EP.07 収納魔法の調子がおかしくなりました
アルファとベータは弓を構え腰に括り付けた矢筒から矢を抜き弓につがえると即座に放つ。それと同時にヒーロースーツ野郎【爆発参上】緑川 青が光のシールドを解除した。
しかも連射速度が速い。二人は一糸乱れない動きで、放ち続ける。魔力が籠められており威力もなかなか。
短弓なので長距離には向いていないが連射性が良い。弓筒も背中ではなく腰なのも連射に向いてる。
しかも矢筒は、恐らく魔道具武装で空間魔法が施されており、見た目以上に矢が収納されているだろう。更に取り出しように毎回矢が一本だけ少し飛び出る仕様。そのお陰で連射性が上がっていた。
「「っ!?」」
接近して来たレッドブルに慌てて狙いを変える。
「接近されたのは無視しろ。俺が壁になる」
「「イエス! マム!」」
「誰がマムじゃ! こらぁ」
失礼な奴らだな。俺のどこがマムだ? というか息ぴったりだが姉妹か?
「「失礼! ボス!」」
いや、ボスも違うだろ?
「君達、今のボスは我だぁぁぁよ」
まだサールナートが両手を交差させて左下を向いてるし。
「「……イエス、アーク」」
不承不承で消え入りそうな声だ。何故に俺をマムとかボスとか呼びたいのかね。そんな事を考えながら近寄って来たレッドブルの首を小太刀でひたすら落とす作業をしていた。作業なので面倒。
まあ俺の場合一対多数で、サクっと倒す術は持っていないけど。龍圧は使うなと言われたが、それ以前にアレは、格下の意識を刈り取るものであって、命は刈り取れない。
一時間程で片付く。
「ワッハハハ……ご苦労だぁぁったね。さてアオ、この魔獣はどぅうするぅぅかね? 君にも分け前があるだぁぁぁろ?」
あ、ポーズ変えた。丸でスペシウ〇光線を打つかのように腕を十字にしてる。芝居掛かった喋り方はそのままだけど。
「私は人々の安全さえ守れで良いさ。何せ私は正義のヒーロー 異世界レンジャーだからね」
こっちはこっちで自分に酔いしれてない?
あ、ヒーロースーツを解除した。何? 一瞬で変身出来るものだったの? 武みたいだな。
ヒーロースーツの中は、転移者らしく黒髪黒目だ。軽く逆立っている髪だけど……これあのヒーロースーツで変な癖が付いただけだろ?
「君達に譲ろう」
「アオ、相変わらずだぁぁぁね」
だからスペシウ〇光線止めれ! にしても太っ腹だな。魔獣が俺達が倒しただけで千弱。アオは二千近く葬っていた。
「ではでは、諸君。悪に苦しめられた時に私を呼びたまえ。私が成敗しよう」
「いや、呼ぶにしてもどうやって?」
つい突っ込んでしまった。
「君は無粋だね」
「あ、はい。すみません」
ヒーロー的なノリで言ってるだけなのに突っ込むのは、確かに無粋だったな。
「まぁ良いさ。では、さらば」
そう言って去っていた。Sランクって変わり者しかおらんのか? ノルンもそうだけど。
「ではでは、アーク君。収納してくれるかぁぁね?」
一番癖のある奴が、このスペシウ〇光線のポーズをしているサールナートなんだけど。
「了解。<収納魔法>」
収納魔法を唱えるが、いつもより空間の亀裂が小さい。あれ? おかしいな。そう思っていたら、直ぐに空間の亀裂が消えた。解除していないのに勝手にだ。
魔法失敗した? 使い慣れているのに、うっかり魔力制御を確りしてなかったかな?
「<収納魔法>」
再び使うが、また同じ結果だ。
「あれ?」
マジでおかしいぞ。
「どぅうした?」
あんたがどぅうしたよ? いつまでスペシウ〇光線してるんだよ。
「いや……<収納魔法>」
今度はいつもより魔力を籠めて使った。それで漸くまともに使えた。空間に亀裂が確り現れそこに収納出来るようになった。一体なんだったのだろ? いつもより無駄にMP使ってしまったし。
「俺の収納魔法では、四百くらいが限界ですね」
「ワッハハハ……気にするな。あとは手で運ぼうではなぁぁいか? 残りは燃やすだけさぁぁあ」
いちいち芝居掛かるな。鬱陶しい。おっとつい本音が。
そうして俺達は大半のレッドブルを燃やしてしまう。死骸は魔獣を引き寄せる元になってしまうからな。再び集団暴走が起きる原因になってしまう。
しかも、エンスタークの町が近いので余計にこういうのは気を使ってしまうな。衛生面でも腐って行く魔獣を町の近くに置いておく訳には行かない。
つうかアオに全部譲って貰った意味ねぇ~~~~~~!!
魔獣の処理が終わる頃にソウソウとも合流して、エンスタークの町に寄り魔獣を換金して山分けにした。戦ったのは俺、アルファ、ベータだが、運んだのは皆もなので、計算とか面倒だし山分けで良いという話になった。アルファとベータからも異論はなかったし
ちなみに賊(?)は、きっちり憲兵に引き渡したみたい。きっとメハラハクラ王国王家が後ろで糸を引いてるだろうが、どうせ蜥蜴の尻尾切りだろうし。マジでロクでもない国だよな。
で、そのままエンスタークの町に泊まり、翌朝再びウルールカ女王国を目指し南西に進む。
《主上、2km先で商人一家らしき者達が襲われています》
またかよ!? マジでこの国ど~~~なってるの? 問題ばかり起きるな。
《護衛が全滅しております》
《いや、それもう無理だろ。助けられないぞ》
《それが……通り掛かった者が、一人で戦っております》
それはまた悪運が強いな。
《そいつで対処出来ないの?》
《数も少ないので、出来ると思われますが……》
《何か問題が?》
《主上もご存知のノアという者です》
何だって!?