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EP.14 全員クビ決定!! -side 伯爵令嬢-

地図はあくまで目安です

「止まって」


 アーク様が、カーマイン伯爵領を目指し北東に進んでる最中に御者に止まるように言います。


挿絵(By みてみん)


 わたくしは、二日掛けてサイールの町の叔父様の下へ行き、そのままバルデル子爵領に向かいましたので、正直疲れており、気にしていませんでした。

 その後も、まともに休む事なくアツカマシイ男爵領に向かいましたので、やはり気にもしませんでした。

 アツカマシイ男爵領で、漸くベッドで休めたお陰で、こうやって気付く余裕が生まれました。よくよく考えてみるとこうしてアーク様は、度々止めていました。何をしてるのでしょう?


「止まって」


 またです。そうして止まるとアーク様は、馬車の扉を開けて客室から降りると扉を閉めます。一分もしないうちに再び客室の扉を開き座席に腰掛けます。そうして再び馬車が走り出します。


「止まって」


 またです。しかも今度は扉を閉める事なく、外に出て直ぐに戻って来て座席に腰掛けます。


「あの……先程から何をなさってるのですか?」

「え? 護衛ですけど?」

「護衛で度々外に出る必要がありますか?」

「外に出ないと魔獣や賊は始末出来ませんから……」


 困ったような笑みを浮かべます。全く何を言ってるのですか? 外に出て一分もしないうちに魔獣が倒せますか? それに今のように出て外を見ただけで終わりますか?


「そんな短時間で始末出来る訳がないでしょう!?」

「えっと……申し訳ございません」


 顔を引き攣らせ頭を下げます。


「落ち着きなさい」

「でも、叔父様……」

「おい! ポール」


 叔父様が御者の名前を呼びます。


「はい。旦那様」

「彼が言ってる事は本当かね?」

「はい。ですが……どうやってるのか分かりませんが、一瞬で魔獣が倒されています」

「え?」

「それに……」

「何かしら?」

「たった今、現れた賊ですが……人睨みしただけで倒れてしまいました」


 睨んだだけで?


「どうやったのですか?」

「端的に言えば殺気をぶつけただけです。命までは取るつもりはなかったので、気絶だけで済ましました」


 わたくしは、固まってしまいます。殺気をぶつけただけで? そんな事が可能なのですか?


「ははは……流石だね、アーク君」

「恐れ入ります」

「アーク君はね、ブリテント騎士王国の干支の道場にいたのだよ」

「……そうだったのですか」


 聞いて事があります。干支の道場の師範は、一国の騎士団長にも引けを取らない実力があるとか。才能がある者は、師範直々に教えを乞えるそうです。


「やはりご存知でしたか」

「そりゃ情勢を知る事も貴族には必要な事だからね。それに知ってる者が目立てば尚更、耳に入って来るよ」

「左様ですか」

「勿論、ナターシャ君がAランクに昇格した事もね」

「流石ですね、バリストン様」


 ナターシャ君? 誰の事でしょう?


「だけど、それっきり情報が来ないのだけど、何をしてるのだい? Aランクともなれば通り名が付けられ有名になる筈なんだけどね」

「現Sランク冒険者の【付与月姫(カノープス)】が、特殊依頼を出して、それをこなしてると思われます。内容は守秘義務がございますので、申し訳ございませんが言えません」

「ほー。【付与月姫(カノープス)】直々かね? 流石だね」

「そうですね」


 お二人はニコやかに会話を交わします。わたくしは蚊帳の外なのですが? 面白くありませんね。


「それで、君は干支の道場は、どうだったんだい?」

「一応、免許皆伝を頂きました。なので、こうして冒険者活動を再開しております」

「ほー。君が干支の道場に入ったのは四、五年前だろ? 流石だね」

「恐れ入ります」


 何ですって!?

