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EP.04 ハッタリックの扱い

「おい、アルノワール!」


 バーンと扉を開けられ、アルノワールがいる部屋へ乱暴に入って来る者がいた。


「何でしょうか? ハッタリックさん」


 いつもの胡散臭い笑みで迎い入れる。


「貴様、いつまで俺をここ置いておくつもりか?」

「だって貴方、直ぐにでも飛び出してビオサーラさんのとこへ向かうでしょう?」

「当たり前だっ!」


 唾を飛ばす勢いで怒鳴る。


「前にも言いましたが、アークさん達を排除するまで動くのは、時期尚早です」

「そう言って一年だぞ?」

「私も入念に計画を練ってるのですよ? まずはスイースレン公国に置いて来たアークさんのお仲間を排除しないといけません」

「そんなの知るか!」


 『は~』と、盛大にアルノワールが溜息を吐く。


「彼らが全員揃うと厄介です。私でも手古摺るでしょう」

「今は、ブリテント騎士王国にいないのだろ?」

「そうですが……あちらには転移魔法(テレポート)を使える者もいるのですよ?」

「貴様が封じれば良いだろ!?」

「対策されている可能性があります。私は一度彼らの前に出てしまったのですから」

「だとしても、いつまで俺をここに置いておくつもりだ!? 貴様はビオサーラを手に入れる為に協力すると言ったのだろ?」


 アルノワールは目を細める。


「えぇ、言いました。しかし、その代わりに私のお手伝いをする約束でしょう」

「手伝いとやらも、ここに閉じ込めておいて出来るか!」

「ですから、時期尚早なんですよ」

「煩い! 煩い! 煩い!」


 ハッタリックは聞く耳無しと言った感じだ。

 ビオサーラを手に入れる事に躍起になっており、それ以外が見えていない。むしろこの一年間ハッタリックを良く抑えていたというべきだ。


「では、正直に申しましょう」


 トーンを落とし胡散臭い笑みも消え真顔になるアルノワール


「貴方じゃ、アークさん一人にも勝てません」

「なに!?」

「彼は今じゃ貴方より上です」

「馬鹿な!? ふざけた事を言うな。あんなスカルにすら及ばない雑魚が俺より上の筈がないだろ!?」

「えぇ。一年前はそうでしたね」

「どういう事だ?」

「彼は、そもそも貴方とはモノが違うのですよ」

「は?」


 はっきり事実を告げる。


「当時は龍気を使えるようになったばかりでした。が、独学であそこまで達したと思われます」

「だから何だ?」

「分からないのですか? 独学であそこまで達せられるという事は、師を得ればどうなるか……」

「師がいるのか?」

「辰の道場師範に教えを乞う事になりました。そして、この一年で恐らく貴方を越えたでしょう」

「馬鹿な! たった一年でそんな実力伸ばす筈がない」


 ハッタリックは、良く分かっている。龍気というものがどんなもので、そこそこ鍛えたからと言って完全に扱えるものではない事を。

 何せハッタリックも辰の道場にいたのだから……。


「彼と貴方ではポテンシャルが違うのですよ。余程良い魂をお持ちなのでしょう」

「勝手な事を言う!?」


 顔を真っ赤にし怒鳴り散らす。自分があんな格下に負ける筈がない、と。


「それにどうせ貴方は、スカルさんも狙うのでしょう?」

「当たり前だ!」

「スカルさんが現在、どうしているかご存知ですか?」

「知るか」

「寅の道場に移籍しました」

「馬鹿な!? 道場を移籍なんて出来るか!」


 そう……ブリテント騎士王国では、一ヶ所に力を集中させない為に本来なら道場同士の交流すら禁止にされている。何故なら、その一ヶ所が謀反を起こした際に対処が難しくなるからだ。

 昔いそう行った事件が起き、凄惨な戦いが起き何人もの者が犠牲になった。


「事実です。そして移籍したスカルさんは水を得た魚のように、その実力を伸ばしています」

「あんな雑魚が……」


 流石にこれにはハッタリックが目を剝く。

 そもそもスカルにボロ雑巾にされたのを忘れたらしい。いや、なかった事にしたいのだろう。


「余程彼の才に合っていたのでしょう。それを見抜き移籍のお膳立てをしたビオサーラさんの慧眼には恐れ入ります」

「貴様!」

「おっと、失礼しました」


 ビオサーラがスカルの為に何かする事全て気に食わないハッタリックには禁句だった。


「ともかく仮に貴方がスカルさんを倒して、それからどうするのですか? 道場二つを敵に回す事になりますよ? そうなれば他の道場も賛同する可能性もあります」

「くっ!」


 ハッタリックは、苦虫を嚙み潰したよう顔をする。そうなれば、ハッタリックが夢想するビオサーラとの甘々な日々を送れないと考えたのだ。

 まぁそれ以前に、ビオサーラがハッタリックに(なび)くなんて考えている時点で、頭がお花畑なのだけど。


「クククク……そういう訳で、もう暫くお待ちを」


 再び胡散臭い笑みを浮かべる。


「何時までだっ!?」


 堂々巡りだ。アルノワールは『は~』と一度溜息を吐き……、


「では、ハッタリックさんの望み通りにして差し上げます。まずはスイースレン公国にいるアークさんのお仲間を。それにもう直ぐキアーラ海王国と戦争になります。そうなればアークさんもスカルさんも道場にる限り、戦争に参加しないとなりません。そうなればビオサーラさんの守りが手薄になるでしょう」

「それまで待てるか! 一年だぞ? 一年も待たされて……いい加減にしろ」

「分かりました。では、こうしましょう。貴方、キアーラ海王国に行ってください」

「何故だ?」


 怪訝そうに首を傾げる。


「あそこの()()を始末して頂けましたら、私は今の計画をそっちのけで、ビオサーラさんを手に入れるのに全力でお手伝いしましょう」

「……それは本当か?」

「えぇ」

「分かった。行ってやる」


 そう言ってアルノワールがいる部屋から出て行った。


「どうせ無理でしょうね。あそこにはアークさん達は関わっていませんが、魔獣……下手すれば神獣を相手にしないといけません。ハッタリックさんでは勝ち目はないですね」


 『クククク……』と不気味に笑い出す。


「まぁ上手く魔女を始末すれば儲けものでしょう。それに失敗しても、もうアレに使い道はありませんでしたし」


 不気味な笑いが暫く部屋の中を木霊した。

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