EP.14 南側を討伐しました
さて、降下したもののどうしたものか。数は三百くらいいないか? 多いな。
此方のメンバーは、俺にフィックス兄弟。そして、ナターシャちゃん。
今更気付いたけどナターシャちゃんってどれくらいの実力があるのだろうか? 弓を抱えている事から弓を使えるのはわかるが、それの腕前は?
「さて、では私とレディで空の相手をする。アルとアークは地上を頼む」
エドが指示を出してる。指示を出してくれるのは有難いな。ぶっちゃけ俺はこっちの世界に来てパーティーバトルは初めてだ。前にエドと洞窟攻略をしたけど二人だけだったしな。
「応よ!」
アルが両拳を打ち付けて応える。やる気十分だな。
「レディってあたいの事?」
首を傾げるナターシャちゃん。その仕草がまた可愛いです。ハイ。
「麗しのレディは他にいるかな?」
麗し? とりあえず最初の相手が決まった。そいつの裏に回って小刀を前に回し首に当てる。
「……ん? アークそう言うとこは変わらないな。悪かったからそれ降ろしてくれ」
「……麗しだと?」
「全てのレディは口説くのが礼儀だろ? だが君のレディは口説くのを控えよう」
小刀を降ろす
「まぁ、アークったら妬いてくれてるのかい?」
ナターシャちゃんが目を輝かしてる。やば!俺も何してるのだろう。
ナターシャちゃんの気持ちに答えていなし、答えてもナターシャちゃんの元にはたぶん帰れないというのに。
「じゃあ全員行くぞ」
「応よ」
「あいよ」
「……ああ」
アル、ナターシャちゃん、俺の順で返事をし戦闘態勢に入る。
「オォォォラバスタァァァっ!!」
真っ先に先陣を切ったのはアルだ。いきなり大技かよ。両掌を突き出し、闘気の塊が前方に飛ぶ。
一気に二割が絶命した。いや、お前一人で十分じゃね?
「気が早いねぇ……じゃパワーのお香」
ん? ナターシャちゃんが何か取り出したぞ。お香? なんか匂い嗅いでると力溢れて来るぞ。
「レディそれは?」
「筋力アップするお香さぁ。あたいは薬師って言ったでしょう?」
エドが聞きナターシャちゃんが答える。
いや、それ薬師の範疇じゃないだろ!! まぁ筋力アップしたのは嬉しいがな。
「それは有難いたい。では、私も行きますかな」
そう言うとフェックスの科学力で作ったハイクロスボウを取り出し上空に発射した。って思ったけど、クロスボウに筋力関係ないな
ブスブブスブスブスブスっ!! と、次々に上空の魔物を落とす。
「あたいも負けてられないねぇ」
ナターシャちゃんが弓を構える。が、矢がない。どうするんだ?
「エレメント・ランスっ!」
青白い光の矢が出現し、叫びそれが発射される。あれは……魔力で作った矢か?
そして、その矢は無数に分裂し上空の魔物を捕らえる。
ブスブブスブスブスブスっ!! と、同じく次々と上空の魔物を落とす。
やるなナターシャちゃん。俺も負けてられないな。
スッスッスッスっ……プシュプシュプシュプシューンっ!!
小刀二刀流で素早く動き斬り裂いて行く。って言うか、このメンバーじゃ俺は地味じゃね? 参ったな。
地上の魔物はアルが次々に倒してるしな。と思ってたら、ナターシャちゃんを後ろ狙う魔物がいた。
プッシューンっ!!
