EP.10 新たな依頼でーした
「それで、ワタシに何の用だーね?」
ノルンが問い掛ける。
にしても、まだ二十代中盤くらいにしか見えないけど、Sランク冒険者なんだよな。そんな歳でSに到達とか、凄過ぎだろ。それにこの国の外交は、そんな若い奴の許可が必要なのか?
「魔王討伐の為に他の国と手を結んで欲しいのさぁ」
「アンタは、ブリテント騎士王国の者かーい?」
「冒険者さぁ。そういう依頼を受けたのさぁ」
「なるほどねーえ」
ノルンは、暫し黙考をする。やがて口を開く。
「なら、明日その話をしようじゃないかーい」
「明日?」
「見ての通り、この戦いの後処理をしないといけないのさーあ」
もう何人かのコビー族は、襲い掛かって来たコビー族やハッタリックを縛っている。または味方のコビー族の治療していた。
「分かったさぁ。そう言えばノルンさんは、国王より権限があるんだよねぇ?」
「一部はそうだーね」
「それだけの重要人物なのに、此処手薄じゃなかい?」
そう言えば、手薄だな。そんな重要人物なら、それなりの防備を固めている筈。たかだか道場の下門下生……師範にすらなれていない者に苦戦していた。
これが精一杯ってなら、この国のレベルが低いって事になるな。ここ数千年魔王と戦っていなくて、軍事力が高いとか言ってた筈だけど。
「ヴェネツィア山脈に魔族が来たのさーあ。お陰で、此処から戦力を出していたのさーあ」
通りで。
「なるほどねぇ」
「それじゃあ、アンタ達を客人として持て成すさーあ。誰か客間に案内してあげなーあ」
「はっ! ノルン様! では、お客人。此方へどうぞ」
一人のコビー族が敬礼をして案内をし出す。ナターシャ達は、そのコビー族に着いて行き屋敷に入り客間に通された。
次の日の朝、呼ばれて応接室に向かった。応接室に入ると既にノルンがソファーに腰掛けており、ナターシャ達も勧められる。ナターシャ達が座ると侍女らしき人がお茶とお茶請けを置いた。
「良く眠れたかーね?」
「ベッドが人族用の大きさでビックリしたさぁ」
そう言えばアムステルの町の宿屋のベッドはコビー族用で小さくて、ナターシャは足を投げ出さないと寝れなかったな。キアラ達はギリギリだったけど。王都ストックホルムの方は平気だった。
「そうは良かったさーあ」
「それで昨日の話だけど……」
「……出来れば断りたいさーあ」
憂いを帯びて表情で、そっと吐き出す。
「せめて、その理由を教えてくれないかい? 冒険者ギルドの依頼は、理由が分かるだけで達成になるのさぁ」
「ワタシも、こんな悪しき慣習を終わらしたいさーあ。結局これはワタシ個人の問題なのさーあ。それなのにこの国を舵を悪い方へ切ってるのさーあ」
「どういう事だい?」
ナターシャが小首を傾げる。
「もう直ぐ戦になるんだーね」
「……どうしてそれを?」
確かに此方側に知られてるとは思わなかっただろう。
「毎年ブリテント騎士王国の人間が増えていれば分かるさーあ。それも増える一方」
「そうだねぇ。だから詳しい事を教えて欲しいさぁ」
「その前にアンタ達、鑑定して良いかーい?」
「……あたいだけにして欲しいさぁ」
キアラとラキアを見て遠慮がちに言う。まあ妖精族と知られるとまずいかもしれないって話してあるしな。でも、相手は人族じゃないから問題無いと思うけど。
「そっちの二人が妖精族だからかーい?」
「えっ!?」
「なぬっ!?」
「何故分かったんだい?」
「アンタ達、ワタシをバカにしてるのかーい? 戦闘中、空飛ぶしーい、高度な魔法を使えば分かるさーあ」
そりゃそうだ。
「見透かれていたのなら、仕方ありませんね」
「バレてたのなら、仕方ないのだ」
「じゃあ。<鑑定>」
ノルンが三人を鑑定する。というか鑑定弾かれるだろ。
「面白いねーえ。キミは、闘気かーい? そっちの赤いのは鑑定遮断だーね。そっちの青いは、鑑定偽装だーね。三人共、違う理由で弾かれたさーあ」
ノルンがおかしそうに笑う。
「だったらーあ。<超鑑定>」
超鑑定!? そんなものが存在するのか。
「なるほどなるほどだーね。ナターシャってんだーい? ナターシャは、転移者のようだーね。魔王討伐の為に呼ばれたのだーね?」
「違うさぁ」
「え!?」
ノルンが鳩が豆鉄砲を食ったようような顔をした。まあ普通は、そう考えるよな。って訳で、ナターシャは掻い摘んで転移について話した。
「そうかーい。それなら話しても良いかーも?」
「本当かい?」
ナターシャの目に喜色が浮かぶ。
「ただ、ワタシの依頼を受けて欲しいのさーあ。依頼を受けてくれるなら、各国と手を結んでも良いさーあ」
「依頼?」
「ワタシの子を育てて欲しいのさーあ」
「「「えっ!?」」」
それは『えっ!?』ってなるわ。自分で育てろよ。
「人族が妖精族と仲良くしてるからこーそ、信じて託そうと思えたから話す事だーよ。この国の者も極一部しか知らない事さーあ」
「それは……?」
もったいぶるな。ノルンに子供がいる事がそんなにトップシークレットなのか?
「ワタシと魔王の子なのさーあ」
おいおいおいおいおいおい……マジかよ!?
ナターシャ達も、余りにもの事に目を剥いて固まってるじゃないか。
「……………………それで魔王と戦いたくない? つまりノルンさんの旦那だから?」
たっぷり間を置き、呆然と聞き返すナターシャ。
「それは違うさーあ。今の魔王なんてどうでも良いさーあ」
「え? 今の? どういう事だい?」
「ワタシと寝屋を共にしたのは、六代前の魔王だーよ」