EP.17 エピローグ -side Ark-
「もしかして伝心魔道具もかい?」
「そうだーね」
やっぱりそっちも使えなくなるのか。となると暫く伝心出来ないな。
「アーク、聞いていたかい?」
『ああ』
とりあえず伝心した。
「どうするかい?」
『どうしようっか~~~~』
「あたいに聞かれてもね……」
『でもさ、魔王と人類側との間に子が出来てるなんて前代未聞じゃない?』
「そうだねぇ」
『だから、もしかしたら世界崩壊を防ぐ鍵になる可能性もあるんだよな』
「それは都合良過ぎじゃないかい?」
確かにそうなんだけど。例えば今までと同じ事を永遠と繰り返すだけじゃ、このまま世界は崩壊するだけだと思うだよな。感だけど。
だけど、今までにない試みをする事で突破口が出来るかもしれない。その鍵が魔王の子である可能性がゼロじゃないと思うだ。
「確かにそれはそうかもねぇ」
『だから、ナターシャの直感に任せる』
「他力本願だねぇ」
『俺はナターシャの判断を信じてるから』
「嬉しい事を言ってくれるねぇ。分かったさぁ。この依頼を受けるさぁ」
『じゃあ暫くお別れだし、二人にも代わって』
ナターシャは、伝心魔道具をキアラに渡す。
「何ですか? 覗き魔アーク」
『………』
「何か言ったらどうですか?」
『……ラキアに代わって』
「ウチに言う事がそれですか!?」
キアラが憤慨する。だってねー。代わるなりふざけた事を言うからだろ。覗かれたくなかったら、草を外せよ。
『元気でな。淫乱妖精』
「……やはり最低です」
『ウチなら良いですよ……とか言ってくれるかなって思って』
「なななな……こんな時まで心底、本当最低です」
顔を真っ赤にしたキアラは、ラキアに伝心魔道具を投げる。
「姉上よ、大事に扱うのだ。……主様よ、主様の愛人のラキアなのだ」
コツンっ!
ナターシャのげんこつが飛んで来た。
「痛いのだ」
『お前、馬鹿だろ』
「主様、もっと優しさをプリーズ」
『恍惚させながら言われてもな……』
「そ、そんな事ないのだ」
『まぁ適当に頑張れ』
「扱いが雑なのだ!!」
今度は真面目に怒っている。真面目って言い方はアレだが、まあアレに言ってる言葉だし良し。
「良し! じゃないのだ」
『だから、俺の心を読むな。ドM妖精』
「はふ~~」
キモいので切りました。別れの挨拶くらいまともに出来ないのか。この駄目妖精姉妹が。
「じゃあ依頼料としていくらかの金銭を渡すねーえ。それとアレを」
そう侍女に指示を出すと侍女が部屋出て行く。
暫くすると三人掛かりで抱えた盾を持って来た。
「「これは……」」
キアラとラキアが目を剥く。
「何か分かるのかい?」
「神樹の力を感じます」
「そうなのだ」
「流石は精霊族だーね。これはかつての仲間だったエルセリアが、精霊族の里で貰った秘宝なのさーあ」
「でも、あたいら誰も盾は使わないさぁ」
確かに俺達の中に盾を使う者はいない。
「ワタシの通り名を忘れたのかーい?」
「【付与月姫】」
「そうだーね。この盾に付与された能力をナターシャの胸当てに付与するさーあ」
それ付与なの? 移し替えるのではなく?
そうして左手で盾に触れ、右手でナターシャのプラチナメイルに触れる。次の瞬間、ナターシャのプラチナメイルが輝いた。それと同時に盾の輝きがくすんでしまう。なんか白銀の輝きが増したな。
「はぁはぁ……出来たさーあ」
ノルンがフラっとし出す。
「大丈夫かい?」
「MPを一気に使ったせいだーね。それじゃ子供のとこへ案内するさーあ」
「あ、その前に今回の依頼の達成をギルドに報告しに行かないと」
依頼が完了した際にギルドに行くのが規則だしな。
「それは平気だーね。ワタシの方から言っておくかーらね。それに新たな依頼の手続きもねーえ」
「そんな事出来るのかい?」
「ワタシャ、現Sランク冒険者だーよ。特権があるのさーあ」
「なるほどねぇ」
そう言えばSランクだった。で、二つ名が【付与月姫】。
四人は、子供のいる部屋に移動する。何かカプセルのような物があるな。これが時を止める魔道具か。
中には銀髪の赤子がいる。ノルンと同じ色だな。ただ流石は魔族の血が流れているだけはあり黒い。それに背中には翼があり、おでこには小さな角がポツンと生えていた。
「名前は?」
「スクルド=スルーズだーよ」
『未来』って意味だよな? 確かに随分未来で目覚めさせる事になったな。
「スクルドね。魔王闘気を操れるようになったら、真っ先にノルンさんの下へ連れて来るさぁ」
「そうしてくれると嬉しいねーえ。……アガースラの忘れ形見だーしね」
3000年前の旦那に思いを馳せているのか悲しそうに目を伏せる。
「最初のお前を騙せ! 世界を……」
黙れ! そのネタじゃねぇよ。それを知ってるラキアも問題だが、『未来』って意味だって思ったって言ってるんだよ。
「残念なのだ」
残念なのはお前の頭だ。
こうしてナターシャ、キアラ、ラキアは、スクルドを連れて地底世界に向かった。
あ! ファーレが俺の面倒を見るってフラグを回収しちゃった。
やっと次章から主人公中心に戻ります
本当はもっと引っ張る予定でした
アルベリアなんて全く活躍しませんでしたしw
他にもナターシャとノルンとの出会いを、アラタとノルンの出会いの焼き直しにするプロットもありました………………破棄しましたけど
エーコの時もそうですが、サクサク進めて主人公の出番を早めました