」


 女王が顔を顰める。この世界の常識で考えると絶対あってはならない事だしな。


「と、なると国事態が魔族と通じてる可能性があるのでは?」

「そうなるわね。も~~~!! あの国は!!」

「ですから、お母様!」


 女王が頭を搔きむしり出す。余程ストレスが溜まってるようだ。サフィーネが慌てて止めてるし。


「でも、正直魔族はどうでも良いのです」

「え?」

「それはどういう……?」


 二人揃って困惑気味に首を傾げる。マジで似てるな~。ただ女王は座り方がだらしない。


「だって魔王は、魔王国から出てこれませんよね? となると四魔将とやらも。今代にも四魔将とやらがいるかどうかは知りませんが」

「待ちなさい!」

「「え?」」


 女王様が声を張り上げ、俺とサフィーネが目を丸くしてしまう。何故いきなり声を張り上げた?


「何故四魔将の事を知ってるの? それはほんの一握りの者しか知らない情報よ」

「そうなのですか? すみません、サフィに聞かせるべきではなかったですね」

「いえ、この娘は時期女王だから、それは良いわ。でも、何故知ってるの?」


 そんな秘密にされるような重要な情報だったのだろうか?


「【付与月姫(カノープス)】ノルンさんです。彼女にナターシャが接触して、昔話を聞かせてくれました」

「【付与月姫(カノープス)】ね。彼女は何代か前の魔王と戦ってるのよね」


 六代前だ。


「それ、そんなに隠す情報ですかね?」

「魔王だけでも厄介なのに、他に強力なのが四人いるとか人類側が委縮してしまうから」

「なるほど?」


 別段納得するような事でもなかった。俺からすれば魔族なんて雑魚だから四魔将もそこまで強いとは思えないんだよな。

 魔王は別だけど。闘気開放より更に先がある事も驚きだが、それを使っても倒せないようだし。俺、闘気開放は、まだ使えないんだよな。だから、俺は魔王に確実に勝てる自信がない。


「まぁ良いわ。確かに魔王と四魔将は、恐らく魔王国から出て来ないわ」

「えぇ。だから魔族程度なら俺は苦戦しないと思うんですよ」

「貴方ならそうかもね」

「よって魔族は、俺からすればどうでも良いです。問題が他にあるという事です」

「それは?」


 二人揃って固唾を吞んで次の言葉を待っている。マジでそっくりだわ~。


「俺達と一緒にこの世界に転移して来たのが、他に同郷の者が二人いると言ったのを覚えていますか?」

「あまり仲が良くなくメハラハクラ王国で別れて来たと……まさか!?」


 どうやら察したようだ。


「あの二人はメンサボの町で、領軍に入っていました」

「なんて事を……」


 女王様が頭を抱える。サフィーネも驚きのあまり口を開け手で抑えていた。


「勿論、魔族と繋がってる事は知らないでしょう。知ればきっと離反すると思います。あの二人……いえ、正確には一人は常識人なので。そう考えると魔族との繋がりを隠して二人を運用して来る可能性があります」

「その二人は強いのでしょうか?」


 女王様が頭を抱え処理しきれないのだろう。サフィーネが代わりに聞いて来る。


「一人は雑魚だな……それでも五年前の沙耶よりは全然強いけど。問題はもう一人の方、当時の時点で俺と互角かそれ以上」

「そんなに……」

「……それは拙いわね」


 女王様は、気を取り直したのかポツリ呟く。


「この世界の強さの基準がまだピンと来ないのですが、当時の俺達を鑑定した結果どう思いましたか?」

「貴方だけは絶対に敵に回したくないと思ったわ」

「お母様! それは言ってはダメな奴ですよ」

「もう良いのよ。アークは、たぶんこちら側でいてくれる。だから話してくれたのでしょう。それならこちらも正直に話すべきだわ。非公式だから尚更言い易いわ」

「だけど……」


 なんか二人でモメてるな。


「俺だけ? エーコとかナターシャは?」

「勿論、二人もきっと一人で国が傾く力を持ってるでしょう」


 そんなに? それ盛り過ぎだろ。


「盛り過ぎだと思った? 確かに二人より強い人は沢山いるわ。でも、彼女らが卑怯な手や闇討ちとか罠を利用して来たら?」

「そこまですれば傾くのですかね?」

「勿論、入念な準備がいるでしょうけど。だけど、貴方だけは別格に思えた。絶対に敵に回すべきじゃないと、ね」

「過大評価し過ぎでは?」

「では聞くけど、アークはヒューマンスレイヤーを持ってるでしょう?」

「うっ!」


 俺が普段隠してる称号だ。それを持ってると確信してる目だった。

 ヒューマンスレイヤーもそうだが、殺人鬼とか襲撃者とか、知られたらあまり良いイメージは持たれないだろう……。

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