とりあえず斬っておく。
「アークっ!?」
いや、そんな目を剥いて驚かんでも。
「……ナターシャ、周りを良く見ろ」
ナターシャちゃん相手でも暗殺者ロールプレイは忘れずにっと。
「そんなにあたいが大事だったかい?」
目を輝かす。戦闘中だぞ。
「……言ってろ」
「照れっちゃてぇ……エレメント・ランスっ!」
軽口を叩きつつ光の矢を飛ばす。
「……戦力が減るのは痛手だ」
「はいはい……エレメント・ランスっ!」
「エド、俺はお前とナターシャを守る。地上はアルの好きにさせた方が良いだろ?」
「ん? ああそうだな。私も周囲を気にしないで済むから、そっちのが助かる」
よし! 俺の役割が決まった。マジでアルと並んで倒すとか勘弁だったし。
アル、ガッシュと恐らく二強だからな。三番手に俺が、来て欲しいとこだが、条件次第でエリス、ルティナ、エーコが候補に来るんだよな。
だが、確実に四番目は俺というかダークだと思いたい。
そうして暫く倒して行く。数は百辺りまで減ったかな。
「む? あれは厳しいな」
エドが呟く。上空にはメタルバードがいた。ハイクロスボウも光の矢も弾く。硬そうだな。
「アーク、雷魔法使えるかい?」
「……使えるが、俺のじゃあれは落とせない」
「じゃあ、あたいが増幅するから、あたいに撃ってくれるかい?」
何言ってるの?俺は首を傾げる。
「速くおしっ!」
あーはいはい。
「<下位稲妻魔法>」
俺の放った下位稲妻魔法は、ナターシャちゃんの弓に装填された光の矢に吸収された。
「エレメント・サンダーランスっ!!」
魔法弓……だと?
ヒューン……バリバリっ!! と、メタルバードに直撃し落ちて来る。
「後頼んだよ」
って言われえてもな……あれ斬撃耐性あるだろ。って、わけで……、
「……アル頼む」
「応よ!!」
ズドンっ!! と、パンチ一発で終了。
どこまでもでたらめな奴。そうしてどんどん魔物が減って行く。しかし、実は一匹だけ無視していた。
最初のアルのオーラバスターに耐えていた魔物がいたのだ。全員阿吽の呼吸で、そいつは最後と言わんばかりに無視していた。
そして、その一匹だけが残った……。
「さて、あれはどうする?」
エドと周りに聞く。
「殴る!」
脳筋の筋肉バカが。
「グミオウかい?」
ナターシャちゃんが言った通りあれはグミオウ。グミのようにブヨブヨしている。で、オウが付くだけあってデカい。
人の五倍はある。ブヨブヨしてるから闘気を混ぜた打撃も吸収して衝撃を逃すので、筋肉バカは役立たず。
魔法も中位以上じゃないと効かない。
「アーク、とりあえず炎頂戴」
炎? ああ魔法か。
「<下位火炎魔法>」
俺が唱えた下位火炎魔法がナターシャちゃんの弓に装填された矢に吸収される。
「エレメント・ファイヤーランスっ!」
ズブっ!!
あ、弾かれた。
「なあアーク。あれ昔より強くなってないか?」
エドが聞いてくる。確かに。ナターシャちゃんのあの矢は、たぶん初位を中位まで引き上げている。それが全く効かない。
ちなみに斬撃は多少効くがデカいので大したダメージにならないし。直ぐに再生するんだよな。
「……ああ。どうする?」
「誰か中位魔法以上使えないかい?」
「残念ながら、このメンバーの中に魔法が得意な者はいないよ、レディ」
「むず痒いからレディっての止めてくれないかい?」
いちいち突っ込まんで良いよ、ナターシャちゃん。相手は、ナンパ野郎なんだし。
にしても、今思ったが魔法が得意な奴いないな此処に。二股バカが。確り振り分けしろよ。
「あたいは、回復以外は中位を使えるけど、弓の制御に魔力を回してるから、矢で増幅させるのが、出来なくなるんだよねぇ」
なん……だとっ!? ナターシャちゃんも意外に規格外だな。
プップップップっ!!
って、話していたら攻撃が来た。グミオウの口から毒液が発射される。
「おっと」
「危ないねぇ」
「ふんっ!」
「……」
エドは危なげなく躱し、ナターシャちゃんがギリギリ躱し、アルは殴ってる……バカか。俺は問題無く躱す。
アルの腕が毒にやられてるじゃんかよ
「かしな」
ナターシャちゃんが、アルの腕を取り何かを塗り付けてる。
解毒薬か?
