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EP.14 生き残りはワタシだけ -side Norn-

「ぅぅあああああ……っ!!」


 と、思っていたらまだアラタは生きていた。咆哮を上げ黒魔族二人を振り払う。


「<完全回復(ヒール・リバイブ)>」


 ならば、ワタシのやる事は一つ。即座に詠唱を終え回復魔法を使った。

 それに回復魔法なら遠距離からでも可能。蘇生魔法は触れないといけない。だから、アラクネがいる以上アルベリアやエルセリアに近付けないので、蘇生魔法が使えない。……攻撃能力がない自分が不甲斐ない。


「<飛剣神聖>」


 アラタは、魔族特効がある聖属性の飛剣を発動。右手に聖剣、左手に飛剣神聖を持ち黒魔族二人と戦う。だけどアレは、MP消費が激しい切り札と言っていた。それを切ったって事は後がない。


「あ……」


 アラタ達の方へ意識を向けながらアラクネから逃げていたのだが、そのアラクネの糸が体に絡み付いてしまう。


「貴様は、どうやら回復しか出来んらしいな……半ザル。そのまま仲間が死ぬとこを見とけ。それまで殺さないでやる」


 アラクネの魔族が醜悪に嗤う。尚、サルは人族の別称。これもアラタから聞いたのだけど人語を介せない獣という事らしい。そしてワタシはコビー族なので半ザル。

 なんて呼ばれようが気にしないが、これじゃあアラタとライラの回復が出来ない。ワタシは見てる事しか……。自分の不甲斐なさに歯噛みしてしまう。


「魔王剣ラーヴァナンの錆にしてくれよう」

「ぐはっ!」


 黒魔族二人を相手にしている横から、魔王らしき人物がアラタに禍々しい剣を突き刺す。


「ダメ……っ!」

「おっと……回復はさせねぇぜ」


 ワタシの頬を雫がつたう。何も出来ない。直ぐに完全回復(ヒール・リバイブ)使えば助けられるのに……。今度こそアラタが死んでしまった。


「アラタ……アラタ……アラタぁぁぁあああ……っ!!!」


 ライラが泣き叫ぶと、黒魔族二人の方へ向かおうとする


「其の方の相手は我ぞ」

「……邪魔」

「なにっ!?」


 先程まで互角の戦いをしていたというのに、ラミアが裏拳一発で吹き飛ぶ。



「ぅぅぁぁぁああああああああああああああっっ!!!!!」



 ライラの絶叫が響き渡る。それと同時に周囲の空間がバチバチ言い出した。しかもライラの黄色の髪が全て逆立つ。もしや……アラタに『何で金髪じゃねぇんだよ!?』と突っ込まれていたアレを使うのかーね?

 だけどアレは、体への負担が半端なく使った後、ライラは一週間眠りに付いていた。















             

              「闘 気 爆 放 っ!!」
















 やはり闘気爆放か。アレを使うと闘気を感じ取る事が出来ないワタシでも目視可能。ライラの体からオーラが溢れ出ているのがはっきり見えた。


「その心意気は良し!」


 魔王らしき人物が喋ると、全魔族が退く。それと魔王剣ラーヴァナとやらを捨てた。


「余自ら相手をしよう」

「煩い! 煩い! うるさぁぁぁぁあああいっっ!!」


 どうやら魔王は、ライラ相手に肉弾戦をやるらしい。しかも一対一で。



 パンっっ! タタタン! ダダダダンっ!! ドコドコドコーンっっ!!



 もう音しか聞こえない。たまに残像が視界に入るくらい。それくらい速いスピードで動き回り殴り合ってるのだ。


「やりよる」

「よくもアラタをーーっ!!」


 声も聞こえる。しかし、依然はっきりと姿を捉える事が出来ない。


「先程の若者か? すまんな。あのままじゃ無駄に長引かせてしまうと思い慈悲を掛けた。許せ」

「せっかくせっかく……」

「ん?」

「エクスカリバーが待っていたのにーーーーーーっっ!!!!」

「何の話だ?」


 パンっっ! シュタン! シュタンっ!! シュッパーンっっ!!


 そっちかーね? アラタが死んだ事より気にするとこはそこなだーね。

 もうこうなってしまうと仮にワタシが自由に動けても何も出来ない。姿が見えない者に回復魔法を使えない。

 それにどうせライラはもう制限時間付きでしか戦えない。リミットを迎えると一週間……下手するとそれ以上にぶっ倒れる事になってしまう。それなればワタシも含め終わりだーね。


 にしても見えないは、二人の猛烈な勢いで大気が揺れ風切りが発生して、ワタシの頬を切り裂く。


「やっと……やっと……貫いて貰えると思ったのにーーーっっ!!」

「あの若者に殺されたかったのか?」


 ドンっっ! ズドン! ズドドドーンっ!! ゾッゴーーンっっ!!


「違う! エクスカリバーからおたまじゃくしが貰える筈だったんだーっ!!」

「意味が分からんっ!!」


 そりゃ分からんだろうーね。


「これじゃあボクは未経験で魔法使いになっちゃうよ」

「……理屈は分からんが魔法使いの何が悪い?」


 パンっっ! タタタン! シュパンっ!! ドコドコドコーンっっ!!


 魔法使いってそれは男の場合じゃないのかーね?


「いや、それどころか大賢者になって死ぬんだ」

「その前に余に殺されると思うぞ?」

「どうでも良い!! アラタの子供が産めないなら、どうでも良いーーーー!!」

「さっきから支離滅裂だぞ」


 パンっっ! タタタン! ダダダダンっ!! ドコドコドコーンっっ!!


 そうして三十分は続いただろう……。

 前回闘気爆放を使った際に五分しか保たなかったのに。


「良くぞ人族がここまで戦った。褒めて使わす」


 やっと姿が見えたが、そこにはライラを片腕に抱えた魔王の姿があった。


「文字通り命を燃やしたな。余の手で葬れなかった事は流石と言っておこう」


 どうやらライラは、そこまで闘気を使ったようだ。使い過ぎると命に関わるものだからねーえ。


「褒美だ……四魔将よ。こやつを丁重に埋葬してやれ。いや……それでは足りぬな。全員埋葬してやれ」

「「「「はっ!」」」」


 ラミアとアラクネと黒魔族二人が恭しく頭を垂れるとアラタ達をそれぞれ抱えて何処かへ行く。


「……さて」


 魔王が此方へ近付いて来る。残るはワタシだけ……勝てる訳がない。

 やがて、ワタシの前でピタと止まりワタシを見下ろす魔王。気付けば下半身に生暖かいものが流れ、地面に水溜りが出来る。歯がガチガチ鳴らし止まらない。


「来い」

「……え?」


 そう言って魔王が踵を返す。


「来いと言っておる」

「殺さないのかーね?」

「戦意無き者と戦うのは主義に反する」


 そう言われワタシは、魔王に着いて行く。ここで逃げても魔族と出くわせば結局殺される。だからと言って、魔王の言葉をそのまま鵜呑みにした訳ではない。ただワタシは全てを諦めた。


「其方、名は? 余はアガースラ」

「……ノルン」

「そうか」


 それだけ呟くと黙々と歩き続ける。やがて魔王城跡に到着。魔王は手をかざすと魔王城が復元された。


「ノルンよ、客人として持て成そう」


 何を言ってるのか全く理解出来なかった……。

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