断章 孤独なる断罪女王 その③
エピソード500話達成
これも皆さんのお陰です
ありがとうございます
次の日。
「おい! お前、【断罪女王】の王配候補になったんだって?」
「まぁな。チョロいぜ。それにあの女は、俺にゾッコンだったぜ。会って早々デートに誘って来やがったぜ」
「ひゅー!」
「これで俺達革命軍があの【断罪女王】の首を落とし国を変えられるぜ」
「そうだそうだ」
「今日は宴だ!」
何人かのバカか騒いでいますわ。
「ご機嫌よう。噂の【断罪女王】ですわ」
「「「「「っ!? ば、ばじ……女王陛下! 何故ここに?」」」」」
「可笑しな事を聞きますね。断罪に決まってるでしょう?」
「クソ! 殺れ!」
断罪完了。
「次の王配候補です」
「またですの?」
「はい。今回は公爵家の長男でフーリン様でございます」
次の王配候補とやらとは普通に顔合わせして終わりました。
そうして数日後、フーリン様の別邸に向かいました。
「こ、これは女王陛下! 如何なさいました?」
執事や侍女達が迎えてくれます。
「妾の婚約者の別邸に来ては、まずかったかしら?」
「いえ……そんな事は……。ただ、女王陛下が来られたのに掃除がまだ行き届いておりません」
「そんなものは気にしませんわ」
「……いえ、明日にして頂けないでしょうか?」
「二度言わせるんじゃないかしら?」
もうこんな茶番は良いかしら? 問答無用で別邸に入ります。そうしてフーリン様の部屋に踏み込みます。
「誰だ!?」
裸で抱き合ってる男女がいますね。
「あらあら……フーリン様、そちらは何方ですか? 良ければご紹介して頂けませんか?」
「ば、【断罪女王】!?」
「ば、馬鹿……それは言うな!」
女性の方が私の別称を叫び、慌ててフーリン様が止めます。
「それにしてもフーリン様は、小さいのが好みでしたのね?」
わたくしは、胸の下に腕を添えて強調して見せます。すると女性はキッ! とわたくしを睨みました。まぁ冷めた視線で返礼しますけど。
「な、何ですって!? わ、私が貧乳とでも言いたいの?」
「あらあら……妾は、そこまで言っておりませんわ。あ~妾、小さい人の気持ちが分かりませんの。気にしていらしたのですね。それはそれは申し訳ございませんわ」
「そ、それより女王陛下、いきなりどうして……」
フーリン様が、慌てて会話に割って入ります。
「決まってるでしょう? フーリン様の不倫の現場を抑える為よ。名前の通りでしたわね」
ドレスのスカートの下から、鞭を取り出します。
断罪完了。
もうわたくしと婚約したいと妄言を吐く者もいなくなりました。
民衆の心も離れ、家臣もビクビク怯えています。これでわたくしは、一人孤独ですね。別に構いませんけど。
また数日後、執務室にノックが響きます。
「入りなさい」
「はっ!」
また宰相ね。またまた王配候補の話かしら? いらないのだけど。
「ボルドーの町で反乱が起きました」
「そう。じゃあ妾が沈めて来ますわ」
「女王御自ら?」
「だって、兵達はウラジオ連邦国の対応で忙しいでしょう?」
「そうですが……」
「二度言わせるんじゃないかしら? <転移魔法>」
断罪完了。
それから二年が過ぎ、わたくしは十七歳になりました。戦争も二年以上も続いてしまいましたね。予定通りですけど。
「女王陛下、ウラジオ連邦国から停戦の申し込みがございました」
宰相からそう報告される。
「賠償金とサマラ村を要求してください」
「サマラ村? 何故あんな辺鄙な村を?」
「二度言わせるんじゃないかしら?」
「はっ! 手配致します」
わたくしは、停戦後に護衛を二人連れてサマラ村に転移魔法で飛びます。
「村長を呼びなさい」
「はい!」
村に入って最初に目が合った者に声を掛けると村長の家に慌てて走って行きます。やがて村長がやって来ました。
「私が村長のケセランです」
「妾は、アブィーヌイ魔導大国の女王シスリーヴァ=リュボー=アブィーヌイです」
「じょ、女王!?」
ケセランが目を剥きます。
「今日より、この村は我が国の物となりました」
村の所有権が書かれた書類を見せます。
「ははぁ~」
ケセランや一緒にいた村人が頭を地に擦り付けています。
「そういうのは良いので、とりあえずケセランの家に案内して頂戴」
「い、いえ……女王陛下には見苦しい家ですし……」
「二度言わせるんじゃないかしら?」
「は! はい、分かりました」
わたくし達は村長の家に上がり、適当な椅子に腰掛けます。護衛二人は後ろで立っております。ケセランは、どうすれば良いのかとアタフタしておりました。
「とりあえず話があるので、座りなさい」
テーブルを挟んで反対側の椅子を差します。
「し、しかし……」
「二度言わせるんじゃないかしら?」
「は、はい」
ケセランが椅子に座ります。
「<次元収納魔法>」
わたくしは、次元収納魔法から、お金を取り出します。この村の全財産の十倍はあるかもしれませんね。
「とりあえずこれを」
「これは……えぇ~~~~何ですかこれ? こんな大金受け取れませんよ」
「良いですか? これからわたくしは、この村に役目を与えます。それを全うする準備金よ」
「はぁ……」
「それと後ろの二人は置いて帰るわ。若い者を中心に鍛えて貰いなさい」
「我々に何をさせるのでしょうか……」
ケセランが不安そうに言います。
「サマラ村には、遺跡があるでしょう?」
「はい。もう寂れて魔獣しか住んでいない遺跡がございます」
「そこの防備を固めなさい」
「えっ!?」
「二度言わせるんじゃないかしら?」
「は、はい!」
「良い? 誰も近付けさせるんじゃないですよ」
「はぁ……分かりました」
もう寂れているので、釈然としないのでしょう。
「それからこれを」
「これは?」
「伝心魔道具よ」
「それは……?」
わたくしは、伝心魔道具の使い方を教える。
「何かあったら直ぐに伝心しなさい。確り防備を固めていたら、出来る限りの便宜はしますわ」
「ははぁ~。ありがとうございます」
それから一年が過ぎわたくしは、次々に断罪して行きました。
恐れて誰もわたくしに近付きませんね。ですが必要な事です。だから気にしません。
そうしてある日、宰相に告げます。
「妾は、退位します」
「はぃぃぃ!?」
宰相が目を剥きます。
「あの……世継ぎが……」
「そんなのもの出来ると思っているのですか? この【断罪女王】に」
「………」
「次代は、スリェード公爵家の者から選びなさい。あそこの家なら、この【断罪女王】より、良い治世にしてくれるでしょう」
法的には問題ありません。公爵家は全て王家の血が流れています。王家に何かあった際のスペアの役目があるのですから。ただ直系が望ましいというだけの事。
「ですが……」
「二度言わせるんじゃないかしら?」
わたくしは、単身でサマラ村にある遺跡の奥に向かいます。そこに時間を止める魔道具があるので、長い眠りに付きます。やっとこの時代でのわたくしの役目は終わりました。