「悪い」
「で、どうする?」
「じゃあ俺が一人で相手するからその間、考えていてくれ」
「おいアル!」
エドの制止の言葉を聞かずアルが突っ込む。接近戦で無駄に殴る。
打撃耐性があるから無意味だけど、注意がそっちに行ってるから良いか。さてどうするかな。
「……ナターシャ、重力魔法は使えるか? それとお香だが素早さを上げるのは?」
「重力魔法なら使えるさぁ。スピードのお香もあるさぁ」
何だこの優等生は? ナターシャちゃんってスペック高過ぎだろ。
魔法弓、お香とか変わった物を含む薬、そしてそれなりの魔法。何でこんな人が俺に惚れたのかつくづくわからん。
「……作戦がある」
俺は作戦の説明をした。
「わかった」
「わかったさぁ」
エドとナターシャちゃんが理解を示した。
「アル、戻れーっ!」
エドが呼び掛ける。
「応っ!」
アルがこっちに走って来た。
「スピードのお香」
その間にナターシャちゃんが俺とエドと自分に素早さが上がるお香を嗅がせた。
そして、ナターシャが走って移動し、配置に付く。
「戻ったぞ」
アルが戻って来たの作戦を説明する。
「わかったぜ」
「では、行くぞ」
エドはそう言うと移動を開始した。俺は跳ぶ。
「……アル、頼む」
「応っ!……おおりゃやーーーっ!!」
アルに足を向け、闘気入りのパンチを足の裏にして貰う。
てか、いてぇーーーーっ!! 思ったよりいてぇよ。
「<下位稲妻魔法>」
アルに殴られて吹っ飛ばされながら、ナターシャちゃんに向かって下位稲妻魔法を唱える。
直ぐ様小刀を構える。
プッシューンっ!! と、グミオウの横を通り抜ける時に斬り裂く。
アルに殴られた勢いがあるので側面がパックリ斬れる。が、直ぐ再生が始まる。
「エレメント・サンダーランスっ!」
側面に移動していたナターシャちゃんが魔法弓を放ち、俺が斬り裂いた部分に矢を刺し込む。
ビリビリ……っ!!
中で感電してるな。これで少しの間、再生速度は遅らせられて、再生に余力を回す分、防御が薄くなる筈。
「<重力魔法っ!!>」
直ぐ様ナターシャが重力魔法を発動。対象はエドの地面。
グミオウの脇に移動していたエドが跳び、重力が減らして高く舞う。
そして、フィックスの科学力で作った対魔物用チェーンソーを背中から取り出す。
ブゥゥゥゥっ!! と、チェーンソーが唸る。
それを真下に向けるとナターシャちゃんが重力を増やす。一気にエドは落ちて来た。
ジュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッ!!!!!
チェーンソーがグミオウを削り、グニャグニャになる。が、まだ終わっていない。このままだと再生される。
「アルーっ!!」
エドが、その場から離れながら叫ぶ。
「オォォォラバスタァァァっ!!」
最初にぶっ放した闘気の塊よりでかい闘気弾が発射されグミオウは消し飛んだ。
「<下位回復魔法>」
俺はアルに殴れて動かなくなった足を回復させ立ち上がり、エドの下に向かう。実はこれ完全にエドを犠牲にする作戦だった。下位稲妻魔法により、感電に巻き込まれるからだ。
「<下位回復魔法>」
あ、ナターシャちゃんが回復魔法をかけた。
「すまない、レディ」
エドが立ち上ががるフラフラだ。
「ダメだねぇ。下位じゃ治らないさぁ。ルティナかエーコが来るまで大人しくした方が良いさぁ」
「では、そうさせて貰う」
エドが座り込む。中位クラスは欲しいとこだな。
まあ何にしても、これで片付いた。
「さて、終わったは良いがアレどうするんだい?」
ナターシャちゃんが聞いて来る。この南側は屋敷の入口方面なので入口の状態が見えていた。
「……ルティナに任せる」
それしかないだろ。
そんな話をしていたら皆、続々と集まって来て、エリスも降下して来た……。