 免許皆伝って、次期師範に選ばれても良いレベルと聞いた事があります。しかし、そこに至る者は才能があっても、十年以上は掛かると聞きました。それを半分以下の年数とは驚きです。


「申し訳ございません。それなのにわたくし、失礼な事を言ってしまいましたね」

「いえいえ……俺が横着をして、さっさと始末したからですよ」


 本来なら二日以上掛かる距離ですが、アーク様が魔獣も賊を軽くあしらってくださったお陰で、一日半……次の日の夜には、カーマイン伯爵領に到着しました。


「お待ちしておりました」


 外門をくぐるとわたくしの侍従が待っておりました。事前にお義姉様の動向を調べ、わたくしに伝えるように言って、先にカーマイン伯爵領に帰しました。

 そう……わたくしと一緒にサイールの町に向かった者の一人です。わたくしがバルデル子爵領に向かう時に、逆に帰した訳ですね。


「どうかしら?」

「丁度良いタイミングでした。今、お二人は別邸におられます。時間的に良い現場を抑えられるのではないでしょうか?」

「そう……ありがとう」


 ニヤリと笑ってしまいます。帰って早々に尻尾を掴ませるとかは……どこまでも無能どもですね。


「アンネルジュ……黒い考えどころか、黒い笑みが出てるぞ」

「失礼致しました」


 アーク様がドン引きしております。いや、一瞬で賊を気絶させる貴方にドン引きですが!?

 そんな訳で別邸に向かいます。


「お、お嬢様!? 如何なさいました?」


 別邸にいた従僕や侍女達が泡を食ったような表情を浮かべます……良い気味ですね。


「此処は、わたくしの別邸です。何か問題がありますか?」

「先に仰ってくだされば、清掃をキチンとしていました」

「あら? 来ないと分かっていたら、清掃を適当にやるのですか? いい加減な仕事をしてるのですね」


















 全員クビ決定!!


















「そ、そんな事はございません。先に仰ってくだされば出迎えの準備をしたと申しております」

「気にしないでください。わたくしの別邸なんですから、いつ来ても良いじゃないですか」

「あ、明日にして頂けませんか?」


 必死に止めていますね。


「叔父様も来てるのですよ? 貧相な宿に泊めろと仰るのですか?」

「本邸があるじゃないですか」

「もうこんな時間ですから、此処で良いですわ」

「ですが……」

「もういい加減にしろ、クズども!」

「アンネルジュ」

「失礼致しました」


 つい黒い感情が口に出ていました。


「ともかく此処がわたくしの別邸なんですから、入りますね」


 もう無理矢理別邸に足を踏み込みます。


「お嬢様……およしください」


 皆、必死に止めますね。


「アーク様」

「かしこまりました」


 アーク様が、従僕や侍女達を人睨み。一瞬で意識をなくしました。本当に人睨みで終わりましたね。アーク様の実力に舌を巻くばかりです。


「此方ですね」


 アーク様が、先導するようにスイスイ進みます。


「分かるのですか?」

「えぇ」


 その方向って……当主の寝室。つまり、わたくしの寝室がある方では?


「お嬢様!? 此処から先は……」


 出くわした侍女は、最後まで言えませんでしたね。アーク様が、即座に撃沈させました。


「貴方……何故分かるのですか? まさか……此処に忍び込んだ事が?」

「まさか。此処どころかこの町も初めてですよ」

「その割には、正確に当主の寝室を目指していますね」

「気配ですよ」


 そう言ったアーク様の顔がこわばります。


「如何なさいました?」

「いえ……なというか……」

「はっきり仰いなさい!」

「俺も男ですから、ああ言った声は聞きたくなるものです」


 声?


「ですが……アンネルジュ様のお義姉様の声は……なんと言うか……下品で聞くに堪えません」


 ああ……完全な不貞の現場が展開されるのですね。でも、どうして聞こえるのでしょう? まだ聞こえる距離ではありませんし、そもそも当主の寝室は壁が厚く防音に優れていますけど。

 そんな事を考えていると当主の寝室に到着しました。わたくしは、扉を開けて一気に飛び込みます。


「何だ!?」

「キャーーーっ!!!」


 うっさいわっ!!




















「あらあら……わたくしの部屋に裸の男女が絡み合って……何をしてるのかしら?」

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